あんぽん 孫正義伝

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著者 : 佐野眞一
  • 小学館 (2012年1月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093882316

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あんぽん 孫正義伝の感想・レビュー・書評

  • ここに書かれているのは我々が知ることがなかった孫正義一族の三代に渡る『海峡』の物語です。ありきたりなサクセスストーリーとは一線を画す『血と骨』を凌駕するような凄まじい「物語」の上に彼の存在があります。

    この本は2011年に週刊ポストに連載されていたものを中心として掲載後にあきらかになった事実を加筆したものです。雑誌に掲載されていた当時、僕はパラパラと飛び飛びに読んでいましたが、こうして単行本化されたものをじっくりと読むにつけ、ここ近年自分が読み進めてきた本の数々は、実はこの本を読むためにあったのではないかと錯覚してしまうほどでありました。

    『孫正義とは何者か?』ここに描かれている彼の姿は筆者の真骨頂による徹底した取材力で全4回の本人取材はもちろんのこと近親者への徹底した聞き込みや彼の一族のルーツである朝鮮半島の現地取材によって僕もある程度は読み込んでいましたが彼自身の華々しいコンピュータや通信事業を中心としたサクセスストーリーとは一線を画すような『血と骨』を中心とする梁石日の小説を地で行くような孫正義の理屈抜きの生々しい世界を抉り出しております。

    僕が読んでいてのっけから孫正義をして『無番地』と言わしめたバラックの中で豚に酒粕を食わせて育て、その豚をしめて正肉やホルモンをとって売り歩き、雨が降って豚の糞が浮かぶ水が床上や床下から浸水するところで孫正義はヒザまでその水に漬かりながら机にかじりついて勉強をしていた、というまことにもってみもふたもない『破壊力』抜群の話が全編にわたって描かれております。

    『孫正義本人も知らない孫正義』を描き出している、ということで、彼の人格形成をする上で決定的な影響を与えたといわれる父親の三憲や『海峡』を14歳で渡ってきてリアカーにドラム缶をつめて飲食店から残飯を集め、養豚や『頼母子講』という小口の金融業まで行った祖母の李元照の『仔豚に自分の乳を含ませて母乳を与えていた』というまさに常軌を逸したエピソードがものすごく印象に残っていてページをめくりながらその一つ一つに圧倒されてしまいました。

    『3.11』後の原発事故の際、孫正義は100億円の義捐金をポンと出し、その後も反原発、脱原発の旗を振り続ける彼の母方の叔父に、かつて日本の『国策』としてエネルギーを担っていた炭鉱で過酷な労働に従事し、筑豊炭鉱の爆発事故で命を落としたという箇所は以前読んだ山本作兵衛翁の書いた著作や画文集が本当に彼らの実態を類推するために非常に役立ちました。その中で事故の描写は作兵衛翁の事故の絵と自筆による解説の画文が頭の中にありありと思い浮かんできました。時は流れて日本の『国策』で推し進められた原発に反旗を翻す孫正義の姿に、すさまじいばかりの『縁』というかなんというか…。並々ならぬ深い『業』という一筋ならないものを感じて戦慄を憶えました。

    筆者は彼ら三代に渡る血脈を『魑魅魍魎』という言葉で表現しましたけれど、そうでもしなければ生きていくことが出来なかった彼らのことを想い、同じく『海峡』を渡ってきた半島にルーツを持っている人間の物語、僕は伊集院静、梁石日、そして柳美里の小説やエッセイに描かれている物語の数々を連想し、そうした『物語』を一身に体現した存在が孫正義なのだということを読んだ後に思いました。

    ありきたりの『成功物語』という範疇にはまずくくられることのない、『孫正義』という『怪物』の物語は筆者いわく『日本のスティーブ・ジョブズの物語を描きたい』という大願に沿うものであると思いました。僕はジョブズの評伝も読みましたけれど、彼のドラマチックな人生に勝るとも劣らないすさまじいばかりの三世代にもわたる人生の記録がここに記されております。

  •  孫正義は朝鮮部落生まれ、豚の糞尿と密売酒で家族は生計を立て、後に父親はパチンコ業界で大成する。著者が宣うには、この話を何度も繰り返すことに本書を出版した意味があるのだとか・・・孫正義の情報革命に関する本については山ほど出版されているので、それについて本書にはほぼほぼ記載なしって・・・知っていたら、この本は読まなかったわ(怒

