青いバラ

著者 :
  • 小学館
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (511ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093892315

作品紹介・あらすじ

幻のバラ、不可能の花と言われてきた青いバラが、遺伝子組換えによって実現間近だという…。大ベストセラー『絶対音感』の著者が満を持して世に問う待望の書き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 2度目の読了しました。
    13年ぶりの再読です。
    私は著者の最相葉月さんのファンです。「絶対音感」「星新一」なんかが有名?!ですかね。
    著者の作品を再読したかった事と、昔にバラを育てていたことを思い出す機会があったので再び手した本です。

    著者は、「科学の力」「人間の力」その二つに横たわる曖昧さを主テーマとして、心理追求の探求力、丁寧かつ長期にわたる取材力を活かし積み上げて書き上げるのがスタイルです。
    一見、マニアックなところまで深く到達するが、テーマに初めて触れる読者であっても、心を鷲掴みにし離さなない書きっぷりが彼女の魅力である。

    本書は、タイトルどおり「青いバラ」を巡る物語です。
    ページをめくるとすぐに
    「青いバラができたとして、それが本当に美しいのか」
    との問い。
    その問いは、「ミスター・ローズ」と呼ばれた、
    故人の鈴木省三との対話を柱として本書500ページを貫き通す。
    青いバラは「不可能」の代名詞。だった。
    というのも2021年の今、お金を出せば青いバラは手に入れることができる。
    花言葉は「夢はかなう」。
    「青いバラができたら美しいのか」という違和感、曖昧さ。
    他に例えるなら、
    「AIロボットに人は恋するのか」
    「仮想現実で暮らす人は幸せか」(ちょっと違うかも?!)

    青いバラは自然界には存在せず、世界にいるバラの育種家が何百年かかっても到達できない最高峰。
    その最高峰への道のりを、バラの「美しさ」を中心に、関わる人を巡りながら「人間が感じるバラ」を丁寧な取材で描いている。
    一方、遺伝子組換技術が発明された今、科学のロジックで、その不可能である最高峰を目指す道のりを、バラを「商業商品として科学的なアプローチ」を中心に、関わる人を巡りながら「科学で感じるバラ」を、こちらも相当量の文献と丁寧な取材で描いている。
    著者が常に追い求めているてーまである「人間と科学の曖昧さ」について、
    二つの視点の物語として二重螺旋で織り込んでいく。

    この本を読み終えると思い出すフレーズがある。
    「名前ってなに? バラと呼んでいる花からバラという名前をとったところで、
    バラの美しさは変わらない。」
    (シェイクスピア「ロミオとジュリエット」から)

    著者の作品を読むと、「人間らしさ」を再確認させられる。
    情報化社会の中、その本質を見失いかけている人類。
    目の前に咲いているバラという花が、ただただ美しい、ただただ香りに酔う。
    そういったモノの本質に気づかされる。人間は曖昧だが、それが人間たらしめている。そんな気持ちにさせてくれる本です。

    12年前にこの本を読んでからバラを育てはじめましたが、
    改めて、脳で、鼻で、手でバラを感じたいと思い、
    再びバラを育てようと思いました。
    モノの本質とは何かを探求したい人にお勧めの本です。

  • 「青いバラができたとして、さてそれが本当に美しいと思いますか」”日本のバラの父”、″ミスターローズ”と言われる鈴木省三氏が青いバラについて取材に来た最小葉月氏に対してこう問い掛けることから本書は始まる。実はこの問いは本書の最後で、本書の為の取材を終えた最相葉月氏本人に、そして我々読者に問い掛けられることになる。本編は4章から構成されており、各章の先頭にミスターローズとの対話という形で鈴木省三氏とのやりとりとその様子が収められている。青いバラをめぐる浪漫と情熱。そして進歩する最先端科学技術。私は「バラに青色がない理由」をどう解釈するか・・・それが鈴木省三氏の問いへ答えの鍵ではないかと思います。最上質のノンフィクション。

  • かなり分厚い本。最後の数ページまで史実が丁寧に語られていく。

  • 資料番号:010400661
    請求記号:627.7/サ

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA51760479

  • Blue Roseは不可能の意味。ギリシャ時代から人間は不可能を、夢を、青い鳥をそして青い薔薇を求めてきた。単に存在しないだけでなく、「実現不可能」ということに、虚しい歴史を昔から感じてきたということ。日本では万葉集の時代から知られていた。決して近年になって西洋から来たわけではない!薔薇という花の象徴から日本で「日本のバラの父」と仰がれるMR.薔薇と呼ばれた育種家・鈴木省三氏、そして有名人では鳩山一郎、そして明治時代の山東一郎(山東昭子の曽祖父)、ジョセフィーヌなどが印象に残りました。それにしても鈴木氏の「青い薔薇があったとしてそれが美しいでしょうか」という言葉が皮肉です。著者の豊富な事実調査にビックリ、感心しました。

