銃口〈下〉 (小学館文庫)

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著者 : 三浦綾子
  • 小学館 (1997年12月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094021820

銃口〈下〉 (小学館文庫)の感想・レビュー・書評

  • 感動する小説は世の中に数多あります。
    ただ、打ちのめされる小説に出合うことは滅多にありません。
    打ちのめされました。
    世に言う「北海道綴り方教育連盟事件」を題材にした94年刊行(単行本)の小説です。
    と聞けば、こういうご時世です、「反戦平和小説ですか」「サヨクですね」と揶揄する向きもあるでしょう。
    それは半可通というものです。
    早合点するなかれ、主人公の竜太は紛うかたなき皇国民です。
    陛下の大御心を理解し、奉安殿に向かって深々と、それは見事な最敬礼をする青年です。
    そういう青年が「アカ」と疑われ、治安維持法違反で過酷な取り調べを受けたのです。
    げに恐ろしいのは法律の中身でも政治家でもない、法律を拡大解釈し、政治家の意を体して現場で運用する官憲なのだと思いました。
    いや、まあ、それはいい。
    ある種の小説を読むと、すぐに「テーマは何か?」「この小説の教訓は?」と考えてしまうのは私の悪い癖です。
    本作は、一個の物語として実に読み応えがあります。
    小説は、主人公の竜太が小学3年のころから書き出されていきます。
    大正天皇が崩御して昭和に変わっていく時分です。
    小学校で竜太は坂部先生という恩師に出会います。
    教育に情熱を注ぐ坂部先生の影響で、竜太も教師を志すようになり、やがて師範学校を出て夢を実現します。
    ところが、たまたま綴り方連盟の会合に顔を出し、記名したことで無実の罪を着せられ7か月間にもわたって拘留されることになります。
    この間、厳しい取り調べが続いたわけですが、竜太が何にも耐え難かったのは教員の退職を強要されたことです。
    保護観察の身となって娑婆に出た竜太を、さらなる悲劇が待ち受けます。
    同じく綴り方連盟に加担したとして逮捕、拘留されていた坂部先生が、厳しい取り調べの末に亡くなっていたのです。
    竜太は慟哭します。
    私もこの場面では涙を禁じ得ませんでした。
    竜太はさらに時代の波に翻弄されます。
    召集令状が来て、兵隊として満州へと渡るのです。
    そこは死と隣り合わせの戦場でした。
    実は、思想犯の前科のある者は、とりわけ厳しい任に就かせるという不文律があったのだそうです(しかも竜太は思想犯では断じてない!)。
    この点、先年読んだ吉村昭の「赤い人」を想起しました。
    ただ、そんな竜太にも心の支えとなってくれる人がいました。
    その一人が、何と言っても、竜太の小学生時代からの同級生であり、恋焦がれて来た芳子です。
    治安維持法違反容疑での拘留、そして戦争とさまざまな障害に阻まれながら、芳子との恋を成就し、敗戦直後に挙式する場面は目頭が熱くなります。
    竜太を陰に陽に支えた家族、短い教員生活で出会った尊敬すべき教師たち、さらに戦場でも心優しい戦友に恵まれ、その交流のひとつひとつがジンと胸を打ちます。
    そうそう、小説のごくはじめの方に登場する金俊明という男に触れないわけにはいきますまい。
    タコ部屋から逃げ出してきた朝鮮人です。
    この男が物語のキーマンの一人だったのですね。
    興趣を殺ぐことになるので、これ以上は触れませんが…。
    戦争は言うまでもなく、人の命を脅かし、大切なものを有無を言わさず奪っていきます。
    著者の筆運びは淡々としていますが、行間からはそんな声が聞こえてきそうです。
    ただし、そんじょそこらの反戦平和小説では断じてありません。
    物語の最終盤、竜太が愛する祖国の敗北に涙を流したことを付記して筆を置きます。