  • 孫正義を生んだ環境が知りたくて読んだ本。
    ・サラ金やパチンコで一財をなし、商才があり、バイタリティーのある父三憲から、「お前は天才だ」と言われ続け、実地教育を通して帝王学を叩きこまれた
    ・過剰なまでの自信はどこから生まれたのでしょう?→親父が、際限のないレベルで僕を褒めたからでしょうね。「お前は俺より頭がいい」って。僕は親父に怒られたことが一度もないんです。
    ・中一の一学期で母と移住し、県内屈指の市立進学校に転校。子供の成長の為に、金銭,親の生活を度外視した協力が、感じ取られる。
    ・高一の二学期頭に、担任に渡米を相談。翌二月に渡米。英語学校を経てハイスクールに編入。その後大学入試検定試験に合格後、カレッジに入学。二年で修了後にカリフォルニア大学バークレー校経済学部に編入。
    ・アメリカ時代の孫が青春を思いっきり謳歌できたのは、父三憲からの潤沢な仕送りがあったからである。
    ・大学時代に「自動翻訳機」を発明。一億円の資金を手にしたことから、事業家人生がスタートする。
    ・幼稚園時期に朝鮮人差別を受けた、在日の劣等感の裏返しのコンプレックスが、上昇志向の原動力になった、とも考えられる。

  • 孫さんに興味津々だったので読んでみました。
    著者は話題の佐野さん。
    孫さんの人生と佐野さんの取材方法や発表方法の両方が面白い!2度おいしい作品でした。

    孫さんの生い立ちを先祖にまでさかのぼって解きほぐし、
    なぜ孫さんなる人物が誕生したのか、
    彼のルーツを探ることで孫さんがやってること・発言することの根幹にあるものはなんなのかを探ろうという1冊。

    とりあえず孫さんの源体験はすごい。
    小学生とか中学生のときには日本という社会の既存の枠組みで歯車になっては生きていけないことを強烈に自覚させられてる。
    私の源体験はなんだろう、と真面目に考え込んじゃった。

    そして孫さんの体験以上に実は今回面白いなと思ったのが佐野さん。
    佐野さんといえば橋下さんで燃えに燃えた人。
    まだ彼の執筆者としての人生は残っているのだろうか、ってくらい燃えた人。
    橋下さんの一件の是非は全く読んでないからわからないし、盗作疑惑についても全く読んでないからわかりません。

    ただ、この1冊はめちゃくちゃ面白いし、盗作はあり得ない。

    読みながら、確かにこの1冊も孫さんが抗議したっておかしくないかもな、とは思った。
    取材方法と取材対象があまりにディープなことが1つ。
    孫さんの一族とか関わった人、しかも孫さん自身というより孫さんのお父さんに関わった人、とかでちょっと遠い、みたいな人がいーっぱいでてきていろんなこと言ってる。
    本当よく孫さんこんなことまで書かれて何も抗議しなかったな、って感じ。
    むしろ孫さんすごーいって孫さんの人生よりもその対応に感服。

    もう1つは発表方法。
    彼は週刊誌で連載という形式で発表している。
    連載ってことはある情報が多面的に検討される前に世の中に発表される、ということでもある。
    この本の中でも連載で発表されて、「事実誤認だー!」って孫さんのお父さんが怒りくるってたり、新しい事実が出てきたりしている。
    彼としてはその当たりを期待して連載にしているのかもしれない。
    ということで本で読むにはいいのだけど、連載で1回だけ読むとすごーい偏った内容を読まされるかもしれないということ。

    あとは書き口?
    いわゆる優等生じゃないから、佐野さん、笑
    客観的な書き口でもないし、きれいな書き口でもない。
    週刊誌らしいスキャンダラスな言い方だったり、無駄に人の感情を煽るような言い方も多い。
    優等生的なジャーナリズムからは遠いよね。

