裏が、幸せ。

著者 :
  • 小学館
3.35
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本棚登録 : 200
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093884105

作品紹介・あらすじ

控え目でも強い光を放つ日本海側の魅力満載

常に時代を先取りする話題作を刊行してきた酒井順子氏が、”控え目だけれども鋭い光を放つ”日本海側の魅力を存分に伝えるエッセイ。
経済発展=幸福と、太平洋側を「表」として走ってきた日本ですが、とくに東日本大震災以降、その構図はくずれつつあります。経済至上主義によって、私たちは、日本人にとって大切なものをたくさん失ってきたのではないかということに、多くの人が気づき始めています。
そして、その開発の手を逃れて、ひっそりとマイペースで生きてきた日本海側=「裏」には、裏だからこその日本の大切なもの=「幸せ」が、たくさん詰まっていることに、日本中を何度も旅してきた著者は魅了されました。
都道府県別幸福度ランキングでは、トップ3は福井、富山、石川の北陸三県。富山にある世界一のスタバ、日本海が必須の演歌、美人が多い秘密、谷崎潤一郎、水上勉、泉鏡花、川端康成が描いた「裏」、顔を隠す盆踊り、金箔のほとんどを生産する金沢…などなど 「裏の宝もの」が満載。北陸新幹線の開業もあって大注目の日本海側。その良さを堪能できて、「幸せ」を求めて旅に出たくなるエッセイです。


【編集担当からのおすすめ情報】
「深くやさしくしっとりとした、日本の中の「裏」が抱く「陰」。それは日本に住むすべての人達にとっての貴重な財産なのであり、私たちがこれから必要とするものは、そんな陰の中にこそ、あるような気がするのですから」
と酒井さんは文中で語っています。私たちが住む日本は、どんな国であってほしいのか、そして私たちはどんな旅をしたいのかを考えるきっかけになる本だと思います。

感想・レビュー・書評

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  • 私の好みで、どうしても歴史っぽいところに目がいってしまう。印象的だったところを少し。

    明治以前は、北前船に代表されるように、海路が重要であり表日本、裏日本の区別はなかった。鉄道が太平洋側に集中したことによって、日本海側が裏化した。

    裏日本の、表に対するかしづきや落差を悲しむ小説を書いた小説家たち(都会に出た農家の次男以下の目線)と、裏日本をなんとかしよう、大雪の原因である山を切り崩して裏日本を裏でなくしてしまおうと言った(地元に残った長男と嫁の苦労に心を寄せた)田中角栄の比較も面白い。
    それぞれの苦労があって、高度成長期の日本は発展していった。

    土地を切り口にして、事象や人を考察するの面白いな

    あとは、原発が稼働する地域と受益地域の話。原発が近くにできて嬉しいはずはないけれど、それ以上につらい日々の貧しさがあった

    そういう背景を感じつつも、今、明るい、表って言うことが幸せなことなのか、無理して明るさを求めなくても…。幸福感のあり方とは、というのは、確かに。

    それにしても福井の、冬にこたつで水ようかん。いいなぁ、、、、、いいですねぇ、、

  • 確かに納得。表日本と裏日本という言い方をするなら、表日本に生まれ表日本で生活している自分ですが、確かに裏日本を訪れた時の妙に落ち着く感覚は、ここにあったのか、と思わずにいられない。

  • やっぱり、酒井順子は面白い!
    表紙にある、いつもとは逆の日本地図も面白いですね。

  • 日本海側の魅力を酒井さんらしい視点で書いたエッセイ。「演歌は日本海側が似合う」というのには、なるほど~とうなずき、時にはプッと吹き出しながら読んだ。面白かった。

  • ・私たちが暮らす日本海側の、足元にあるみりょくを見直すきっかけになる本でした。

  • 「交通手段が船から鉄道に変わったことによって、日本海側は裏日本化したというところがありますね」と地図学者の今尾恵介さん。
    船の時代は波が荒く港が少ない太平洋側よりも日本海側の方が有利だったけど、線路を敷くとなると地形が険しく平地が少ない日本海側よりも太平洋瀬戸内海側の方がやりやすい。
    そして鉄路が発達するにつれ海路は衰退、太平洋瀬戸内海の表化がはじまる。
    たとえば能登は開運の時代は交通の要衝だったが、半島というのは船の場合は便利な地なのだけれど、陸路となると僻地になってしまう。

    私も親が北陸で、彼らは若くして東京に出てきてよかったと思っているものですから、自分も親のせいでちょっとアクセントの違いなどを発見すると必死で直した少女時代。

    でも大人になって、どんどん開発されているわが県に淋しさを感じることが多くなり、生まれて初めて一人旅を北陸にしたのがきっかけで、すっかり一人旅にはまってしまいました。

