霧 ウラル

  • 283人登録
  • 3.67評価
    • (21)
    • (44)
    • (51)
    • (5)
    • (0)
  • 55レビュー
著者 : 桜木紫乃
  • 小学館 (2015年9月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864206

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

霧 ウラルの感想・レビュー・書評

  • *国境の街・北海道根室。有力者の娘・珠生が恋に落ちたのは、北の海の汚れ仕事を牛耳る相羽組の組長だったー*
    題名通り、終始霧の中にいるような物語。しかも、相当に濃い。昭和30~40年代が舞台なので、よくも悪くも古めかしく、どの登場人物にも共感出来ず。私には合わなかったようだ。珠生の反撃まで描ききってもらえたら、もう少し違う読後感だったかと。ただし、圧倒されるほどの筆力は健在。

  •  この作家に出会って良かった、と思えるのはこういう作品を読める幸せをつくづく感じるからだ。読書の歓び、ということを思うときに、いつも、凡人には書けない熟達の文章による、個性的な世界構築がなされた独自な物語、といったところにぼくの希いは着地する。それらをしっかりと満たしてくれる作家は、実は海外には多いけれど、日本国内にはさほどいない。たまにいたとしても優れた作品の歓びを毎作提供してくれる作家はさほど多くはないように思う。

     日本の文芸は優れたものであったのに、それが大衆小説になった途端読みやすいが、その品格は失われていったのだと思う。無論その壁を突破し異彩を放ってくれる娯楽作家はいないわけではない。しかしその数は圧倒的に少なく、物語は漫画化し、劇画化し、お手軽な通勤通学小説といったものに堕している傾向があり、目の前の売り上げを求める出版社の矜持ももはや絶滅危惧種ほどに見つけることができない。

     そんな文学世相だからこそ、このような作家の出現に救いを見出すことができるのである。文章力という一点のみ取り上げると、花村萬月、高村薫以来の逸材ではなかろうか。さほどに文章の力、表現技巧といったもので読み進む作品をものする力に現代には廃れた傾向のあるプロフェッショナリズムをしっかりと感じさせてくれる。希少な作家の作品はこれからも遅まきながら読み続けてゆきたい。

     本書は、戦後から昭和30年代の終わりにかけての、北方の街・根室を舞台にしたノワールである。主人公は地元名士の家に生まれた三姉妹の次女でありながら、自ら家風に背き花街に働いた挙句、あろうことか裏社会を率いる男の妻となり、北方領土を目の前にした根室の緊迫した政治経済に深く関わってゆくことになる骨太の物語である。

     『極道の妻たち』など一連の宮尾登美子作品を想起させるかもしれないが、土佐の女を主として描いた宮尾作品に対し、国境の街根室に材を取った本書は、いつもながらの桜木道東ワールドの延長として全く別のものとして捉えた方が良いと思う。やくざ映画に加工できないこともないとは思うが、本書は文章こそが命であり、表現力(ストーリーテリング)こそが読みどころである。

     桜木紫乃という作家は、小説の眼のつけどころが常々変わっているなあと思うのだが、本書は根室という半島地形、北方領土、漁業権、戦後復興の時代性など、常々真向ストレート勝負でその暗黒部分や、その舞台裏の女たちの生きざまを肝を据えて記した正統派ドラマである。国後島生活者たちの戦前戦後を語る部分は『凍原』の樺太引揚者の描写と共鳴する。作家が眼を向ける北方の戦後史が生み出す暗黒劇の鬼気迫る迫力を是非味わって頂きたい。

  • この人の著作、面白くないものが全くない!北の曇った大地、絡みとられる血縁の業、力強く生きる女主人公。愛にひたむきに向かい、けして満たされない、実らない、心の襞。
    この人の著作の読後感は、なぜかいつも、グレイなのは、北の海の冷たさがリアルだからかもしれない。

