空に牡丹

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著者 : 大島真寿美
  • 小学館 (2015年9月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864190

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空に牡丹の感想・レビュー・書評

  • 時は明治。
    大きな地所を所有して、村を束ねてきた名主の家に生まれ
    その財をなげうって花火を作り上げることに熱をあげる
    静助さんの物語。

    …といっても、花火を改良していく
    花火師の物語ではないんです。
    静助さんは花火を作り、あげるための資金を出すのみ。

    私が女だからでしょうか。
    そんな一瞬で消えるものに、大枚をはたくなんて
    もってのほか!なんて思ってましたが…。

    静助さんが見つめる分捕り合戦。
    貧しさとは、富とは。
    泰然としていることへの憧れ。

    美しいものは美しいものを呼び覚まし、呼び寄せる。
    花火を見つめる数秒の、
    花火だけがクローズアップされ他の感情が
    心から零れ落ちてなくなる一瞬。

    あのなんとも言えない満ち足りた瞬間。

    花火を見に来た大勢の人々、
    その人々の周り、ありとあらゆるものが
    一緒に奏でた穏やかな世界。

    その儚い世界が救えるものの大きさを
    静助さんは誰よりも知っていただけなんです。

    そのためなら、お金なんて惜しくない。

    って、私はやはり思えないんですけど…ね。

  • 幼いころから何度も聞いた「静助さん」の話を突然自分も語りたくなったから書くことにしたのだというなんとも不思議な書き出しから始まる物語。
    「静助さん」て誰なのか?
    語りたくなるとはどういうことなのか?
    いろんなはてなを抱えながら読み始めたけれど、いつの間にか温かい物語にくるまり、そんなことはどうでもよくなってしまった。
    ただみんな「静助さん」が好きなんだということしか分からない。
    きっとそれが全てなんだと思う。
    読み終えた今、私も「静助さん」のファンの1人になってしまったのだから。

    生き方に正解なんてあるのだろうか?
    たぶん「静助さん」の生き方は正解ではなかったんだろうと思う。なんとなくだけど。
    でも、こんな風に生きられたらなぁと憧れてしまう。
    生き方そのものにというより、その心持ちに。
    執着しない清々しさと濁ることのない純粋さ、そして確かに感じる温かさ。
    まるで夏休みの中みたいな世界。
    夏休みはいつか終わってしまう。
    だけどそのきらめきを忘れることはなくて、何度も何度も思い出す。
    少なくとも私にとってはいまだに夏休みの記憶は特別だ。

    強引だけど、語り手やその一族にとって「静助さん」もきっとそんな存在なんじゃないか。
    夏休みのようなきらめきを持った記憶なんじゃないかと思う。
    この物語がそうであるように。

  • ざっくり言ってしまうと、
    花火に魅入られて、名家を没落させてしまった男の一生を描いた物語。
    でも、そのおろかしくも純粋な道楽者が、なぜか慕わしい。

    明治時代、大地主である可津倉家の次男として生まれた清助。
    自分の私財のほとんどを花火につぎこみ、
    何を成したわけでもないのに、末代まで語り継がれている人物。
    こんな人が身内にいたら、迷惑この上ないはずの困ったちゃん。

    でもね、それが清助さんなんですね。
    あの人はああいう人だから、好きにさせてやるしかない。
    そう思わせてしまう不思議な魅力の持ち主。

    「村の皆は喜んでいたではないか。ならばそれでいいではないか。」
    「せっかく生まれたんだから、綺麗なものをたくさん見たいよなぁ。」


    ぽん、ぽん、ぽん。濃紺の空に上がる清助の弔いの花火。
    皆がつぶやく「可津倉の田圃潰えて空に牡丹」。


    花火の音がどこからか聞こえると、うずうずしちゃう性分です。
    でも見終わった後、どことなく淋しい気分になるあの感じ…。
    そんな一冊でした。

  • 好きな作家なので、見かければ手に取る。
    タイトルを見て、「牡丹…って…あんまりおしゃれじゃないなあ…きれいな花だけど、ぼってりしていて和風な感じがするなあ…ほかの花ではいけなかったのかしら?」
    などと思った。
    カバーイラストには花火が描かれていたので、花火と関係するのだろうな、とは思ったのですが。

    大島さんは、女性の生き方をたくさん書いている…少なくとも、私の読んだ作品はそういうものばかりだったので、驚きました。
    この本の主人公は明治生まれの男性です。
    長かった武士の世が“ご一新”によって終わりをつげ、江戸は東京になり、怒濤のような西欧文明が入ってきて…
    しかし、田舎はあまり変わらない。
    そんな時代の、「花火」に取憑かれた男・静助さんの一代記。
    物書きの女性が、一族に語り継がれる「静助」さんの話を、親族の古老に聞き直したりして、本に書こう…という設定で始められる。