  • 鈴木省三というバラの育種かとの対談から、
    バラの歴史をひもといていく。
    何か、非常におもい本であり、よく調べているので、感心した。

    「多くの人が知っている 夢の中には
     作り話と嘘しかないもの と
     だが偽りでなく
     しかも後になってあかされる
     そんな夢を見ることもできるのだ。」
    薔薇物語 正篇 ギョーム・ド・ロリス 見目誠訳

    青いバラ それは不可能を意味する。
    見果てぬ夢。
    バラ、キク、ユリ、チューリップにない色

    アントシアニン 
    バラには青の色素がないといわれた。
    しかし、フロリバンダ系の葉には、青い色素が存在していた。

    青い色素 デルフィニジン

    組み込んだとしても、青い色が発現しない。
    カルスからの再生。

    従来の交配の方法として、青いバラはできないのか?
    遺伝子組み替えで青いバラを作るにはどうすればいいのか?

    鈴木省三 一人の人間として、
    こよなくバラを愛し、86年を駆け抜けた。
    育種家の運命とは、それに充分迫り切れていない。

    弟子を作らなかった。結局は作れなかった。

    「青いバラができたとして、
    さて、それが本当に美しいと思いますか?」
    鈴木の問いかけであった。

    私は、美しいバラを作ればいいと思ったが。
    青には、美しさがないというのだろうか?
    好きな色は、青;スカイブルーが圧倒的に多いというのに。
     
    バラは、40億本流通している。
    アルスメールでは、1日1500万本が競られるという。
    ブラックバカラのニュースをテレビでやっていた。

    鈴木省三は、自分の望むバラを作るときには、
    めざす花色や花弁の姿形、葉や香り、大きさ
    に至るまで、どれだけ自分がほしいもののイメージを
    具体的に描けるのかが重要だといっていた。

    その夢が本当の夢であるのなら、
    夢の実現を押し進める意思の力を持たなくてはならない。

    科学は人の営みである。
    先人の研究の上に新たな仮説を立て、
    それを証明し、新たな知見を得る。
    その蓄積こそ真実への限りなき挑戦である。

    20世紀末、科学はゲノムという
    生命の設計図を解読し、
    また、生命の誕生と死の境界線を押し広げた。
    人間も植物も、自然のいきとし生けるものはすべて、
    私たちの手の中に入ったかのように見える。

    だが、科学が、ひとつひとつの固く閉ざされていた
    自然の扉を開ければ開けるほど、
    自然と私たちの関係を解き明かすための
    言葉はとうざかっていく。
    それは、絶望なのだろうか。

    1 アントシアンの構造(水酸基の数や糖、メチル化、アセチル化)
    2 ph調整
    3 自己会合(アントシアン濃度を高くして
      水分子がはいる隙間をなくす)
    4 分子間コピグメント
      (液胞内のフラボンやフラボノールが両側から
      アントシアンをサンドイッチ状に挟んで
      積層構造をつくり、水分子の接近をさける)
    5 分子内コピグメント(芳香族有機酸が
      アントシアンを挟んで積層構造をつくり水分子を避ける)
    6 金属錯体(アントシアンが金属原子と錯体を作ることで
      固定され、さらにフラボンと積層構造を作ることで
      水分子の接近をさける。

  • 初読。
    長年の積ん読本、寝る前に少しずつ読み進めたが、中々時間がかかりました!

    青いバラだけじゃない、薔薇にまつわる古今東西、人間の織り成す物語。

    日本や中国、東洋が発祥の薔薇、
    ヨーロッパから逆輸入された薔薇が日本でどう根付いていったのか、
    ミスターローズ、鈴木省三氏という存在。

    開拓使官園など、文明開「花」あたりが一番興味深かった。
    バイオなんかはさすがにちょっと眠たかったっす(笑)

    2011年現在、コバルトブルーの薔薇は、まだ存在していない。

  • サブタイトルはミスターローズの物語かな。ミスターローズと呼ばれた鈴木省三さんとの対話を軸に青いバラを巡る物語を丁寧に紡いでいるノンフィクションです。バラの歴史そのものから書かれてるので、バラに興味があればおすすめ!

