黄金旅風 (小学館文庫)

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著者 : 飯嶋和一
  • 小学館 (2008年2月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (604ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094033151

黄金旅風 (小学館文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 実権が徳川秀忠から徳川家光に移る過渡期における長崎を舞台にした小説で、鎖国への道を歩んでいく貿易政策の変化と切支丹への取締の様子を描いている。

    史実に基づいているのか、末次平蔵の変死とか、内町火消組の組頭・平尾才助の最期とか、いささか勿体ないような退場の模様である。長崎の民町を守る、その一点だけでぶれることなく凛とした末次平左衛門が魅力的だった。

    “夢を見ているのか現のことなのかどこか判然としないまま右肩越しに平左衛門が振り返った時、蝶は再び高く上昇し、焼け野原となった町を軽々と飛び越えて見えなくなった。夢のなかに一人だけ置きざりにされた思いばかりが平左衛門の内に残った。”

  • “放蕩息子”と言われた、実は広い視野を備えていて、正論を胸に秘めた、強い心を持つ男が代官に就任し、恐るべき陰謀を動かす敵役達と対峙…非常に痛快な物語だ!!未読の皆さんに御迷惑を掛けてしまうので仔細は綴らないが、何となく目頭が熱くなる場面も在り、夢中になる…他方で「政治とは何か?」、「“権力”とはどういう性質のものか?」というような普遍的なテーマを持ち、加えて「江戸時代とは何だったのか?」というようなテーマに関しても、キリシタン弾圧の経過や貿易制度の変遷という、平左衛門達の時代に実際に起こっていたことを交えながら、一定の回答例を示唆している…非常に充実した作品だ!!

  • 「長崎」の歴史小説です。江戸時代初期、鎖国直前の「長崎」が主人公です。
    そして、渋い小説でした。渋い。渋すぎる。
    飯嶋和一さん、という、1952年生まれの小説家さんです。
    とにかく、凄い描写力。筆力。説得力が高い、でも地味な、歴史小説好きな大人向けの小説ですね。

    将軍様で言うと、三代家光の治世の、初期。
    キリシタン弾圧から鎖国へと向かう、負の変動期とも言うべき時代。
    そこで、悪行を振るう長崎奉行に立ち向かう、長崎代官・末次平左衛門さんを中心とした、群像劇風のお話です。

    2004年に出版された小説です。
    新刊当時に、たまたま版元の小学館の文芸担当の方、「黄金旅風」ご担当の方と話す機会があったんです。
    そのときに、その方が営業トークを超えて、絶賛されてたんですね。
    「大人の男性にとって、たまらない本格小説である」という感じで。
    それを聞いて、当時、新刊で買ったんです。ハードカバーで。

    なんですけど、どうにものめり込めなくて。
    何しろ冒頭から、状況描写が執拗に多くて、なかなか心情的に寄り添える人物が出てこないんですね。
    それで、もう、ほんとに冒頭部分くらいで、挫折。
    断言しますが、少なくとも掴みは、良くありません。

    それから9年くらい経って。
    去年から、またちびちび、他の本と並行して読み始めたんです。当然冒頭から。
    そしたらだんだん面白くなってきたんですね。
    なんだけど、これは僕の趣味かも知れませんが。
    「で、いったい、何の話?誰の話?」という軸がやっぱりふらふらしてて、よく判らない。
    それで、多分全体の1割も行かずに、再びストップしてしまって。

    今年に入って、つい先週くらいからか、なんとなく再び読み始め。
    そしたら、感覚的に言うと、全体の1/4くらいまで行くと、俄然面白くなりまして。
    「あ、つまり、悪人の長崎奉行に、善玉の長崎代官が、街の為に立ち向かう話なんだな」と。
    そこから先は、割と止まらずに面白くなって、読了。10年越しでした。

    ########

    基本的には、面白かったんです。読後感としては。
    なんですが、初めに苦情から書いておくと(笑)。

    とにかく、掴みが悪すぎる。
    序盤、心情で寄り添える人物が前面に出てこない。
    また、デティール描写が執拗で質が高いんだけど、なにしろ馴染の薄い、17世紀初頭の対外貿易船舶などの話なので、よくわからない。
    だから、序盤は、ただたんに「俺知ってるもんね。俺勉強したもんね」というレポートを読んでいる気分になってしまう。
    何しろ、末次平左衛門が出てきてしばらくしないと、「あ、この人を軸に話が進むのね」ということすら分からない。
    序盤、暗闇の海を航行する心細さ。

