保育園義務教育化

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093884303

作品紹介・あらすじ

もし保育園が義務教育になったら…?

『もしも保育園が義務教育化されたなら…』
子供の学力は向上し、児童虐待は減少し、景気も向上?
もう世界では始まっている!!
社会学者・古市憲寿が提言する、母や子供、日本を救う少子化対策!

「保育園義務教育化」はただ少子化解消に貢献するというよりも、社会全体の「レベル」をあげることにつながる。良質な乳幼児教育を受けた子どもは、大人になってから収入が高く、犯罪率が低くなることがわかっている。
同時に「保育園義務教育化」は、育児の孤立化を防ぐ。今の日本では、子育ての責任がとにかく「お母さん」にばかり背負わされている。
子どもが電車や飛行機の中で泣くことも、学校で勉強ができないことも、友だちと起こしたトラブルも、何かあると「お母さん」のせいにされる。
だけど、本当は育児はもっと社会全体で担ってもいいもののはずだ。しかも子育て支援に予算を割くことは経済成長にもつながる。いいことずくめなのだ。
(本文より)

はじめに 「お母さん」が「人間」だって気づいてますか?
第1章 「お母さん」を大事にしない国で赤ちゃんが増えるわけない
第2章 人生の成功は6歳までにかかっている
第3章 「母性本能」なんて言葉、そもそも学術用語でもなければ根拠もない
第4章 少子化が日本を滅ばす
第5章 草食男子が日本を滅ぼすというデマ
第6章 女性が今、社会から待望されている
第7章 0歳からの義務教育


【編集担当からのおすすめ情報】
本書を出版するにあたり、東京で子育てする「お母さん」「お父さん」に本書を読んでもらいました。

「乳幼児期の教育がもっとも人生の成功に影響するという、ノーベル賞を受賞されたヘックマン博士の考察には、驚いてしまいました。今すぐ義務化して欲しい。」
(3歳児の父)

「3歳児神話の欺瞞など、知らなかった部分が明らかになり面白く読めました。すでに導入しているハンガリーの例や、検討中のフランスの状況など含めて、『なにこれ、マジ神じゃね?』ってくらい食いついてしまいました。これができれば最高じゃないですか!! 預ける後ろめたさが消えて、追い詰められての虐待も減るのでは。これが実現したら日本の育児状況が変わりますね!!」
(6歳児、0歳児の母)

「まさか古市さんの本を読んで、泣いてしまうとは思いませんでした。『「お母さん」というだけで「人間」扱いしてもらえなくなる異様な状況』に怒り、『「女性」ではなく、「国」が悪者になるべき』『「お母さん」だけに責任を負わせるな』と言ってくれるのが、まさか古市さんなんて!(笑) 夫とか姑とか色んな人に読んでもらいたい。実現して欲しいです!とても!!!!」
(2歳児の母)

感想・レビュー・書評

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  • 「昭和の政治家にマシュマロテストは難しい」

    親が福祉関係の仕事に就いていると保育園に受かりやすいという都市伝説がある。
    そのおかげかは知らないがうちの子は第一志望の保育園に入ることができはした。
    入園した保育園では第二子、第三子も結構ザラにいて、そのコミュニティでは少子化どこ吹く風である。
    問題は「保育力」の格差だろう。子供は居るところには居るし、居ないところには居ない。

    そしてその格差は本人の努力では対処が難しいことも多い。頼れる親族が近くに居ないとか、職場の理解がないとか。
    自分は株式会社の運営する老人ホームで働いているが、幸いにも職場は子育てに理解がある。しかし妻が働いていた社会福祉法人の特別養護老人ホームでは「子供の体調不良でシフトに穴を空けるのはあり得ない」って本当に云われていたっぽい。しかもこの台詞を言い放った上司は、子育てをろくにしたこともない老害かと思いきや、働きながら3人の子供を育て上げた女性であったとか。本当ならぐうの音も出ませんわね。

    そんな中で、意識を変える意味でも保育園義務教育化というのは一つの解決策になるのではないかと感じた。
    だがそれだけで少子化の解決は困難かも知れない。経済的な事情で産みたくても産めない若者への支援も大切だろう。

