起終点駅(ターミナル) (小学館文庫)

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著者 : 桜木紫乃
  • 小学館 (2015年3月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094061369

起終点駅(ターミナル) (小学館文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 人が生きることの辛さと素晴らしさを噛みしめる読後感……

    タイトルの「起終点」という言葉がどこか理解できなかったのだが、瀧井朝世氏の解説を読んだとたん、すんなりと固い頭に沁みこんでいった。

    縁と無縁についての物語だった後から気づかされるなんて。
    どの物語にも共通して描かれるテーマなのだが、縁がないからといって嘆き悲しむべきでないという著者の訴えは、物語を読めばちゃんとわかる。

    以前読んだ、中高生向け新書の「友だちは永遠じゃない: 社会学でつながりを考える (ちくまプリマー新書)」を思い出した。この本の中でも、人はつながって切れて、つながって切れてを繰り返していくということが説明されていたのだが、まさしくそれを物語で表現しているのが本作なんだなと思った。

    桜木紫乃の作品はこういうハッピーなだけではない物語なのにもかかわらず、読み終わった読者に前を向かせるところがすごい。

  • 珠玉の短編を6編を収録。いずれの作品も孤独感の中からの再生する主人公を描いている。独りの世界で見出す人と人のつながり、さりげない優しさはどれだけ人びとの心を救うのだろうか。表題作の『起終点駅』と『海鳥の行方』が、取り分け良かった。

    『かたちないもの』。桜木紫乃が描く女性は皆、逞しいのだが、この作品の主人公の笹野真理子も化粧品会社で働き、厳しいビジネスの世界を生き抜いているキャリアウーマンである。10年前に付き合っていた竹原基樹の死を知らされ、函館の外人墓地での納骨式に参列する。ひとり、逞しく生きていたはずの真理子だが、納骨式を取り仕切る若い牧師の角田吾郎と出会い、その実は自分自身しか見ていなかった事に気付かされる。少しずつ外に目を向けるようになり、再生していく過程の描写が見事。角田吾郎の透明な存在感も非常に良い。

    『海鳥の行方』。主人公は新聞社の釧路支社に働いて二年目の山岸里和。職場の同僚による心無い言葉に揉まれながら、遠距離恋愛も今ひとつの中、里和は現実と向き合いながら生きている。ふとしたきっかけで知り合った失業中の石崎との出会いが…ラストにはジンと来た。こういう複雑な心情を見事な表現で描いてみせる桜木紫乃は、やはり只者ではない。

    『起終点駅』。表題作。桜木紫乃にしては珍しい男性が主人公の作品。国選弁護しか引き受けない弁護士の鷲田完治と彼が弁護した椎名敦子の物語。過去に疵を持つ鷲田と、同じように過去を棄て、現実からも逃げ出そうとする敦子の生き方を静かに描いている。男性が女性に唯一、対抗出来るのは頑なさだけかも知れない。

    『スクラップ・ロード』。これも、また主人公は男性。大手銀行を退職し、無為な生活を送る飯島久彦は、失踪した父親を見付けるが…

    『たたかいにやぶれて咲けよ』。2作目に登場した山岸里和が再び主人公を務める作品。歌人であった老婦人の数奇な人生を追いかける里和が見付けたものは…

    『潮風の家』。主人公は壮絶な過去の出来事で、故郷を離れた久保田千鶴子。三十年ぶりに再び、故郷を訪れた千鶴子は…

  • BGM 夜の船/Ogre you asshole
    昭和っぽいけど演歌ではない湿り気と貧しさ

  • 道内各地が登場して身近なお話のように感じて読めました

  • これはもうかなり心掴まれる短編集。一話目より二話目、二話目より三話目とどんどん引込まれて行く。表題「起終点駅」でピークになりそこからは、ずっとわなわな震えるくらい感情を高ぶらせながら読み続けた。各話に出てくる登場人物、皆、陰を持つ。それは大都会の路地裏に捨てられているような陰ではなくて、北海道の寂れた町の潮風に吹かれすぎてカサカサになっているそんな陰。でも、何故か芯には太くて熱いものが滾っていて生命力に溢れている。強いんだ。最終話のたみこの詩とたみこの生き方。そんな陰たちの集大成。諦観と救いは背中合わせ。

  • 立て続けに桜木紫乃作品を読んでいる。
    一貫して陰鬱な情景ながら何故か惹かれてしまうのは北海道人だからという理由だけでは無い気がする。
    狭い田舎町での生き難さが一つの要素として存在する。自分はあまりそのような事は感じていないつもりであるが、その入り口で方向を誤ってしまうと、その世間の狭さが圧し掛かるのかもしれない。短編全6編。

