三つ星レストランの作り方: 史上最速でミシュラン三つ星を獲得した天才シェフの物語

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 69
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093882118

作品紹介・あらすじ

開業から1年5ヶ月、史上最速でミシュラン三つ星を獲得した天才シェフ・米田肇の物語。

感想・レビュー・書評

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  •  文字のフォント、レイアウト、表紙と天地小口が揃った装丁、よく考えられている非常に美しい本だ。著者の文章も洗練されていて語り口がよかった。前半は著者が前に出てきていて、米田の過去に対して、現在の状況との繋げ方が良いことを言おうと、細部まで読めているんだよという感じがして邪魔にも思ったが、フランス料理の本だから、綺麗にまとめたいのかなと納得した。後半では、面倒になっただけかもしれないが、そういうことも無くスルスル読めた。少し厳しいことを書いたが、全体的に、インタビュー、米田の歴史、著者の想像のバランスが非常に良くて、上手く纏まっていた。
     ミシュラン三つ星をとった米田肇の生涯について書かれている。著者のことも、米田肇のことも何も知らずに読んだ。
     米田は、小学生の頃から一流の料理人になりたいと思っていた。だが、小中学校は喧嘩に明け暮れ、高校は数学ばかりをして、絵や数学が得意だから美大や数学科に行けと言われても興味がない。大学時代は空手に打ち込むが、人と同じ練習はしたがらず試合にも出ない、だけどスパーリングは強い。だからといって格闘家になりたいとは思ってなかった。米田の夢は子供の頃からフランス料理人だった。その割に普段は料理はしないし、軽い料理はしても、他人の真似はしたくないからレシピは見ないので不味いものしか出来なかったという不思議な男だ。普通なら料理人になる人は料理が大好きで、普段からたくさん料理をして、10代のうちに料理学校に入るのが当たり前だろう。小説家になりたいけど小説は書いていないと言っている人は見るが、大体は何にもなれずに終わる。米田は会社に勤めるが、金を貯めて数年で辞めて料理学校に入る、そこからの米田の努力は凄い。寝ても覚めても料理のことした考えず、休みの日は星のついたレストランを周り、毎日夜にはその日に思いついたことや、食べた物の感想をスケッチなどをしながらノートにまとめる。そのノートを見た著者は、戦時中のパイロットが書いた緻密なノートに似ていると思ったという。その後にフランス料理のレストランで働き始めたり、フランスにに渡り修行をして忙しい中で学んでいく。そして自分の店を持ち、ミシュラン三つ星を獲得する。天才の生き方とは常軌を逸しているというのを、見事なまでに表している男だ。
     ミシュランの三つ星なんてもの以前に、フランス料理を食べたことがないので、想像でしか分かりはしない。イメージでは大きな皿に絵画のような料理が少し乗っている。本書、最初のカラーページの米田の料理も、そのような感じで見た目で味が想像できるものは一つもない。パッと見では美しいが美味しいかどうかわからないのが、フランス料理に対する感覚だった。
     「できれば、店のドアの取っ手の温度も調節したい」と語る米田は、鯖を使うときに、口中の温度と鯖の油の融解温度を合わせて、あたかも口でとろけるように作り出す。鴨肉に振る塩はピンセットでのせて、客が切る順番に則すように量を調整する。絶妙な加減で作り出される料理は、ただ美味しいだけでなく感動を生むという。そのような料理を、常軌を逸した人が作り出すこだわりのある料理を、食べることでしか鑑賞できない芸術を、一度は味わってみたいと思った。

  • 印象的な箇所のまとめ。

    ・難しいということは不可能ではないということ。
    ・科学的に研究する。
    ・全てを自分の仕事ととらえる。全てに高い基準を持つ。
    ・完璧だと思ったらそれはもう完璧じゃない。
    ・あがき続ける。
    ・人間が作り出すあらゆるモノのクオリティは最後の最後でどれだけ努力できたかで決まる。これで完璧だと思ったところから、さらに積み重ねた努力がクオリティの差になる。この努力に終わりはない。
    ・模倣は通用しない。物真似だったら評価されない。自分の料理で勝負する。
    ・お客様のおいしいを鵜呑みにしちゃいけない。感動しましたなら喜んでいいかもしれない。お客様を感動させられなっかたら負け。
    ・三ツ星レストランの共通点を理解する。相違点は店の個性。全て重なる部分を確実に自分のものにする。
    ・自分の根源から作る。
    ・フランス料理とは何かというおそらく誰にも答えられない問題を考え続ける。革新的になればなるほどそうする必要がある。
    ・最後の晩餐では自分の料理を食べたい。そう思えるように日々料理を作っていく。

  • 米田肇という料理人が三ツ星を獲得するまでの紆余曲折は本当にドラマチック。「これで完璧だと思ったら、それはもう完璧ではない」ってストイックな世界ですね。いつか彼の料理を食べてみたいものです。

    彼のパーソナリティを形成した子供時代やご両親の姿もなかなか読み応えがあります。

  • 本書は、子供の頃の夢を叶えるため脱サラからシェフの世界へ飛び込み、37歳にしてレストランをオープン。1年5ヵ月後にはミシュラン三つ星を獲得した米田肇の半生が綴られている。一皿毎に込められたメッセージは『美味しい!』『きれい』などと言う次元ではなく、料理は繊細で芸術的である。現代料理の驚くべき美の世界がある。また著者の美しい文章表現にも心奪われるところも本書のスパイスになっている。

  • 2012年に読んだノンフィクションの中では抜群に面白かった。フランス料理のシェフとして開業からミシュラン史上最短記録の1年5ヶ月で三ツ星を獲得した日本人・米田肇。一旦メーカーに就職した後で本格的にフランス料理の修行を始めた経歴も異端ながら、他の料理人達も同様かも知れないが壮絶な日仏での修行期間の様子が何とも劇的だった。修行中の勉強ぶりや「ドアノブの温度も調節したい」(まだ実現していないが)と真剣にいうほどの徹底した追求姿勢は常人ではないものを感じて鳥肌が立つ。余談だが本の装丁も凝っていて美しい。

  • 一流の料理人になるとは?米田さんしかなし得ない、才能と凄絶な努力の半生記。いつか食べてみたい。

  • 素材はいいのに、要らぬ比喩が満載で。

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