- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093883344
作品紹介・あらすじ
読むとお腹が空く、ハートフルストーリー!
京都・東本願寺の近くにあるというその食堂には看板がない。食堂を切り盛りするのは、鴨川流とこいしの親子二人。この食堂では、もう一度食したい食べ物の味を少ない手がかりから再現してくれるという。店に辿り着く手がかりはただひとつ、料理雑誌に掲載される<“食”捜します>の一行広告のみ。
「鯖寿司」「ビーフシチュー」「鍋焼きうどん」「とんかつ」「肉じゃが」「ナポリタン」の思い出と味を求めて、六人の客が訪れる。
感想・レビュー・書評
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心の中に刻まれた、忘れられない料理の味や匂いと、その場の風景は、誰の中にも一つか二つあるのではないでしょうか。私の場合、幼稚園の遠足で行った横浜の氷川丸、その時初めて食べたオムライス。キラキラした銀の皿と、色鮮やかに盛り付けられた色彩と味は忘れられません。もう一つはホテルに勤めていた祖父が時折もって帰ってくれる、バターロールとクッキー。まだ食卓が豊かでなかった時代、甘いバニラの香りと香ばしいバターの風味を覚えています。
京都の街中に、ひっそりと目立たぬように営業している鴨川食堂。元刑事の父親”鴨川流”と、しっかりものの娘”こいし”が客に出すのは、繊細で風味豊かな京料理だけではない。客の記憶の中に眠る、思い出の味とその時の情景を探し出してくれる、食の探偵。
今は亡き人に捧げたい思い出の味、新しい生活をスタートするための決断として過去の料理を味わいたい人、若い頃恋が成就しそこねた最後の料理、様々な思いがこめられた、”食探し”の依頼に、鴨川親子は応えていきます。
柔らかな京都言葉の響き、おいしそうな匂いが漂ってきそうな料理の数々と、風情のある京都の風景。地元の方が読んだら、きっと”そうなんだよねー”となるのでしょう。ところどころで登場する、居候トラ猫の”ひるね”の姿が、かわいらしい挿絵とともに、またよい塩梅のスパイス。ああ、京都の街を訪れてみたくなります。
作者の柏井さんは京都生まれの京都育ち、いろいろな京都の紹介をなさっているようです。
ところで、何度も出てくる鞍馬煮ってどんな料理なんだろう。柔らかく煮込まれたかぶの味噌汁が無性に食べたくなりました。ご馳走様です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
短編で内容も面白くて読みやすく1日で読み終わってしまいました。料理の事が主ですが、料理と家族の思い出や絆などの内容も多くて、感動しました。探偵と料理の掛け合わせの物語でした。
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京都の小さな店で、思い出の料理を捜し、再現してくれるという。
美味しそうな料理とあったかい名推理に、ほっこりします。
何の変哲もない家で、看板も出さずにやっている鴨川食堂の料理人は、鴨川流。
つまり、地名ではなく苗字なのです。
料理専門誌に一行出した広告を見て、訪ねてくる人々。
娘の鴨川こいしが事情を聞き取り、調査するのと料理するのは父親の流。
何気ない父娘の会話にも、ほのぼの。
亡き妻が作ってくれた鍋焼きうどんを、土地を離れる前にもう一度、食べたい。
55年前に初恋の人と食べたビーフシチューの味は。
子供の頃に近所の女将さんに食べさせてもらった鯖寿司の独特な味は。
他にも、とんかつ、ナポリタン、肉じゃが、と、誰にでも懐かしさのあるお料理。
そんな忘れられない料理を作ってくれた人にも、料理にこめた思いが‥
それぞれに人生の転機を迎えて、思い出の味を食べたくなるのにも理由があるのでした。
作者は、京料理の監修などの仕事もし、本も出してきた人だそう。
いろいろな土地の昔の料理についての知識も、半端ないわけです。
さらに別名義でのミステリ作家でもあるのですね。
この作品は、謎解きの過程や苦労は詳しく書かれておらず、調べたことと料理の腕がすらっと披露されます。
人情味あるお話ですが、その辺はややあっさりした印象。
さらりと読めて、ひたすら美味しそう!
さりげなく最初に出されるおまかせの料理もすごく美味しそうなので、通りがかりにこれだけでも食べさせてもらえたらなぁ~‥と、よだれが出そうになりますね(笑) -
東本願寺の近く。店の体をなしていない二階建てのしもた屋、看板なしの「鴨川食堂」。
恋女房に先立たれた料理人 鴨川流 とその娘こいしが切り盛りする、そこには食捜し中の客が訪れる。想い出の中の、忘れがたい味。再現を試みても叶わない、その味をまた味わうために。
亡き妻が作ってくれた鍋焼きうどん、若き日に受け止められなかったプロポーズとビーフシチュー、寂しい心を満たした黄色い酢飯の鯖寿司、別れた旦那の作ったとんかつ、祖父と旅先で食べたナポリタン、産みの母の味 肉じゃが。
京都至上主義っぽい部分が少し鼻につくが、料理の描写は美味しそう。 -
…椀を手に取り、ひと口啜って、吐息を漏らす。山菜の天ぷらに抹茶塩を振りかけ、口に運ぶ。サクサクと噛む音が店に響く。鯛の薄作りをポン酢に浸けて舌に載せる。・・って読んでるだけでお腹が空いてくる。。
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大人のライトノベルのような感じ。気軽に読めます。でも幼稚な感じは無いです。結局依頼者はどうなったのか気になるのにはっきり結論まで出さずニュアンスで察して、みたいな"イケズ感"が京都っぽいのかもw
それにしても出てくる料理出てくる料理全部おいしそう!
こんな定食屋さんどこにあるのか教えて下さい〜。 -
心と胃袋はつながっているんだな、としみじみ思った。
美味しい思い出は、しっかりと身体にもしみこんでいて、その思い出の味と再び出会うことは、そこからの新たなる一歩でもあり。
それにしても目で読むだけでこんなにお腹を刺激するなんて!!空腹時に読むのは避けた方がいいですね、間違いなく。
京都の街の四季と、謎解きと、美味しい料理、これだけあればもう何もいらない。 -
京都の街でひっそりと食堂を営む流。腕のいい板前だが、元刑事という経歴を生かして、娘のこいしと探偵もしている。それも普通の探偵ではなく、“ 食 ” を探す探偵だ。昔食べた料理がどこの何という料理だったか、母が作ってくれたあの料理の隠し味は何だったのか、など、食に関する問題や謎を解く探偵だ。ある日、元刑事だった頃の先輩がやってきて、亡くなった奥さんの作った料理の秘密を探して欲しいと依頼され…。
料理を探す探偵なんて新しいジャンルだと思う。出てくる料理も美味しそうだし。舞台が京都なのもいい。ただ、探す最中の様子や苦労は全く描かれず、すんなり正解にたどり着くところがあっさりし過ぎてるかな。
でも面白く読めた。続編もあるようなので読みたい。