さわり: 天才琵琶師「鶴田錦史」その数奇な人生

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093882156

感想・レビュー・書評

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  • 武満徹のルポでノヴェンバーステップスの琵琶奏者として登場して気になった人物だったので読んでみた。
    鶴田本人の価値軸として美醜が重要でそれがコンプレックスになっているらしいとはいえ、著者の書き方や冒頭の写真の置き方も人の容貌に焦点があたりすぎていて古臭いしつらい。芸能人は人気商売だから女性なら容姿がモノを言うのは止むなく、美人の師匠の二番手に甘んじ無ければならなかった不本意さがこの人のパワーになっている。とは言えテレビはなかったのだから今よりは芸の道でやりようはあったと思うのだが。美人の師匠も当時ならではの悲惨な境遇ながら、魅力的な人物として描かれており、その面でも勝てない気持ちだったかも。
    ホンキで事にあたることの素晴らしさを実感させてくれる人物。
    戦前の日本の音楽状況が戦後とまるきり違うことが発見でき意外だった。

  • フリーライター佐宮圭氏が書いたノンフィクション『さわり』を読了。いまはあまり聞く事のない琵琶の音色だがその琵琶をあやつりまた歌もよくした天才琵琶師『鶴田錦史』さんのとても不思議な人生を描いたノンフィクションなのだが、一気に読めた。武満徹氏や小澤征二氏との出会いなども全く知らなかったのでお勉強になりました。こういったひとを歴史の中に踏めてしまわないよう、教育の中に取り入れられないものか?あまりノンフィクションは読まないのですが、これはおすすめです。

  • 度肝を抜かれる。

    鶴田錦史……全く知らなかった人物。
    明治44年生まれのこの人は、昨年、生誕百周年を迎えたという。
    亡くなって18年、私と重なる時代を生きていたのに、
    どうして何も知らずに来てしまったのかと悔やむ。

    男装の天才・琵琶師。
    子を捨て、女を捨て、一時は琵琶も捨てながら、
    実業家として成功し、美しい妻を得、
    そして、音楽家として世界中に認められた。
    常に、人生に対し、負けなかったこと、才覚を惜しまなかったことに
    この成功はある。

    ユーチューブで、武満徹作曲の出世作「ノヴェンバーステップス」を
    かつての成功の立役者・小澤征爾指揮による演奏を観て聴いた。

    難解な現代音楽界にあって、天才と呼ばれる彼の音楽は、私にとって耳なじんだ音楽とは違う。
    でも、息を詰めて、目を凝らし、集中して見入ってしまう力がそこにはあった。
    琵琶が打楽器であるとの認識を再確認した。

    タイトルの「さわり」は琵琶独特の響きのこと。
    日本人の感性は、わざと耳に「障る」ような、複雑な自然の音に近づけることでより美しさを感じ、琵琶はそれを最も重視しているのだとか。

    タイトルの意味がようやく呑み込めた。

    まだまだ知らないことばかり。

    著者自身が自らの想いによって追い求めたのではなく、
    出版社から頼まれて書き始めたテーマだからであろうか、
    さらりと読めるノンフィクション。

  • ノヴェンバー・ステップスを初演した琵琶奏者「鶴田錦史」のノンフィクション。幼い頃から天才少女として一家の家計を支え、結婚して子供に恵まれるも夫の浮気で離婚し、実業界に身を投じて水商売と金儲けの世界へ。
    なめられないようにとはじめた男装から、やがてとびきりの美女を従え、養女として事実上の妻を迎えるまでに。
    そして豊富な資金力をバックに、琵琶奏者として、男装のままカムバック。
    ノヴェンバー・ステップスの演奏場面は音楽の授業で見ましたが、ほんとうに男性とばかり思い込んでいました。これがノンフィクションであるとはにわかに信じがたい、インパクトのある一冊。

  • 題材としては最高なのによくできたレポート。
    まったく興味のなかった琵琶が戦前にこんなに人気があったとは知らなかった。それにこんなにドロドロしていて一人一人がキャラ立ちしてるとは!事実に驚きと興味をそそられた。なぜ?なぜ?と次々に出てくる疑問に答えはなく、不完全燃焼。

著者プロフィール

1964年、兵庫県尼崎市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、様々な職歴を経て、1993年、フリーライターとなる。学研『大人の科学マガジン』などでサイエンス・ライターとして、日経BP社『日経ビジネス』、日本経済新聞社『日本経済新聞電子版』などでビジネス・ライターとして活躍し、現在に至る。2010年『鶴田錦史伝―大正、昭和、平成を駆け抜けた男装の天才女流琵琶師の生涯』で第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。『さわり』として刊行。

「2022年 『台湾流通革命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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