  • 私の拙い言葉から、
    述べるべき言葉を探し出す事は
    難しい事ではありますが。
     
    これは歴史の一頁というより
    事実である。
    それだけは綴っておきたいと思います。
     
    私にとり父母・祖父母の時代である
    「銃口」が描く時代。
    現代から見ると、
    どの様に見えるのでしょうか。

    生きるとは。
    希望の光を見出すには。
     
    そんな事を思いつつ再読しようと思います。
    今、再び。

  • 上巻に引き続き再読です。

    学生の頃、貪る様に読んでいた割には内容は余り覚えておらず。

    結婚目前に召集された主人公は北海道から満州へと行きます。
    そこで様々な人に助けられる。

    最後の最後に『昭和が終わってもまだ色々な事が尾を引いている』と書かれていますが、本当にその通りだと思う。
    戦争が終わっても、人の心に残った傷は消える事は無いのだと改めて思いました。


    やはり、三浦綾子作品は私のバイブル的存在だなぁ。
    これを機に、他の作品も読み返してみよう。
    新たに感じられる部分が沢山あるのだろつな。

  • タイトルにサスペンス的な空気を感じたけど、
    想像していたような話とはまったく違ってた。

    女史が描く公正明大な人物たちは心清らかで真っ直ぐで、
    その隙のなさ、溢れる暖かさに泣かされることしばし。

    人を信じられなくなったときにオススメ。
    かな。

  • 「人間はいつでも人間でなければならない。獣になったり、卑怯者になったりしてはならない。(中略)苦しくても人間として生きるんだぞ。人間としての良心を失わずに生きるんだぞ」

    文中のこの言葉が心に残る。私がなりたい人間と重なっている部分がある。

    主に旭川を舞台に、神、キリスト教、宗教、戦争が主なテーマ。

    特に日々の生活のなかで戦争が忍び寄ってくる様子がじっとりと書かれています。
    力ずくで他人の思想を縛ろうとしている世相など。
    この本を読んで、どんな戦争も反対したいと改めて実感しました。

  • 治安維持法のもと、いわれない無実の主人公がその経歴の為に翻弄される。
    主人公だけでなく、あらゆる人々が人としての生き方を戦争によって蹂躙され、そんな中でも人として正しく生きることの美しが描かれる。
    三浦綾子の長編としては最近の作のため、平易で美しい文章で読むことができる。

  • 今『銃口』の読書会に参加中。
    ふだんはひとりで向き合う本に、みんなで向き合う。
    感じるものは本当に人それぞれ。
    毎回新たな発見があったり、自分の感受性を肯定的に捉えてもらえたり。

  • 旭川などを舞台とした作品です。

  • 人としてどう生きるか・・・何を選び、何を大切にするか、時代の波の中で誠実に向き合うことの大切さを教えてくれる本です。私のこころの1冊です。

  • 教師を一生の仕事と心に決めた少年の一生。成長し、教師になり、治安維持法のもと教師の職を追われ、兵士として満州へ行き、日本へ帰ってきて再び教鞭をとる。

  • この本に出会えて良かった。
    人生で一番影響を受けた本かもしれない。

    もう一度読み直したい。

  • すごくすごく、戦争が解る本やった。
    汚い所も全部書いてあって、絶望だらけで、
    もう読むのが辛すぎて
    途中何回も読むのやめようかと思った。
    でも読んでよかった。相変わらずのキリストやったけど、この人の本はそれだけじゃないからいい。沢山考えさせてくれて、戦争の事にちゃんと向き合おうって思った。

  • 彼女の書く本は私のバイブルです。

  • 中学生のときに読んだので難しかったが、内容は今でも鮮明に思い出される。

  • 大学の文学の時間に課題だったのか,薦められただけだったのか忘れたけど紹介されて読んだ作品。普段軽い小説を読みがちだけど,たまにはこういうのも読んでもいいかもと思った。2巻とも厚いけど読みきった。

  • 三浦綾子氏最後の長編小説の下巻です。大切に読んだ記憶があります。

  • 三浦綾子の本は聖書もの以外は全て読破したけれど、一番好きな本です。

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