ぼくたちが聖書について知りたかったこと

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著者 : 池澤夏樹
  • 小学館 (2009年10月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093878470

ぼくたちが聖書について知りたかったことの感想・レビュー・書評

  • 比較宗教学の権威だという秋吉氏と、彼と血縁があるという池澤氏の対談。

    いや~、なかなか面白かった。
    第一部は聖書のいわゆる中身についての話がほとんどで、宗教関連はもちろん、西洋史の基礎知識も持ち合わせていないど素人の私にはかなりちんぷんかんぷん。こりゃ、通読は厳しいかな~と思ったのもつかの間、第二部、第三部と、現代社会との繋がりの部分に話が及ぶと、これがなかなかに興味深く、なるほど~と思わされることもしばしばであった。

    イスラエルとパレスチナの問題を、ヘブライの時代からの「無時間の空間で起きている」と捉えたのはすごくわかりやすかった。
    ヘブライ語には時制がなく、過去も現在も未来も並置されるとか、それには、砂漠の遊牧民には、私たちが感じるような季節の移り変わりや、予測可能な自然現象というものを捉える機会がないという風土の影響があるとか、とても説得力があった。だから彼らは何千年も前のことを、今の問題と同等に捉えて争い続けているのだ、と。
    やっぱり、文化や宗教にあたえる風土のもつ影響力は計り知れない。

    池澤氏は、「素人代表」とか「愚問賢答」とか謙遜されていたが、いやいやとんでもない、研究者である秋吉氏には劣るのかもしれないが、やはり宗教や西洋史についてのかなりの素地がある彼だからこその対談だと強く感じた。
    だって正真正銘ど素人私には、何のことやら、の話題が満載でしたよ…。
    多少はそのあたりの知識がある人の方が、より楽しめる著作ではないかな。

  • 全ての歴史書は記録であると同時に、政治的に綿密に計算された創作でもある?

    現代におけるユダヤ人の定義、
    ユダヤ人自らが直面した問題、
    母親がユダヤ人であること、
    サルトル ユダヤ人とは他の人々がユダヤ人だと思っている人間

    ユダと言う個人の名がユダヤという民族名と重なっていたのは偶然でしかなかった。
    キリスト教とはわざと混同して、イエス殺しの罪をユダヤ人全体に象徴的にかぶせた。

    神の失敗、神の理不尽、
    悪が栄え、正しい者が苦しまなければならないこの世、この世を作った神をどう説明するのか?

    なぜ全能の神は一気に悪魔をやっつけてしまわないのか?

  • クリスチャンの家に生まれた池澤夏樹が、聖書を信仰や歴史書として扱うのではなく、背景の思想を読み解くために、親類の比較宗教学者である秋吉輝雄の対談をまとめたのが本書である。

    キリストの母、マリアの処女懐妊は、聖書がヘブライ語の「乙女」をギリシア語に翻訳するときに生まれた新しい解釈であった、という有名な話を筆頭に、聖書にまつわる様々な矛盾や謎を解き明かす。

    ピンポイントな翻訳上の問題だけではなく、思想の違いが聖書の流れを大きく変えているという。新約聖書がギリシア語に翻訳されたときに聖書の編纂にも論理的で二元論的なヘレニズムの思想が入ることとなった。ところが元来、旧約聖書の世界、すなわち古代のユダヤ教には、砂漠の遊牧民としての思想や、過去形の存在しないヘブライ語の時制の問題といった、ギリシア語とは大きく異なる"ヘブライズム"が存在した。この違いが旧約聖書と新約聖書の記述の間に矛盾の痕跡を残すこととなった、という指摘は興味深かった。

    また、旧約聖書が編纂された前後の時代背景と、現代のイスラエルの姿から、ユダヤの律法やキリスト教の関係を読み解いており、なかなか面白かった。

    少なくとも私の印象では、日本では、キリスト教とユダヤ教は、現代の西洋的な科学的価値観を作ったと考えられることが多いと思う。しかし、それぞれの思想は実は互いに大きく異なっており、それを組み合わせて作られたのが科学的思想である、という指摘には唸った。
    秋吉の指摘によれば、、ヘブライズムは、「矛盾を恐れずに、比較して、矛盾の中になにがあるのかと疑問をもつ相対主義的な価値観。1+1=3でも良い。」一方、ヘレニズムは、「定義を決めて合わないものを排除していく。1+1=2」の価値観である。曰く、"相対主義が科学の基本的な立場を支える一つの柱だと思います。比較により、対立概念を出し、そしてそれをアウフヘーベン(止揚)して定義を立てる"のが科学である、ということだ。

