- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093885423
作品紹介・あらすじ
「特別」な弟と僕の、愛おしい日々の記録
僕は5歳のとき、パパとママから弟が生まれると聞かされ、大喜びした。姉と妹に囲まれた僕は、ずっと一緒に遊べる男兄弟がほしかったのだ。
しかも、どうやら弟は「特別」らしい。
僕はスーパーヒーローを思い描き、一緒に闘いごっこをすることを想像した。だけど、実際は何か違っていた。僕はだんだん「特別」の意味を知り、中学に入ると弟の存在を友達に隠すようになった……。
19歳の普通の青年がダウン症候群の弟との生活と成長を描き、イタリアでベストセラーとなった感動作の邦訳版。
【編集担当からのおすすめ情報】
本作は、著者が弟と制作したショートムービー『The Simple Interview(http://www.youtube.com/watch?v=0v8twxPsszY)』がきっかけとなり生まれました。十代の著者が、彼なりの葛藤の末に手に入れた「新しい景色」がじわじわと伝わる、感動の5分半です。ぜひ、本書とともにお楽しみください!
感想・レビュー・書評
-
「僕に弟ができるんだ」待ち望んだ弟は「特別な子」だった…。19歳の著者が初めて書いたノンフィクション小説で、今年映画化された。
ジョヴァンニがこの家族のもとに生まれてきて良かったと思う。障害のある子を産むかどうか、生まれた後どうやって育てていくか、夫婦は不安と葛藤を抱えながらも子供達に明るく接する。
『ダウン症候群』と書かれた青い本を手にした5歳のジャコモと、娘たちの質問にきちんと答えようとする夫婦の姿に好感が持てた。
「あなたたちの弟は…特別なの」
「人生は、自分の思い通りにできることもあるけど、ありのままを受け入れるしかないこともあるの。でも、どんな状況においても無条件で愛することよ」と語りかける母親の言葉が心に残った。
家族に温かく迎えられたジョヴァンニ。
「障害はその子の個性」と言うけれど、一緒に生活する家族にとっては決して生優しいものでないはず。発達の遅れだけでなく、首が弱いことからでんぐり返しができない。食べ物を飲み込むことが下手で、喉に詰まらせてしまうこともある。食事中は決して目を離してはいけないとその大変さに気付かされた。
思春期を迎えたジャコモは、次第に弟の行動に恥ずかしさと憤りの混じった感情を抱くようになる。友だちからどう思われるか気になり、弟を隠そうとした自分の行為に罪悪感を覚えるジャコモ。
「ぼくはジョヴァンニと一緒になって、その遊びを楽しむことにした」と言えるようになるまでの苦しくて長い時間に切なくなった。弟を受け入れることで兄弟の信頼関係が強まっていったと思う。
著者が2015年3月21日(世界ダウン症の日)に公開した「ザ・シンプル・インタビュー」には、笑顔のジョヴァンニとジャコモ、家族の姿が映し出されていた。ジョヴァンニの見ている不思議でキラキラとした世界をこの目で見てみたいと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
作者のジャコモが、5つ下のダウン症の弟ジョバンニが生まれるところからの暮らしやその中で育んできた考えを描く。書いたのは19歳の頃、きっかけはダウン症の弟の事を理解してもらいたいとアップした動画。世界中の人から感想が寄せられ、編集者に執筆を勧められる。後に映画化もされた。
ダウン症という病気の名前は知っていたが、実際のところは全く知らなかったので、とても勉強になった。イタリアの教育制度についても知らなかったことばかりで、1970年代にインクルーシブ教育の法制度が整えられた、と書いてあり、感心しきりだった。日本の教育はどこで思考停止してしまったのかなぁ。貧困から抜け出すにはまず教育だと思うのに、そこにお金をかけない政治ってダメよね、と思う。
ジョバンニの家族の強さと愛情深さは本当に素晴らしいし、思春期のジャコモの苦しさも理解できた。姉のキアラの「(ジョバンニの)好きにさせてやろうよ」とか、ジャコモの妹のアリーチェがキャンプ場で、ジョバンニへの悪意をさらりとかわすホラ話は、ジャコモを勇気づける。ジャコモの友達達がジョバンニを受け入れてくれたのも嬉しかった。ジャコモの葛藤を素直に描いているところがとても良かった。そして、ジョバンニが思いがけずイタズラなところも楽しくて、読みやすかった。
-
5歳の時に生まれた弟はダウン症だった。子どもの頃はスーパーヒーローだった弟は、著者が中学生になった頃から、友達から隠すようになっていく…。
弟への気持ちを乗り越えていく著者の心情が、きめ細やかに描かれています。
いつも、その瞬間を目一杯楽しむ弟の生き方の方が人間として正解なのではないかと思いました。
読後にこの本を書くきっかけとなった、著者が弟と制作したショートムービー「ザ・シンプル・インタビュー」を観ることをおすすめします。とても素敵な動画です。 -
温かい家族の雰囲気が伝わってきてとってもほっこりする作品だと思います。ご両親のあたたかさ、ジョバンニくんが伸び伸び成長している様子が目に浮かびます。
人生思い通りにいかないことばかり。でも、自分で選ぶことが出来る、それは無条件に愛するということ!!!!なんと深い、まさに真理。 -
これから親になるかもしれない人は是非読んで欲しい。いい親がどういうものかわかるから。
若いときは自分の力で人生がどうにかなるものと思う。でも、どうにもならないこともあるということがだんだんわかってくる。子どもを持つこと自体、本当にそう。思い通りに行くことばかりじゃないどころか、どうにかしようとして親が頑張ると拗れて不幸を招くこともある。
この本は本人が書いているように、ダウン症や、ダウン症の子どもを持った家族のことを書こうとしているわけではない。(結果的にそういうところもあるけど。)
完璧な人間なんていない。ありのままを受け入れて愛することで、自分だけでなく周りも幸せにできる、というシンプルなメッセージが、心にストンと入ってくる。
とにかくね、ご両親が、素晴らしいの一言に尽きる。親が人間として立派なので、子どもたちもいい子に育つ。本当に、人間として見習いたい。
例えば、エリートとなった元同級生に、仕事は何してるのかと訊かれ(ビシッとスーツを着こなして、久しぶりに会った子連れのカジュアルウェアの相手に開口一番仕事のことを聞いてくるあたり、もちろんやなやつなんだけど)、「そうだなあ、メインの仕事は父親業だ。そのほか、空き時間には印鑑を押したり、収支報告書のミスを指摘したり、先生たちの機嫌をなおしたり、休み時間にはサッカーもする。(P245)」幼稚園の事務員をしていることがわかって「どうしてまた、そんな仕事を?」と言われると、「たしかに、楽な道のりじゃなかったね。(中略)大企業に勤めて、各種の福利厚生を受けていた時期もあった。でも、ようやくこうして希望が叶ったんだ」。家族を第一にしているだけでなく、ユーモアとアイロニーのある受け答えができる、優しくて面白い父親。最高では?
