若冲になったアメリカ人 ジョー・D・プライス物語

  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093877138

作品紹介・あらすじ

ありがとう、ジャクチュウ。あなたの絵に出会って、私の人生はすっかり変わってしまった。オクラホマ出身のアメリカ青年がいかにして世界的な伊藤若冲コレクターになったかを語り尽くす。

感想・レビュー・書評

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  • とても面白い。若冲など江戸絵画の世界的コレクターであるプライス(「日本美術応援団の山下がインタビュワー)のインタビューとコレクション紹介である。オクラホマの若者が、ふと骨董店で出会った絵に惹かれたことがきっかけで、興味の赴くまま買い集めていたら、たまたまそれが、場所がどこにあるかもわからない(!)日本の江戸時代の美術だったと。その頃若冲や江戸美術に興味を持つのはそのアメリカ人の若者しかいなかったので、ざくざく買えたと。そして、日本でたまたまた観光ガイド兼通訳をしてくれた日本女性と結婚し、世界的なコレクターに。。江戸美術に対するプライスの真摯な愛情が感じられる好著であり、こちらも読んでいて幸せになる。プライス夫妻が復興支援のために東北で開催した「若冲がきてくれました」展に行ってみたくなった。とりあえず、アマゾンでも評判のよい図録購入を決定。

  • プライスさんの若冲への思い!

  • プライス氏が生涯で3度だけ泣いたことがあり、それが愛艇の沈没、伊藤若冲の絵「動植綵絵」に出合ったときの号泣と静かに泣いたことという、芸術作品との出会いの感動の瞬間が私にとっても新鮮な感動でした。そして日本人奥さんエツコとの出会い場面も興味深いものがあります。このようにアメリカ人が日本の江戸時代の芸術の素晴らしさに夢中になるということが大変嬉しいことです。

  • NHKでプライスさんの特集をやっていたときに、プライスさんが、絵に引き寄せられるかのようにのぞき込む姿が印象的で、さらに絵のために建てたご自宅に魅了されてしまい、どんな人なのか興味を持ったので、本書を手に取った。プライスさんの生い立ちとコレクションに至るまでの道のりが丁寧にインタビューされているが、その中で欠かせない、建築家フランク・ロイド・ライトとの出会いも興味深いし、何よりも、プライスさんの美術品を愛し、それを誰にでも最高の状態で見せようとするお人柄がよく伝わってきた。プライスさんのご自宅にあった、障子越しに自然光を取り入れる鑑賞室や、絶妙なバランスのデザインを、いつか見てみたいものだなぁ、と夢想してしまうのだった。

  • 実物達を観たい。来ないかなぁ…

  • 伊藤若冲の魅力・才能にいち早く気づいたコレクター、ジョー・プライス氏。
    海外に日本絵画を持ち出したと批判も受けたようですが、当時評価の低かった若冲の絵に惹かれて買い集めたと言うプライス氏のお話はとても興味深いです。
    日本絵画との出会い、日本人の奥様との馴れ初めなどプライス氏自身の生い立ちや、彼の美術的センスの知ることができます。

    1716年京都の青物問屋「桝源」の長男として生まれた若冲。
    40歳の時に家督を弟に譲り、画業に専念します。
    1768年にはその年の「平安人物志」の画家の部に大西酔月、応挙、若冲、大雅、蕪村の順に載ったことも。
    1776年頃から石峰寺の「五百羅漢石像」に着手し、1788年の京都大火(天明の大火)によって焼け出された若冲はその後、終の住処である石峰寺に隠棲します。
    そして1800年、9月になくなるまで数々の作品を残してきました。

    またプライス氏は1929年、アメリカの石油パイプラインの事業で財をなした父、ハロルド・チャールズ・プライス氏の次男としてオクラホマ州で生まれます。
    1953年、建築家のフランク・ロイド・ライト氏とともに訪れたニューヨークで若冲の作品とは知らずに若冲の「葡萄図」に惹かれて購入した出来事から、それからのプライス氏の運命を決定することになって行きます。

    フランク・ロイド・ライト氏と大学生のころから交流があったのですね。プライス氏は美術品について専門的な勉強をしていませんでした。
    それは父親の事業を継ぐために機械工学部を専攻しなければならなかったからですが、彼の美的センスは当時撮った写真にも表れていると思います。

    後にプライス氏の父がフランク・ロイド・ライト氏に依頼して建てられた19階の高層ビル「プライス・タワー」の形も面白いです。
    モダンなデザインで、同時の人はもっと驚いたでしょうね・・。

