逆説の日本史4 中世鳴動編(小学館文庫): ケガレ思想と差別の謎 (小学館文庫 R い- 1-4)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094020045

作品紹介・あらすじ

封印された歴史をウラ側から読み解く第4弾!

日本人の「平和意識」には、ケガレ思想に基づく偏見があり、特に軍隊というものに対する見方が極めて厳しく、「軍隊無用論」のような、世界の常識では有り得ない空理空論をもてあそぶ傾向が強い。また、差別意識を生むケガレ忌避思想を解明し、その精神性の本質に迫る。第一章/『古今和歌集』と六歌仙編・"怨霊化"を危険視された政争の敗者、第二章/良房と天皇家編平安中期の政治をめぐる血の抗争 ほか全七章。解説・川村亨夫。

感想・レビュー・書評

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  • こういう歴史の見方もあるのか!と毎巻楽しんでいる。藤原摂関、院政、武士平家まで。
    言霊当たっているなあ。天皇、殿上人と武士の位置付け、穢れの忌避など、こういう視点で見て来なかった。

  • 第4巻では、3巻に引く続いての言霊信仰と新しく怨霊信仰が取り上げられている。

    本を読めば読むほど、昔の天皇家は継承のために殺し合いまでしてたんだなと思うし、それに伴って祟りを強く怖がるのだなぁと感じる。

    4巻まで来ると、日本人の根底に流れる文化、言霊信仰、怨霊信仰、そして和の重要性。を歴史自体からも感じられるし、自分の生活がいかに影響を受けているのかを実感する。

    4巻では憲法9条があるから平和だ!と唱える人たちを言霊信仰の象徴であるとして批判するが、よくよく考えてみればその通りである。

    綺麗事で済まされる世界じゃない。

    そりゃ、誰だって戦争して殺し合いたいなんて事はない。けど、自国民のことを考えれば、守らなければいけないものがある。

    それを他国に任せたりして、もし守られなかったらどうするの?っていう事だ。別に侵略されても良いというのであれば良いけれど、そうじゃないならそのままじゃいけないのだ。

    自分も昔、綺麗事で飾っていた時代もある。

    世界平和、貧困のない世界など理想を掲げることは本当に大事だ。理想が無ければ、向かう方向が分からないから、そもそも前進できない。

    が、その中でどのように折り合いをつけるのかがポイントだ。理想に近づこうとしたからこそ、上手い折り合いがつく。

    その折り合いを現実に即した形で考えないといけない。

    なんども言うが、誰も戦争はしたくない。でも、守りたいなら守らないといけない。

    誰も泥棒に入って欲しいと思わない。でも窓の鍵は閉める。そう言うことなんだ。

  • このシリーズを読んでいて痛切に感じるのは、「やっぱり週刊誌の連載記事だった本なんだなぁ」ということです。  と言うのもこのシリーズを読んでいると、連載当時のTVやら新聞やらでどんなことが騒がれていて、どの政党が政権を取ってどんな政治を行っていたのか?がそこかしこに見え隠れするんですよね~。  で、その時点で著者がどんな立ち位置で何を考えていたのかはそれこそ鬱陶しいほど力説されているんだけど、テーマとしている話の焦点がボケがちと言うか、置いてけぼりを食らいがちと言うか・・・・・。  もちろん最終的にはそのテーマに戻ってくるし、それなりの結論は出ているんだけど、読了後に強く印象に残るのはクドクドと語っていた「時事的話題」になってしまう・・・・・。

    歴史現象と現代を比較して、日本人という民族が持っているある種の特質についてあれこれ考察するという著者の姿勢には感銘を受けるし、目の付け所も面白いと思うんだけど、その自己主張があまりにもくどいために「歴史考察としてのバランス」を著しく欠いていて、逆に彼が主張する仮説そのものまでもが胡散臭く感じられちゃう(要するに自分の主張を強弁するためのぶっ飛び仮説に見え始めてしまう)副作用を読者に与えているような気がします。  

    そういう意味では話は面白いんだけど酒癖のやたら悪いオヤジにつきあわされて、ご高説を延々と聞かされる羽目に陥って、結構うんざりしてしまっていて、とは言いつつも、ところどころに入る「トリビア的話題」だけはやたら面白くて、次に誘われたらきっと又一緒に飲みに行っちゃう(但し、「トリビア的話題」以外のところは聞き流しておけばいいや・・・というスタンス)んだろうなぁと思っている・・・・・というのと近い感覚で、このシリーズを読み進めているような気がします(苦笑)

    第3巻でも散々聞かされた「憲法改正論議」及び「自衛隊違憲論」に関する著者の主張自体はそこそこ説得力もあるし、汲むべきところもあると思うけれど、とにかくくどくて、しつこい。  因みに KiKi 自身はある程度のところまでは井沢氏の意見に共感するところもあるんだけど、彼があっさりと言ってのけている「シビリアン・コントロールを効かせる必要性はある」というところが問題だと思っていて、その一言で済ませられるほど簡単なことじゃないだけに、「あるべき解」が見つけられないと悶々として早○十年っていう感じなんですよね~。  

    ま、それはさておき、著者も本書で何度も語っているように「藤原摂関政治の時代」っていうのは「庶民的リアル感」からはかなりかけ離れているということもあって、KiKi 自身あんまり興味を持ったことがなかった時代だっただけに、色々と面白い発見がありました。(特に藤原氏中興の祖、良房の記述等)  読み物としてかなり面白かったのは「六歌仙とはいかなる人たちだったのか?」の章で、百人一首でお馴染みの彼らが中央政権ではどんな立ち位置の人たちだったのかは、いずれ KiKi も自分なりに探ってみたいなぁと感じました。

