痛みの道標

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著者 : 古内一絵
  • 小学館 (2015年7月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093884341

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痛みの道標の感想・レビュー・書評

  • 二冊続けて戦争を描いた本を読んだ。
    ひとくくりに太平洋戦争と言ってもあまりに知らないことが多くて愕然となる。先に読んだ「世界の果ての子供たち」で舞台となった満州については見聞きする機会も少なくはない。だが、この本で描かれるボルネオで繰り広げられた悲劇については全く知らなかった。なんと、太平洋戦争末期では最大規模の上陸戦もあったという。

    この本の主人公はブラック企業に勤める達希。その達希が亡くなった祖父、勉の願いをかなえるためにボルネオに行くことになる。勉にはどうしても会いたい一人の女性がいたのだった。
    達希のおかれた現代を織り交ぜつつ、祖父の過ごした戦時下のボルネオの様子をリアルに浮かび上がらせていく。

    日本の占領軍がとった残忍な行動や上陸戦で生き延びた兵士の過酷さなど、読むのが辛くなることもしばしば。しかし、実際の戦いはこんなもんじゃなかったのだろう。
    わずか3作目にしてここまで重いテーマを扱った作者の熱意に感服する。この本を読まなければボルネオの戦いも知らないままだっただろう。

    物語の設定が私は苦手だったのと、最後ちょっと力みすぎかなとも思うので★4つにしました。

  • ブラック企業での仕事に疲れ、ビルから飛び降りた達希を救ったのは15年前に亡くなった祖父勉の幽霊だった。
    祖父に頼まれ人探しをすることになった達希が向かったのは第二次世界大戦の戦地ボルネオ島。そこで知る悲劇と祖父勉の過去。

    まだまだ知らない戦争の悲劇は沢山あるのだと思い知らされました。
    知らないことばかりで、途中何度も検索しながら進める読書となりましたが、出会って良かった。

    現代とその時代をつなぐための設定がうまいなと思います。
    違和感なく読み進めることが出来ました。

    二度と繰り返してはいけない悲劇。
    多くの人が知り、読み継がれる必要のある本だと思います。
    素晴らしい本でした。

  • 素晴らしい一冊でした。目に見えない者を持ってくるのに賛否はあるのかもしれませんが、私はとても深く感じるものがありました。戦争は誰をも幸せにはしない。その戦争は現代を生きる人達の心にもあるんだと。壮絶、凄惨…経験に差はあるだろうけど心に残る傷はその時その時残る重さとして変わらない。昔の人が偉いとか、今は幸せな時代だとかそんなのはどうでも良くて、「今」を生きる人達の戦いはその人の物だし、大問題なんだと思います。勉さんから、いや、その前から脈々と受け継がれる命。大切にして欲しいと思います。勉さん、良かったね…♪

  • 1943年に起きたポンティアナック事件を題材にした小説。一種の反戦小説、ファンタジー小説、主人公の成長を描く教養小説の要素もあるが、何よりもエンターテイメントとして良く出来ている。週末、一気読みした。

    主人公はブラック企業に勤める27才の平凡な青年。借金に苦しみ、発作的に飛び降り自殺を図るが、15年前に死んだ祖父の霊に助けられる。祖父は生前心残りの「人探し」を一緒にすることを条件に隠し財産で借金の肩代わりを提案。そこから祖父の霊とのボルネオへの旅が始まる。
    祖父は戦時中、軍の命令で農業に携わっていた。そこで出会ったのは、個性豊かな人々と悲惨な戦争の現実だ。
    戦争は、祖父から大切なものを奪った。そして、祖父の「人探し」の秘密がだんだんと明らかになってゆく。

    本の表紙絵は卵と赤道をイメージしたもの。赤道直下では、うまく置くと卵を直立させられるという。主人公は、赤道直下の街、ポンティアナックにある赤道記念塔で卵を立たせ、観光客の喝采を浴びる。主人公の再生をイメージさせるシーンだ。

    ポンティアナックには一度行った。好きな街で、街の描写を読んでいたら、また行きたくなってきた。戦時中の住民の様子も含め、著者が綿密な取材を行ったことが、推察できる。

    日本軍と現代のブラック企業という腐敗した組織の中で、祖父も主人公も、それぞれ必死に再生しようとする。主人公への感情移入がしやすい展開であり、「読んで良かった」感が得られる。
    お勧めの★4つ。

  • 戦争は絶対に美化されてはいけないと思う。
    どんな戦争だってきっともっともな理由をつけられて
    正当化されて始まったのに違いないのだから。

    第二次世界大戦の末期のボルネオ島。
    そこで起きた正視できないほどの悲惨な出来事。
    亡くなった祖父の死んでも死にきれないほどの心残りを晴らすため、
    孫の達希はボルネオ島への旅に出ます。

    達希とて、日々を安穏と過ごしている訳ではなく
    現代を生きる彼にも死にたくなるほど辛いことがあるわけで・・・
    それでも戦争の狂気の中で必死で生きようとしていた
    祖父たちの思いを知った後は
    逃げ出さず日々闘っていくことを決意するのです。
    自分の命はつないでくれた誰かがいてくれたから
    今ここにあるのだものね。

  • マカン・マランからのこの作品は度肝を抜かれる。
    単に「不幸な」ということではない。事実である過去と、事実である現在。
    もちろん、戦争の前では、わたしたちが何を語ろうとどうにもなることはないのだけれど、ただ、いつの時代もやるせない逃げ場のないことは起きるのだ。
    この著者は、ただただすごい。そしてただすごいだけではない。