    こういうことを云うと必ず財源はどうするんだという批判がくる。日本は票を持っている老人ばかりが優遇されると思われがちだが、介護業界では財源の不足を理由に「介護の社会化」の理念は放棄され、相次ぐ減算、利用者負担の増加が繰り返されている。
    社会全体で子育てを支援するという考えも早晩行き詰まる可能性はある。私見では現代貨幣理論とかも政策の一つとして検討されなければならないと思う。
    併せて幼少期の教育はコストパフォーマンスが良いとの研究結果が共有され、納得の上で税金が使用されるのが大切かも知れない。自分も貧乏暮らしではあるが、いわば恩返しとして子育てに税金が使われるのであれば払うのも吝かではない。某人材派遣会社を肥え太らせるよりは余程良い。(イメージです)

    思考が昭和の政治家は「少子化の原因は若者の努力が足りないからだ」と云いそうなイメージがある。
    票にならない世代に有利な政策を実行するインセンティブは少ないだろうし、少子化がいよいよヤバくなる頃にはどうせ鬼籍に入られている。それまでは若者批判でもしてれば偉くなったような気にもなれるでしょうからね。(あくまでイメージです)

  • タイトルと作者に惹かれて読んだ。お母さんを大切にして、少子化を何とかしましょう的な感じ。お母さんは人間だったのか…

  • 娘が産まれてからというもの、自分が母親である前に1人の人間であるということを忘れてた気がします。育児は眠いし、疲れるし、悩む事も多いし、ひとりの時間がとれないし、辛くなることもある…。でもこれ、人として当たり前の反応というか、とくに私みたいな1人目の新米ママにしてみれば、普通に起こりうることなんですよね。

    そして、幼児期に質の良い保育を受けることが結果として、社会的にコスパが良いということと少子化対策にも繋がり、そのために保育園を義務教育化するのは世界の潮流をみればスタンダードになりつつあるということ!

    安保法案や国立競技場の議論もそこそこに、教育関連法に本腰を入れてほしいし、そういう議員を応援していきたいものですね。

  • 読みやすくよかった。
    昭和の時代は、こういった発信はフェミニストのレッテルを貼られたが、徐々に認識が変わっており、昔のフェミニストが今の普通になっている。

    思うのは、結構国は少子化対策などに取り組んでいるなという印象。
    3歳からの保育園無償化とか、2014年の国土交通省の交通機関でベビーカーを折り畳まなくて良いという表明とか。

    ただ、リーダーシップが弱く、ガイドラインは作るんだけど、それを守らせるための動きがなく現場に任せるため、ゆっくりとしか変わっていかない。

    ベビーカーの折りたたみ不要の声明が出た後も、バスのアナウンスで折りたたんでくだい、と言っている。

    一般的にみんなの意識で、という話をやたら重要視する傾向があるなと思うが、、そこに担保しすぎずに構造を変えていくということが重要だと思った。

    ルール化するというのが、本書で保育園義務化、と言っているように非常に有効な施策になると思う。(が、それにはリーダーシップの欠如・満場一致の精神などにより難しい。やはり現場の意識を変えていく必要があるか・・)

  • 「義務教育化」と一点突破するタイトルだけれど、本質は教育格差を無くすこと。現行法上の課題はさておき、問題提起としては理に適っているように思った。
    情弱乙。で、片付けていいことと悪いことがあって、それを解決するのは誰の仕事なのか?考え続けていきたい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      たかもとかもさん
      保育園って教育機関なんですね、単なる託児所だと思ってました。ちょっと吃驚です!
      たかもとかもさん
      保育園って教育機関なんですね、単なる託児所だと思ってました。ちょっと吃驚です!
      2020/09/20
    • TかもTさん
       日本の保育園のそもそもの目的は託児所みたいなものなんですが、乳児期の集団生活がその後の教育に与えるメリットでか過ぎないですか? みたいな話...
       日本の保育園のそもそもの目的は託児所みたいなものなんですが、乳児期の集団生活がその後の教育に与えるメリットでか過ぎないですか? みたいな話ですね。
      2020/09/20
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      たかもとかもさん
      ナルホド
      たかもとかもさん
      ナルホド
      2020/09/20
  • 『保育園義務教育化』
    著者 古市憲寿
    小学館 2015年