    静助と幼なじみの了吉、または、静助と一回りも年上の長男である欣一…という対比で描かれていくが、その対比は長じる過程でさまざまに変化していく。
    そこへこちらも幼なじみの琴音と萩、静助の母で、父・庄左衛門の後妻・粂の生き方も絡んでくる。
    ぱっと咲いて散る、花火のような人の一生が色とりどりに一瞬の輝きを競う物語だ。

    読み終えて…
    静助さん、やはり親戚の人たちが、ちょっと困ったような微笑ましいような顔で、語らずにはいられない人だったなあ…と思った。
    すがすがしいようにパッと…目に見えるものは何も残らず、そのくせ、残光は鮮やかにまぶたの裏に焼きついて消えない…
    こんな人もいたんだなあ。

  • 明治時代、花火のために尽くした生涯を送った男の半生を描いた物語です。
    彼は、見方によっては、花火のために家の資産を食いつぶしたとんでもない愚か者、です。花火への情熱やその花火そのものの美しさに打たれた人々がゆるく彼を許しているので、物語中ではなんだか許されていますが、でもなあ~と苦笑いしたくなる気持ちはありました。
    彼は花火一筋に生きましたが、その周りの人生はかなり激動しており、兄の人生の顛末のほうがよほどドラマチックというもので、そちらを詳しく知りたいような、いや知らなくて良いような…。兄の所業もみんなゆるく許しているので、かの村はそういう優しい気性の人々ばかり、だったんでしょうか…。

  • 特にすごいことを成し遂げたわけではなく、むしろお家をただ人に愛されたことで後世に名を残した人。
    ある意味、花火で村に貢献したのかも。
    話の主題より、明治に入ってからの成長の勢いがと変化が話のはしばしに感じられるところに興味をそそられました。

  • 大島さんにはとてもフェミニンなイメージがある故ひとりの男の物語、そして時代物という設定に驚く。しかし血縁ある「わたし」が奏でる柔らかでいてそれでもしっかりと人生を語るストーリーはまさに彼女の作品でありそれどころか新たな代表作となり得る(朝ドラに起用したい)素晴らしさがある。
    維新という激動の時代にありながら浮きも沈みもなく静かに語られる偉人でも賢人でもない凡人の愚かで愛おしい人生、そして陰日向で彼を支えその生き様を全うさせる逞しき女たち…
    人の心をパッと明るくして消えていくだけの花火、「だったらそれでいいじゃないか!」の言葉が響く年初イチオシの良作

  • 「儂らも花火と同じなんだよ。綺麗に散れたら嬉しいじゃないか」「せっかく生まれたんだもの、生きてるうちに、綺麗なものをたくさん見たいよなあ」一族の間で語り継がれる静助さん。自他共に認める花火道楽で、花火を上げるために田畑を売り、財産を切り崩す。そのせいで没落しても何食わね顔で田畑を耕す。仕方がないよ、静助さんだもん。その言葉で全てが丸く収まる、ふんわりとした物語。

  • 本当にどうしようもない静助さん。だけどみんなに愛される静助さん。振り回されても、呆れても、花火に魅せられた男を誰も放ってはおけない。だってこの男、どうしようもなく愛おしい。そう、それこそ花火のように。一瞬しか輝きを保てないのにいつまでも語り続けたくなる花火のように。この物語を読むと、まるで静助さんの子孫になったかのように彼の生涯を受けとめて心が温もりを持ちます。そしたらきっと見えるでしょう。静助さんが何よりも愛した大きな大きな空に咲く牡丹が…。

  •  「我が一族の者は、なぜか皆、親類縁者の顔を見ると、静助さんの話をしたくなるようなのだった」 明治のはじめ頃、名主の次男・静助は、元花火職人の杢さんと出会い、打ち上げ花火を見せてもらう。
     自分の先祖で、江戸時代から続く地主の家に生まれた静助さんの物語を書くことにした小説家のわたしは…というところから始まるので、著者の大島さん=わたし?と思ったが、そういうことでもないらしい。

  • 花火師のお話。ところどころおおっとひかれるところはあったけれど、そこまではまらず。

  • +++
    時は明治。花火に心奪われた男の生涯!
    私のご先祖様には、花火に魅せられて生きた静助さんという人がいる。
    親族みんなが語りたくなる静助さんのことを、私は物語にすることにした――。
    時は明治。江戸からそれほど遠くない丹賀宇多村の大地主の次男坊として生まれた静助は、村人から頼られる庄左衛門、母親の粂、腹違いの兄・欣市と暮らしていた。ある日、新し物好きの粂と出かけた両国・隅田川で、打ち上げ花火を見物した静助は、夜空に咲いては散る花火にひと目で魅了される。江戸の有名な花火屋たちは、より鮮やかな花火を上げるため競って研究をしているという。
    静助は花火職人だった杢を口説き落とし、潤沢な資金を元手に花火作りに夢中になるが、次第に時代の波が静助の一族を呑み込んでいく。
    +++

