氷の轍

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著者 : 桜木紫乃
  • 小学館 (2016年9月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864503

氷の轍の感想・レビュー・書評

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  • 釧路の海岸で、高齢男性の死体が発見される。父親も警察官だった大門真由は、片桐警部補と共に捜査に当たる。被害者は札幌市に住んでいたが、交友関係などがつかめず、釧路に来た理由さえ不明。
    彼は誰に、何故殺されたのか。
    ミステリー仕立てではあるが、被害者、そして関わった人たちがどのように生きてきたのかを語る人間模様物語といった感じ。言葉の使い方がうまいというか、美しいというか、素晴らしかった。家族とは何か、絆とは何かを考えさせられる作品。
    真由、片桐、松崎とキャラがたっていてよかった。

  • 桜木紫乃の警察ミステリに新たなるヒロイン登場!
    大門真由。まず名前がいいですね。「大門」カッコいいです。一定の年齢以上だと思い出すでしょう、あのど派手な警察ドラマ。あ、いや、関係ないですね、今回は。
    でもこの女性刑事。深いです。自らの出自と家族、そして父親にこだわりを持ちつつ、その父親と同じ道を選ぶ、その芯の強さが桜木作品のどの女性にも共通するところでしょう。
    自分が養女であること、両親と半分しか血がつながっていないこと、そしてそこにあったであろう両親の葛藤を消化できないまま、同じように「もらわれていった姉妹」と殺人事件を追う仕事とのあやうさを父の同僚であった片桐がうまくフォローしていく。このコンビ、いいですね。続きが読みたくなります。幼い娘を「手放す」ということ。そこにある理由や感情はもしかすると当人たちにとっては周りが思うほど重いモノではないのかもしれない。「過去」となってしまった実の親との関係よりも、守りたいもの。それは生きて来た年月のなかで少しずつ形作っていった砂の城のようなものなのかもしれない。壊れやすいからこそ守ろうとする思いが強くなる。切なさが幾重にも重なる。誰かを想う事、守る事、そして壊すこと、それが人の業なのかもしれない。

  • なにか映像化されたものを少しだけ見て、本を読んで見たいと思い、図書館に予約していた本。

    映像の記憶は、暗くて重い。だったのに読んで見たいと思ったのはなんでだろう?と思いつつ、読みはじめたら一気読みでした。

    事件の体ですが、事件解決というより、ひとの歴史です。
    遣る瀬無い生き方と白秋の詩が合っていて印象的。

  • ドラマを先に見ての原作読破。かなりネタバレなので、これから本書を読まれる方はご注意願います。

    ドラマを見て妹が姉に会っても全然気づかない、姉かと疑惑さえも持たない展開に正直「それは無理があるんじゃ…」と思っていたのですが原作を読むとそれも納得。
    ドラマ版と原作では全然違いますね。やはり原作の方がはるかに良い。

    いつも思うのですが桜木さんは本当にタイトルが秀逸。
    姉妹の人生を物理的に別々のものにした氷の轍はまさにその軌跡が平行線という意味でも、心が凍り付いているという意味合いでもその言葉で表現されるのは絶妙と感じざるを得ません。
    殺人の動機としては弱い、と言えばそういう感じもしますが押しつけの善意は時に迷惑以上のものでしかないものであることは、ある程度大人ならば了解できることなのではないかと思います。
    …まぁこの人の場合、純粋な善意というより自分の人生の充実(罪滅ぼしという名の?)を図ろうとしてそれに気づいていなかったという方が大きい気もしますが。

    桜木さんはしかし、泥臭いような冷たいようなとにかくドライな作風のものがほとんどですね。
    それが桜木さん、と思うもののそろそろ違う作風のものも読んでみたいなとちょっと思うところです。

  • 殺人事件を追う刑事も、その被害者である独居老人も、後に容疑者となる人も、寄る辺ない身の上で、寂しさを抱えていて、加害者も被害者も所謂悪人ではないというのが切ないところ。善意の押しつけ、自分の善意に疑いを持っていないことによるすれ違いがあり、また善意を向けられる相手が生きることに精一杯で善意に対して鈍感というのがやるせない。
    真実ひとりは堪えがたし――という、北原白秋の詩が効果的に使われていて、最後グッとくるものがありました。
    桜木さん独特の重たい雲がたちこめているような筆致は叙情的でミステリーにも合うと思った。
    『凍原』のヒロイン松崎比呂も随所に登場していますが、『凍原』は読んでいなくてもこの作品単独でも楽しめると思います。