  • 短編集というだけで今一つ興に乗らない私としてはいつもチャレンジするように短編集を読みます。
    今迄短編集で納得できる作家というと村上春樹か伊坂幸太郎か・・・そのくらい短編集に対して点の辛い私が続けて読んだ桜木紫乃の本2冊。

    ”ターミナル起終点駅”と”ホテルローヤル”

    直木賞を取った”ホテルローヤル”を先に読んでう~む。。。
    期待せずに”ターミナル起終点駅”を読んだらこれが短編集っぽくない!!
    主人公だけでなく脇役たちの存在感が見事です。勝手に頭の中で映像化してもすんなりと落ち着きます。

    北海道が舞台というだけのつながりだけでこんなにまとまり感が出るものなのでしょうか?
    短い文章でこれだけの表現ができるのは舞台を北海道にしてその人物の背景・見渡す景色・都会への憧れや絶望・気温まで1つの雰囲気をまとっているからなのかもしれません。
    一つ一つの話は違うのに流れで読み切ってしまえる構成が1本取られたな!と・・・・

    いつも本を読むときは何も情報を入れず真っ白な状態で読みだすので、どの作品が映画化されたかを知らずに読み、最後に知るわけですが、私としては「たたかいにやぶれて咲けよ」を映像化していただきたかったなぁ~。と言う事で私の書評も読後に読んでいただきたいですね

  • 舞台はいつも北海道。絶望的なのに「生きている」と感じられる桜木紫乃、好きです。6編から成る本作のうち、表題作が映画化されて、昨日から公開中。佐藤浩市主演はわかるけど、原作では三十路のはずの女を本田翼が演じているということか。イメージちがいすぎ。どう映画化されているのか観に行ってきます。

    映画の感想はこちら→http://blog.goo.ne.jp/minoes3128/e/e63662cedc696f764942882bd106d7b0

  • 「かたちないもの」笹野真理子が昔の恩師で男の納骨式に
    「海鳥の行方」走りたての記者 山岸里和が埠頭で知り合った男の死
    「起承転結」国選弁護しかしない
    鷲田完治と椎名敦子
    「スクラップロード」負けた男 飯島久彦と父文彦
    「たたかいにやぶれて咲けよ」山岸里和と歌人中田ミツ
    「潮風の家」久保田千鶴子と星野たみ子

    盛り上がりはないよ。淡々と、死に関わる人の物語。
    たたかいにやぶれて〜、が好き。

  • 人に生き死に、人との繋がりを描いた余韻の残る幅を感じさせる小説でした。短編集ですが、一つ一つの話にそれなりの重みを感じました。読む時期が異なれば更に染み入ったかもしれません。

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起終点駅(ターミナル) (小学館文庫)の作品紹介

直木賞作家桜木紫乃作品、初の映画化原作!

「かたちないもの」
笹野真理子は函館の神父・角田吾朗から「竹原基樹の納骨式に出席してほしい」という手紙を受け取る。
「海鳥の行方」
道報新聞釧路支社の新人記者・山岸里和は、釧路西港の防波堤で石崎という男と知り合う。「西港で釣り人転落死」の一報が入ったのはその一月後のことだった。
「起終点駅(ターミナル)」 映画化原作 表題作
鷲田完治が釧路で法律事務所を開いてから三十年が経った。国選の弁護だけを引き受ける鷲田にとって、椎名敦子三十歳の覚醒剤使用事件は、九月に入って最初の仕事だった。
「スクラップ・ロード」
飯島久彦は地元十勝の集落から初めて北海道大学に進学し、道内最大手・大洋銀行に内定した。片親で大手地銀に就職するのは、当時異例中の異例のことだった。
「たたかいにやぶれて咲けよ」
道東の短歌会を牽引してきた「恋多き」歌人・中田ミツの訃報が届いた。ミツにはかつて、孫ほどに歳の離れた男性の同居人がいたという。
(「潮風(かぜ)の家」
久保田千鶴子は札幌駅からバスで五時間揺られ、故郷の天塩に辿り着いた。三十年前、弟の正次はこの町で強盗殺人を犯し、拘留二日目に首をくくって死んだ。



【編集担当からのおすすめ情報】
「始まりも終わりも、ひとは一人。
だから二人がいとおしい。生きていることがいとおしい」
――桜木紫乃

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