若手育成 10の鉄則 100の言葉がけ

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 42
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093884402

作品紹介・あらすじ

プロ教師が教える「イマドキの若手」育成術

本書はまず、第一章で、「アラフォー以下は、自律より承認を求めている」「若手が一番やりたい仕事を、奪ってはいけない」「酒席等で仲良くなっても、良い仕事はできない。順番が逆で、年度当初にチームとして仕事上の結果を出すことが先だ」「リーダーに必要なのは、優秀な人材ではなく、自分にできないことを補完できる人材だ」等、若手育成上の「10の鉄則」を提示します。教育のプロとしての分厚い現場経験に裏づけられたそれらの鉄則を知るだけでも、若手育成担当者のパラダイムは一変することでしょう。
第二章では、それぞれの鉄則について、10ずつの具体的な「言葉がけ」と、それに伴う具体的な育成ノウハウを、1ページ単位で紹介していきます。「世の中のミスは99%が謝りゃゆるされるもんだ」「恩は返すもんじゃない。送るもんだ」「お前の自己実現なんて二の次なんだ」「先の見える方を選ぶのが成功のコツ!先の見えない方を選ぶのが成長のコツ!」等々、「イマドキの若手」の心に響く言葉の数々と、リアルなエピソードは時に感動的で、一気に読める一冊に仕上がっています。



【編集担当からのおすすめ情報】
イマドキの若手を育てる「100の言葉がけ」の章は、ひとつの言葉+エピソードにつき1ページで完結、という構成になっています。隙間時間に、好きなページを自由に選んでお読みください。おススメは、最終項「きわめる」。「批判こそ礼儀なんだ!」「格好つけようと思っているうちはうまくいかない」「10年の時を経ずに見えてきたものは幻想に過ぎない」など、この項で紹介される言葉の数々は、著者の本質が顕れた、厳しくディープなものばかりです。