    このように言われると、なんだか納得できそうな気もするが、これはもう少し考えてみたい議題である。

  • やや難解。
    花を運ぶ妹 が壮絶だったので、どんな宗教観をお持ちなのだろうかという興味で読んでみたのだけど、
    宗教哲学、文化人類学、風土(和辻哲郎)、比較宗教学と、学生の時に取っていた講義(すべて必修じゃない;笑)にドンピシャの懐かしい感じのする対談本でした。

    信仰は魂の問題であり、宗教は知識である。
    まえがきの池澤氏の宗教への関わり方に、共感しました。
    そして、信仰を持ちながら宗教の研究をし、内包されている多くの矛盾を冷静に分析する秋吉輝男氏が何気に神々しいです。(笑)

  • 池上彰 世界を変えた10冊の本より

    目次
    まえがき
    第一部 聖書とは何か?
    ・聖書はなぜ今日まで残ったのか?
    ・朗桶によって聖性が保たれた
    ・ヘブライ語には過去形がない
    ・旧約聖書の「旧」とは何か?
    ・セム・ハム語族のメンタリティー
    ・「続編」・「外典」とは?
    ・「クラーン」には翻訳がない
    ・ユダヤ教における聖書の正典化
    ・聖書に入れるか否かが問題になった「雅歌」
    ・キリスト教における聖書の正典化
    ・「原罪」とは何か?
    ・「エデンの園」は楽園ではない?
    ・イエスが「最後の晩餐」で飲んだ飲み物は?
    ・神が最初に創ったのは何か?
    ・「マルコ」のイエス像と「マタイ」のイエス像
    ・「マタイの福音書」の系図の意味
    ・メシアとしてのイエス
    ・対立したものをそのまま並置する古代ユダヤ人
    ・語り物としての聖書
    ・神の言葉を記す文字
    ・聖書のリズム


    第二部 ユダヤ人とは何者か?
    ・ユダヤ人の定義とは?
    ・ユダヤ人教師としてのイエス
    ・世界宗教へと向かったキリスト教
    ・ヤハウェによって結び付いた宗教連合
    ・「バビロン捕囚」の歴史的意味
    ・「ヘブル・ヘブライ」という名前
    ・「イスラエル」という名前
    ・「ユダ」とい名前
    ・民族のアイデンティティを保つための聖書
    ・現代ユダヤ人の定義とは?
    ・なぜ「イスラエル」共和国なのか
    ・伝統から切り離された現代ユダヤ人
    ・本の語源は「数える」
    ・神の名を口にしてはならない
    ・誤読から生まれた「エホバ」
    ・なぜ神は唯一なのか?
    ・一神教を生んだヨシヤ王の宗教改革
    ・厳格な食生活は誤訳から始まった?
    ・「ルカによる福音書」におけるイエスの脱ユダヤ化
    ・千石イエスと初期キリスト教団
    ・カトリシズムと異端審問
    ・ユダヤ人になるには?
    ・新語の取り入れに苦労する現代ヘブライ語
    ・ユダヤ人のなかに流れる時間
    ・イサクの奉献とテロリストの心理
    ・神の理不尽を問う「ヨブ記」
    ・歴史の中の「ユダヤ」と「イスラエル」
    ・連綿と続くディアスポラの伝統
    ・日本人の他者意識とブーバーの『我と汝』
    ・日本人のユダヤ人像