    で、怒られたのかしら、と。

    なんというか、佐野さんって清濁併せ持つというか、いやもっとドロドロした世界を生き抜いてきたすごいグレーな人なんだろうな。
    とにかく世の中ではたたかれまくってる佐野さんですが、一読の価値はありありです。
    面白いです。
    読み手がフィルタリングすればよいのです。

  • 日本一、お金持ちで大企業の孫正義が、日本の最下層で生まれ育ったとは…。壮絶なイジメにもあっている。
    彼が生まれた頃は「もはや戦後ではない」といい、日本人の生活は豊かになってきていた時代であった。その裏に最低な生活をしていた人たちもいたのだ。
    今だに、孫正義に対して、人種差別な発言をする輩(前の都知事とか)が、たくさんいるらしいが情けないことだ。欧米ヘ行けば、日本人もしっかり人種差別されるのに…。そう言う輩こそ、この本を読みな!といいたい。
    ★をひとつ減らしたのは、孫正義のみの話じゃなく、孫一族の話が主だったから。

  • あの件で話題になった著者。
    孫氏の両親の祖父母のルーツまで調査に行かれている著者は、もともと出自が人生に大きく影響すると考えている方なんだなぁと感じた。(私は否定的だけど)
    くどいほどに「在日であるから」ということに焦点をあてている。

    私は311以降の孫氏の言動でファンになった。
    この著書でも後半のほうが好意的な文章になっている。(おそらく311以降)
    著者も少なからずファンになっているのかも。

  • 「豚の糞尿と密造酒の臭いが充満した佐賀県鳥栖駅前の
    朝鮮部落に生まれ、石を投げられて差別された在日の少年は
    、いまや日本の命運を握る存在までになった」
    (本文より)

    私は、昔から偉人伝、伝記が大好きなんですが、
    ま、、、ここまで1人の人間の半生を生々しく描いた本は
    読んだ事ないですね。
    壮絶な内容ですね。

    「強い人」ですね、孫さんは。
    ま、読むだけで勇気づけられる内容です。

    笑いもあり、涙もあり、、、
    特に「第5章 脱原発のルーツを追って」の箇所は涙が
    出てきましたね~。

    そうそう、この本を読むと多くの人は、
    正義さんより、正義さんのお父さんの三憲さんに会いたく
    なるんじゃないですかね(苦笑)

  • 生きた評伝って難しいよ それが成立した本

    佐野さんの本は、敵も作るだろうなあと別海を読んで思っていた。
    取材協力した方が読んだら、ここまで書くのか、と思わざるを得ないようなことまで書くので。

    生きているうちにここまで書かれることが、テーマとされた人にとっても書くのをやめてくれ、と言ってもいいくらいの内容。

    これを本人取材を経て出版に至るのは孫正義だからだと思いました。
    孫さんは自分が恥ずかしい、とか、思ってもおかしくないところよりもスケールが大きいから。

    「われわれの携帯がつながっていれば、何人かの方の命は救われたんじゃないかと思うんです。自分の力のなさのせいで犠牲者が増えてしまったかと思うと、腹をかっさばきたいくらいの気持ちになりました。」

    という東日本大震災での強烈な「自分事」意識。
    もはや地球クラスの出来事が自分ごとだから生まれる言動なのでしょう。
    まさに社会の子。

    社会の子というのは、お父様が

    「三憲はそんな大人びた正義の表情を見て、この子は自分の子じゃない、社会のために使わなければと思ったという」

    とお話しているくだりがあるのです。

    本人も、商売をしているのではなく、事業を行っている。お金儲けをしているのではなく、人のためになること、日本のためになることというのを第一義に考え、行動している方なのですね。

    この本を読み、日本に住む様々な環境の人たちに影響を与え、ときに奮起する礎になるものとなるならば、孫さんは全てを書かれても良いのでしょうね。

    また確かにこの本で、孫さん自身も知らなかった情報、ルーツを辿った諸外国含む情報でしたり、そこで出会った人からの思いも得ることが出来たことは孫さんにとっても得るものがあったのでしょう。

    ただ、それは孫さんだから成り立ったもので、橋下徹さんについて書かれた連載は第一回発表時点で問題となり、連載が終わってしまった。
    これは佐野さんが橋下さんと直接会話をしていなかったようなんですよね。