感想・レビュー・書評

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  •  教師論的な本と言えばこの人、という現役の札幌の国語教師、堀先生による「10の原理・100の原則」シリーズの「若手育成」編。
     堀先生の本はいくつか読んで、自分の教員としてのあり方にそれなりに影響を与えている。生徒に対する教育の仕方、ではなく、若手教員への指導の仕方、という自分がこれまで読んできた本とは毛色が違うという物珍しさと、今回おれが実習生を持つことになったということもあって、読んでみた。
     これによるとまず「職業生活には四十歳くらいに分岐点があります。四十歳くらいまでは<往路>、四十歳を超えると職業生活は<復路>に入ります。<往路>は自分に力をつけること、自分の力量を高めること、つまりは自分の貯金を増やすことにその本質があります。四十歳を過ぎると自分の成長よりも他人へのフォローや意思決定が仕事になっていきますから、なかなか自分の成長のために時間や労力を使うことが難しくなっていきます。どちらかというと貯金を切り崩しながら仕事をすることになります。僕がよく<貯金する往路><貯金を切り崩す復路>と言うのはこうした意味です。」(p.17)とあり、おれの場合とあてはめてみる。堀先生は66年生まれで、91年に教師になって、ということは40歳を迎えたのは2006年、教員生活15年目で折り返し、ということか。おれは前職があるので、実はまだ15年経ってないなあ。あと3年。そう考えるとまだおれもまだギリギリ貯金する時期なのかあ。もう切り崩しにかかっている気がする、という罪悪感を覚えるところから読み始めた。
    あとは堀先生のキャラクター、「破天荒でだらしなくて、細かいことを真面目に続けていくのはニガテだけど、その場でアイデアを思いついてうまいこと言えて、うまいこと振る舞っていけるんだぜ〜」みたいなアピールに、ちょっと抵抗を感じたというか、堀先生の前の本の数々にはそういうところがそんなに気にならなかったんだけど、なんか鼻についてしまった、というのはおれが歳を取ったからなのか、堀先生のキャラ開示の要素が前著より強まっているからなのか…。なんか読みにくさを感じてしまった。
     全体としては100の声かけ、の部分が読んでいて面白いが、それは若手への声かけ、というより、堀先生から読者への声かけ、という風にも読めるからかなあ。以下は印象に残った部分の列挙。まず「仲良く楽しそうに過ごしている大人たちが近くにいる。これ以上に教育効果の高い教育方法はないんだぜ!」(p.80)は、本当その通りだと思った。生徒の前で先生同士が楽しく談笑している、逆に言えば、実は仲が悪くても生徒の前ではすごい楽しんでいるように見せる、生徒の前で積極的に先生たち同士で楽しむ、というのは学年全体に良い影響があると思う。「うまくいかないことの八割か九割は、自分が笑顔でいられないから起こってるんだ。(略)子どもなんてトラブル起こしてあたりまえ、学級なんてハプニングが起こってあたりまえなんだから、そんなトラブルやハプニングさえ楽しむ余裕をもちたいものだね」(p.81)は良い言葉だと思った。笑いのないところに成功はない、という言葉にも通じると思う。「仕事ってのは自己実現のためにあるんじゃないんだ。仕事がうまくいったとき、満足できる結果が出たとき、成果があがったとき、その仕事の成功を通じて自己実現できる…。そういう順番なんだ。」(p.84)というのは確かに若手には響くかなあ。「人ってのはな、楽しい雰囲気のなかで時間を忘れて謳歌したときに最も成長するもんなんだ。(略)そんな楽しさと成長の融合した時間を、人は充実って呼んでるんだ。」(p.93)という言葉も、「人ってのはな、」みたいなことを言える先生って、おれの周りにはあんまりいない気がするなあ、とか思った。「若い教師が最初の学級をうまくまとめて、それなりに自信をもったときが、実は一番危ないんだ。自分が人間的に優れているとか、自分は感性が鋭い人間であるとか勘違いしてしまう…。最初の学級ってのは周りの先生方がいろんな配慮をしてくれて成り立ったものに過ぎない。(略)二度目の学級は問題傾向の生徒が何人も入ってくる。自分を過信しないで、周りに相談しながらやっていくんだ。次の学級がそれなりの形になれば、もう一人前だ。胸を張って自分の考えで動いてもだれも文句を言わなくなる。すべては二度目の成否にかかってるんだ。」(p.109)というのも、実はおれまだ二度目だから、耳が痛い。あと今このレビューを書いていて、散々実習生の授業を見ているが、「一時間授業を見て驚いた。山場が一切ない。語りにタレント性が一切ない。一本調子の説明が淡々と続く。瞬間瞬間をメタ認知して機能度を上げるという意識もまるでない。」(p.112)というのが全く一緒だなあと思った。で堀先生は「冒険ってのは自分で勝手にやるもんだ。上司に相談して、上司の指示にいつ買うことを一般に冒険とは言わない(笑)」(p.112)と教えたらしい。この言葉を覚えていたらなあ。でも資格のある教師ではないから、おれは普通に指示してしまった、というのはもしかしたらおれの失敗かもしれない。「仕事を早く終わらせるコツ」っていうのが、生徒に言ってもいいんじゃないかなと思った。何かの本で「やる気はやり始めるから出てくる」というのを読んだが、「仕事が遅い人は始めるのが遅い。とにかくさっさと初めて仕舞えば、と言うまでやった仕事ってのはあれこれ考えることなく早く終わらせようって思うもんだ。そして、なんだかんだで片付いてしまうもんさ」(p.122)というのも同じだと思う。生徒にも言ってやりたい。「諦めちゃいけない。諦めってのはなあ、一度やると癖になるんだ。一回諦めて、時が解決して、な〜んとなくその年が終わって…。(略)そして一度諦めてなんとなく逃げ切れた…ってのが、記憶に残るんだな。体感として残っちまう。そして癖になっていく。」というのも生徒に言ったら響くかなあ。あとは「生徒たちが心地よく受け取れるようなことばかり言う教師は、かえって生徒たちを成長させない。でも、綺麗事を言ったり厳しく指導したりして生徒のなかに葛藤を起こす教師は結果的に生徒を成長させていく。教師ってそういう職業なんじゃないかなぁ」(p.126)というのも確かに。おれはどっちかと言うと、おれが葛藤する様子を生徒に示す、という感じだなあと思った。こういうやり方も、「教師という仕事をおまえのほうに引っ張ってくる」(p.144)という感じなのかなと思う。あと最後に、「複数の学びの場を持つ」(p.174)というのはその通りだなあと思った。英語教育もほぼ宗教みたいになっている団体ってあるよなあとか思って、おれが大学生の時は毛嫌いした。今もだけど。どんな方法もやれるように、というのはいつも思っている。
     最後に100の声かけの部分ではなく最初の部分だけど、若手育成という意味で、「まず酒でも呑んで姉弟関係を結ぼう」(p.67)は古くて、「まずは『仕事上の結果を出す』ことが必要なのです。その仕事上の成果に自分も一人のメンバーとして貢献しているという思いが、人を仲良くさせるのです。順番が違うのです。結果によって人々は仲良くなるのです。」(p.67)というのが、新しい発想だなあと思った。確かに、一緒に飲んで、ちょっとおごってあげて、頑張れよ、みたいなコミュニケーションはイマドキじゃないのか、という感じも。
     さて、この本を読んでどれくらいおれが実習生の指導に役立っているのかというと、実は実習生は「僕ってイマドキの人間じゃないんですよね。もっと、一つ前の感じというか…」と言われてしまって、「もっとダメ出ししろ」と言われてしまった。あっそ。じゃあ飲みにいくか、という感じになってしまった。(23/06)

  • 堀先生が語るから、説得力があるんだよな。
    ひとりでできることなんかたかが知れている。
    若手を育てる(学年団を機能させる)という視座なくして、子どもの成長はない。
    大きな視野でこの仕事に取り組もう。

  • 熱い言葉があり、情熱は伝わったが一般的な機能として役立つかと言うと微妙
    サークル活動が自己満足だと言う意見に関しては共感

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