  • 桜木紫乃さんの作品の中で結構好きだなぁと思うお話だった。
    いわゆる姐さんとなった女性の視点を描いた作品だが、3姉妹それぞれの生き方が対照的であったのがとても興味深い。
    もっと劇的な展開を予想したけれど
    霧に包まれたような
    北海道の風土を彷彿とさせる文章がよかった。
    続編がでることを期待したい。

  • 結局のところずっと舞台って北海道なんだなぁ。桜木さんの作品で『ラブレス』を超える衝撃にまだ出会えていない。

  • 昭和30年代後半の根室
    やくざの親分と一緒になった女性と姉妹の話

    抗争の話とかはでなくて、
    北方領土とか、その間の海で起こることをうまくまとめるとか、の話

    すごい話なんでしょうが、ずっと、もやがかかった感じでした。

  • 直木賞受賞の翌2013年から2014年に「STORY BOX」に連載したもの単行本化

    舞台は戦後の矛盾がなお色濃く漂う昭和30年代後半の国境の町根室。
    水産加工会社を経営する名士川之辺家の次女珠江は、家を出て料亭を経営する叔母龍子の世話で芸者となり、贔屓の水産会社社長の部下で汚れ役を引き受け、代わりに刑務所に入ろうとする相羽に惚れ、出獄後一緒に暮らし始める。

    相羽は、国後島からの引き揚げで家族を失ったその海峡の闇に勢力を張り、非合法でソ連領海で操業する漁船の元締めという裏の顔を土建屋という表の顔に隠して相羽組を立ち上げ、珠江と籍を入れて、要塞のような事務所に住んで根室の顔役となっていく。

    珠江の姉智鶴は100点満点の令嬢として育てられ、代議士を目指す大旗運輸の御曹司に嫁ぐが、飲食店を次々と開いて夜の町に基盤を築くとともに、末妹早苗の婿に地元信金の理事長の次男を迎えようとし、相羽にも女を世話したり、周りを手駒として足元を固めつつ、権力掌握に向かって進んでゆく。

    そして事件は総選挙の開票の日に起きた。。。


    桜木紫乃は文章がうまくなったと感じる。
    さらりとした表現のその下に、重たい思いをにじませる。
    この先も読むのが楽しみだ。

  • 極道小説なのかもしれないが、極道っぽくなかった。ヤクザの妻になる女とその姉妹の成長物語とでも言うのだろうか。切った張ったがあるわけでもなく、ひたすらに男を慕う女を描いていはいるがその極道の男の後ろにある背景が見えてこない。何があっても遠くから見ている感じで話が進む。ラストもそう驚くようなものはなかったしタイトルではないが全体的に霧がかかっているような感じの話だった。

  • 桜木紫乃の直木賞受賞後長編第一作。

    今回は思い切りエンタテイメントに寄せた作品で、作者曰く「姐さん」の世界を書いた.....とのことだが、実際仕上がったのは、ドンパチ・切った張ったのワイルドな世界ではなく、いかにも彼女らしい、オンナたちの情念を丁寧に描いた、静かなエンタテイメント小説であった。

    こう言うと、直木賞受賞作家つかまえて失礼な話なのだが、「紫乃さん、上手くなったなぁ」というのが率直な感想。

    今までの作品でやや見受けられたやや「強引」であったり、「独りよがり」的であった展開は影をひそめ、安心して純粋に文章を味わい、堪能することができるようになった。

    意外と、そのレベルの作家はあまり多くない。

    そして実在の都市を舞台にし、またある意味ストーリに「お約束」的な制約を受ける分野(?)にも拘らず、桜木紫乃にしか描けない世界を構築しているのは流石だ。

    間違いなく彼女のベスト長編だと思う。

    また、これは勝手な想像なのだが、シリーズものとして三部作にすると、本当の意味で彼女の代表作となる可能性を秘めているのではないだろうか。

    たとえば第二部は政界入りを果たす地元有力者の御曹司に嫁いだ珠生の姉(長女)智鶴を主人公に、第三部は三女で実家を継いだ妹・早苗を主人公にして、三姉妹の生きざまをとおした根室の戦後史を描き上げる......想像しただけで上質な大河ドラマになりそうで期待に胸が膨らむ。

    小学館さん、いかがでしょうか?