    佐野さんの書き方も読者を大いにリードしていくような断定的な書き方をされると別海のときに感じたので、その部分は問題にされてしまっても仕方ないかなと思いますが、「橋下徹は部落の鬼っ子」 部落解放同盟委員長に聞くにも書かれているように、表現に注意し、訂正した上で連載は続けて欲しかったなと思います。最終的に佐野さんが何を伝えたいのかが伝わらないまま連載が終わってしまったら、宙ぶらりんで本当におしまいです。

    佐野さんと橋下さんが対峙した上で、進めて欲しかったと思います。

  • 孫正義を産んだ在日一族の三代期。面白いんだけど、佐野眞一が孫家三代期を書くことで何を言いたかった伝えたかったのかは私には分からない。作中に何度も取材の意図は述べられるんだけど、読み終えても「誰得?」という感想しか出てこない。
    中内功一代記の「カリスマ」や、小渕首相の「凡宰伝」に比べると、佐野眞一独特のおどろおどろしさと情念だけが残っていて輪郭が不明確なままに終っている。端的に言えば佐野眞一も「老いた」ということですな。
    佐野眞一も橋下徹と刺し違えておしまいというのは悪い終り方ではないような。
    なお、過去の傑作と比べるとオチルというだけで、この本は「孫正義を産み出した在日三代期」として読めば十二分に面白いです。でも、ここまで他人の過去や暗部を白日の下に曝け出してまで書かなきゃいけなかった意味は分からない。

  • 福岡のまずしい韓国人町から育った孫。 その環境が孫を成長へと誘った。

  • ○この本をひと言でまとめると。
     「孫正義伝」というより「孫家三代伝」といった内容の孫正義氏のルーツを探った本


    ○お気に入りのコンテンツ、自分語り(本の内容に通じる経験・反省などの共有)
    ・孫正義氏よりも父親の安本三憲氏や父方の祖母の李元照氏の生き様が凄いなと思いました。日本で在日韓国人の人たちが生きていくことの苦労、それ以上に辛かった韓国の生活などが生々しく書かれていて、そこから這い上がってきた人たちの凄みを感じました。

    ・表紙の次にある「孫家の家系図」でガンホー・オンラインの創業者が孫正義氏の弟の孫泰蔵氏だというのは初めて知りました。何かしらの支援があったにしても、もの凄い家系だなと思いました。

    ・在日韓国人の強かな生活ぶり(密造酒を豚の臭さで誤魔化す、など)やパチンコや消費者金融で何とか成り上がっていった人たち、一度韓国に戻り、よりひどい生活になって再度密航で日本に来たり、生きていくだけで大変という状況がとても伝わってきました。(第一章 孫家三代海峡物語)

    ・孫正義氏の小学校六年生の時に作った詩はすごく大人びた情感を帯びたものだなと思いました。(第二章 久留米から米西海岸への「青春疾走」)

    ・森田塾という進学塾に入るためにコネを活用した話、高校一年生で進学塾を立ち上げようとした話、教師の道をあきらめてアメリカの大学へ行った話、アメリカで自動翻訳機を開発して事業化した話、本来の苗字である「孫」で帰化しようとして奥さんの改姓を経て前例を作った話など、若い頃から機転を利かせた、言い換えれば機転が必要だった人生というのがどんな状況でもへこたれない人間を作り上げたのかなと思いました。(第二章 久留米から米西海岸への「青春疾走」)

    ・孫正義氏の祖父がグータラで、祖母が事業を切り盛りしたり子供を育てたりという環境、その中で育った父親の三憲氏の試し飲みによる密造酒販売、コーヒー無料を思いついた小学校三、四年生ほどの孫正義氏の話など、三代続いての苦労と才覚はすごいなと思いました。兄弟で相争う文字通りの骨肉の争いも、その苦労に加担していそうだなと思いました。(第三章 在日アンダーグラウンド)

    ・孫正義氏が病気で入院して代わりに社長になった大森氏が会社を乗っ取ろうとした、というエピソードは前に何かで読みましたが、どういった背景でその大森氏が社長になり、そして解任されたのかがよくわかりました。著者が大森氏に解任後にインタビューした上で「元エリートサラリーマンらしく、・・・当たり前すぎて面白くも何ともなかった。」とぶった切っているのには笑いました。家族に会社を継がせるつもりがない孫正義氏の孫家の家族仲の悪さとソフトバンクのCMとの対比は面白いぐらいに両極端で際立っているなと思いました。(第四章 ソフトバンクの書かれざる一章)