    そして、自分のルーツが北陸というのが、今は自慢。

    私も酒井順子さんの、「日本海側には、こんな景色が日本にあったの!と思うような美しい景色もたくさんあり、もしも同じ景色が表側にあったら、商魂たくましい人々が寄ってたかってカフェだの土産物屋さんだのをつくるだろうと思われる場所に、人工物も人間の姿も全くなかったりする」「北陸新幹線開通で、密かに輝き続ける北の都が、東京のただれた風に直接さらされてしまっていいのか」に同感。

  • 酒井順子さんの「裏が、幸せ。」(2015.3)、味わい深い作品でした。陰翳、演歌、美人、流刑、原発・・・。日本海側、ひっそりと輝く地、展望台、土産物店のない絶景、人々はとても親切で、じんわり包み込むような優しさ! 2014年の幸福度では、福井、富山、石川の順で、ベスト10には鳥取、島根、新潟もエントリー。広い持ち家、親と同居、親が子供の面倒を見て夫婦で共働き、日本の伝統的な生活様式が。京都が表で、金沢が裏。裏の大社、表の神宮。2014年千家国麿氏と高円宮典子様の結婚は裏と表の結婚で新しい時代の夜明けか~!

  • 「裏日本」という言葉は死語か禁止用語か。
    でも、「裏」を逆手に取れ、と酒井さん。

    本当に目の付け所(テーマの設定)が良くて、内容も読みやすく、共感できる。
    いつも安定している。
    ずっと読んでいきたい。

  • 日本海側のさまざま
    そう、ちょっとブームかもしれない。

  • H28/10/15

  • 20160726読了

  • 旅行記とエッセイのあいのこ。
    酒井さんは加齢とともに切れ味だけでなく、深みを増していくな。

  • 楽しいワルクチという著書でファンになった酒井順子。今回も独特の視点からの観察が面白いです。

    美人一県おきという説を検証すべく、秋田から一県おきにやはり美人が多いと証明したり、幸福度が一番高いとされる福井県に着目したりと、裏日本の真髄に迫る一冊。

    秋田から一県おいて美人の多い県。

    間の山形の立場ったらないよね。笑

    いや美人がいないわけではないらしい、100人中の美人が低いというだけであって、みんなブスってわけじゃないらしいよ。でも、気になるよね。そう言われると、秋田美人って本当なんだな。と。見に行く価値すらありそうだよ。

  • あとがきが秀逸。

    「『表』って、『明るい』って、幸せなことなのか?」

    こういう疑問が団塊~バブル世代の少しでも多くの人に芽生えたらいいな。
    ずっと右肩上がりなわけないもの。成長成長って、成長し続けてどうするつもりだよ。経済成長じゃなくていいだろ、人口なんかこれから減る一方なんだよ、競争から降りることも発展の一形態なんじゃないのか? と、私(だけじゃなく恐らくバブルを知らない世代)がずっと言いたかったことを、この著者らしいトーンで、ソフトに提示してもらえた感じ。

  • 『金閣寺の燃やし方』とかいうエッセイで書かれてあったが、観光学なるものを専攻した著者による、裏日本紀行文。なのだが、写真が少ないのが惜しい。描写が蛋白なので現地の雰囲気がわかりづらい。

    板額御前の話は興味深かった。

  • 日本海側の魅力を自分の足で動いて感じながら書いたエッセイ。水上勉のところは、飢餓海峡を映画でみたので面白かった。

  • 表紙が面白いです。富山県が作成した地図だそうです。日本海を下に、太平洋が上に広がり、左手側が東北地方、右手側が九州地方。裏日本地域の社会の授業では、この地図をもって勉強するのでしょうか。あえて裏日本という表現にこだわって、文学・鉄道・観光・演歌・盆踊り・美人などなど、たくさんのカテゴリに区分して、裏日本らしさを言葉にしていく本。特に面白かったのは、川端康成の「雪国」に登場する上越線はローカル線ではなく、当時は「開通して三年の、新しい路線」であり、東京人が越後湯沢の芸者に容易に会えるようになった結果「一種の異文化交流の物語」ができたととらえたところです。水上勉も裏日本理解に欠かせない作家とし何度も登場します。

  • 裏日本という言葉を初めて知ったのは「猫町」だったので、なんて旅情あふれる素敵な言葉なんだ、と思っていたのですが、割とマイナスイメージだったのか。しかしその、ちょっと裏さびれたとこにこそ隠れた魅力が、ととにかく紹介された地域に行ってみたい、と思う本。
    自分、思いっきり表日本出身ですが、田舎なので、どうにかしてその田舎ぽさのままでいてほしい、と願っています。うん、金沢はあまり大っぴらにメジャーにならないよう、頑張ってほしいです。
    あと、すなばコーヒーに行ってみたい。

  • 日本海側に焦点を当てたエッセイ集。裏だからこその魅力が描かれています。著者は東京の方ですが、日本海側に住むものとして共感出来ました。

  • 裏日本に住んでる者として、なかなかな1冊です。

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著者プロフィール

エッセイスト

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

酒井順子の作品

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