天国と、とてつもない暇

著者 :
  • 小学館
3.69
  • (21)
  • (28)
  • (28)
  • (7)
  • (2)
本棚登録 : 723
感想 : 30
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093886444

作品紹介・あらすじ

詩の世界に新風を吹き込んだ詩人の最新詩集

現代を生きる若者たちを魅了した詩集三部作(『死んでしまう系のぼくらに』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』『愛の縫い目はここ』)を経て、今、未知の世界がこの詩集から始まる。若き言葉の魔術師が贈る最新詩集、待望の刊行。

《私には本当は私しかいないというそのことを、/季節の境目でだけ、思い出します。/生きていれば幸福より優しさがほしくなる、/この指で与えられるものがひとつずつ、ふえていく、/散りゆく世界、積もる白、私の人生、私の、/私への、果てのない、果てのない優しさ》――(「自分にご褒美」最後の6行)

《きみはかくじつに誰かに愛されるし、かくじつに一人ではないし/それでも孤独があるという花畑なんだ、ここは。/燃やそう、だから一緒にすべてを燃やそう、次の太陽にみんなでなろう》――(「冬の濃霧」最後の3行)

《軋むようだ、/骨が軋んだ、その時の音のように、/小さく、みじかく、私にやってくる、感情。/名前をつけて、いつまでも飾ることは、できない、/腐っていくから。/それでも、その瞬間の、小さな音、/それが、私の声をつくる、/身体から旅立つ、声を。/おやすみ。/私は、あなたが懐かしい。》(「声」最終連)

漢字、ひらがな、そして、句読点までもがポエジーを奏でる。
その上、タテ組、ヨコ組、行替え、行間の空白――斬新な詩行の列がポエジーを支える。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最果タヒさんは、以前、「千年後の百人一首」を読んで、(この本は、とても美しい!)好きになりました。  優れた詩人の本を読むのは快感があります。  とても密度の濃い言葉が並んでいるので、読むのにずいぶん時間がかかりました。
    どんなに好きになった詩でも、正確に覚えて置けない私の頭の中で、ドキッとするフレーズや、どこか懐かしいイメージがたくさんあって、図書館で借りた本ですが、何度も読み返したくなりました。
    ドキッとしたフレーズを、書き出そうとしましたが、たくさんありすぎて……

    おやすみ   から  2ヶ所だけ。

    世界中が私を愛さない限り、ぜんいんを許さない。
    ぜんいんを嫌いになる。
    さみしさはそんなかたちをしているのに、


    どうか、きみが消えても、すてきな世界でありますように。
    愛するたび、きみがいなくてもよかったんだと口走しるよ。
    ひとは、誰かの救いになる必要なんてない。


    • 猫丸(nyancomaru)さん
      りまのさん
      にゃ!
      りまのさん
      にゃ!
      2020/12/17
    • まことさん
      りまのさん。こんにちは。

      昨日は、いいね!をたくさんくださり、ありがとうございました。今、メールボックス見て、びっくりしました(*^^...
      りまのさん。こんにちは。

      昨日は、いいね!をたくさんくださり、ありがとうございました。今、メールボックス見て、びっくりしました(*^^*)

      りまのさんも、詩がお好きなんですね。
      私も、ブクログを始めた年にはまってたくさんレビューを書きました。
      特に好きなのは江國香織さん、谷川俊太郎さん、長田弘さん、最果タヒさんも。
      いいですよね~!
      これからもりまのさんのレビューを楽しみにしています。りまのさんのレビューは心がこもっていると思います。
      いいね!いっぺんにお返しできなくてごめんなさい。
      2020/12/19
    • りまのさん
      まことさん
      昨日は、いいね!攻撃をしてしまい、すみませんでした。まことさんの、本棚を見ていたら、止まらなくなって、しまったのです。まことさん...
      まことさん
      昨日は、いいね!攻撃をしてしまい、すみませんでした。まことさんの、本棚を見ていたら、止まらなくなって、しまったのです。まことさんのレビュー、大好きです。まだまだ いいね!したい本が、たくさんありますが、、、びっくりされると思うので、これからは、控えめにします、、、
      温かいコメントいただき、ありがとうございます!
      2020/12/19
  • 最果タヒさんの詩は初めて本屋さんで立ち読みをしたとき、よくわからないと思ってしまい、そのままになっていました。
    今回、ちゃんと読みました。ちゃんと読んだら、解けないパズルのようだったことばが、するすると心に入ってきて、この世界の真実がたくさん、たくさん隠れていたような気がしました。
    読めば読むほどに、その論理が面白い、わかりやすい詩でした。他の作品も是非読んでみたいと思いました。


    「七夕の詩」
    おおきな肉体がすぐに隣で横たわっているような気温。
    日差しが、ぼくを切り捨てて、大気が、ぼくの代わりに立ち上がる。
    あたたかいものに癒されたいと思っていた自分が、
    もう何もかも死んでしまえというように、
    冷たいものばかりを求めて、歩いて、極悪人のようだ、
    夏は愛が似合わない、
    織姫と彦星が、生き残りの愛をかき集めて、
    すべて川に流してしまった、トイレの水、銀河の渦、
    愛より愛を流す水がきれいなんだよなあ、
    文学や音楽、だからみんな好きなんだろうなあ、

