李登輝学校の教え

  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093890526

作品紹介・あらすじ

「人間とは何か」から「『二国論』の真意」「歴史教育問題」まで訪日問題で日本を揺るがせた男がここまでしゃべった!"師"李登輝・台湾前総統と"生徒"小林よしのりの白熱対談。

感想・レビュー・書評

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  • 台湾の民主化を果たした人の哲学が伺える、貴重な本。国を動かすにはこれぐらいの資質が必要だと思い知らされます。

  • 蒋経国(蒋介石の息子)暗殺未遂事件が起こったとき、国民の支持を失っていたことを反省した彼は宣教師をしていた李登輝に後継総統就任を要請した。国民党は世界一の資産を持ち、政治資金に困らない政党。李登輝は議会の民主化(終身地位の大陸選出議員の引退)を実現し、憲法に実効支配する台湾島などを領土とすると明記し大陸反攻を放棄、北京政府に「大陸が民主的政体になれば統一できる」と逆に呼びかけた。政治における軍の支配を排し対立野党・民進党に平和裏に交代するという中国の歴史始まって以来の快挙を成し遂げた。その故に、北京は彼を憎んだ

  • 2001年の李登輝元台湾総統と小林よしのり氏の対談本。台湾の民主化、中国との関係、日本の歴史教育、政治に必要なことについて、非常に分かりやすく考えさせられる。

    以下、アンダーライン箇所
    ・この物資輸送の99%を海運が担っているという実情は、まさに「シーレーン」が日本の生命線であることを意味する。そして、この日本のシーレーンに最も重要な位置にあるのが、実は台湾と沖縄なのだ。
    ・中国を叩くときは遠慮せずに叩かないと駄目なんだ。それから平和的にやりましょうと持ちかける。そういうふうに両刀遣いでやっていくことが大事です。
    ・今やマレーシアもタイも自立して、それぞれが諸外国との関係をつくれるようになったから、シンガポールの重要性はだんだん落ちていかざるを得ない。
    ・アジアにおいてはNATO(北大西洋条約機構)のようなものをつくるのは難しいから、昔の戦国時代の合従連衡方式で強国に対抗しなければならない。個別に合従的な関係をつくりあげていくことが非常に大切です。
    ・日本人ならば『武士道』はぜひお読みなさい。彼の『武士道』は、日本人の精神的支柱が何であるかが非常によく理解できる。
    ・私は蒋経国も蒋介石も批判したりしない。私は政治家として、あの時代にああいう苦難があったんだから仕方なかったと思っている。
    ・最近では「台湾中華民国」というところまで意識が進んできた。
    ・今の状況が、そのまま肯定されていけば、何も台湾が独立を宣言して中共と戦争する必要はないでしょう。
    ・台湾では、中国人か台湾人かという民族的な問題や、省籍の問題を解決していかなければならないわけです。
    ・権力というのは「借り物」なんですよ。
    ・国家情報局は、これまで彼を強くサポートして、いろいろなことをやってきた。ところが、この人たちに必要以上の権力を持たせてしまうと、最後はそれが自分の命取りになるんです。だから、適当なところで歯止めをかけておかなくてはならない。
    ・切るべきときは、思い切って切らなければ。
    ・神様と政治を結びつけたくはない。私個人が精神のやすらぎを得るために祈るんだ。結局、人間は個人的な自分の信念の弱さ、心の弱さを自分自身でしっかりと分かってないといけない。そして、そういったものを理解するために信仰がある。
    ・豊かな社会には、逆に心の不安や精神の腐敗が生じてきます。やたらと功利主義的になったり、自我意識が肥大して、自分の中に自分の神様をつくり上げるような自己中心的な考えの人間が出てくる。こういった問題を、教育によって是正する必要がある。
    ・要するに日本統治時代にインフラ整備されたとは書けないのでしょう。だから韓国の若者は自分たちの国がどのように近代化されたのかを知らないままでいます。
    ・韓国も李氏朝鮮をつくって中国支配から免れたものの、力がないから誰かに頼らなくちゃいけないというときに、日本と合併せざるを得なかったわけでしょう。
    ・植民地化することは決していいことではないにしても、植民地政策を通してその国の人民にさまざまなものをもたらしたことは、事実として認めなくちゃならないということを私も言ったり書いたりしてきたし、多くの人が気づくようになったんですね。それで、台湾の歴史を見直そうという教育改革を行いました。
    ・昔は昔。今は今。どっちも大切だ。昔がなければ何で現在があるのか、そういうところから教育を改めていかなくちゃいけないと思いますよ。
    ・日本人自体、日本とは何かということを真剣には考えていないね。日本は日本なりの考えがあって戦争もした、競争的な立場もあった。それを主体的に行ったという意識があんまりないのじゃないか。
    ・日本は自己喪失状態から脱却しなくてはいけません。
    ・マスコミというのは全然、感情も何もない動物
    ・マスコミをある程度、放っておく。
    ・山本七平さんの言葉でいう日本教というのかなあ。過去は全部悪い、否定する。これが今の日本が罹っている病気だね。
    ・現代のこういう近代化した社会においては、個人がシステムの中の一分子でありながらも、一人一人が非常に有意義な存在であるという充足した精神的境地にいたらしめることができるか、いかにして個人の解放を図るか、ということを何とか模索していかなければなりません。
    ・「社会においては人は理性や合理性のみに立脚して存在しているのではない。合理性よりも、むしろ非常に多くの非合理的な要素、たとえば感情や信頼、その他の相互作用的なものが、人が生存していく上で重要な役目を果たしている。
    非合理的なものにも、存在する必要性や価値がある。人を好きになる、恋愛する、信じられる宗教が欲しい。こうした情緒や感情は、理性や合理性では割りきれないものだ」
    ・「社会的な信頼と、人と人の交流や人間関係は、個々の人間にとって生きるに資する一つの重要なものである。この不合理性の存在をまず認識することが、社会の問題を改善するための第一歩となる」
    ・「人はまず、個人の自由と精神を認めることから始めなくてはいけない。個人の自由と精神を認めることは、社会の多様化を促進する」
    ・「個人個人の価値とその人の存在を受け入れることができる多様性を持った社会は我々はつくりあげていかなくてはならない」
    ・プルーラル・ソサエティーは一人一人の差異、一人一人の存在を認める。しかし、それだけじゃない。上にもっと大きなものがある。つまり、国というものがある。国の象徴、国の旗、国の歌、いろんなものがあるわけだ。これらはすべてお互いに国の伝統、国の制度として守っていかなければならない。
    ・認めるけれども、人に害を与えることは許されない。
    ・個人救済をやってくれるような宗教ではないから、誰も行かなくなるわけですよ。原風景の宗教を取り戻せ、と言いたいですね。
    ・信仰というものは自分に何か一つの強い信念を持たせる。信念を持つと、新しい知恵が出てくるね。知識ではなくて知恵。これは非常に大切だと思う。
    ・今の技術は時代に逆行する使われ方をしている。というのは、第一に労働力の省力化の方向に技術が向いている。労働者の多い国にそんな技術を持ち込んでも、国全体が豊かにはなれないじゃないですか。第二はエネルギー消費の問題。エネルギーの消耗は資本の消耗につながる。経済発展のために資本を導入しようとしても、そこで蒸発してしまうわけだ。
    ・「冷静な親日家」