    丹賀宇多(にかうだ)村の元名主・可津倉(かつくら)家の当主・庄左衛門と後妻の粂(くめ)との間の子である静助は、先妻との子である兄・欣市が次期当主として期待されるのとは裏腹に、何の期待も持たれず気ままに成長していったのである。いつしか花火に心を奪われ、のめり込んでいくが、責める者も、止める者もいなかった。周りは年を経るごとにさまざまに変化するが、静助は、基本的に変わることはなく、稼業に励んでいても昔ながらの静助なのであった。家が傾くほど花火に私財を投じるとは、いささか道楽が過ぎる気もするが、どういうわけかそれを責める人はおらず、却って感謝されさえするのである。人徳とでもいうのだろうか。身近にいたらいらいらしそうな人物ではあるが、根が悪い人ではないので、始末が悪いとも言える。あっけない理由で亡くなったときに、村人たちが盛大に花火を上げて見送る場面では、思わず胸が熱くなってしまった。子孫が思わず語りたくなるのは、こんな気持ちからだろうか、と想ってみたりもするのである。のどかで大らかで、なぜか憎めない静助の物語である。

  • 朝ドラを一本観終わったような気分。
    些細なことを気にしない静助が
    本当はとっても大きな人なんだと思えた。
    これを読んでから
    チマチマしたことで
    いらいらしたときは
    静助ならどうするかな、って
    考えてしまう。

  • なかなか面白いストーリーでした。

  • 花火に魅せられたご先祖さま、静助の生涯。

  • 花火。明治。御一新。家族。誰も意地悪じゃない、とてもやさしい物語だった。

  • 久しぶりの一気読み。面白かったです!
    花火の道楽のために、身上をつぶしてしまって、それでもその花火を見たひとたちの記憶のなかに残り続けるご先祖、可津倉静助の物語を、作者が綴るという物語。
    ひとくちに道楽と言っても、江戸からそう遠くないという丹賀宇多(にかうだ)村で、代々名主の家柄だから、土地を手放し続けて途方もない金をつぎこんでいる。苦労知らずの次男坊だが、どこか飄々として嫌われない。
    かといって、ただの道楽ではない。粋というのとも違う。花火に魅せられ、生涯打ち込んでしまった男なのです。この話を読むと、江戸時代から「ご一新」、日清戦争まで可津倉静助をめぐるひとたちのことも含め、私も静助について、つい語りたくなってしまう。ところで、齢百歳を超える大叔父って、誰だったんでしょうか。

  • 作家が自分のご先祖様である「静助さん」について語った、やさしい手触りの物語だ。
    江戸末期に地方の小さな村にある名主の家に後妻の子として生まれ、マイペースに生きた姿は、とぼけていて、でも善意に満ちていて、なんだかあたたかい。
    日本が上り調子に足音高く成長していこうとする時代にあってぽかんと空を見上げている静助さんの姿が目に浮かんで心が和んだ。

  • あの人のことを悪く言う人はいない。
    けれど…
    何も欲しがることがなかった主人公が、唯一望んだものは「花火」
    すべての財産を花火に投じた、ある愚直な男の物語。

  • 花火に身代をつぎ込んで,子供のような汚れのない心根で一生を送った清助さん.まるで頼りにならないようで,みんなの記憶の美しいところにしっかり残っている.欲のない人生も捨てたもんじゃない.

  • 静助のように自分の内なる声の耳を傾けて
    それに正直に迷いなく生きる人生に
    あこがれる。

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空に牡丹の作品紹介

時は明治。花火に心奪われた男の生涯!

私のご先祖様には、花火に魅せられて生きた静助さんという人がいる。
親族みんなが語りたくなる静助さんのことを、私は物語にすることにした――。
時は明治。江戸からそれほど遠くない丹賀宇多村の大地主の次男坊として生まれた静助は、村人から頼られる庄左衛門、母親の粂、腹違いの兄・欣市と暮らしていた。ある日、新し物好きの粂と出かけた両国・隅田川で、打ち上げ花火を見物した静助は、夜空に咲いては散る花火にひと目で魅了される。江戸の有名な花火屋たちは、より鮮やかな花火を上げるため競って研究をしているという。
静助は花火職人だった杢を口説き落とし、潤沢な資金を元手に花火作りに夢中になるが、次第に時代の波が静助の一族を呑み込んでいく--。

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