    第三部 最初と現代社会
    ・「六日戦争」に遭遇して
    ・無時間の空間で対立するイスラエルとパレスチナ
    ・軍備放棄の思想に共感した「ビールー団」
    ・安息日に戦争してもよいか?
    ・他人の家の夕飯は食べない
    ・食のタブーと信仰の自由
    ・現代に生きるトーラー(律法)
    ・民族文学全集としての聖書
    ・矛盾は矛盾のままに
    ・『風土』と歴史記述
    ・弁証法の起源
    ・「おとめマリア」か「処女マリア」か?
    ・聖書の中の自然観・宇宙観
    ・科学とキリスト教の役割
    ・「科学」という名のバベルの塔
    ・利子を取るのは不正なことか?
    ・カルヴィニズムとネオリベラリズム
    ・臓器移植とユダヤ教
    ・エデンの園の「知恵の実」の正体
    ・「永遠のいのち」は喜びなのか?
    ・エバは「生きる源」
    ・拡大された定冠詞としての神
    ・アダムの以前に人はいたのか?
    ・聖書の「原本」ほ存在するのか?
    ・聖書のなかの女性たち
    ・イエスをめぐるマリアたち
    ・『タヴィンチ・コード』と真のイエス像
    ・ユダの復権を促す「ユダの福音書」
    ・「ユダの福音書」とグノーシス主義
    ・エデンの園の蛇の弁明
    ・人類の叡智が織り上げたタペストリー

    あとがき

    コラム
    ・「旧約」と「新約」
    ・セプトゥアギンタ
    ・正典・外典・偽典・続編
    ・聖書の日本語訳
    ・バビロン捕囚
    ・教父アウグスティヌス
    ・聖書の原語
    ・グノーシス主義とマルキオン派

  • 聖書について、素人と称する著者とその筋の教授の対話形式で書かれた本。
    著者の疑問は私なども同様の疑問であった。
    途中、知識不足で理解できない箇所もあったが、聖書についての大まかなことから、細かい部分を取り上げ説明された。

    ユダヤ教、キリスト教、イスラム教が一神教であり、その中でも迫害を受けていたユダヤ教から他の2つが派生し、そのため聖書の基本はユダヤ教から生まれている。このあたりから知らなかった自分としては勉強になった。
    モーゼの十戒以外にも様々な十戒があること、旧約聖書、新約聖書について、原罪など基本的なことなど、多岐にわたり説明がある。
    アメリカ人、日本人と言えばわかるが、ユダヤという国はないのにユダヤ人というのはどういうことか、この本を読んで初めて気付かされた。

    聖書は、誤訳や、時代の流れよって解釈が変遷している。そういうなところが奥深さを生みだし信仰されている理由かと感じた。

  • 聖書は一度ちゃんと読んでみたい。読みやすく書かれたものではわからないみたい。子どもの頃に読んだイソップ物語が妙に説教くさかったみたいに。

  • 古代ユダヤ人は、対立する複数意見を1つにまとめて統一見解とする替りに、すべての意見を受け入れて多元的に並列しておく。J資料とP資料の混在理由はこれだったのかと納得!
    ヘブライ語は時制によって動詞が変化することがない。だから過去と今が並列している。
    時間の並列性と異説の並列性。
    ギリシア・ローマのように統一思想でなく、多元的な価値観を融通させるメンタリティーをもっている。
    西洋やアジアとは全く異なった精神構造で聖書を読むと、今までと全く違った世界が見える。

  • <特記>
    律法を記録する文字は、古代ヘブライ文字ではなく、カルデア文字が使用された。
    古典ヘブライ語には過去形がない。
    ヘレニズム時代にヘブライ語聖書をギリシャ語に翻訳する必要が生じて、そこにおいて、時制を持つギリシャ語によって、過去から未来という時間軸に載せられた。
    古代ヘブライ語には「歴史」という言葉がない。
    現代ヘブライ語は、ドイツ語を日常語としていたアシュケナジー系ユダヤ人がつくったので、時制を持っている。
    隣人を自分自身のように愛せは、自分のような隣人を愛せ、という意味。
    正統派ユダヤ教徒では、今でも輸血禁止である

  •  旧約、そして新約聖書へ。ユダヤ教からいかにしてキリスト教がうまれ、どのようにして拡がっていったのかということ。聖書を綴るヘブライ語、この言葉がもつ「過去形がない」という独特の性質のこと。その背景になったと思われる、砂漠の気候について。あるいは、聖書の不変性がどこからやってきたのかということ。朗誦によって、一言一句たがわず語られることこそが肝心であるとされた聖典、祭祀のありかた。イスラムにおける厳格な食事の既定、安息日にしてはならないとされること。あるいはユダヤ人とはどういう存在なのかということ。