  • 李登輝学校の教えを知りたくて読書。

    総統を退任した直後の内容。この後に数度訪日され、奥の細道の旅も実現している。

    李登輝さんは現代日本人が失ったものを持っており、日本人が理想とする日本人像なんだなと感じる。だから、多くの日本人が李登輝さんに尊敬を持って注目しているのだと思う。

    感情論ではなく、冷静に歴史を判断する。いい面も悪い面も含めて。

    台湾でいわれる日本精神とは、武士道、道だと思う。公の心であり、国家意識だと思う。他人への思いやり、謙虚さ、素直さ、筋目を通す、親や祖先を敬う。空手道、合気道などの武道にも継承されている考え方だと思う。

    新渡戸稲造の『武士道』を日本人であれば必須の本だと勧めている。李登輝さんの信念の強さ、筋目を通す精神は武士道に関連があると思う。やはり教育は大切だ。

    現代日本の問題点の指摘と日本への提言は的確である。

    印象に残った言葉として、
    結局、人間は個人的な自分の信念の弱さ、心の弱さを自分自身でしっかりと分ってないといけない。そして、そういったものを理解するために信仰がある。
    宗教というよりは魂と精神ですね。そう言ったほうが分りやすい。日本人には大和魂、日本精神があるしね(p128~)。

    何よりも権力も含めた全てのことへの潔さに強烈な好感を覚える。自分もほんの少しでも李登輝さんの潔さを実践したいものだ。

    『台湾の主張』『台湾紀行40』『台湾人と日本精神』『台湾論』あたりも併読するとより台湾へ行きたくなると思う。

    読書時間:約1時間5分

  • 漫画家小林よしのりが李登輝に語らせる。李登輝の人生とか考えを掴むにはこの一冊があれば。

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著者プロフィール

1923年台湾生まれ。元台湾総統。農業経済学者。米国コーネル大学農業経済学博士。京都帝国大学農学部在学中、終戦のため学業半ばで帰台。台湾大学に編入し卒業。米国アイオワ州立大学大学院を経て、台湾大学教授。71年に国民党入党、72年行政院政務委員として入閣。台北市長、台湾省主席などを歴任。84年に蒋経国総統から副総統に指名される。88年蒋経国の死去にともない総統に昇格。96年台湾初の総統直接選挙で当選し第九代総統に就任。2000年任期満了で退任。07年第1回後藤新平賞受賞。20年7月30日死去、享年97。

「2021年 『人間の価値 李登輝の言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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