  • 昭和と言うノスタルジックな設定と根室の荒涼とした海と本題の霧が1人の女の生き方、人生を切なく彩っている。
    三姉妹の後の行く末も最後に気になる。

  • 桜木志乃さんの小説は今までいくつか読み、特に「LOVELESS」はとても好印象ではあったため、期待をして手に取る。だが、残念ながらこの小説は私には合わなかった。
    文章がとても分かりにくく感じる。稚拙なたとえだが、たとえば小説である登場人物の「あぁ、そういうことなのね。」という文章があったとしても、「えっ、どういうことなの?」というようなちぐはぐ感があり、小説の世界に深く入っていくことができなかった。ストーリーうんぬんよりも、小説家と読者の相性問題でもあるように思うが、冒頭の通り、他の作品が気に入っていた分、なんとも消化不良な読後感であった。

  • (2016.02.07読了)
    お話の舞台は昭和30年代後半から40年代初め、北海道根室市で、やくざの親分と一緒になった女性の物語です。
    「極道の妻たち」の世界ですね。
    と言っても、血なまぐさい抗争の話ではないです。
    やくざの親分を愛してしまった女性の切なさが淡々と漂う感じです。
    そんなに面白いわけではありませんが、妙に惹きつけられる不思議な1冊でした(^_^)

  • 根室という街の移り変わりを背景に、それぞれの男性に嫁いだ三姉妹の物語でした。選んだ男がどうであれ、強く逞しく弱く脆くならざるを得ない女達。智鶴が一番怖くもあり、そして案外崩れ出すと一気な感じもあり。珠生の決意と、相羽を亡くした後の覚悟は悲しくもあるけれど、結局この人が一番しぶとく意地になってでも修羅を渡りきるんじゃないかと思えました。決して文章や語る言葉が多いわけではないけれど、誰に感情移入するかで作品の印象も大きく変わりそうな、この行間と言うか作品全体を支配する不穏でグレーな感じはなかなか癖になります。

  • 物語の世界に引き込まれ、あっという間に読んでしまいました。北方領土についてはニュースなどで知識はありましたが、そこに住んでいた人達のことはあまり考えたことがありませんでした。本をめくってすぐにある北方領土の地図を見て、あらためて知床や根室との近さに驚きました。主人公珠生の生き方には、正直言って共感できませんでした。どうして相羽にそこまで執着するのだろう?引き返せる時は何度もあったのに、とか。これから真央ちゃんはどうなるのかな。幸せになってほしいな。読み終えてからもいろいろ考えてしまいました。桜木紫乃さんの作品は初めてでしたが、他の作品も読んでみたいと思いました。

  • 作者の筆力でしょうか
    ずっと霧の中にいたような気がします
    根室、その独特な雰囲気と時代背景が織り合わされて面白く読みました
    それぞれの人物に今一つ共感できなかったのが残念

    ≪ 国境の 向こうの島が 故郷と ≫

  • 半世紀以上前の根室はあまりよくわからない。細かい時代背景が書き込まれているわけではないので、最初は戸惑いながら読み進め、相羽が帰ったところから一気に話が動き始め、引き込まれ、圧倒的な筆致で結末へ。もうちょっと、読み続けたい。

  • 本当に物悲しさの中に女のしたたかさをこめるのがうまい桜木さん。
    男に翻弄されているようでラスト意志を持って生きてく姿が描かれているので絶対女性の底力で何事にも負けないと感じます。