  • (2005.06.25読了)(2004.04.28購入)
    青い薔薇というのは、今まで無かったそうで、花の世界に疎い僕としては、ふうーんそうなのという感じしかない。
    サントリーが、遺伝子操作で青い薔薇を咲かせるのに成功したとか言う話をどこかで聴いた気がするので、この本は、その開発の苦労話を取材した本なのかなという感じで読んでみたのであるが、どうも様子が違った。(2004年6月に、青い薔薇の開発に成功したと発表している。この本のでただいぶあとだ。サントリーのホームページに出ている。)
    「青いバラという言葉には不可能という意味がある」と書いてあるので、念のため英辞郎で引いてみた。「blue rose :青いバラ、存在しないもの、無理な相談」と出ているので、似たようなことが書いてあった。

    この本は、だいぶ欲張った本で、薔薇についてのいろんなことが書いてある。
    日本のバラの父、鈴木省三の伝記を書きたかったのだろうか?文学に表れる青いバラの話を書きたかったのだろうか?日本におけるバラの歴史を書きたかったのだろうか?西洋におけるバラの歴史を書きたかったのだろうか?バラの交配について書きたかったのだろうか?とにかく青いバラにまつわるすべての話が調べ上げられて書き込まれている。それぞれがそれなりにおもしろいのだけれど、500ページもあるといい加減疲れて挫折してしまいそうになる。意地で読み通したけれど丸1週間かかってしまった。

    「キク、カーネーション、バラが世界の三大切り花とされる」
    「鈴木省三(せいぞう)が生涯に作出したバラは、百八品種ほどあった。1963年の〈天の川〉を皮切りに、1970年〈かがやき〉、1972年〈聖火〉、1982年〈乾杯〉、1988年〈光彩〉など、バラ界の頂点に立つ数多くの新品種を発表した。育種家の権利の保護が全く整備されていなかった日本にも植物特許法が必要だとする運動を起こし、海外の育種家たちの応援も受けながら、1978年の種苗法制定に尽力した。」(植物は、草なら種で増やせることが多いだろうし、木なら挿し木・接木で増やすことも可能だ。)
    「人工交配の一番最初は、17世紀オランダのチューリップじゃないか・・・。バラについては、ナポレオン一世妃だったジョゼフィーヌが最初なんです」
    「19世紀以降、日本と中国から東インド会社のプラントハンターを通じてヨーロッパへ渡ったノイバラや庚申バラが、もっぱらヨーロッパの育種家たちによってさまざまに交配され、それが香りと気品のある華やかなバラに生まれ変わって日本に紹介されるようになっていった。」(多くのバラの元になっているのは、日本と中国原産のものとは驚きだ。ヨーロッパ原産だと思っていたら、間違いだったとは!交配を重ねて自分たちの気に入るものに仕上げたというのも賞賛に値することではあるけれど。)

    著者 最相 葉月
    1963年 神戸市生まれ
    関西学院大学法学部法律学科卒業
    1998年 「絶対音感」で第4回小学館ノンフィクション大賞受賞

    (「MARC」データベースより)amazon
    幻のバラ、不可能の花と言われてきた青いバラ。数百年ものあいだ、人類を魅惑し続けてきた「幻のバラ」が、遺伝子組換えによって実現間近だという…。構想・執筆に3年、「絶対音感」の著者が満を持して世に問う書き下ろし。

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著者プロフィール

1963年、東京生まれの神戸育ち。関西学院大学法学部卒業。科学技術と人間の関係性、スポーツ、精神医療、信仰などをテーマに執筆活動を展開。著書に『絶対音感』(小学館ノンフィクション大賞)、『星新一 一〇〇一話をつくった人』(大佛次郎賞、講談社ノンフィクション賞ほか)、『青いバラ』『セラピスト』『れるられる』『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』『証し 日本のキリスト者』『中井久夫 人と仕事』ほか、エッセイ集に『なんといふ空』『最相葉月のさいとび』『最相葉月 仕事の手帳』など多数。ミシマ社では『辛口サイショーの人生案内』『辛口サイショーの人生案内DX』『未来への周遊券』(瀬名秀明との共著)『胎児のはなし』(増﨑英明との共著)を刊行。

「2024年 『母の最終講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

最相葉月の作品

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