真の文明は人を殺さず: 田中正造の言葉に学ぶ明日の日本

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093882088

作品紹介・あらすじ

今こそ、明日への指針に田中正造の言葉を

東日本大震災と原発事故を受けて、今、日本社会では、文明観の転換の必要性がさまざまに議論されている。これまでのような効率(経済合理性)と便利さ・快適さを追求する文明のありようを根本から変革することなしに、今後の日本はありえないだろう。この問題を考えるときに必要なのは、先人の思想に学ぶことである。とりわけ、今から約100年前に田中正造が主張した「真の文明」論が、非常に参考になる。
「真の文明は山を荒さず 川を荒さず 村を破らず 人を殺さざるべし」
田中正造がおよそ100年前に記したことばであるが、明治以来私たちが追求し、謳歌してきた近代文明とは、自然をコントロールできると考えてきた「文明」であったが、今こそ謙虚に、近代文明そのものに対する痛烈な批判を含んだ田中正造の思想に耳を傾け、自らに生き方をもういちど問うことで、あらたな生き方が見いだせるのではないか、そして、その道筋を見つけ出す助けになればというのが本書の狙いでもある。「真の文明」について考え続けた田中の思想の軌跡をたどっていく本書を読むことで現実に向き合って生きるための準備となるだろう。

感想・レビュー・書評

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  • 「一身以て公共に尽くす」と私利私欲をかなぐり捨て、政治家を辞してまで日本最初の公害問題となった足尾鉱毒事件に奔走した田中正造。日記や書簡などを紐解きながら、言葉を解釈し真の文明の重要性を現代に問いかける。

    ストイックなまでな生きざまを描いた小説で『辛酸』っていうのがあったように思う?
    本書に、 「真の文明は 山を荒らさず 村を破らず 人を殺さざるべし」と記されていた。2011年3.11に東日本を襲った未曾有の大震災及び福島原発事故があった後だけに、心にずっしりと重くのしかかる。

  • 田中正造の思想は確かに素晴らしいのかもしれないが(本書だけでは断片的すぎて全体像を把握できないが),行動に関してはもう少々スマートになってもいいんではないかと思ってしまうな。

    田中正造はなかなか面白い人だということは分かった。こういう政治家はいいね。

  • 「真の文明は山を荒さず 川を荒さず 村を破らず 人を殺さざるべし」

    今から100年前の田中正造の言葉。なんだか原発ともつながる。

    田中の素朴な天皇崇拝の背景には、天皇が森や田、水の神であったから。しかし、なぜ田中正造は素朴な天皇崇拝からキリスト教に行かざるをえなかったのか?その山や田を救うべきものが救わなかったからだ。

    田中の一本気な正義感に憧れる。このように生きたいと。

  • 自然と折り合いをつける。公共への意識。
    人間はいつから驕り過ぎてしまったのだろうか。

  • 氏は、民衆による自治こそ、已得権であり、
    国家は、これを如何なる場合も侵してはならぬと、考えていたようだ。

    国家は、民衆が幸せになる可能性を持っていればこそ、その力を発揮できるのであり、
    出来得る限り、民衆は生活するその場を協力によって治めるのが第一、
    国家は、その限界を超える難題にのみ資材、財源を助力する。
    あくまで材の提供であって、その業には、一切の口出しをしてはならぬ、と。

    権威主義から人間主義への価値の変換を、解釈の理解に留めておかず、今いるその場所において、行動し実現する事を、自らの活動と言論において終生世に訴えた。

    誰よりも政治の可能性を信じ、誰よりも舌鋒鋭く現状のていたらくを批判し続けた氏。

    返す刀で、国家の主としての民衆の自覚と政治の監督、自らの責任における共生自治の必要を訴えた氏。

    帝国主義の土俵にて、文明国家よ、一等国よと、浮かれるの愚かさを歎き、
    英知を磨くは何のためかを自らに常に問い続けよと訴える。
    米粒ひとつ育てられぬ身でありながら、知識の収集に明け暮れるだけで吾賢しと臆面もなく宣い、民衆を教導せんと傍若無人に振舞う姿を軽薄なる輩と、蔑む。

    志ある若き学士は、勇んで国土の内外を問わず、飛び込み分け入り、民衆の声を拾い上げ、くみ取り、民衆と共に泥だらけになりながら、民衆の幸福を構築する支えとなれと、叫ぶ。

    あらゆる国において、青年が駆けずり回って、一切の武力放棄を啓蒙し、以て言論による対話に拠って世界平和と人類万年の発展に貢献することは、
    日本のたとえ小国なるも、
    むしろ極東にてあればこそ、
    その使命の役割を期待する氏。

    100年以上の時を経て、未だ文明の根本的価値の転換を果たせない現在、
    今一度、先達の生き様から勇気を得て、
    自身の出世の本懐を見つめ直したい。

  • 2011年10月28日、読了。

    東北の人々が甚大な被害を受けた東北大地震後の政治家や学者の対応が、実に足尾銅山に端を発する病や水俣病に際してのそれと酷似していたことがよく分かる本であった。足尾鉱山の際も、当時の政治家は都合の悪い事実は隠ぺいし、学者は事実を語ることなく、世間へ有益な情報を教授するわけでもなく、内へ内へとベクトルが向いていた。放射能も鉱山から垂れ流された有害物質も、目に見えないという点で全く同じ。私達がこの事件から学ぶ事は多い。

    そして、田中正造がいかに素晴らしい政治家であったかを知った。勝海舟をして総理大臣に適任と言わしめる懐の深さ。書物で得る知識に重きを置かず、70歳の高齢であっても半年弱の間に1800キロ近くも練り歩いて実地調査を行った情熱。また、公共のために生きると決意し、大貧乏人となって日本に貢献しようと決意する男前ぶり。自らの私利私欲を満たすべく銭を稼ぐ事を辞めると誓った男の決意は、彼の行動に端的に表れている。

    そしてこの本を読むなかで一番印象に残ったのが、日本の「大国」に対する固持に関しての批判である。日本は経済大国、健康大国と、日本の国土の小ささをコンプレックスとし、それを覆すべく様々な手を打ってきた。しかし、日本はスイスを見習い、国民生活の豊かさや教育の普及、民主主義の徹底、地方分権の実現などを目指そう。国連安保理の常任理事国を目指すものじゃない。目指すべきは他の国に迷惑をかけない、奥ゆかしいただずまいの日本。このメッセージは、田中正造が天国で感じている二違いないメッセージであろう。

    学ぶ事が非常に多い書物であった。温故知新。

    星五つ!

  • お薦め!

    http://glorytogod.blog136.fc2.com/blog-entry-976.html

    「真の文明は山を荒さず 川を荒さず 村を破らず 人を殺さざるべし」
    約100年前の田中正造の言葉。
    文明や政治について、田中正造が残した言葉をひもときながら、3・11後の日本の在り方について、示唆を与えている。

    今、田中正造の言葉を読んでも、いかに現代にも通用するか、いかに見る目があったのかよく分かる。
    また、当時も今も政治家・官僚ともいうものが全然変わっていないのだなとよく分かる。

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