    ・孫正義氏の震災時の寄付について情報が錯そうしていて、私は「100億円寄付する」という話は自然エネルギーの財団の設立に充てていたものだと思っていましたが、10億円を別途にそちらに充てていて、100億円は本当に寄付だったことに驚きました。孫正義氏の母方の叔父が探鉱事故で亡くなっていたこと、その探鉱事故の対処と原発事故の対処の共通点など、なかなか考えさせられるテーマだなと思いました。(第五章 「脱原発」のルーツを追って)

    ・孫正義氏の父親と母親の不仲、母方の家系の苦労(叔父が探鉱事故で亡くなって祖母が酒を飲むようになって病死)など、かなりの苦労の積み重ねの上に今の孫正義氏がいるというのは、成功した人もいろいろ大変な因果関係を背負っているのだなと思いました。(第六章 地の底が育てた李家の「血と骨」)

    ・三憲氏と著者のかなり奔放なやりとりが面白かったです。(第七章 この男から目が離... 続きを読む

  • いったい何が孫正義(そんまさよし)というカリスマを生んだのか。本書は、著者佐野眞一氏が、孫正義の生まれ育ったルーツにこそ、そのヒントがあると確信し、孫家三代まで遡って、徹底的・客観的に事実を調査し、そこに著者なりの考察を加え、答えを導き出そうとしたものである。

    気がつけば口をアングリ開けながら一気に読み進めていた。そうなのだ。本書には口をアングリと開けさせる4つの驚きがあるのだ。

    1つめは、孫正義の異才ぶり。小学校三年で父親のお店を繁盛させるアイデアを出したという話からだけでも彼のバイタリティと強烈な才能をうかがい知ることができる。2つめは、血脈・・・いや、育ちの環境こそ”が孫正義というカリスマを作り上げたという事実だ。いや、孫正義を取り巻く環境の特異さたるやものすごい。3つめは、孫正義の潔さ・・・というより肝っ玉の大きさ。本書は、現代のプライバシー保護主義を真っ向から否定するような本でもある。当事者であれば、誰もが隠したいであろう事実・・・いや場合によってはタブー視されてきたことさえもあけっぴろげに書かれている。4つめは、著者、佐野眞一氏の取材力だ。ノンフィクションものは過去に何冊か読んでいるが、そのいずれをも凌ぐ取材ぶりだ。

    本書には、人間くささがいっぱいつまっている。「自分のしてきた苦労なんぞ、本当にたかがしれている。まだまだ頑張らねば。」という励みにもなる。わたしがこれまでに読んだ中でも、驚かされることがとにかく多い、イチオシの一冊だ。

    書評全文はこちら↓
    http://ryosuke-katsumata.blogspot.jp/2013/05/blog-post_6.html

  • 孫さん。あらためてすげーっと思いました。
    苛酷な環境がゆえの才能なのだなと。
    ただ、佐野さんのやや、自意識過剰的な切り口の文体は、気持ちのいいものではないかなと。

  • 図書館に申し込んで一年と少し。やっと読む事が出来た。ソフトバンク社長の孫正義氏の伝記である。「あんぽん」とは孫の日本での元の呼び名「安本」の韓国風の読みである。しかし、それは孫にとっては差別語と同義だった。九州鳥栖の朝鮮人スラム街に育った孫は日本に帰化し、それと同時に安本姓を選ばずにあえて孫という名字を選択した。そこに孫の複雑な「プライド」が存在し、同時に孫が日本の既成概念から自由にスピード持って「事業家」として変わって来た原動力がある様に感じた。

    孫は自分をここまで育ててくれた三憲と玉子(父母の名前)にいくら感謝してもたりないくらいの感謝をしていることだろう。
    だが、孫は無意識の中で、在日の血族のしがらみの中でしか生きてこられなかった一族を激しく嫌悪しているのではないか。(390p)