     聖書学の秋吉輝雄教授と池澤夏樹氏の対談をまとめた一冊。宗教や信仰についての本ではなく、聖書という書物とそれをめぐる歴史、文化についての本です。
     まったく聖書に関する知識のないところから読み始めるとして、丁寧に読み解いていこうとすると、やや難解かも。けれど、じっくり読むと、とても興味深いです。

     わたしの場合は、聖書そのものについての関心を満たすというよりも、どうしてこういう書物が生まれて、ほとんど内容のかわらないまま、何千年ものあいだずっと読み継がれてきたのかということ、その背景や、あるいは根源にあるものに、思いをめぐらせることそのものが、とても面白かった。

     その土地の、気候や風土が、その民族の言葉を育む。その言葉の性質や暮らしのあり方が、聖典や信仰のあり方を形作る。世界を、人々を形作る、数え切れない要素。気候、風土、生態系、食文化、信仰、言語、文字、伝承、規範、技術、発明、歴史。民族のメンタリティと、そのメンタリティを作った土台、環境。
     世界のつくりというものは、とても緻密で、複雑で、多様で、因果の糸が絡まりあっていて、一人の人間の頭では、とても理解しきれるものではない。ないのだけれど、その一端を垣間みたと思うときの、その感覚が好きです。

  • 表現が回りくどい、僕たちがじゃなくて僕がって話だ。

  • 聖書とはいったいなんなのか、何がかかれているのか、どんな書だったのか、そんな僕たち日本人の疑問に正面から取り組んだ秀作。

  • 聖書がなんなのか、いつかきちんと向き合いたいと思った。
    ユダヤの歴史、そしてキリスト教のひろがり
    それを伝え広める人々の軌跡が聖書なのではないかと。
    キリストの中に、人々の息遣いを感じる世界のベストセラーは
    一生のテーマです。

  • 芥川賞作家である著者と、旧約聖書、ヘブライ語、古代イスラエル宗教思想史の研究者である秋吉輝雄氏の対談集です。
    歴史・民族・文化・言語・思想・思考法など、いろいろな切り口から、聖書の成り立ちを語り、イスラエルとは何か?ユダヤ人とは何か?を解き明かしてくれます。旧約聖書とユダヤ教が話題の中心で、かなり専門的なお話もあって、理解しにくい部分も多々ありましたが、これまで読んできた入門書の類とはまた違った視点で、聖書の奥深さを知ることができました。
    ヘブライ的なものの考え方とヘレニズム的なもの、その思考法がかなり異なるということには驚かされましたし、国を持たないユダヤ人が、何千年ものあいだユダヤ人であることのアイデンティティーを保ってこられたのはどうしてなのか?そのあたりのことが、ちょっとわかったような気がします。

  • 八百万の神とフレンドリーな日本人にとっては、欧米人の信ずるキリスト教、ましてや、ユダヤのことに関しては、想像を絶する世界である。
    そんな素人が読む入門書として相応しい一冊である。
    素人の役回りが池澤夏樹氏、日本人にとってミステリアスな世界の疑問点について比較宗教学の権威である秋吉輝雄氏に聞きながらその答えを綴ったものがこの書物なのである。
    池澤氏はギリシャ、フランスに定住するなどヨーロッパ社会に対する造詣も深い、片や、秋吉氏は、ヘブライ大学に留学、旧約聖書、ヘブライ語、古代イスラエル宗教思想史の研究者だ。
    そして、親戚関係があり、池澤氏が兄と仰ぐ秋吉氏に聞きだすという形式がいい。
    入門書として爽やかに読み続けられる一冊であった。

  • 第1部 聖書とは何か?
    第2部 ユダヤ人とは何者か?
    第3部 聖書と現代社会
    ヘブライの特徴とユダヤがつながり、それはイスラムにも通じるというのが、興味深かった。

  • 知っているようで知らないのが、キリスト教であり、聖書です(アメリカやヨーロッパもそうですね)。聖書やキリスト教に興味をお持ちの方、それだけでなく、欧米を深いところから理解したいという方にお薦めしたいのが本書です。

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ぼくたちが聖書について知りたかったことの作品紹介

秋吉輝雄教授(聖書学)との対話。「ぼくにとって宗教は知識だ。素人代表として、ぼくは碩学の門を叩いた」。その成り立ちから現代社会との関わりまで、いま、人類最大のベストセラーを読みほどく。

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