    もう一つ面白かったのが「源氏物語」に関する考察です。  KiKi も小学生の頃、当時放映されていた大河ドラマの影響で「平家物語」に興味を持ち、その後「源氏物語」という物語があることを知った時には当然「源氏物語」は「頼朝の祖先にあたる源氏の物語に違いない」と思い込み、その後古文の参考書みたいな抜粋版 & 現代語訳付の本で読んでみたら、頼朝とはまったく関係のなさそうな天皇家の話であることにビックリしたことがあります。

    その後、「桓武平氏」とか「清和源氏」という言葉を知り、その流れで「光る源氏の君」という設定にも何となく納得していたようなところがあるんですけど、この本を読んで初めて「源氏」という素性の方々と藤原摂関家の確執みたいなことに思い至り、そこから著者お得意の「鎮魂思想」に結びつけているあたり、若干強引な感じもしないでもなかったけれど、それなりの説得力もあって、いずれ KiKi 自身もこの時代の歴史をもう少し学び直したうえで考察してみたいテーマだなぁと感じました。

    実は KiKi は昔からこの日本文学の傑作とされる「源氏物語」が苦手でねぇ。  要するに皇族出身のプレイボーイがあっちこっちの女性にちょっかいを出して、挙句、因果応報、女三宮の不貞に苦しむという話のどこが面白いんだか・・・・と思っていたようなところがあります。  もちろんここで描かれている平安王朝絵巻(王朝風俗)にはそれなりに興味を持ちつつも、そこに溢れる「生活実感の乏しさ」みたいなものが何となく不快だったし・・・・・。  そういう意味では著者ではないけれど、「こいつら、いわゆる政(まつりごと)をいつしているんだ??  『いとをかし』どころじゃないだろう!!  趣っていうのはないよりあった方がいいけれど、それでお腹はいっぱいにならないんだから!!」とさえ思っていたようなところがあるし・・・・(苦笑)

    「ケガレ」という概念に関しては、このシリーズの中で平安時代になって突如として出してきたのがちょっとなぁ・・・・。  個人的には KiKi も日本人の精神構造の中核にあるものはこのシリーズに出会う前から、井沢氏のいう所の「怨霊信仰」「言霊信仰」「ケガレ忌避信仰」にあると思っていたんだけど、この巻で「武士の誕生」の話が出てくるまでこの「ケガレ」に関する記述がほとんどなかったのがちょっと中途半端な感じがするんですよね~。

    個人的にはこの「ケガレ」という概念は、縄文期から弥生期に至る過程で生まれてきた概念なんじゃないかと思っているし、ついでに言えば「霊」と「穢れ」は表裏一体の概念なんじゃないかと思っているんだけど、いずれにしろ「古事記」の世界にも「穢れ」と「禊」を思われる記述があるぐらいなんだから(イザナギの黄泉の国からの帰還時とかスサノオの狼藉とか)やっぱり著者が言う「古代人の感覚」を大事に歴史を考察するのであれば、更には「逆説の日本史」の精神で言うならば、通説的にこの概念の流入期とされる平安期にこの「穢れ」を出してくるのではなく、もっと遡って欲しかったなぁ・・・・・と。

    さて、次は「源平合戦」から「武士の時代」へ進みます。

    (全文はブログにて)

  • 前半面白かった。

  • ①古今和歌集=鎮魂という話
    ②③④藤原摂関政治について源氏物語や平将門の話に絡めて書いてあり、面白かった。 藤原氏が栄華を極めた時代に源氏メインの世界最古の物語ができたことと平将門が近代でも怨霊として恐れられてたことは面白い
    ⑤荘園と院政の成り立ち
    ⑥武士とケガレ
    ⑦平氏と平家物語 あたりも興味ある話題。
    全体的に 今までより章が細かく読みやすかったけど、思想強めの他者(歴史学者、護憲派)批判が随所にありすぎてつかれた(笑) そういうのをあとがきにまとめてくれたら読みやすくなると個人的には思いました。

  • 歴史を独自の観点で紐解くシリーズの4弾目は平安時代の藤原摂関政治の背景や源氏平氏、武士の成り立ちや部落差別など、昔に学校の授業で出てきたなぁとか思いながら読んでた。家系のつながりが難しい笑 あと白河上皇がえげつない。

  • 独自の歴史観が面白い

  • 時々読んでみるかなぁ、と思出すわけだけど、毎回、おおうっ、と膝を打つわけですよ。ともかく日本人ならではの感覚がうまいこと説明されてて、気にいる人もいれば気に入らない人もいるだろうけど、納得させようとぐいぐい迫ってくる。
    といっても納得させられるのは、自分がそもそもアンチ穢思想であって、いや、まぁ多分だけど、落ちたものは3秒経っても食べるし、汚れてないのに上着を洗濯しないし、まぁケチなんかもしれんけど。こういう話題は知恵袋あたりじゃ盛り上がるネタだもんなぁ。
    そんなこんなでたまに読んでも脳にシワが増える感がたまらんのです。後は、天皇の世代交代とか話が全然ついて行けないので、そこが面倒なのをどうにかしたい。やっぱないとダメなん?

  • とても面白いそうだ。

  • 文体が読み難い

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著者プロフィール

1954年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSに入社。報道局在職中の80年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞。退社後、執筆活動に専念。独自の歴史観からテーマに斬り込む作品で多くのファンをつかむ。著書は『逆説の日本史』シリーズ(小学館)、『英傑の日本史』『動乱の日本史』シリーズ、『天皇の日本史』、『お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで』『お金の日本史 近現代編』(いずれもKADOKAWA)など多数。

「2023年 『絶対に民主化しない中国の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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