    何もなくなると何かが叶う気がしてしまう、
    ぼくは、そうして生まれてきたし、そうして死んでいくのだろうし、
    希望という言葉が向こう岸からぼくを呼ぶ。
    一年に一度、死ぬのだとしたら、ロマンティックですか?
    愛を永遠に誓うのであれば、それくらい、しなくちゃね?
    夏を言い訳にして死ぬことも殺すことも愛すこともできない、
    それでも、ぼくを呼ぶ声がする、7月7日、地獄から。



    こんな、風刺のような、皮肉のようでもある言葉をたくさん集めて、美しくも怖ろしい詩に昇華していまったのは現代的とでも言えばいいのでしょうか。
    谷川俊太郎さんとも、また違う切り口で新時代の、新しい作風の詩が多くとても面白かったです。
    日本の新しい先駆けとなってほしいです。


    「星」「生存戦略!」「16度の詩」「13歳」「重力の詩」「二十歳」「8月31日の詩」「夏の新呼吸」もよかったです。

  • 詩を読んでも結局なんなのかはっきりわからないけど、それがいいんだよね。
    独特な感性を持っていて、この不思議な文章の羅列に魅了された。
    なんか円城塔を彷彿とさせるような感じだった。私だけかな?
    あとがきまで詩になっているのが好き。

  • またコップを割ってしまった。代わりのを買えばいいよと貴方は言う。残骸にチクリと赤い痛みが走り、ああ、貴方の代わりは居ないのだと気付きました。私の心が割れても、貴方は私を捨てないでいてくれますか。
    近過ぎると壊れてしまうものがあることも、もう知っている。信じることをやめた瞬間から、指の隙間から零れ落ち失ってしまう陽と陰があることも知っている。大人になるほど知っていくのは幸か不幸か、答えはきっと、空の上。
    苦しみから逃れようとしても無駄だ。傷を消そうとしても無駄だ。私は私の痛みを抱え、生きていく。人を傷付けても、自分を傷付けても、涙は重力には逆らえず、私の真ん中を浸し重くする。心から笑える瞬間があった。人肌が優しい時間があった。そんな時だけ、きっと汚れは漂白される。いいじゃないか、汚れていたって。
    真っ白になれる瞬間を、私は幸せと呼びます。諦めず、痛みの数だけ皺を増やし生きていく者を、私は人間と呼びます。

  • 前回の三部作以来の詩集。どれも静謐という言葉が似合う。静かに終わりが近づいている、そんな優しい詩が多かった気がする。個人的には「おやすみ」の最後の部分がとても好きだった。そして巻末の初出を確認せずに「生存戦略!」を読んだときはびっくりしたが、ピンドラを知っているからこそこの詩を読んだときに湧く喜びがある。

  • 正直、初めての感覚、読後感。

    普段、ビジネス文書の作成ばっかりやってるからか、世界観が違いすぎて戸惑った。深すぎて、理解しようと潜ろうとするのだけれど、浮力が強すぎて全く沈まない感覚。潜れればきっと素敵な世界が待ってるのだろうけど、結局浅瀬にしかいられない。そんな感じだった。

    著者の他の作品にも触れて、もう少し浅瀬でジタバタしてみたいと思う。

  • 詩はやっぱりよくわからないのだけれど、よくわからないまま強く惹かれる、きれい。
    「かるたの詩」「神隠し」「二十歳」「夏の深呼吸」がすき。
    「夏の深呼吸」は特に好き。

  • 最果タヒの一見難解な、独特な言葉遣い。だけど自然にすーっと染み渡るように深くわたしの中に入ってくるような感覚。そしていつだったか覚えていないけれど、たしかに昔感じた気持ち。それらが詩中の言葉によって掘り起こされるようだった。
    七夕の詩が好きです。

  • 私はこの本にとても救われた。
    何度でも読み返したい。そんな本です。

  • 「重力の詩」と「いただきます」がいい。

全30件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

最果タヒ(Tahi Saihate)
詩人。一九八六年生まれ。二〇〇六年、現代詩手帖賞受賞。二〇〇八年、第一詩集『グッドモーニング』で中原中也賞を受賞。二〇一五年、詩集『死んでしまう系のぼくらに』で現代詩花椿賞を受賞。その他の主な詩集に『空が分裂する』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(二〇一七年、石井裕也監督により映画化)『恋人たちはせーので光る』『夜景座生まれ』など。作詞提供もおこなう。清川あさみとの共著『千年後の百人一首』では一〇〇首の現代語訳をし、翌年、案内エッセイ『百人一首という感情』刊行。エッセイ集に『きみの言い訳は最高の芸術』『もぐ∞【←無限大記号、寝かす】』『「好き」の因数分解』、小説に『星か獣になる季節』『少女ABCDEFGHIJKLMN』『十代に共感する奴はみんな嘘つき』、絵本に『ここは』(絵・及川賢治)、対談集に『ことばの恐竜』。

「2021年 『神様の友達の友達の友達はぼく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

最果タヒの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×