    義務という言葉にはどうしても負のイメージがつく。義務でやらされているとなれば尚更だ。しかし、義務という言葉が人を救うこともあるかもしれない。そう言ったら、驚くだろうか。このほんの著者は大胆にも、保育園(この本では乳幼児を預かる機関を代表して保育園と言っているので、実質幼稚園などもここに含まれる)を義務教育化したらどうだろうと提言している。そのほうが、日本の未来は明るくなりますよと。はて?どういうことだろうか?これには著者自身の大きな3つの狙いが隠されている
    1つ目は母親の負担を減らすことができる点
    著者は主に「保育園義務教育化」という名において0歳から小学校に入るまでの保育園・幼稚園を無償化しようと提案している。ここで、誰にも明らかなのは、母親の負担が大幅に軽減されることだろう。もちろん、預ける期間はその人の任意で決めてもいいとしている。そうすることで、お母さん方も自分の時間を持つことができるし、困った時に頼るべき母親のコミュニティに属することができる。
    2つ目は小さい頃からも教育により、将来的に大きな価値を創出できるという点。
    これは、いわゆる最近話題の非認知能力を高める上で、小さい頃からの教育が望ましいと言われていることがアメリカで1960年代に行われた「ペリー幼稚園プログラム」と言われるもので明らかになっている。これは簡単にいうと、貧しい地区に生まれた子をランダムに選び、質の高い就学前教育を施し、比較対象としてそれをしなかったこどもとを約40年にわたって追跡調査したという実験だ。ここで明らかになったのは、ペリー幼稚園に入った子供は通わなかった子どもに比べて、高校卒業率も高く、持ち家率も高く、所得も高く、逮捕率も低かったそうだ。
    このような実験により、就学前教育が重要であるという定説ができていったとされている。
    3つ目は新たな雇用が生まれるという点である。これは、母親の負担が減ると少し関連があるが、子供を預けることにより、余裕ができた母親が働き先を見つけて、働くことにより、日本の労働人口が増えることにより経済成長が促される。これに関しては、該当箇所を引用しよう。

    柴田さんは日本を含む先進18カ国を対象に、「何をした国が経済成長をしていたのか」を分析した。
    その結果わかったのが、保育サービスなどの拡充によって、働く女性が増えた時に、その国は経済成長率が上がるということだ。
    (中略)
    なんで子育て支援をすることが経済成長につながるのだろうか
    理屈はこうだ。きちんとした保育サービスを整備すれば、女性が働いてくれ、労働力人口が増える。さらに忙しく働く女性はルンバや食洗機を買ったり、火事関連産業の拡大にも貢献する。また現代には女性向けの仕事が増えているため、女性が働くと企業の生産性も上がる。要は、女の人に働いてもらうと、いいことずくめなのだ。
    ちなみに、女性の労働率を上げるには、子供手当を支給するのではなく、保育園を整備した方が効果的なこともわかっている。

    昨今は格差が広がっていっている社会だと言われている。資本主義社会であるならば、しょうがないといわれるかもしれないが、一つのアイデアで改善することができるとこの本は教えてくれる。最後に印象に残った箇所を引用したい。

    今の日本で親になるには、ある程度のお金があり、教養があることが前提とされている。それを象徴するのが、養子縁組をするときの養親に求められる基準だ。斡旋する団体によって条件は違うのだが、だいたい次のような要件を満たすことが求められている。
    ・25歳から45歳までの婚姻届を出している夫婦
    ・離婚の可能性がなさそうなこと
    ・健康で安定した収入があること
    ・育児をするのに十分な広さの家であること
    ・共働きの場合、一定期間は夫妻のどちらかが家で育児に専念できること
    養子縁組には統一基準があるわけではないが、おおむね絵に描いたような「幸せ家族」であることが要求されているようだ

    この基準を満たせる夫婦は一体どのくらいいるのだろう?

  • 非認知機能や幼児期教育にコストをかけることの重要性など比較的話題になりやすい研究の話もそうですが、特に妊娠可能年齢や出産後の女性が抱える問題についてはとても悩ましいと感じさせてくれるものであったように思います。母乳を絶対視したり、ベビーシッターを否定するという人は流石に多数派ではないと思いますが、自分の育児論を絶対視して他の人を縛るのは筋違いというものかと改めて思える内容でした。自分と他人の境界線。
    同じ話多かったですし、ホットドッグプレスの話そんなに掘り下げる必要あるのかと笑ってしまいましたが、とても学びがあると思います。
    子どもの発見、日本の歴史を読み直すといった本に書かれているような過去の在り方と今を比較するのは大胆と思いましたが、それで救われる人がいるならそれも良いのかなと単純に思いました。

  • 少子化と労働力不足。日本が抱える二つの大きな社会問題は、子どもを社会で育てる仕組みにして「お母さん」を家庭に縛り付けない仕組みを作れば解決に向かうのではないか。
    そもそもベビーシッターに子どもを見てもらったり、保育園に子どもを預けることは不幸な行為ではない。小学校入学前の乳幼児期に適切な教育を受けさせることで、子どもたちの非認知能力が高まる。(非認知能力とは、社会性、意欲、忍耐力などの生きる力のこと。それらは集団のなかで高められる)
    だから保育園を義務教育化して、各家庭に合わせた利用をしてもらえば「お母さん」は働くこともできるし、子どもの能力も高まる。いいことがいっぱい!