もちろん母親もいいんです。
弟の通う学校の先生もいい(「戦争」の絵に対する評価のエピソードはグッとくる)。
弟自身も魅力的だけど、ダヴィデというダウン症の少年の言葉も忘れられない。誰だって何らかの障害を持ってる。そのなかでダウン症はかなりいい。学校でいじめに遭ったこともあるけど、「おかげで僕は、僕のことをいじめる連中みたいに生まれてこなかったことを神に感謝するようになったんだ。だってそうだろ?あいつらの運命のほうがよっぽど悲惨だ。なんてったって心がないんだからね。そう考えたら、自分の一本余分な染色体に感謝できるようになったんだ。(P205)」さらに「たしかに僕は科学者にはなれないかもしれない。でも、僕ほどおいしいドーナツを揚げられる人はいないと思うよ」。こんな風に考えて生きたいと思わずにいられない。
ダウン症をはじめ、障害者は生まれない方がいいと思っている人は結構いると思うけど、そういう人にも読んで欲しい。こんな風に生きている人たちやその周りの人たちは不幸だろうか?障害がなくても不平不満を抱えていたり、他人を攻撃して溜飲を下げている人なんかよりずっと人生を楽しみ、他人にも笑顔を与えていると思う。
とても自然で、登場人物の人柄も伝わるいい訳だった。さすが関口さん。 -
作者のジャコモが、ダウン症の弟ジョバンニとの事を書いた物語。
見た目や行動で、他の人から変わっていると見られるジョバンニ。そんなジョバンニを1人の人間として尊重し見守る家族や周りの人達。
今でこそそうしてジョバンニと関わっているジャコモも、ジョバンニの事を友達に隠していた時期があった。
家族なんだけど、家族だからこその葛藤も分かる気がした。
でも、とっても素敵な家族だと思った。
-
「僕は5歳のとき、パパとママから弟が生まれると聞かされ、大喜びした。姉と妹に囲まれた僕は、ずっと一緒に遊べる男兄弟がほしかったのだ。
しかも、どうやら弟は「特別」らしい。
僕はスーパーヒーローを思い描き、一緒に闘いごっこをすることを想像した。だけど、実際は何か違っていた。僕はだんだん「特別」の意味を知り、中学に入ると弟の存在を友達に隠すようになった……。
19歳の普通の青年がダウン症候群の弟との生活と成長を描き、イタリアでベストセラーとなった感動作の邦訳版。」 -
面白かったです。素敵な人たちに囲まれてる。主人公の、周りからどう思われるかの怖さから偽装する。は、分かるところがあります。夏休みの家族旅行で多くのドイツ人との生活のシーンが良いです。姉と妹の、弟への感覚が好き。強くてまっすぐでカッコいいと思う。家族みんなが、弟くんも。
-
姉と妹にかこまれたジャコモが5才の時に待望の弟が生まれた。それも特別な弟が。ダウン症の弟との日々を高校生の兄として正直に綴る。その弟と作ったショートムービーが話題となり、本作品誕生となった。
小学生の頃は、特別な弟と普通に話せていたが、中学へ進むと弟の存在をひたすら隠すようになる。そんな兄だったが、少しずつ弟との社会的な接し方に気づきムービーの制作へと進んでいく。
はじまりの特別な弟という存在を素直に受け入れている小学生のころの話では、なんとも良くできたご兄弟で…という感想しかなかったのだが、思春期とともにひたすら隠し始める兄に、素直に感情移入できた。
障害のある家族がいる家庭の正直な時期だと思う。それを乗り越えさせた弟ジョヴァンニとジャコモに拍手を送りたい。
ユーチューブで見た「ザ・シンプル・インタビュー」も、ほっこりあたたかくなれた。
ダウン症の弟の目を「中国人みたい」というくだりが数回出てきたことが気になった。欧米人から見るとそうなのかな?