  • 昭和30~40年代の根室を舞台にした、政治や経済、家と家との婚姻、地域に生きる人々の暮らし、ヤクザの世界などが書かれている話。これまで読んだ著者の作品同様、地域に暮らす狭く濃密な人間模様、北海道の厳寒な、灰色がかった世界感が出ているなと感じるが、本作は人びとの暮らしから見えてくる荒波にもまれた世界観があり、逆に灰色がかったじめっとした感じは少なく、映画の任侠ものの雰囲気も醸し出していると感じる。男性優位な時代背景の中、そこに生きる3姉妹の心情が表現され、逞しさも見られ、楽しめた。3姉妹のその後が気になる。

  • 最近、桜木さんの本、よく読んでるなぁ…

    王様のブランチで紹介されていたので、メモしていたところ、日本人会図書館で発見!
    早速、借りてきました。

    帯に書かれていたのは
    桜木版『ゴッドファーザー』であり
    桜木版『極道の妻たち』であり
    桜木版『宋家の三姉妹』!
    これだけで興味津々!

    昭和30年代の北海道根室が舞台。
    地元の名士、河之辺家の三姉妹。
    その次女珠生は家を嫌い、花街で生きる。
    珠生が恋に落ちた相手は羽場組組長。
    姉の知鶴、妹の早苗、三人三様に家や夫に翻弄され…

    桜木さんの作品で描かれる女性はどこか哀しい。
    でも、とても強い。
    その哀しさに胸が締め付けられることもあり
    その強さに惹きつけられるのだが…
    この本に登場する女性たちには感情移入できなかった。
    読み進むにつれ、どんどん気持ちが離れていった感すらあったかな…

  • おもしろかった。けれども、胸にもやもやとした「霧」のようなものが残る作品でした。

    珠生は、重之のどこに惚れたのか?
    智鶴は、なぜそんな化け物のような女になってしまったのか?
    いろいろと人物の心情がつかみくい作品でした。

  • 木賞作家だけど,純文学風~根室の花街で叔母・龍子の料亭・喜楽楼で芸者をしている川乃辺珠生は三浦水産の運転手・相羽重之が気になる。まして,明日警察に出頭しろと命じられ,二人で残された座敷では何を話したらいいか分からず,国後から父親と舟で帰る最中,家族を失った身の上話を聞いて,流れ着いて拾われた野付に行って,手に入れたいと思ってしまった。二つ上の姉・智鶴の陸運を担い,国政参加を画策している大旗との縁談では,懲役を終えて三浦から独立した相羽が土建と密漁を生業とするようになって,裏の仕事を引き受けて頼りにされているようで,智鶴から女を宛われて飼い慣らされているような気がする。組には保田と木村という両腕があって仕事も順調だが,夫の女に嫉妬し,家業を継ぐために商業高校へ進学した妹に信金で根室の金融を牛耳っている杉原家との望まぬ縁談が持ち上がる。珠生は夫に家業が安泰であるように願い,相羽は事務室にいる木村に全てを担わさせたが,姉の智鶴が長男を産み,夫の妾にも女児がいることが判明した。昭和40年末に衆議院が解散し,いよいよ大旗が出馬すると相羽組には怪しい事件が起こる。投票日まで大人しく二階の珠生の許で過ごしたが,当確が出た後,娘の発熱で妾宅へ出掛けた先で銃撃され,残された真央と岬の砦で夫の興した事業継続を心に誓う~ 時代も場所も話題も暗くて,重くて,ずしんとき過ぎて辛いわ…

  • 男には男の意地があり、女には女の矜持がある。
    何が幸せか、どこに幸せがあるのか、そんなことはわからないけれど、それでもここが自分の居場所だ、と思えるものを見つけたものは、強い。
    木村に惚れた。

  • 常人では理解できない男女関係。
    これほどに自分の感情を押し殺さなくてはならないのきついなあ。
    3姉妹って大変ですね。

全55件中 1 - 25件を表示

霧 ウラルを本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

霧 ウラルを本棚に「読み終わった」で登録しているひと

霧 ウラルのKindle版

ツイートする