    「だから親父は、僕がちっちゃいときからいつも言っていました。正義、俺の姿は仮の姿だ、俺は家族を養うために仕方なく商売の道に入ったけれど、おまえは天下国家といった次元でものを考えて欲しいってね。僕は小さいときから商売人になろうと思ったことは一瞬もないんですよ。商売って要するに、出来るだけ安く買って高く売るということですよね。でも事業家は違います。鉄道や道路、電力会社など天下国家の礎を作るのが、事業家です」(101p)


    久留米大附属高校時代の孫の成績は、東大進学も狙えるほどに優秀だった。孫が後に語ったことによれば、そのコースを諦めたのは、たとえ東大に合格しても国籍の問題で官僚にもなれないと考えたからだという。国籍による差別は、年齢を重ねるごとに孫の肩に重くのしかかってきた。(86p)

    父親の三憲が倒れた時には、せめて自力でアメリカ留学の金を稼ごうと、高校生の身で塾経営の計画書を作り元の中学教師をヘッドハントしようとした。結局父親の回復でその心配はなくなったが、現実的な計画書だったという。

    アメリカ留学は孫に決定的な影響を与える。孫は幾つかの大学を経て77年にカリフォルニア大学に入る。IT業界の当たり年に孫たちは、シリコンバレーに赴く。ビルゲイツ、スティーブジョブズ、Googleのエリックシュミット、アスキーの西和彦が同世代だ。このときにマイクロコンピュータが個人で買える時代が来た。チップとCPUを買って手作りパソコンを作る。彼らはそのとき革命を見たのである。

    孫は技術屋としては限界があったかもしれないが、決断力の正確さと速さ、プレゼンテーション能力は異常に高く(佐高に言わせれば選球眼に優れたギャンブラー)、日本的風土の中で常に「他所者バッシング」の風にさらされている。それがまた、出自経験とあいまって彼の原動力となっている。リクルートの江副浩正やライブドアのヒロエモン、或いは民主党の鳩山由紀夫や小澤、菅の様に潰されていないのは、それだけで異能の人間ではある。

    その彼が自然エネルギー財団を設立して、本格的に脱原発に挑戦している。確かにこれは現在進行形の日本史的な「ドラマ」ではある。


    ちなみに、孫の父方の出自が韓国大邱の不老洞の国際空港辺りだったそうだ。偶然私は今年の年末年始の旅で不老洞古墳群を訪ねていた。確かにいかにも素朴な田舎であり、アメリカに立つ前の孫少年が一度だけ祖母と共に訪ねて年来の韓国憎しの認識を変えただけはある。
    2013年3月13日読了

  • 孫さんのバイタリティがリアルに伝わる本でした。
    好き嫌いはあると思うが、事を成すにはある程度、こだわりと強引さが必要であり、それをやっちゃったということでしょう。
    最近読んだ、ハーバード白熱日本史教室の北川先生の著作でも、勉強をやり通すために英語があまりできない段階で留学し、さらに大学もアメリカで学びと、とことんこだわり続ける先生の姿勢が書かれていましたが、出来る人やっていることなんですね。
    ビジネスの世界なのか、研究・教育の世界なのかの違いだけで、この間に大きな差はないですね。もちろんビジネスの世界では、自分たちの仕事に影響することも多いので、心穏やかにいられないこともありますが・・・。

  • 孫正義の生まれ・育ちのみならず先祖まで調べあげて書かれた本。血統を重視し過ぎじゃないの?ジョジョなの?という感じもするが、全体的にとてもおもしろかった。(たしかにこの調子で橋下の伝記書いたら橋下があったことのない部落の人とか登場するわな。。。)

    ものすごい強烈な身体性をもつ経験をしてきたんだなぁ。。。

    あんぽん→日本名は安本だった。ちなみに日本に帰化する際、孫という苗字に「前例がない」という理由でさせてもらえず、奥さんがまず苗字を夫に合わせるといって孫にして、次に孫正義が孫という名前の日本人はいる!(自分の奥さん、一人だけ)といって孫という苗字で帰化したらしい。なんかすげぇ。

    佐賀の鳥栖駅の傍らの番地もないバラック街出身。実家は養豚・密造酒で生計を立て、たまったお金でパチンコや金貸しもしていた。アメリカに留学できたのは親の仕送りのおかげも大きい。

    小学生の頃にはカフェの売上を上げる方法を考え、高校の時には塾を始めようと学校の先生をスカウトしたり、ませていた。また、ソフトバンクを始めてからもパチンコをやることを考えたこともあるようだ。

    「やっぱりダメだったね」(飛行機を自分たちで作って飛ばそうとして失敗して)

    孫正義にはシャープの佐々木という庇護者がいた。

    両親不仲。。。?