  • 二人デ居タレドマダ淋シ、
    一人ニナツタラナホ淋シ、
    シンジツ二人ハ遣瀬ナシ、
    シンジツ 一人ハ堪ヘガタシ。

    北海道釧路の海岸で発見された男性、80才。
    被害者のアパートを捜索した北海道警の刑事大門真由は、綺麗に片付けられた独り暮らしの住まいで、北原白秋の詩集「白金之獨樂」を見つける。

    生涯独身、身寄りもなかった被害者はなぜ殺されなければならなかったのか…
    少ない手がかりのなか、自分も身の内に孤独を抱えた真由が、札幌~青森~八戸と被害者の堪えがたい孤独の人生を古本1冊から紐解いていく…

    あ~もう、どっぷり桜木さんの世界。釧路の町を覆う霧の中にいる感じ。
    刑事物なんだけどそれだけじゃない。
    被害者も、加害者も、追う刑事も、その父も、その母も…皆それぞれの哀しみを抱えて生きている。
    生きるということの哀しさ、人は皆ひとりであるということ、だけど、堪えがたいひとりを生きている者にも明日が来るという希望…
    白秋の詩と共に、かすかな光の余韻を残す終わり方が良かった。

  • 北海道を舞台にしたミステリ。起こった一つの殺人事件。被害者の老人にいったい何があったのかを警察が追い求める物語だけれど。誰が犯人か、ではなく、被害者がどういう人生を歩んできたのか、がメインの物語でした。
    舞台設定のせいか、読んでいる間の印象はとにかく薄暗くて寒い感じです(夏の話なのに!)。作中に登場する白秋の詩もまた、その印象をさらに強めて。登場人物たちのさまざまな形の「孤独」がひしひしと感じられる心地でした。でも突き詰めて考えれば、人間は結局みんな孤独なものなのかもしれません。

  • 道東の寂寥感が丁寧につづられていて、すっと温度が下がる気がする。

    警察モノとしては、話の展開や人物の心情はもう少し…な気がするけれど、ひとつひとつ丁寧に書かれていて、ゆっくり読み進めました。

  • また舞台は北海道。そして場末で生きた悲しい女たちの物語で、いつも背筋が凍るような寂しさに襲われるのに、つい夢中で読んでしまいます。想像もつかないような辛い境遇に育つ中で鈍感力を身に着けてしまうことも、どんな辛さにも揺るがないぶっとい芯を背負ったまま凛々しく老いていくことも、等しく切なく身につまされます。でも女刑事である主人公が思うほど、彼女たちの人生が侘しさの連続だったとは思いたくありません。その都度なんらかの心の拠所があったと信じたい。それが人に理解されない拠所であったとしても。

  • 警察もの。大門真由が被害者の足跡を辿って、過去の出来事を掘り起こしていく。偶然が多いような感じも受けたが、自身の出生の秘密もあり親と子の在り方や想いの行き違いで切なさも感じる展開だった。

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氷の轍の作品紹介

シンジツ一人ハ堪ヘガタシ。

二人デ居タレドマダ淋シ、
一人ニナツタラナホ淋シ、
シンジツ二人ハ遣瀬ナシ、
シンジツ一人ハ堪ヘガタシ。
(北原白秋「他ト我」より)

北海道釧路市の千代ノ浦海岸で男性の他殺死体が発見された。被害者は札幌市の元タクシー乗務員滝川信夫、八十歳。北海道警釧路方面本部刑事第一課の大門真由は、滝川の自宅で北原白秋の詩集『白金之独楽』を発見する。滝川は青森市出身。八戸市の歓楽街で働いた後、札幌に移住した。生涯独身で、身寄りもなかったという。真由は、最後の最後に「ひとり」が苦しく心細くなった滝川の縋ろうとした縁を、わずかな糸から紐解いてゆく。

北海道警釧路方面本部。新たな刑事の名は、大門真由。

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ロングセラー文庫『凍原 北海道警釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂』以来となる、北海道警釧路方面本部の女性刑事を主人公とした長編ミステリ-!

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