訪問診療専門クリニックを開業している医師が、自身が看取った患者さんの最期までの事実を元に書かれた内容と、自宅で亡くなるという事について自らの考えをはっきりと書いている本。
すでに高齢の親と、自分の老後の準備を始めなければならない年齢で、常に不安に感じていた事が現実として迫って来ているのだと感じざるを得なかった。自分自身、家で身内を看取った経験がなく、気持ちの面や金銭面で親を在宅のまま看取るという事は難しい。また自分自身の最期を家で迎えたいと考えたとしても、家族に迷惑を掛けてしまいそうでそれもたぶん言えない。著者の考えのような医師が増えて、昔のように家で最期を迎える事がそんなに難しい事でなくなればいいのにと思う。
医療について決して優しいシステムではないと思われるこの国で、厚生労働省の国民医療費抑制策はあまりに冷たい。医者にとっては負け戦だからと、治る見込みがないと判断した患者の入院を断るなど言葉も出ない。また歳を取れば体が弱くなるのは当然の事でもあるのにと、どうしても冷たく感じてしまう。患者側に立って考えられる人が医者なのではないかと思うのだが。死に場所をなくしてしまう不安まで抱えたくない。面倒な問題は山積みにされたまま解決する事なく先送りされ、その結果としての切り捨てだけはやめてもらいたい。
難しい医学用語と思われる言葉も丁寧に説明されていて、とてもわかりやすく読める本。若い人もいつかは必ず高齢になるのだから、今より深刻になるであろう高齢化に備えて読む事をお勧めする。