タスキメシ

著者 :
  • 小学館
3.70
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本棚登録 : 842
感想 : 145
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864282

感想・レビュー・書評

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  • 大切なものをなくしてしまった時、自分はどうするだろう?
    考えたくないテーマです
    この小説のように空白の部分に何かを詰め込むとか
    仲間が後押しをしてくれるとか
    自分にも何とか乗り切れることを信じよう

    駅伝と料理、違うようなことも一緒にストーリーに組み込めてます
    時間が行ったり来たりして技巧的だけど不自然さは感じなかったです

  • 長距離走で怪我をした兄と伸び盛りの弟。箱根駅伝と料理を絡めつつ話が進んでいく青春小説。周囲の人間たちにも様々な事情があるのですが、主人公である兄との関係がみんな曖昧なまま終わるのでなんとなく消化不良。はっきりさせてしまうと逆に単純な話で終わってつまらんのかも、とは思うけど…

  • 箱根駅伝。天才型の弟と故障してしまった兄。ここに料理をからめたお話。実際は高校時代の話が中心なのだが、大学で兄は陸上を続けたのか、箱根駅伝を兄弟で走ることができたのか、その答えは最終章まで分からない。きれいごとではない終わり方がリアルだなぁと思ったけれど、非リアルに箱根駅伝を描いた三浦しをんの「風が強く吹いている」のほうが爽快感はあるかも、です。

  • 言葉にならない兄の複雑な気持ちがたくさん出てきて、それは本当に言葉にしづらい感情なのに、読んでいて文章の雰囲気から感じることができた。時間軸や視点が絶えず入れ替わるので、人によっては読みにくく感じるかもしれない。
    出てくる料理も体に良くておいしそうで、レシピ本も一緒に欲しくなる!
    全体的に疾走感があり、読み終えた頃いい感じにお腹が空く。友情と兄弟愛に胸が熱くなり、主人公の陸上への熱い想いにこちらも涙が出る。箱根駅伝の往路から復路の間に読むのにオススメな1冊。

  • 想像してた話と全然違うかったけど、数十ページを読んで
    「ああ、これ、好きな話やわ・・・」
    と、なりました。

    駅伝、故障、料理、ライバル・・・。

    あー、うん、私が好きな要素がてんこもり・・・。


    早馬と都は、当人たちもいうてたけど、正反対すぎてベクトルが一致したのかも。
    似すぎてると、相手が何を気に病んでいて、相手が何を気遣ってくれてるのかもわかるから、それが余計に重く感じるんよね。

    ほんで、都は
    「勝手に同情される」
    と、いうことがどれほどみじめかを知っている。

    早馬は
    「みじめな努力なんてしたくない」
    と、いう気持ちが強すぎて陸上から逃げようとしていた。

    この二人のコントラストが、切なくなるのよー。
    それは私が、みじめという気持ちにみょうに敏感やからかもしれへん。

    早馬がまた大学で陸上を再開したというのは
    「えっ?」
    って具合やし、まさか箱根の二区で
    「早馬が待ってる」
    と、助川たちがいうのは、じつはちょっとガックリきたのよね。えー、ここでご都合主義なの? みたいな。

    それは、そんなことなかったねー!!


    常にトップを走っていた人が、故障して再起不能かと言われた。
    そこから泥臭い努力をして這い上がってきたけれど、結局一流にはなれなかった。

    それを格好悪いといわれても、いいじゃないか。そういってしめくくられた終盤に、うっかり泣きそうになったよ。

    「いいじゃないか」
    と、自分で納得できるようになるまでどれだけの時間がかかったか。

    私にも、努力をした結果叶わなくても、努力をした過程が大事なんだなんて簡単にいう人は、努力なんてしたことないんじゃないっていいたい時期があった。

    挫折なんてしたことないでしょう。やっても、やっても敵わなかったみじめさなんて知らないだろうと。

    努力せずに敵わなかったってまだどこか安心できるよ。
    「だって精一杯やらなかったもんな。だから、敗けてもしょうがないよな」
    って自分に言えるもの。

    精一杯やっても敵わなかったら、じゃあどうすればいいの。目の前の相手との差を見せつけられて、無様に膝をついている自分はどうすればいいの。
    それでも、「がんばった過程があるからいい」なんて、いえるわけがない。

    そして、物事というのは、努力して敵わない人のほうが圧倒的に多いのだ。
    だから、早馬のように、泣きながらどこかで自分に区切りをつけないとあかんねやろうと思う。
    現実は、きっとのそのくらい、シビアだ。
    だけど泣いてつけた区切りには、未来が生まれる。そこでようやく、頑張ったという過程が評価されるんやろうな。それは、自分が、自分を、認めてあげられるんやろうな。


    都は家庭環境がシビアやったので、「ふつうの家庭でふつうに過ごす」と、いうことから満足にできない小学生やったのだ。
    だからって可哀想がられるのは彼女のプライドが許さず、ふつうのことをふつうにやるために、彼女はふつうでない努力をしている。

    そんな彼女から見たら早馬なんてほんと甘ったれで情けなくて、助川が心配するような「好き」は、おろか、「嫌い」にすらならん相手やったやろうなあ。
    だからこそ、都も早馬に救われた部分があるんやね。

