逆説の日本史5 中世動乱編(小学館文庫): 源氏勝利の奇蹟の謎 (小学館文庫 R い- 1-5)
- 小学館 (1999年12月3日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094020052
感想・レビュー・書評
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今回は、鎌倉幕府の成立から御成敗式目の制定までが扱われています。
平安時代以降の中央の土地をめぐる政策に不満を抱き続けてきた武士たちが、自分たちで政権を作ろうとしたのが幕府だったとする見方が、本書の全体を貫いています。戦術の天才だった源義経は、武士による政権を作るために努力していた兄・頼朝の意図を理解せず、そのために頼朝に討たれることになったとされます。さらに同じ観点から、北条氏による源実朝殺害に至るまでの鎌倉時代初期の歴史の流れが解説されています。
一方、北条泰時が制定した「御成敗式目」は、武士の「道理」を実現するものでした。著者はそこに、現代にまで続く日本人の「自然」理解を読み取ろうとしています。
今回は主題が絞られているためか、政治的な発言がさしはさまれるのもあまり気にならず、おもしろく読むことができました。 -
本巻で著者は、義経のアイドルとしての人気が、判官贔屓につながった、すなわち、「怨霊のタタリを予防するための「心構え」が「和」であり、それでは防ぎ入れずに発生してしまった怨霊への対症療法が「神として祀ること」および「判官贔屓する」ことなのである。」として、怨霊信仰と「和」の精神から判官贔屓の由来を説明している。また、明恵の「あるべきよう」=「日本自然教」が朝廷と幕府が併存する「朝幕併存体制」を成立させた、と説く。
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相変わらず切り口は面白いし、「なるほど」と膝を打つことも多いのだけど、ふと疑問に思ったのは「自分たちの感性をどこまでこの時代に適合させていいんだろう?」ってこと。
「怨霊」について現在とはまったく違う考えが膾炙していた、という主張はとても説得力がある。
じゃあ
「あいつ、向こうの仲間に入りやがって」
とか
「戦術を優先させて、戦略を台無しにするのは愚かな行為だ」
とか、僕からしたらもっともな感情は、はたして当時はどうだったんだろうね。
ほんの数十年前の小説を読んでも、たとえば貞節に関する感覚なんか今とまったく違ってたりして、だから僕たちが素朴に「アプリオリな感性・態度」と思っているものも、実は時代の産物かもしれない。
なんかそんな想像をしてみた読後数時間。 -
(2008/04/04読了)
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相変わらず、面白い。本筋に関係ないけど、「アニミズム・マナイズム」の対比は「アマ・マナ」→「オモ・モノ」の対比を使った方が日本語として明瞭になる。オモ主義とは情理主義、モノ主義とは合理主義のこと。これらは現代思想の文脈では実存論と実在論になる。根拠に興味のある方はjump。http://homepage2.nifty.com/midoka/