どん底: 部落差別自作自演事件 (小学館文庫 た 30-1)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 91
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (473ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094061789

作品紹介・あらすじ

前代未聞の部落差別事件の犯人に迫る

03年12月から09年1月まで、被差別部落出身の福岡県立花町嘱託職員・山岡一郎(仮名)に対し、44通もの差別ハガキが送りつけられた。山岡と部落解放同盟は犯人特定と人権啓発のために行政や警察を巻き込んで運動を展開していったが、09年7月に逮捕された犯人は、被害者であるはずの山岡一郎自身だった。
5年半もの間、山岡は悲劇のヒーローを完全に演じきった。被害者として集会の壇上で涙ながらに差別撲滅と事件解決を訴え、自らハガキの筆跡や文面をパソコンを駆使して詳細に考察し、犯人像を推測していた。関係者は誰も彼の犯行を見抜くことができなかった。
被差別部落出身で解放運動にたずさわる者が、自らを差別的言辞で中傷し、関係者を翻弄したこの事件は、水平社創設以来の部落解放運動を窮地に陥れた。06年の大阪「飛鳥会」事件で痛手を負っていた部落解放同盟は、この自作自演事件で大打撃を被ることになった。
なぜ山岡はハガキを出さざるを得なかったのか--現代の部落差別の構造と山岡の正体に鋭く迫りながら、部落解放同盟が”身内”を追及する前代未聞の糾弾のゆくえを追う。
作家・桐野夏生氏による解説を収録。

【編集担当からのおすすめ情報】
著者は事件の舞台となった被差別部落に何度も通い、100人近い関係者から話を聞いて歩きました。根気強い取材から見えてきた犯人・山岡の人物像や、今も残る部落差別の実態は衝撃的です。部落解放の父と呼ばれる松本治一郎を描いた『水平記』著者だからこそ書くことができた”問題作”をご堪能ください。

感想・レビュー・書評

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  • 内容はクソだったけど、筆力はすごい。こんなクズ、フィクションでもなかなか出てこない。読んでる間ずっと辛かったけど、これが事実なのがなおさら悲しい

  • 高山文彦『どん底 部落差別自作自演事件』小学館文庫。

    部落差別問題の中で一人の被差別者による自作自演による44通もの差別ハガキにより、周囲の人びとをも巻き込んだ事件を描いたノンフィクション。

    現代ですら部落差別問題が残っているということは非常に悲しい事実であるが、それを逆手に取り、自分の立場を守ろうとする身勝手さは許しがたい。

    前半は部落差別問題について、じっくり語られ、後半は自作自演の事件の顛末が語られる。しかし、著者が最終的に何を訴えたかったのかが全く伝わらなかった。

    また、桐生夏生の解説に本文の大筋が書いてあることもいただけない。

  • クズは何処にでも一定数存在する。そのクズに振り回された『ムラ』の人達の怒りと悲しみ。読んでて腹が立つ。クズ、いやサイコパスか、我々はそんなクズを察知する力が必要だろうってなかなか分からないんだよなあ、実際は…

  • 衝撃。この本を読んだだけの私がこれだけ衝撃を受けるのだから、この事件に関わることになった方たちがうけたショックはどれほどのものだったか。

  • 前半は部落の歴史が学べて良かったんですけどね。後半、著者が義憤に燃えてんだか感情移入し過ぎてて辟易。私は事実のみを客観的な文章で読みたかったです。

  • 周囲を欺き続けた小悪党の空虚な頭の中が興味深い。

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著者プロフィール

1958年、宮崎県高千穂町生まれ。法政大学文学部中退。2000年、『火花―北条民雄の生涯』(飛鳥新社、2000年)で、第22回講談社ノンフィクション賞、第31回大宅壮一ノンフィクション賞を同時受賞。著書に『水平記―松本治一郎と部落解放運動の100年』(新潮社、2005年)、『父を葬(おく)る』(幻戯書房、2009年)、『どん底―部落差別自作自演事件』(小学館、2012年)、『宿命の子―笹川一族の神話』(小学館、2014年)、『ふたり―皇后美智子と石牟礼道子』(講談社、2015年)など。

「2016年 『生き抜け、その日のために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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