「武士道」解題〔小学館文庫〕: ノーブレス・オブリージュとは (小学館文庫 R り- 4-2)
- 小学館 (2006年4月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094057928
作品紹介・あらすじ
「日本人よ、やまとごころを取り戻せ」-。二〇〇〇年に総統職を退いて民間人になった後も、その発言や行動が注目されてきた台湾の哲人。本書は、その李登輝が日本の現状を憂い、「指導者」たるべきものの心構えを「ノーブレス・オブリージュ」をキーワードに説いた作品である。テキストは、新渡戸稲造の『武士道』。欧米では、宗教教育なくして道徳なしといわれるが、日本では武士道が指導者たちの道徳規範だった。日本精神の真髄を、戦前日本の教養教育を受けて育った著者が、古今東西の哲学知識を総動員して解題する。
感想・レビュー・書評
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読み終わった, まずは、本書の抜粋を読んでください。---231~232ページ かつて、ルース・ベネディクトは、名著「菊と刀」の中で、「日本人は『恥の文化』に生きてきたから、『罪の文化』にとらわれてきた西欧人とは全く異なった、世界でも特異なアイデンティティーを確保するに至った」 と指摘しました。しかし、いまの日本のどこに真正の「恥の文化」が生き残っているというのでしょう。カーライルも、「恥はすべての徳、善き風儀ならびに善き道徳の土壌である」 と言い切っています。敗戦の直後に、アメリカの高名な文化人類学者から、「日本人の国民性」をあれほどまでに高く賞賛されたというのに、この直後から、自らの足で「武士道」を踏みにじり、「恥の文化」を捨て去った ――― これが、私が最も愛した日本というすばらしい国における戦後史の偽らざる実態であったとすれば、かえすがえすも無念至極なことと言わざるを得ません。--- 著者は元台湾総督、李登輝氏です。日本人よ、自信を持て、日本人よ、「武士道」を忘れるな、と戦前、戦中を日本人として生きた著者は、我々に呼びかけます。日本をこれほどまでに愛し、自身の祖国と中国との関係悪化の危険性を冒してまで本書を出版した李登輝氏の心情には、計り知れない尊さを感じざるを得ません。 今の日本は、世界に類を見ない自虐的史観を持ち、一方で、小ざかしい処世術と、拝金主義がまかり通る情けない国家となってしまいました。しかし、このような状況を予期し、警鐘を鳴らし、本来、大和民族に備わった精神文化を伝える著書を残した新渡戸稲造を生み出したもの日本であり、非征服民である李登輝を前述のような心情たらしめたのも日本であります。今こそ、個々人が、本来の日本精神文化とは何か、本書や、武士道(新渡戸稲造著)に問うべき時なのではないでしょうか。
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前回に引き続き李登輝からの日本へのエールである「武士道」解題を読む。
こちらも同僚からのお薦めの本。
元台湾総統の李登輝が「武士道」を解説したものだが、海外から日本の持っていた思想をこのように褒められるのは嬉しいことだが、同時に今の日本人は失くしつつあると言われるのは耳が痛いことである。
李登輝が武士道の中に観るノブリス・オブリージュの精神は、現代の日本から消えつつある。
その解説から改めて印象づけられる武士道の思想の数々。
武士は食わねど高楊枝
義と勇、仁と礼の密接不可分な繋がり
誠とロゴスの類似性
ファウストで言及していることが本質的には誠であり、そこから騎士道と一脈通じるところがあるという推察
名誉、恥の文化が薄れてしまった日本では、若者の躾に無理が出てきていると。
だからこそ日本人は、思想・道徳の教育を考えなおさなければいけないという。
そしてまたも心に残る松蔭の詩
「かくすればかくなるものと知りながら
やむにやまれぬ大和魂」
うーん、これほどの知性を持った人が国家元首だったなんて、なんと素晴らしいことか。
台湾の歴史を見れば、彼の時代に素晴らしい発展を遂げたことは間違いない。
彼我のリーダーの差を感じて、ここにも失われた武士道の大きさを改めて感じてしまった。 -
昔の日本の教育ってすごい!こうやって自分を省みずにこの国の将来を思って教育に人生をかけた人がいたから、今の私たちがあるんだ、と実感でき、私も将来の子供たちの為にがんばろうと思える一冊。
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忘れられた日本。日本人のあるべき姿があるのかもしれない。
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こういう人が日本にも出て欲しいと思う。頭がいいのは当然ながら、ノーブレス・オブリージュを本気で進めた人だと思う。義・勇・仁・礼・誠。昔の人はこれらの文字が意味するところを懸命に考え、筋の通った行動を取ったのだと思う。もちろん昔と今では状況の複雑さが違うが、だからといって物事の基準、行動の規範がブレてしまってもイイ、という訳ではないし、複雑だからこそ基本がしっかりしていることが求められると思う。理屈ではなく、そうあるべきもの、という世界。それを宗教というのかどうか分からないが、どちらが正しいかとなった時に基準になるべき考え方はあってもいいんじゃないか。最近はそういう考え方をせず、自分にとって都合が良いか悪いかだけで動く人が多い気がする。李登輝もそういう日本が心配になったのだろう。
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よくわからなくて、途中でやめた。