    まあ・・・あとは・・・平左衛門さんという主人公の信念が、
    「長崎の町の人々を、守りたい」という、なかなか利他的な正義感なんですが。
    そこのところが、ちょっとある種、月光仮面すぎるかなあ?・・・と思ったりしましたが。
    行動は地味でリアルなんですけどね。心情的に。

    ・・・と、いう苦情がありつつ、でも、かなり、面白かったんですね。

    ●一回出てくれば、末次平左衛門さんは、主人公という魅力十分に君臨してくれます。
     また、火消の頭の才介さんとの友情物語も、感情移入できます。
     (ただ、その才介さんが半分くらいで死んじゃう。あれはどうなんだろう)

    ●状況描写、背景描写が執拗で、熱がある。客観性が高い。
     知らず知らず、17世紀序盤の長崎の街に、読んでる側も降り立った気分になれます。
     貿易の利、切支丹の弾圧、まだまだ完璧に盤石ではない徳川の支配。
     ポルトガルとイスパニアとオランダの利害関係。
     鎖国へと大きくゆるやかに舵を切っていく時代の圧力。

    ●描写力とかぶりますが、「長崎」という町の魅力ですね。
     南蛮文化が入り混じり、町人と経済の合理性、切支丹の平等主義が根にある。
     一方で船乗りの街、船の町。海に生きる男たちの魅力。

    ●「町」ということと通じますが、群像劇性ですね。
    ①平左衛門②火消の才介、その弟③元切支丹の鋳物職人④その職人を連れてくる、商人⑤平左衛門配下の名船乗り・・・
    などなど、その章その章に応じて様々な人が出てくる。一人一人、執拗な筆力で人柄が、輪郭がはっきりしている。
    その多様性が長崎の魅力であり、それが全て悪奉行に迫害されていく。全てが平左衛門の戦いに収斂されていきます。このあたり、見事です。

    ●ご都合なところがほとんどなく、全くない。
     (末次さんが、長崎の奉行を告発した、というのは史実なんですね)
     政治状況、経済状況を踏まえたリアリズムが盤石です。
     なので、安易なヒロイズムや情緒的な盛り上げ場がある訳でもないのに、ぐいぐいと引き込まれます。
     そのあたり、大人な娯楽性。渋いです。
     一方で、どうしても痛快突破感の高い突き抜けたカタルシス、というのは無いんですが。

    と、いう感じで、非常に完成度のある、重厚な読み物。
    当然寡作な作家さんなんですが、また他のも読んでみたいな、と思います。
    (序盤だけもっと上手く読ませて欲しいけど・・・)
    しかしこの、本格的で執拗な筆力と、外連を拝した渋み。感傷性にも恋愛にも頼らない。
    よほどひねくれた?ベストセラーが嫌いな?・・・確信がある作家さんなんでしょうねえ。

    あと、最後に。
    長崎が好きな人、長崎を良く知っている人、長崎の歴史に関心がある人・・・。
    そういう人には、タマラナイ小説だと思います。

  • 重かったー。気分的にじっくり読みたいときには満足感も得られそうだけど、ちとそういう気分でなかったためにともかく重い。というわけで上っ面をなめてしまった感ありながら、正義の味方というものもなく、厳しい現実を突きつけられながら読んでいくという、ある種のストイックさを求められるのであった。歴史は厳しい。

  • この作家の本は全て好きだ。
    スタイルがある。スタイルとは良いか悪いかではない。有るか無しだ。

  • 配架場所 : 文庫
    請求記号 : BUN@913@I115@1
    Book ID : 80600058379

    http://keio-opac.lib.keio.ac.jp/F/?func=item-global&doc_library=KEI01&doc_number=002523552&CON_LNG=JPN&

  • 読み応えがあり過ぎでした。久しぶりにこんなに読了時間がかかった(苦笑)飯嶋和一初体験だったけど、情報量が半端ないす。大きなテーマは鎖国開始に翻弄される、日本の窓口たる長崎人。改行も少なめ、会話分も殆どなく紡がれる物語は、下手するとお腹いっぱいになるだけっていうリスクもあるけど、本作の場合は、惹き付けて離さないだけの文章力とか、物語構成の妙があって、良い意味でのくどさが満点でした。主たる漢が早々に姿を消したり、意外にサラッと人が死んでしまったりもあるけど、各人が魅力的に描かれているせいで、いちいち心に刺さる。月並みな感想ながら、偉大な自国の先人を見習って、自分も精進努力しなければ、です。

