唐牛伝 敗者の戦後漂流

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著者 : 佐野眞一
  • 小学館 (2016年7月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093897679

唐牛伝 敗者の戦後漂流の感想・レビュー・書評

  •  本書の結語ともいうべき一節、<唐牛は、安保闘争が終わったとき、常民として生き、常民として死のうと覚悟した。それは彼の47年の軌跡にくっきりと刻まれている>には、後追いながらも同時代の空気を吸い続けた佐野氏の、そしてあの時代を熱く生きた男たちの唐牛健太郎に寄せた夢を解き明かしてくれたように思う。
     本書には60年安保という時代とその後の日本を、佐野氏が宮本常一の『忘れられた日本人』のスピリットをもって伝えようとするかのような気魄がみなぎっている。
     それにしても全学連の側には田中清玄と山口組三代目田岡一雄が、岸政権の側には児玉誉士夫と右翼が、そしてその間を陸軍中野学校出身者が蠢くという構図は、佐野氏をも含めた70年安保の時代を担った団塊の世代の人間にカルチャー・ショックを痛感させたに違いない。

  • 60年安保の全学連委員長としてヒーローになった唐牛健太郎のその後の人生。堀江ヨットスクールを立ち上げたり、与論島、紋別での漁師生活、そして喜界島での徳田虎雄派の選挙運動。西部邁、青木昌彦のように学者として名を挙げた人に比べて決して幸せとは言えない、日本の繁栄に背を向けた生活。しかし筆者の視線は優しい。唐牛の清々しさ、潔さをそこに見出す。転向右翼の田中清玄、山口組の田岡一雄らからの支援と交流もはショッキングな事実であるが、「東条内閣閣僚が首相になって戦争への道を再び歩もうとしていることは許せないとの気持ちが一致した。」との著者の説明は分りやすい。唐牛自身の言葉「田中清玄はカネは出すけど、口は出さなかった。口は出すが、カネは出さない進歩派より有難かった」、そしてそれを支持する吉本隆明の言葉が明快なのである。

  • 唐牛健太郎。60年安保闘争時の全学連委員長。機動隊車両上に飛び乗り国会突入をアジり、その後に大勢の学生が続いた。交友関係も広く、一水会最高顧問鈴木邦男は唐牛を「僕の中の理想であり、ロマンであり、指標である」と書いた。
    全学連と右翼はなかなか近しいものがある。両者共ナショナリストなのである。今のネトウヨ共には理解出来ないだろうが…。
    現に転向右翼の親玉田中清玄から全学連は資金提供を受け、左翼運動から抜けた後も、田中の庇護にあった。更には山口組の田岡組長からも寵愛を受ける。
    友人達も色々出てくる。全学連副委員長だった西部邁。今でこそ保守派の中ではまともな部類の論客であるが、唐牛とは同志の関係だ。
    学生運動のドキュメンタリー映画を作った惣川は青山高校。ここの教師は100人の生徒を連れて、血のメーデーに参加し、当時の3年生が大量に指名手配され、学校の屋上に住み、下級生が飯を持っていくことになっていて、民青に入るのが当たり前の雰囲気だったそうだ。うーんすごい時代である。惣川の父親は三井化学の監査役で、デモを指揮する惣川に、公安は拡声器で「惣川君、お父さんが嘆いてますよ」と説得した。
    機動隊の弾圧も凄まじく、当時の読売記事で”あとは警棒の雨。「殺せ、殺してしまえ!」とキチガイじみた怒号を飛ばし警棒の雨は瞬く間に血の雨となった”と表現された(この姿勢は現在も沖縄方面で生かされているようだ)が、政府が正力らマスコミの大物を集め、報道姿勢の変更を要請し、この記事は遅版では表現を差し替えられた。
    しかしこの本の主題は、唐牛のその後である。ヨットレジャー会社、小料理屋、漁師、オフコンのトップセールスマン、徳洲会の徳田の選挙参謀…きっと魅力的な人物だったのだろう。女にもモテ、子供にも人気があった。入院中は加藤紘一、西岡武夫、菅直人が揃って見舞いに来るほど。
    1984年にガンで亡くなった。享年47歳。

  • 60年代の全学連の委員長であった唐牛健太郎という人物を題材にしたノンフィクション。ある世代にとっては有名人なのだろうが、まったく馴染みがなかった。
    生前はもとより、死後もなお多くの人に慕われる、一代の快男子と呼べる人物。しかし、何とも物悲しいのが印象深い。
    また、70歳手前ながら、北海道から沖縄まで取材とインタビューに駆け回る著者の行動力、好奇心は驚くべきもの。
    しかし本書は、馴染みのない名前が次々に登場することに加え、著者の思い入れになかなかついて行けず、読みづらかった。

  • 北大自治会委員長から全学連主流派委員長に就任、4・26国会デモでアジ演説ののち、警察の装甲車に飛び込んで逮捕。
    47歳でガンに倒れるまでを周辺の人々の証言から追ったルポ。
    60年安保の指導者が、その後の高度経済成長の波に乗って成功したものが多い中、ヨットクラブ、居酒屋経営、トド撃ちの漁師、オフコンのセールスマン、選挙参謀など職業を転々とした生涯は、敢えて「何物にもならない」「大衆であること」を選んだ人生のようだ。
    希代の「人たらし」の生涯。

  • 六十年安保を指揮した全学連委員長の唐牛健太郎に関するノンフィクション。全く馴染みのない題材だが、なかなか強烈な生涯で興味深かった。佐野眞一の左翼臭は多少鼻につくけど。

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唐牛伝 敗者の戦後漂流の作品紹介

革命なんて、しゃらくせえ!

「昭和の妖怪」岸信介と対峙し、
「聖女」樺美智子の十字架を背負い、
「三代目山口組組長」田岡一雄と
「最後の黒幕」田中清玄の寵愛を受け、
「思想界の巨人」吉本隆明と共闘し、
「不随の病院王」徳田虎雄の参謀になった
全学連元委員長、47年の軌跡。

ノンフィクション作家・佐野眞一が北は紋別、南は沖縄まで足を運び、1984年に物故した60年安保のカリスマの心奥を描く。

「唐牛健太郎を書くことは私自身の過去を見つめ直す骨がらみの仕事だった」――著者3年ぶりの本格評伝

唐牛伝 敗者の戦後漂流はこんな本です

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