- Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093876001
感想・レビュー・書評
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この大作、よく読み切れましたよ。
それはなぜかと言いますと、スイッチが入ったら止まらなくなったからです。
第一部に起こった「異変」から25年後、世界で生きる日本人たちが主人公です。
なんか、科学だったり、気象だったり、政治だったり、よくわからないのだけど、日本人で良かった、って思えました。
自然には抗えない。
だからこそ「地球生命体としての人類」、「宇宙の知的生命体としての人類」であることを忘れずに、謙虚に生きていかねば。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本は海の中に沈んでしまった。生き残った日本人も国土を失い、世界中に散った。物語は25年後の日本人たちを描いている。
昭和48年に出版された「日本沈没」は、「第一部 完」という言葉で終わっている。当時、誰もが「その後の日本人は一体どうなるのだろう」と強く思ったことだろう。
「日本沈没 第一部」は、昭和39年、東京オリンピックの年に執筆が開始されたという。昭和31年、経済白書は「もはや戦後ではない」と掲げ、昭和34年、東京オリンピックの開催が決まった。昭和45年には大阪万博が開催される。日本という国が、そしてそこに住む日本人が、高度経済成長の正しさと、「人類の進歩と調和」を、それこそ素朴に信じることが出来た時代だったといえる。
その日本が沈んでしまう。
荒唐無稽ともいえるその設定は、SFの真骨頂であると同時に、作者の日本人に対する思いと願いが描かれていた。そこには「宗教としての日本人とも言える世界観」が描かれていた。
「第二部」にも、色濃く、「宗教としての日本人とも言える世界観」が踏襲されている。「日本人であるわれわれとは一体何者なのか」という問いの著者たちなりの答えが描かれている。その世界観に、よいでも悪いでもなく、正しいでも正しくないでもなく、心が動かされてしまう。
郷愁ではない、創造すべき懐かしい未来が、そこには描かれている。 -
日本沈没は、映画、テレビのメディアで見て、原作を読んでいない。しかし、第二部を知り、興味が湧き読んでみた。国際的と言われる人ほど、日本に執着しているというのは確かにと思えた。そして、ダーウィンの、生き残るのは適応者であるという言葉を思い出す。
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おもしろかった。最後がちょっと物足りなかったが、よかった。
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『日本沈没』刊行直後から出る出ると言われ続けて33年、ついに刊行された続編である。
小松左京に代わりSF作家の谷甲州氏が執筆を担当(クレジット上は“小松左京+谷甲州”)。他にも大勢の作家や識者が関わってこの本が完成したという。それだけテーマが大きく、深いものなのだ。
地殻変動により日本列島が海中に没してから25年。脱出した日本人たちは世界中に散らばっていた。一部では仲間同士かたまりながら、一部では現地の住民と軋轢を起こしながらそれぞれの生活を営んでいる。
そんな中で時の経過とともに希薄になっていく日本人たちのつながりを強めようと、日本政府の中田首相は日本人の再編成計画に乗り出す。しかしその頃、日本が開発したシミュレータは将来地球全体が大規模な気候変動に襲われることを予測していた…。
国土を失った日本人はどうなるのか?というテーマがあまりに壮大すぎて、前作では日本が沈没したところで終わってしまった。今回描かれる「その後」は言ってみればメインテーマであるのだが、やはり筆致は小松左京とは違い谷甲州節である。雪の中でのアクションシーンなどは緊張感たっぷりでかなり読み応えはあるものの、政治・科学・経済・そして市民社会と様々な視点から日本という国を捉えた前作と比べると、どうしてもスケール感の乏しさや書き込みの物足りなさが気になる。
例えば国民が世界中でバラバラになっている状況で内閣はどうやって成立しているのか?議会は?地方自治体は?皇室は?大企業はどうなっているのか?と様々な疑問が浮かんでくる。
ボリューム自体はかなりあるのだが、それでも物足りないのである。
さらに言えばラストも、どうも駆け足な感じがする。リメイク版『日本沈没』の公開に合わせてあわてて終わらせたのではないかと勘繰りたくなってしまう。
まあ恐らくそうなのだろう。逆に言えば、そんな時間が限られた中でこれだけの内容をこの長さでまとめたのはすごい技だと思う。
それに、あの内容が濃密な前作と比べられる事が宿命となっている小説を、プレッシャーに負けず書き上げただけでも谷甲州の力量は計り知れない。こうなってくると山田正紀の日本沈没とか、神林長平の日本沈没とか、思い切って池上永一の日本沈没(←全然違う話になりそう)なんかも読んでみたくなったぞ。
中田や阿部玲子など前作のメインキャストが元気に登場するのも嬉しい。また東アジア情勢など現代のトピックをふんだんに盛り込んでストーリーに活かしているのは現代に書かれた日本沈没の続編としてとても意義がある。ただ、ラストのあの歌はちょっと狙いすぎな感じもした。
小松左京によるあとがきには『日本沈没』や「小松左京マガジン」、そして日本人、人類、文明、知性への飽くなき情熱が語られている。
※余談だけど「小松左京マガジン」といえばお笑い芸人パックンことパトリック・ハーランが小松左京の短編小説「人類裁判」を英語に翻訳しているのを見てビックリしたことがある。小松作品は意外と英訳されていないとのことなので、こういう取り組みは大事だと思う。
優れたSF小説であり日本人論でもある本書。ぜひ前作とご一緒に。 -
日本沈没から25年。国土を失った日本の民は難民となる。
「日本沈没」はSFとして読んで楽しかった。
けれども第二部にその楽しさを求めてガッカリ。
難民としての日本人の苦労は僅かに書かれているだけ。
日本国のプロジェクトが大きなテーマなのかもしれないが、ちょっと説明的に過ぎる。
執筆者、小松左京と谷甲州の力の差かも。 -
あの日本沈没から25年経った。
しかし、日本沈没は終わりではなく、始まりにすぎなかった。。
小松左京氏が高齢のため執筆を長年断念していた『日本沈没』第二部だが、小松左京のプロット、谷甲州執筆によって2006年に第二部が制作された。
いやー幻の第二部が他の著者作とはいえ、読めるのは嬉しい。
期待していたよりもずっと面白かった。(最初の期待値が低すぎたせいか?)
国土を失った日本人が、どうやって民族としての誇りやアイデンティティーを保っていくのか、日本人とは何だ、という小松左京氏の問いかけが強く伝わってきました。
合掌 -
やっと読み終えました。おもしろかったです。
「日本人とは」を考えさせられました。
外相が首相を説得する場面で、「なぜユダヤ人は母国がないのに2000年間ユダヤ人でいられたのか」「なぜそれが日本人には当てはまらないのか」という説明に納得。
頭では外相の考えが正しいだろうと思いますが、本当にこんなことが起こって、自分が考える立場だったら、こんな考え方ができるだろうか。
残念なのは、第一部を読んでだいぶ経っていたので、登場人物の25年前を今ひとつ思い出せなかったことです。名前は見覚えがあるんだけど・・・
機会があれば第一部から通しで読み直したいです。
地球の未来とか人類とはとか考えさせていただいたので、星4つ。