- Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093881043
感想・レビュー・書評
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お国のため
2023年では国際イベントで民間の一職人からこの言葉は出ない。
どこかで変わってしまったんだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1964年東京オリンピックをチャンスに変えた人たちの列伝。オリンピックでは儲けようとせず、がむしゃらに全力を注いで、その先のより大きなビジネスチャンスにつなげていったベンチャー企業の手法なので、成熟しきった企業が2020年のオリンピックに取る手法ではないモデルであることがわかった。次は2012年のロンドンオリンピックを研究するか…。
まぁそんなことは置いておけば、熱くて冷静な人たちが続々出てきて、田口トモロヲのナレーション付きで聞きたくなるエピソードが満載だった。
まずはポスターを作った亀倉雄策。グラフィックデザイナーという職業を世に知らしめた人。グラフィックデザインを超えたデザイン活動をしていて、今の時代のデザインの定義(デザイナーは政治家)を先取りしている。
記録映画「東京オリンピック」を撮った人たちのエピソードにもかなりの筆を割いている。この映画は市川崑監督で有名だけど、創作と違い、天気待ちややり直しがきかない記録映画は、ニュース映画を撮ってきたカメラマンたちの感覚と力量が必要。市川監督と彼ら誇り高い職人の関係、所作は読んでいて惚れ惚れするが、ニュース映画はテレビに取って代わられ、滅びてしまった。東京オリンピックは彼らが最後に輝いた場所だった。女子800mをワンカットで撮影した山口益夫が可愛い。男子マラソン、アベベ独走で彼ばかり追いかける羽目になった中継車の話は先日の「映像の20世紀」で見たけど、その後、2位の円谷を追うためにバックで1キロも戻った撮影車(指示を出したのは山口)の話にはビックリ。ちなみにアベベと女子体操チャスラフスカは撮り直したとのこと。編集を担当した和田夏十さんのセンスに感心。
デザインの話では、ピクトグラム普及のために勝見勝の依頼により著作権を放棄した(させられた)デザイナーたちのエピソードも感慨深い。ほか、帝国ホテルの村上信夫を始めとする選手村の食堂の話、IBMによる記録速報の話、セコムの前身日本警備保障(初に民間警備会社)の話など。どれもちょっと聞いたことある話が綺麗にまとまっていて面白かった。 -
競技そのものではなく、ソフト的な革新に焦点を当ててる点が新鮮。
あと7年、どんなことが起こるか期待させる。 -
東京オリンピックの裏方に関わった人達のプロジェクトXみたいな内容。
その時代にはまだ馴染みがない業界の人達を取り上げており、それぞれの業界の黎明期が描かれていて面白かった。 -
東京オリンピック以前と以後で日本の姿が一変したというのが著者のメッセージ。日本人が時間に正確だというのはオリンピック以後のことだという。オリンピックという絶対的な〆切を守るため、建築業界、デザイン業界、飲食業界とあらゆる産業が時間に追われて仕事をしていた。そしてオリンピックに関わった産業のリーダーは「〆切を守る」ということを骨の髄まで染みこませた。日本は官僚型組織のため隅々までその精神が行き届いた。
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東京オリンピックの公式ポスターをデザインした男。その男の下で数々のデザインを手がけた男たち。選手村の食事を手がけたホテルの料理長。会場などの警備を任された民間初の警備会社。数々の記録処理を行うシステムを開発したコンピュータ会社。そしてこのオリンピックの公式記録映画の製作に関わった男たち。彼らは、華やかなスポーツの祭典を陰から支え、大会の成功の一翼を担った。亀倉氏らのデザインのエピソードと同じぐらいのボリュームで、他のパートについても読みたかった。
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ヒトモノカネなどの「ないもの」を冷静に判断して機をみてはじめる→現代
ないのが当たり前なので機が熟したらやるなんて呑気?なことをいわずに、いまやるんだ、なくてもやるんだ、工夫でやるんだ、という時代のお話。
小理屈も大事だけど、がむしゃらにやる、ということがこんなに大事なんだと痛感。昭和の「坂の上の雲」といえる。
311は平成の坂の上の雲な気分を生み出せるだろうか?