  • 歴史的事実や考察を丁寧にかつ飽きさせずに描いていて作者の慈愛がにじみ出ている。

  • 今年は第二次世界大戦が終わり、70年になる。マスコミ等でもいろいろな特集や報道がなされてきたが、この小説もその戦争を題材にしている。
    日本ではほとんど知られていない現インドネシア領ボルネオで敗戦間近に起こった事件を題材にしている。現地では毎年慰霊祭が催されるほど皆に認知されている事件であるという。
    日本で自殺し損ねた青年と既に15年前に死んでいる祖父の幽霊(?)とのボルネオを訪ねる旅を描いている。そこにあるのは、戦争とは一度始めてしまうと、誰もが「敗戦」を認識できても、なかなか止めることが出来ないということ。信じたくないと目を背ける、責任を負いたくないと保身に回り、次の一歩がなかなか出せない。その結果命が軽んじられ、簡単に死へ追いやられる。
    「勝ったほうにも負けたほうにも正義はない。それが戦争の真実だ。」本書に書かれたこの一文はすべての戦争に当てはまる。
    若い人たちにとって戦争はことばとしてしか理解出来ないものになっているのかもしれない。いま一度、この平和な日本が築けたのが70年前の多くの日本人の犠牲によるものであることを顧みなければならないだろう。
    本著は戦争を題材にしながらも、現代とその時代の若者を対峙させながらファンタジーの要素も盛り込みエンターテイメントとしても読みやすい。是非若い人たちにも読んでほしい一冊だ。

  • 上司の指示による粉飾決算のツケを丸っと丸かぶりさせられ、自殺を図った、ハズだった。
    何で生きてるんだ? てか死んだ爺さんが目の前にいるし!

    さー、パニくりますよね、うん。
    しかも幽霊な爺さま・勉はボルネオ島まで自分を連れて行け、という。もー無茶苦茶。ではあるものの渡りに船なのかとにかくここにいては諸々アブない、そして達希は祖父と共にボルネオ島へ旅立つ。

    破天荒だった祖父しか知らない達希が勉の半生を巡る旅で学んだ、「生きる」ことの意味の深さ。戦時下で酷い目に合わされた現地の方々の「戦を憎んでも人は憎まず」「過去を振り返り、決して忘れることなく伝える」そのしなやかで強靭なこころが全世界に浸透するならば、戦争なんて無くなると思いたい。

    達希に、雪音に、勉や佐藤にもあの馬鹿上司にも、私たちはなれるしなってしまう可能性を秘めている。誰に近しくなるのかは自分の心ひとつなのだ。

  • もしも今、すれ違いざまに誰かを刺して命を奪ってしまったら。それは「殺人事件」となる。法の下で裁かれどんな形かはわからないが「償い」を行う。
    けれど、それが「国の命令」で行われたとしたら、それは当然のこととなり、そして罪として償うどころかよくやったと称賛されるかもしれない。つまりは「戦争」とはそういうことなのだろう。
    戦後70年のこの年に、さまざまな戦争の物語が書かれている。古内さんの「痛みの道標」もその中の一冊である。自殺しようとしていた27歳の若者と、元少年兵として戦争を生き抜いてきた祖父の魂との邂逅を通して国対国の争いの悲惨さ、無意味さ、そして巻き込まれ奪われた多くの命の重さを訴える。いつの時代も虐げられ搾取され使い捨てにされるのは社会の末端にいる多くの善良なる人々なのだ。この次、命を使い捨てされるのは私かも知れない、私の大事な人たちかも知れない、そう思うと耐え難い怒りに身体が震える。

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痛みの道標の作品紹介

戦後70年、命の重さを問う渾身の人間賛歌

ブラック企業に追い詰められ多額の借金を背負った達希(27歳)は発作的に飛び降り自殺を図り、15年前に死んだ祖父の霊に助けられる。祖父は生前心残りの「人探し」を一緒にすることを条件に隠し財産で借金の肩代わりを提案。そこから祖父の霊とのボルネオへの旅が始まる。
そこで出会ったのは、個性豊かな人々と悲惨な戦争の記憶。将校でも戦闘機乗りでもない大多数を占めた一般兵士の彼らの戦死とは、飢えや伝染病で命を落とす悲惨なものだった。
やがて一行は赤道の街に到着。そこには、この旅に祖父が託した本当の目的が隠されていた。今まで決して口にすることのなかった、「知られざる謀略事件」とは・・・・。そして、そこに隠された,祖父の過去にまつわる真実とは・・・・・。


【編集担当からのおすすめ情報】
著者が過去の資料を調べ尽くし、実際にインドネシアのカリマンタン島に足を運び取材し尽くし、一年半まるまるこの一冊の執筆に費やして挑戦した、渾身のエンタメ反戦小説です。おそらく日本国内ではほとんど知られていない事件をモチーフに描かれた人間ドラマです。この事件は日本ではほとんど知られていませんが、現地では今も毎年慰霊祭が行われ、忘れられることはありません。それは、決して遠い記憶ではありません。
戦争時は軍隊、現代はブラック企業。名前と質こそ違えど、現代も昔も一部の私利私欲のために犠牲になり、苦しむ人々はたくさん存在します。著者の力強い筆に救われ、励まされる方も多数いらっしゃると思います。こんな時代だからこそ、10代の高校生から戦争を経験された年輩の方々まで、現代を生きる多くの方に是非読んでいただきたい、人間賛歌。読後は爽やかで明日を生きる力が湧いてくる小説です。

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痛みの道標のKindle版

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