希望荘

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864435

感想・レビュー・書評

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  • 杉村三郎シリーズ4作目。

    「聖域」
    「希望荘」
    「砂男」
    「二重身」

    ペテロの最後、私はちょっとほっとしたんです。三郎のお母さんみたいな強烈な感情はもちろんないし、菜穂子の事は嫌いじゃない。ペテロで起こったことも、どうしても世間一般的な不倫と同じように思えない…。そして桃子もかわいい。でも、どうしてもこの夫婦を見てるのが辛かった。傷だらけになったけど、これでようやく2人の手元に自分の人生が戻ってくるのだと思ったから。


    そして、待望の続編。
    2009年1月のあの結末から2011年の震災後まで、4つの事件を追いながら、彼がどのように過ごしてきたのか少しずつわかってきます。
    菜穂子は再婚はしていないみたい。桃子とは離れながらも温かい交流が続いてる様子。

    園田編集長が好きだったので、彼女がいないのは残念だけど、親族との親交がまた始まり(なかなか毒舌揃い…)、睡蓮改め侘助のマスターとなった彼(思い浮かぶのは、完全に本田博太郎さん)が何故か側にいて、竹中夫人という心強い人に目をかけられ…、坊ちゃんに探偵としての腕を見込まれる。

    これから、どんな人と出会うのか…。


    事件や犯人そのものよりも、他の登場人物の毒気にあてられるところに、ああ、杉村三郎シリーズだなぁ、戻ってきたーと感じ入りました。

  • 上質なミステリを読み、そのままの勢いで上質な作品を読みたくて、宮部みゆきさん作品へ。
    ずっと積まれていた杉村シリーズをやっと読了。

    杉村シリーズの第2章とも言える。
    連作短編集。
    離婚後から彼がどのように考え、今の道へ進んだのかがわかる一冊でもある。
    また、杉村氏のやさしさと親身さが、ツメの甘さもあるが、事件が解決していくのではないかと改めて思った。短編でも読み応えがあり、何気ないきっかけから真相にたどり着いていく。
    その姿は、今までよりのびのびしているかのように思う。
    続編が楽しみ。

  • 杉村三郎シリーズ。離婚し今多コンツェルンを、辞めた杉村は私立探偵と、オフィス蛎殻(かきがら)の、調査員を始めた。早速事務所に依頼があり、死んだと思われていたおばあちゃんを探したり、不倫の末に家を出た蕎麦屋の店主を探したり、とある人のお父さんが死ぬ前に漏らした一言で彼が昔犯罪を犯していたかどうか調べたりという4話が収められてます。前にこのシリーズの作品を読んでから随分経っていますが、繋がりはないので読むのに問題はありませんでした。人の良い三郎がコツコツと依頼人のために動くところと、ちょっとした教訓のようなものがあるのが良い作品だと思いました。

  • 杉村さんが私立探偵になった経緯とか、取り扱った調査案件の短編集。人の良さが話を柔らかくしてる。ただ前作までの経済的にも、人間関係にも恵まれた人生と、なんらかの不幸を抱える人生の対比軸みたいなものかなくなって、人の良い探偵が事案を淡々と調査して解決していく話になってしまったといった印象。

  • 杉村シリーズ

    宮部みゆきは丁寧な人物描写をするので、やはり長編のが心に残る。

    自分的には安住アナが杉村。

  • 杉村三郎シリーズ第四作。中編が四つ。
    このシリーズは、現在も続いてるシリーズもののなかでも相当好きな部類で、全体的に暗いんだけど、そこも含めて、なんか良い。

    ドラマの影響で、小泉孝太郎さんの困り顔が脳裏に何度もよぎりながら読んだ。

    三郎は前作ラストで妻と離婚して義父の会社を退社したが、今作ではいきなり私立探偵になっていた!
    この本の三話目に収録されている「砂男」で、離婚してから私立探偵になるまでの三郎が書かれていて、合点がいった。

    砂男、すごく悲しい、でも読み応えのある話だったなぁ。
    表題作の「希望荘」よりも読み応えあった。
    簡単に使って良い言葉ではないんだろうけど、サイコパスっていうのは世の中に存在してて、かかわったら最後、みたいな存在もいるのだと、背筋が凍った…。
    では、かかわってしまったらどうする?
    私の中でも答えは出ない。
    ただ、普通の人間なら、どんな相手であろうが、人を殺してのうのうと幸せに生きることはできないのだ、と思った。

  • 満たされない心から生まれた犯罪または罪。

    え、杉村三郎離婚したの!?
    前作の『ペテロの葬列』を読まないまま、『希望荘』を読んだため、驚きの設定変更で始まった今作。
    あのなんとも言えないマスオさん探偵の立ち回りによるカタルシスがこのシリーズの売りかと思っていたのに、そこから家族を引き剥がすなんて大胆なことをしたものだ。

    「探偵」という肩書きに変われど、表面的な弱々しさ、人の良さ、のんびり加減を持ちつつ、それでいて芯を外さない内なる強さは健在。

    犯罪自体は悪だが、その背景を思うとやるせなさを感じずにはいられないような事件が集められた短編集。複雑なトリックや驚くような展開はないけれど、人の心に巣食う悪を描かせたら宮部みゆきはやはり随一と思う。

  • 三島屋変調百物語シリーズの手を休め、
    何気なしに借りたこの本を先に読む。
    宮部みゆき氏の大ファンというわけではなく
    思いついたら読んでみる程度なので、
    読了してから、この『希望荘』が
    「杉村三郎シリーズ」の第4弾だと知る。
    宮部みゆき氏の作品群を読み砕いてないが、
    氏が描かれる作品の中に流れていて感じることは
    主人公や主人公を取り巻く人々の
    温かくて優しい心持ちだ。
    卑しい心の持ち主が出てきても、
    見つめ返す眼差しは常に穏やかなような。
    嫌な気持ちになる物語を読んでいても、救われる。

  • 私立探偵になった杉村三郎。この先がまた楽しみです。

  • 妻の浮気で離婚した杉村三郎がプロの探偵として扱った事件4件の物語、どれもこれも短編なのに読み応えがあった。砂男は戸籍の入ら替えの話であったが最近読んだサスペンスで入れ替わりの話はこれで三度目だ、推理小説家の中でも流行りはあるのだろうか。今回は探偵としての杉村三郎を紹介したような話でこの調子でいくといくらでもシリーズは続きそうだが、今多コンツェルンとの対決の話がいずれ出てくるように思うし、オフィス蛎殻の坊ちゃんも今多会長と繋がりがありそうに感じるし、未だ三郎は会長の手のひらで泳がされているような気がする。しかし小泉孝太郎が完全に三郎に刷り込まれてしまったようで、この役は彼しかいないようだ、またTVドラマでも見て見たい。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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