    海外旅行中、ビザの再発行の関係で、日本に滞在することになった若き日のプライス氏はそこで後に妻となるエツコさんと出会うのです。
    エツコさんはプライス氏の通訳をされていて、それがご縁だったそうです。

    プライス氏がその感性で買い取った日本の美術品、それらは当時あまり評価されておらず、画商も何故その絵を買うのか不思議がったと言う話や、それらが実は江戸時代の絵画ばかりであったと言うのもプライス氏のセンスを窺わせています。

    そしてその絵を自分だけではなく多くの人に楽しんでもらうために、色々と力を尽くしていく過程で、さまざまな苦難があり、そのお話もただ財に飽かせて美術品をかき集めた訳ではないことが伝わってきます。

    当初、アメリカの美術館で日本美術の価値が認められず、ぞんざいに扱われたり、美術品購入にあたってお金を持ち逃げされたり、ブルース・ゴフ氏の設計で作られた自宅「心遠館」が放火によって消失してしまったり、エツコさんに至っては根強い人種差別に晒されたり。
    それでもプライス夫妻はこれらの美術品を見たいと願う人々のために、尽力された過程が良く分かります。

    また、彼はこれらの美術品の鑑賞法として、その美術品が作られた当時のように、時間ごとに変化する自然光や、蝋燭のような揺らぐ明かりの中でそれらを鑑賞することが理想だと述べています。

    確かに美術館のような照明では見ることの出来ない、美しさを発見することができますね・・
    和蝋燭の明かりだけで見る襖絵の孔雀は、今にも動き出しそうでした。

    実際はそんなことはなかなか出来ませんけどね、火事になっては大変なので。

    私個人としてはプライス氏によって、若冲をはじめ多才な日本画家の作品の魅力を教えてもらえた気がします。

    内容の濃い本でした。


    「付喪神図」は本当に江戸時代の作品?と疑いたくなるようなユニークさと全体の構成が素晴らしいです。ほのぼのとしますね・・。

    「老松白鳳図」は細やかな羽の描き方、尾羽の模様がハートなんですよね・・。そして目の力・・凄いと思います。若冲は羽を描く時に紙の表だけではなく裏からも色を付けたりすることがあったそうです。繊細な羽の様子はそういった方法によるものと想像できます。

  • 裕福だからこそ。
    ではあるけれども、プライス氏がいなければ今日の若冲人気はなかっただろうし、私が葛蛇玉の「雪中松に兎・梅に鴉図屏風」の前で立ち尽くすこともなかったでしょう。日本人から見向きもされていなかった絵師や江戸時代絵画にこれほどまでに情熱を傾けて、しかもそのコレクションを自分のためではなく広く世の中に広めていくために惜しみない愛情を注いでいる。
    絵を美術館の無機質な光の中で見るのではなく、自然光のもとで見てこそ日本美術の良さがわかると展示方法にもこだわり、日本美術の素晴らしさを教えてくれるプライス氏。
    日本館建設にあたっての苦労話がとても興味深かった。次に建てるときは是非日本にお願いしたいと思うのですが、その後どうなんでしょうか。

    本人によるコレクション解説が面白かったです。呉春の幽霊図にまつわる話に思わずぞっとしました。

  • 年賀状のネタ(虎)を探している時に、ジュンク堂書店新宿店で発見。2006年から2007年にかけて全国を回った「プライス・コレクション 若冲と江戸絵画展」の展示品所蔵者である、ジョー・D・プライス氏と妻エツコさんへのインタビュー本。インターネットで若冲の絵を検索しているとよく出てくる「Etsuko & Joe Price Collection」というクレジットが気になり、謎解きの一端となればと思って購入した本書でしたが、大当たりでした。
    図版も載っていますが白黒なので、下記の展覧会ブログを参照しながら読むとおもしろさ倍増だと思います。
    http://f.hatena.ne.jp/jakuchu/

  • 2008.01.20.読了。

  • 特に若冲のコレクターとして有名なプライス氏の生い立ち、絵との出会い、絵に対する姿勢などをインタビュー形式で紹介している。<br>
    絵に対する姿勢については感動するものもあるけど、なにしろ生い立ちは古き良き時代のアメリカンドリーム具現者の大金持ちの放蕩息子そのもの。(笑)<br>
    親は不朽の傑作機といわれるDC-3を自家用機として乗り回し、あのフランク・ロイド・ライトに彼唯一の高層建築を建てさせ、自らは自家用帆船で世界の海を旅していたという。<br>
    まったくうらやましい限りの別世界の人という感じで引くわ。<br>
    (2007/12/20)

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