    まいったと喧嘩でも絶対に言わない性格

  • 孫正義のオヤジが面白すぎる件。

  • 孫正義というよりは、孫の両親や祖父母、曾祖父などをさかのぼった一族の話。その系譜をとことん追うのはすごい。ただ、著者は橋下さんの記事で問題となったが、出自が人の成り立ちを決めると考えるのは行き過ぎに思う。

  • 面白かったです。胡散臭さも含めて。孫社長より、オヤジさんのほうが興味深かった。

  • 先を見越して即行動、ビジネスマンには必須の特性かな〜。高度成長期の必死に働いていた世代から時代は変わった現在、ハングリーさの欠ける若者が増えている。昭和の香りのする孫さんが社会の第一線で活躍しているなんてすごいなー。

  • 武勇伝でも自叙伝でもなく、孫氏の生い立ちにキャプションした本。著者の主観が強すぎる面もあるが、その取材の広さと深さは大したもの。それによって孫氏のビジネス感覚につきまとう「胡散臭さ」を暴くだけでなく、それが今の日本にとってどれくらい面白いものかまで見せてくれる。

  • 今回も佐野節炸裂のノンフィクションで読み応えあり。
    昨年読んだジョブズ伝記を凌駕する面白さ。孫正義という現代日本のトリックスターが如何に生まれたか丁寧に書かれている。
    「巨怪伝」「カリスマ」でもそうだったがその人物の輝かしい功績ではなく、生まれ出てきた歴史、背景そしてそれに影響された本人も認識していない深層心理を読み解いていくのは、翻って戦後から現代日本の現況を改めて納得させられる。

  • 孫正義の出自が良くわかった。彼のビジネスの根底にあるもの、価値観などの理解に役立つ。

  • 情報革命はエネルギーの安定供給なしにできない
    光の道構想
    事業
    日本の産業構造 重厚長大産業が経団連 日本の産業構造転換しないと抜かされる
    宗教家はお金をもらって人を幸せにしているけど、ビルゲイツはお金をあげて人を幸せにする
    人が自分では見えない背中や内臓から書く
    孫正義が原発反対を唱えるのは、潜在下の意識として母方のおじの炭坑事故。それから阪神大震災は他人事だったけど、東北はソフトバンクの電波繋がらなかった人がいて不甲斐なさ、悔しさがあり、電気がないとネットワークつながらないと気づいた
    取材対象者への情熱と愛情

  • 孫の苗字のままだと、韓国人だということがバレちゃいますからね。


    在日が日常生活で差別されるケースはだいぶ減ってきたけど、就職するとか、金を借りるときには、間違いなく差別されるぞ、孫の名前では銀行は絶対金を貸さないぞ。


    在日韓国人であろうが、日本人と同じだけの正義感があって、能力がある。それを自分が事業で成功して、証明しなきゃならないと思ったんです。


    孫は「うちに足りないのは現金収入だ」と口癖のように言い、パチンコチェーンの全国展開を真剣に考えていたという。


    ソフトバンクって、一言で定義すると、何の会社ですか。電話屋さんですか、電子出版社ですか、それともコンテンツ産業ですか
    「情報革命の会社です」

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あんぽん 孫正義伝の作品紹介

今から一世紀前。韓国・大邱で食い詰め、命からがら難破船で対馬海峡を渡った一族は、筑豊炭田の"地の底"から始まる日本のエネルギー産業盛衰の激流に呑みこまれ、豚の糞尿と密造酒の臭いが充満する佐賀・鳥栖駅前の朝鮮部落に、一人の異端児を産み落とした。孫家三代海峡物語、ここに完結。

あんぽん 孫正義伝の単行本

あんぽん 孫正義伝のKindle版

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