    だいたい上記のような内容だった。

    古市さんすごいなあと思いながら読んだ。国が本気で取り組んでこなかった少子化問題を解決できるならすごいことだし、良質な乳幼児教育を受けさせることは結果的に社会全体のプラスになるならみんなハッピー!古市さんの解説をウットリしながら読んだ。
    この本が出たのは2015年、これを書いているのは2022年。状況はよくなっていない。ウットリしている場合ではないし、ハッピーではない。少子化は進む一方だ。

    良質な乳幼児教育が人生成功の鍵になるとわかっているのに、受けさせていないというのはなんだか悲しいことに感じる。
    (ここで言う人生成功とは、高校卒業率が高く、持ち家率が高く、所得が高く、逮捕率が低いことらしい)
    少子化の時代にせっかく生まれてくれた子どもなんだから、人生成功者になってもらいたい。そう思った。

    ---------------------------------------

    若者のセックスについて書かれていた5章は蛇足だったのではないだろうか。

  • 本当にそう!!と言い続けた一章。笑
    もちろん子どもが欲しくて出産したし、仕事も必要だからしている。
    だけど!
    小さい子ども育てながら正社員するのって本当に厳しい。

    頑張って働けば子どもが可哀想と言われ、せめて病気の時くらいはと、子どもの熱で帰りますと職場に言えば仕事に覚悟がないと言われる。
    どうすりゃ良いんだ!!てなるこの育児家庭を取り巻く社会環境。

    労働力として経済成長にも、子どもを産み育てて少子化にも、貢献している。
    なのに貢献度に見合った社会的サポートがあるとは残念ながら思えない。

    どんなに覚悟を持って子育てと仕事の両立に臨んでも予想外のことってあるし、そもそも妊娠も出産も育児も、自分の思い通りになんていかない。
    それを全部母親のせいにしている限り、絶対に子どもは増えない。責任感があればこそ、うっかり妊娠なんて絶対無理。

    でも独身の人から多く税金を取る案は現実的に難しいだろう。独身の人にだって結婚したくても出来ないとか、子どもが欲しくてもできないとか、色んな事情があるわけだし。 
    でも子どもを産み育てていくハードルが、今より少しでも下がれば良いと願う。

    私たちの老後を労働力として支えてくれるのは今の子どもたちなんだから。子どものいない人も関係ないとは言えないと思う。

  • 日本は、妊婦のことは大切にするが、子どもを産んだ「お母さん」の身体はあまりに無頓着だ。
    現代の育児というのは、相当の「情報強者」か「経済強者」でないと成り立たない。

    虐待をしてしまう親は、社会的に孤立していて助けてくれる人がいない、子ども時代に大人から十分な愛情を与えられなかった、経済不安や夫婦仲など、生活にストレスを感じている
    →お母さん自身の育児環境が整っていない

    アメリカでは、子どもの教育にお金や時間をかけるとしたら、小学校に入る前の乳幼児期だという定説がある。
    これらは学力ではなく、「非認知能力」の向上によるもの。社会性がある、意欲的、忍耐力があるといった、生きていくために必要な能力のこと。

    サラリーマンと専業主婦は、1960年から1990年の、日本経済が好調だった時代の産物。日本の伝統ではない。

    国が少子化対策に本気で取り組まないのは、票にならないから?

    保育園を義務教育化すれば、コスパの高い乳幼児教育の推進と女性の労働力増加につながる。また、一定規模の職場に保育所の併設を義務付ける、などすればいい。
    また、保育士への待遇改善のために、税金を投入するべし。保育士になる人の数が増えなければ子どものための教育にならない。

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著者プロフィール

1985年東京都生まれ。社会学者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。2011年に若者の生態を的確に描いた『絶望の国の幸福な若者たち』で注目され、メディアでも活躍。18年に小説『平成くん、さようなら』で芥川賞候補となる。19年『百の夜は跳ねて』で再び芥川賞候補に。著書に『奈落』『アスク・ミー・ホワイ』『ヒノマル』など。

「2023年 『僕たちの月曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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