十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093897549

感想・レビュー・書評

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  • 共産党大会での胡錦濤退席。李克強の引退。江沢民の死去。そして、中国全土に広がるコロナ対策を契機にした民衆のデモ。異例の習近平3期続投。今、中国で何が起こっているのか。この本は、これらの事件より以前に書かれたものだから、直接的な解説にはならないが、そこに繋がる関係性がよく分かる。単なるゴシップ本ではなく、中国共産党の動きに対し、叡智を養うきっかけになる。

    江沢民は引退後も共産党の重要事項は江沢民に報告すると言う内部規定を作り人事や重要政策に決定権を持っていた。そうすることで胡錦濤の権限を弱めるための仕掛けを作っていた。江沢民vs胡錦濤。胡錦濤から権力を受け継いだ習近平だが、共通の政敵を意識していた事がわかる。

    一方で習近平自身も、簡単に今の地位に昇り詰めたわけではない。比較されていた李克強は北京大学法学部で常にトップ。抜群の頭脳であり、一時、序列の最下位にいたと言われる習近平とは異なるエリート街道。時に、江沢民が習近平を担いで、胡錦濤派の李克強を追い落とす。共産党内の序列が入れ替わる。江沢民の上海閥と習近平の太子党が共闘し、道が出来上がる。江沢民と胡錦濤の間を上手く掻い潜りながら、権限を次第に強めた習近平。

    そして今、である。あれこれ噂話はあるが、真相は分からない。しかし、噂話の根底にあるものを、この本が解説してくれた気がする。

  • リアル中国

  • 項羽と劉邦の世界が未だに続いているんだと思った. 情報は足で取るという感じの取材記事.さらっと読める.

  • 中国を永らく取材してきた記者が文字通り「あし」でかせいだ情報をもとに中国の権力闘争を描いてる。それはまさに凄まじいの一言。習近平の権力基盤が江沢民、胡錦濤の権力闘争の結果、強固なものになっていることが理解できた。共産党と軍部の関係も含め、中国の指導者の言動を理解するうえで大いに参考になると感じた。

  • 書店には習近平本が沢山並ぶようになった。中国はよく分からない。13億人もの国民がいて、爆買いで日本に押し寄せる。一方で、2015年9月に発表された中国のGDPは6.9%であり、予想より低い値となった。実際にはさらに低い値ではないかとの予測もあり、経済の減速が懸念される。ボクから見ると、一国共産主義で纏め上げるには、無理があるのではないかと感じる。そんな中国の今を知りたくて、この本を手にした。

    習近平の娘はハーバード大学を卒業したという。この本のレポート時は4年生だった。もっとも、多くの中国人エリートにとって、米国ハーバードは憧れの大学であるらしい。共産党の権力者たちの子女がこぞって米国に留学をする。そして、米国も彼らを手厚く遇している。一方で、習近平の中国国内の腐敗撲滅運動によって、身辺に思い当たる官僚たちの家族は中国国外に逃れる。その中で一番多いのが米国だ。また、ロスアンゼルス郊外には、中国国内にいるエリートたちの愛人村があるらしい。月子中心といわれる産後ケアセンターもある。つまり、自分と愛人の間に生まれた子供が住んでいる大規模なエリアがあるのだ。中国と米国は仮想敵国同士なのに、なぜ、そういう施設があることを米国は許しているのか。それは、いざとなったときの人質だからだろう。米国の対中戦略の一端の深さを感じる。日本にはこんな考え方、いまはないよなあ。

    著者の峰村健司さんは、習近平は権力闘争をおこなっており、これが中国共産党の原動力ではないかと仮説を立てている。確かに一つの推進力にはなるだろうけど、やはりボクには危うく感じてしまう。でも、隣国中国だからこそ、こういう本はときどき読んで情報を得たいと思った。

  • 朝日新聞記者が習近平が権力を掌握するまでの直近の中国共産党の活動を関係者への徹底的なインタビューと現地調査(中国のみならず、アメリカもその対象となる)により描き出した労作。

    とにかく情報が生々しく、「権力闘争こそ中国共産党の活力」という著者の仮説を裏付けるように、主に江沢民・胡錦濤・習近平の直近3人の首席を中心に、彼らの権力闘争が暴かれる。習近平の首席就任以降、中国では共産党幹部の腐敗や汚職の摘発が精力的に行われており、有力者が失脚するニュースも相次いで報道されているが、その影にこの3者の様々な権謀がどのように渦巻いているかということが理解できる。現在の中国を知る上で、非常に有用な一冊では。

    また、色々批判はあっても、こういう本を出せる記者がいるという朝日新聞の力は大きいということを再認識した次第。

  • 150919読了

  • ★2015年8月16日読了『十三億分の一の男』峯村健司著 評価B

    最近の中国共産党指導部の内幕、背景を描いたノンフィクション作品。

    胡錦濤と江沢民の猛烈な暗闘。そしてその結果、誰も予想していなかった習近平政権。胡錦濤が院政を諦めることで確立された強権を一手に掌握した習近平。それ故に、反腐敗運動で次々と摘発される党幹部らとトップ官僚達。

    ナンバーワンであり続け、多くのプレッシャーと期待、嫉みに潰された現首相の李克強。李克強は、頭の良さでは、習近平より上だが、エリートの冷たさがネックとなり、人をまとめる力に長けて、長く軍の組織にも食い込んできた習近平が、大逆転を果たしたその深い背景とは。

    様々なリソースを基に丁寧な取材で事実を浮かび上がらせる朝日新聞記者出身の筆者。この丁寧さがあれば、大朝日新聞があのような大誤報を連発する事も無かったろうに。

    先日の天津の大爆発事故は、歴代長老達が参加する北戴河会議の開催中の事故だけに何らかの黒い背景をどうしても感じてしまう。

  • 中国政治を知るきっかけになった

  • これは凄い!と一読して太鼓判を押せる数少ない書である。中国共産党の内部を、多くのソースから取材し、わかりにくい中国事情を読み解く内容は、ジャーナリズムとはかくあるべしとの感想をもった。

著者プロフィール

峯村健司(みねむらけんじ)一九七四年生まれ。青山学院大学客員教授。北海道大学公共政策学研究センター上席研究員。ジャーナリスト。元ハーバード大学フェアバンクセンター中国研究所客員研究員。朝日新聞で北京、ワシントン特派員を歴任。「LINEの個人情報管理問題のスクープと関連報道」で二〇二一年度新聞協会賞受賞。二〇一〇年度「ボーン・上田記念国際記者賞」受賞。著書に『宿命 習近平闘争秘史』(文春文庫)、『潜入中国 厳戒現場に迫った特派員の2000日』(朝日新書)がある。

「2022年 『ウクライナ戦争と米中対立』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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