    「物分かりのいい子」と、して色々なことをまず受け止めるということも、やっぱり大事やから。

    傷をなめ合うばかりの同情でもなくて、突き放すばかりのお節介でもなくて、ただいっしょにいて、何かをするというだけの心地の良さ。
    自分に爆弾を抱えてるときほど、そんな空間って大事やと思います。でも、「ただいっしょにいるだけ」やから、そこには何も生まれないけども。(それがいいとか悪いとかではなしに)


    後半は主観があっちこっちへいくのがよかった。
    助川や春馬の主観も見れて、ますます
    「早馬って愛されてるなー・・・」
    と、思った(笑)。助川が特に、早馬が好きすぎて都ちゃん気の毒っちゅうか・・・。(;^ω^)余計なお世話っていわれそう

    春馬もめちゃくちゃ「お兄ちゃんっ子」やしな。

    私も末っ子なので、春馬の気持ちはよーくわかる。
    ほんで、早馬が「弟に負けるのが怖い」と、いう気持ちは、実際に自分が親になってはじめてわかった。

    上の子の
    「できて当り前」
    ちゅうプレッシャー。それをプレッシャーに思うほど繊細な子ほど、「負けたらどうしよう」と、追い込まれていくのね・・・。

    下の子は常に「下」で、追われるより追うほうがずっと楽やもんね(前だけ見ていられるから)。
    そういう意味でも、下の子のほうがそりゃあ自由にやれるよな、と、思った。

    下の子はただ「勝ちたい」だけでも、上の子は「負けるわけにはいかない」やもんね。
    最終的には気持ちの強さとはいえ、やっていて楽しいのがどちらかというと、それは明確かもしれない。
    「勝つ」のと「負けない」のは、似ているようで全然違う。

    でも春馬もかわいいよ。最初はどうなることかと思ったけど、早馬も春馬も、ちゃんと愛されて育ってるよね。
    いいわあ、兄弟って。
    同性の兄弟、憧れるなあ。

    著者の別タイトルも読もう!
    料理の描写も好みなくらい丁寧やったけど、これも著者の味なのかしら。料理が登場する小説、好きやわぁ・・・。

    ちゅうか、都にしろ早馬にしろ、料理をはじめる動機はわりと受動的やのに、すごい上達するねえ。
    いいねえ・・・。

    (2016.10.20)

  • 著者初読み。青春さ全開で、爽やかな読後である。兄弟で陸上をやっていた早馬が陸上では弟に引き離されてしまうと感じ、そして、都に出会い、料理を一緒に作っていく中で、栄養面で弟をサポートしていくうちに、栄養士を志す。兄弟と陸上に対する心理描写と料理の美味しそうな描写が相まっていて良かった。極度の偏食だった春馬が早馬の料理を食べ、偏食も減っていくのが良かった。結果的に陸上の成績向上にも繋がったと思った。登場人物皆様々な思い、葛藤、迷いがあり、互いに力を合わせて乗り越えていく姿、決めた道を自分を信じ進む姿が良い。

  • 怪我で部活を陸上部を休部状態の兄が新たに見つけた居場所は、料理研究部だった。それもたったひとりの女生徒だけが部員の…。復帰を願う弟は複雑な心情を抱く、が…

    駅伝がテーマの、兄弟ふたりと同級生たちを中心に描く青春小説。兄の怪我による苦悩と、料理でなんとか立ち直っていこうとするどこか痛々しさを感じるふるまいがなんだか哀し気で、始終明るいトーンなんですが、早く元気になって…と言いたくなるもやもやさを彼にはずっと感じました。弟のすっぱりしたところを分けてあげたいというような…。

    美味しい料理は舌を満たす栄養を与えるだけではなくて、心をも満たしてくれる。作中に登場する料理は身近な食材で作れそう!と思えるようなものばかりで、等身大に悩みを抱えている高校生たちにある意味ぴったりで、先を先をと走りゆく彼らに力を与えてくれそうな、そんな名脇役として引き立っていると感じました。

    泣けて笑えて、最後は切ない。自分の道を信じて進むたくましさとひたむきさ、一緒に過ごしていく仲間たちとの振り返れば短い大切な日々。そういったきらきらとしたものがちりばめられた、澄んだ印象の物語でした。

  • とてもさわやかな良い話。額賀澪さんの作品はとてもさわやかで、最近の若手の中ではいいなぁと思う。

  • 青春の栄光と挫折。
    結局は将来に何を見据えるかです。

  • 傷ついたゆえに、強くなった若者たちの話。傷を抱えた彼らを支えたのは、まっすぐに育った友と弟。大切なのは、挫折からどう立ち直るかだということがよくわかる。

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著者プロフィール

1990年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部卒業。2015年、「ウインドノーツ」(刊行時に『屋上のウインドノーツ』と改題)で第22回松本清張賞、同年、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞する。著書に、『ラベンダーとソプラノ』『モノクロの夏に帰る』『弊社は買収されました!』『世界の美しさを思い知れ』『風は山から吹いている』『沖晴くんの涙を殺して』、「タスキメシ」シリーズなど。

「2023年 『転職の魔王様』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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