白鍵と黒鍵の間に: ピアニスト・エレジー銀座編

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093877893

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  • ジャス・ピアニストの南博さんの自伝的長編エッセイ。

    クラシックからジャズへ転向後、小岩のキャバレーから六本木を経て、銀座のナイトクラブを掛け持ち。そこから、バークリー音楽大学に留学するまでのエピソードが実にセンスよく書かれてある。

    銀座のナイトクラブにいたのは80年代後半。世はバブルのど真ん中。20代半ばから後半をそんな環境で過ごしていた文才のあるアーチストがその頃のことを書けば、面白くないはずがない。

    ほどよいユーモアで書かれた銀座の裏話の間からのぞく筆者の葛藤。誰も聴いていない自分のピアノ、でもアーチストとしては聞かせてなんぼじゃないのか。かなり悩んだはずなのに、この葛藤の書き方がとてもスマート。悲壮感を伴うような重さはなく、かと言って笑いをとるような軽さもなく。
    センスいいです。

  •  おどろくべき話だった。
     70年代、80年代、高度成長ど真ん中の銀座に戦後50年代のジャズ・シーンによく出てくるような異様な男女がうごめき、そのなかでキース・ジャレットに魅せられた20歳をすぎたばかりの若者が揉まれながら成長してゆくというのだから、昔の日活映画を地で行っているようなものだ。
     ジャズにしろ、紅テントにしろ、音楽や演劇を支えることができるのは、それが好きで好きで堪らない人間だけだということがよくわかる。

著者プロフィール

ジャズ・ピアニスト、作曲家、エッセイスト
1960年東京生まれ。1986年東京音楽大学器楽科打楽器専攻卒業。
ピアノを宅孝二、クリスチャン・ジェイコブ、スティーヴ・キューンに師事。1988年バークリー音楽大学から奨学金を得て渡米。ボストンを拠点に活動する。1991年バークリー音楽大学パフォーマンス課程修了。1990年代からはスイス、フランス、ドイツ、デンマークなどに活動の範囲を拡げ、ヨーロッパのミュージシャンと交流、ツアーを敢行。国内では自己のグループ「GO THERE」をメインに活動、綾戸智恵、菊地成孔、ジム・ブラック、クリス・スピード、与世山澄子との共演でも知られる。
文筆にも定評があり、著書に『白鍵と黒鍵の間に──ジャズピアニスト・エレジー 銀座編』(小学館文庫)、『鍵盤上のU.S.A.──ジャズピアニスト・エレジー アメリカ編』(小学館)、『マイ・フーリッシュ・ハート』(扶桑社)、『パリス──ジャポネピアニスト、パリを彷徨く』(駒草出版)がある。

「2021年 『音楽の黙示録 クラシックとジャズの対話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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