思っていたのとは違った。 -
最も辛いことを貫けるかどうか、それが自分に課した最大の課題だった。
どの宗教に限らず、絶対を追求するかぎりにおいて、人間はそれぞれの環境に基づく必然性を通して、自己の意識を深化する。
東洋にも仁とか慈悲という思想がある。仁は親子兄弟という血縁に根差す親愛感に発するもので、この感情を無縁の人にまで広げていくことが仁道。仁が人を生み、人が仁を生む。すなわち国民や国家の真のリーダーというのは時代の要請で排出してくるものであり、その人に仁がなければ必然的に消えていく。 -
新渡戸稲造の「武士道」をもとに、昨年7月に亡くなられた台湾の元総統が「日本人の精神」を解かれた本です。日本統治時代の台湾に生まれ、22歳までは日本人だったという李登輝が、日本の現状を憂いてこの本を書いたのが、もう18年前。今の日本を見て何とおっしゃるのでしょうか…
第1部は「日本的教育と私」と題し、日本の教育のもとで、膨大な古今東西の先哲の書物を読み、思索にふけった日々と新渡戸稲造との出会いが描かれているのですが、そこで、現在の日本における、一般教養を軽視する風潮を憂慮されています。李登輝は特別だとは思いますが、それでも彼に「当時の日本の高校生や大学生は、多かれ少なかれ、先哲の本を読み漁り、形而上学的な世界を彷徨い、思索し、精神的な成長を遂げていったのだ」と言われると、もはや基礎体力が違いすぎる、と言う気がしてなりません。
・・・と、くじけそうになりながら第二部。新渡戸稲造の「武士道」を読む、です。
ここでいう「武士道」は、権力を維持するための過去の「武士道」ではなく、精神的かつ理想的な生き方を追求するための「道徳規範」としての「武士道」であり、日本の精神的規範だということですが、当然、書かれたのが明治時代ですので、今の時代にはそぐわない部分もあると思います。でも、「伝統」と「進歩」という一見相反するかのように見える二つの概念も、精神的な「伝統」や「文化」の基盤があるからこそ、その上に素晴らしい「進歩」が積み上げられるのであり、「伝統」なくして真の「進歩」などありえない。クラーク博士も、「物質的な発展や近代化もさることながら、あくまでも国づくりの根幹となるのは人間なのだから、精神的な成長や発展こそが他の何よりも大切だ」と言っている。だからこそ、日本人本来の精神的な価値観を今一度、思い起こそう!
・・・で、各論に入るのですが、難しい。心に残った部分を少しだけ。「実践躬行」がキーワード。
・「義と勇は双生児の兄弟」
抽象的な「義」だけが頭の中にあっても、本当にそれを実践躬行する「勇気」がなければ何もできない。何もしなければ「義」ではない。また、勇気は、義のために行われるのでなければ、徳の中に数えられるにほとんど値しない。
・「実践躬行」
知識はそれ自体を目的として求むべきではなく、叡智獲得の手段として求むべき。「論語読みの論語知らず」となってはならぬ。実践してこそ!
「義」を重んじ、「誠」をもって、率先垂範、実践躬行するという「大和魂」の精髄が、日本の「武士道」精神の中に生き残っていると、李登輝は信じてくださっていた。この信頼を裏切らないようにしたい -
台湾でなぜあんなにも歓迎されたのか。
道端で足を止めてまで、日本が好きだと伝えてきてくれたのか。
日本統治時代に、
日本は徹底して台湾の人々に武士道の精神から、教育を施してきた。
洋の東西を問わず、様々な古典を台湾国民に読ませた。
作者の李登輝氏は、
その統治時代があったからこそ、今の台湾があると考え、台湾の先人たちが隠したがる自分達の失態をも含めて、国民に教育を施した。
結果として、
台湾人は事実をありのままに受け止めて
自身の国のルーツを知り、自立した国民へと成長した。
日本への感謝がそこにはあった。
リスペクトが。
それは、
今の私たち日本人の先人たちのおかげである。
700年間培い養ってきた大和魂、武士道精神を自らの足で踏みつけてきた戦後日本が、
立ち上がっていけるかどうか。
日本人の真価が今試されている。 -
李登輝の「武士道」との出会いや、それが人生や総統としての考え方にどう影響したかを知れる。彼が強調しているのは、無私の精神。西郷隆盛の考え方に共通するものがある。また、経営者に求められる高い志にも通ずる。凡人は高い地位に就いたからこそこれらを意識するものだと思うが、彼等は違うのかもしれない。
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ある取引先のトップがこの本について社内勉強会をしているとの話をお聞きし、単純な自分はたまたま古本屋で見つけ読んで見た。
第一に基礎知識の足りない自分には読んですべて理解するには時期尚早だったようです。
理解出来たのは李登輝さんのとてつもない教養の深さと哲人ぶり。親日家というのは、表面的なものではなく、もっと精神世界における繋がりであることが良くわかる。
随所に出てくる引用文献の数々。ゲーテの『ファウスト』やカントの『衣装哲学』等をまったく読んだことの無い自分の無知ぶりを改めて痛感する。
新渡戸稲造の武士道の原文は英語で書かれ、それを台湾出身の李登輝さんによって『現在の日本へもっと自信を持ちなさい』とお叱りを受けているという複雑さな感覚。
今の日本のリーダーたる方々によく読んでいただきたい。
また我々国民の方も諸問題の本質がどこにあるのか、もっと勉強しないと我利我利の口の上手い輩のプロパガンダに簡単に流されます。
引用文献にあるような書籍を一通り目を通してから改めて再読したい一冊。 -
資料ID:20300594
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