  • 2005年本屋大賞8位

    寛永5年。鎖国直前の長崎を背景に朱印船貿易の利権を争う数年間を描いた歴史ドラマ…
    と一口に言えないほどは、たくさんの話が混在している。
    オランダ東インド会社高山国(台湾)長官と対峙する浜田彌兵衛の話
    東洋人を馬鹿にするオランダ人をバッサバッサ斬っていく人望の厚い才助の話
    亜者である名鋳物師の真三郎が亡くなった子供たちの像を作製するキリシタン弾圧の話
    などなど徳川家光時代の長崎がてんこ盛り。
    初代末次平蔵時代までは非常に熱くて面白かったのですが、本筋であろう末次平左衛門と不正をはたらく竹中重義采女との対決は、歴史に弱い自分には複雑すぎて疲労困憊orz
    日本史ちゃんと勉強していたらこの本もっと面白く読めたろうになぁ、と。

  • 竹中重義の陰謀から長崎を守った末次平左衛門の話。ルーツの中に隠れキリシタンの家系もいるので興味深く読んだ。ページ数が多くて読むのに1か月以上かかった。

  • 読むのに時間がかかりました。
    歴史小説。そう、小説なんですけど、盛り上がりがないんです。

    徳川秀忠から家光へ、将軍が変わり時代も変わろうとしているとき。
    海外との交易の玄関口だった長崎を舞台に、締め付けを強めてくる幕府、私腹を肥やそうとする大名たち、キリシタン、南蛮人などを相手に、外町代官末次平左伊右衛門が町民の平和と安全を守る物語なのです。

    ドラマチックに書けば、どこまでもドラマチックになり得る題材を、淡々と書き進めるのはいいのですが、個別のエピソードが本筋にからんでこないのが、つらいです。
    一つ一つのエピソードには、人としての思いがあふれ、なにがしかのものを次世代につなごうとしているのですが、エピソードが終わればその思いがリセットされてしまうように見えます。

    面白いのに。
    面白いのに、今一つノレない。

    登場人物に感情移入しながら読むタイプの私としては、かなり苦戦しました。
    なので作戦変更です。

    これは小説ではありません。
    例えていえば、新聞の短期連載特集記事。
    そう思うことにしました。

    一つ一つの出来事は直接のかかわりが薄くても、同じ時代同じ場所で起こった出来事なんです。
    関係ないわけがないんです。
    淡々と書かれた事実を読む。事実を読む。事実を読む。
    そうすることで見えてくるその世界の在り様。問題点。

    この人がやった事だから、ではなく、名前のない人々が、それぞれの考えで積み重ねてきた出来事が歴史を動かす〈こともある〉。

    事実を元にした小説ではありますが、私の勉強不足によりどこが事実でどこからがフィクションなのかはわかりません。
    それでもその時代から日本は海外渡航をすることなく幕末まで、長い鎖国期間を迎えます。

    加藤清正の嫡子、黒田長政の嫡子が次々に領地を没収される中、幕府の思惑や海外の勢力からどうやって長崎の町の安寧を守ったのか。
    淡々と書かれていてもなお、熱いものを感じるのは確かです。
    なかなかに手こずる読書ではありましたが、読み応えのある一冊でした。

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江戸寛永年間、栄華を誇った海外貿易都市・長崎に、二人の大馬鹿者が生まれた。「金屋町の放蕩息子」「平戸町の悪童」と並び称されたこの二人こそ、のちに史上最大の朱印船貿易家と呼ばれた末次平左衛門(二代目末次平蔵)とその親友、内町火消組頭・平尾才介である。卓越した外交政治感覚と骨太の正義感で内外の脅威から長崎を守護し、人々に希望を与え続けた傑物たちの生涯を、三年の歳月をかけて、壮大なスケールで描いた熱き奔流のような一千枚!「飯嶋和一にハズレなし」と賞される歴史小説の巨人が描いた、一級の娯楽巨編。

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