アンダーリポート/ブルー (小学館文庫 さ 4-7)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 264
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094062090

作品紹介・あらすじ

衝撃の結末が加わった傑作長編小説の完全版

15年前、ある地方都市のマンションで男が撲殺される事件が起こった。凶器は金属バット。死体の第一発見者は被害者の隣人で、いまも地方検察庁に検察事務官として勤める古堀徹だった。事件は未解決のまま月日は流れるが、被害者の一人娘・村里ちあきとの思わぬ再会によって、古堀徹の古い記憶のページがめくれはじめる――。
古堀は事件当時、隣室に暮らすちあきの母親・村里悦子と親しい間柄だった。幼いちあきを預かることも多く、悦子が夫の暴力にさらされていた事実や「もし戒める力がどこにも見つからなければ、いまあなたがやろうとしていることは、あやまちではない」という彼女の人生観に触れる機会もあった。その頃の記憶にはさらにもう一人の女性の存在もあった。女性はある計画について村里悦子を説得したはずだ。「一晩、たった一度だけ、それですべてが終わる」と。
よみがえる記憶を頼りに組み立てたひとつの仮説――交換殺人という荒唐無稽な物語が、まぎれもない現実として目の前に現れる! サスペンスフルな展開に満ちた長編小説『アンダーリポート』に加えて、新たに衝撃的なエンディングが描かれた短編小説『ブルー』を初収録した完全版。




【編集担当からのおすすめ情報】
著者の佐藤正午さんは、「嘘をほんとうに見せることに僕は魅かれるんです」と言い切ります(『書くインタビュー2』小学館文庫より)。本作でも“交換殺人”という、現実にはあり得ないと思えるような「嘘」がモチーフになっています。けれども本作を読んでみてください。あり得ないと思えていた絵空事が、読み進めるうちにあり得るかもしれないと思え始め、いつのまにか読者のみなさんの足元にまで迫ってくるはずです。「嘘をほんとうに見せる」ためには手間を惜しまない作家の真骨頂ともいえる、読む愉悦に溢れた作品です。
※併録の短編小説『ブルー』は、単行本『正午派』のために書き下ろされた作品で、今回初めて所収されます。

感想・レビュー・書評

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  • 隣人が殺害された現場で嗅いだ香りを思い出し、昔の事件の真相を追う話。主人公が過去を振り返りながら真相に近付き傍観者ではなくなる過程にゾッとする。私も主人公同様血の巡りが悪いから、最後のブルーで何でって息を飲んだ。遅効性の毒が回ったようだった。

  • 最後の章を最初に持ってくるという大胆な構成にびっくり。読みはじめはこれが最後につながるんだなぐらいにしか思っていなかったのだけど、最後そのものだったとは。
    現在から過去を顧みながら、まずは主人公と関わりがあるもう一人の人物に焦点が当たって話は進んでいく。ここでいったん最初の章が頭から離れるのも面白い。
    主人公は確信を深めていきながら、それと同時に傍観者から当事者に知らないうちに立場が変わってしまうところが恐ろしかったし、主人公に肩入れしている読者にもそれを気付かせないのも見事だった。
    犯人も動機もほぼほぼわかってしまっているのに事の成り行きが気になって仕方がなくさせるこの文章力。佐藤正午さんを読むのは2冊目だけど特別なものを持っていると思う。近々新作が出るのも楽しみだし、既刊を読んでいくのが今一番楽しみな作家だ。

  • 第1章読んでる時はあまりに唐突すぎて、そして初めての佐藤正午に慣れてなくて、読みにく!とおもった
    でもその文学的で単調な描き方とだんだんわかってくる輪郭が面白くなってきた
    自分にとっては、特に感情移入することも考えさせられることもあんまりない本だったけど、こういう話もあるね、と読了後思った
    ブルーが収録されていないものを読んだからそちらも気になるけど、あまり多くを語らないほうが好きだから蛇足だと感じてしまうかも、とはいえあると知ったら読んでみたいんだけれど
    佐藤正午もう1冊くらい読んでみよう

  • 主人公とは、性別も年も職業だって何から何まで共通点はないはずなのに。
    とことん感情移入してしまい、、、
    わたし自身もモヤモヤした日々を送りました。
    後半にさしかかり、
    あれ?これって一番最初に書かれてなかったっけ?と読むと同時に過去の記憶をたどる私。
    ああ、もう主人公じゃんわたし。
    記憶と記録と、そして体感に残るもの、香り。
    記されるもの、記されないもの。
    存在するもの、しないもの、でもたしかにあるもの。
    丁寧に、細やかに辿っていった先に待っていた結末に鳥肌ゾクゾク、ぞわぞわ。
    自分がまさに殺されると思いながら、
    どこか切なさを感じながら読み終えました。

    佐藤正午さんにハマりそう!
    次は何を読もうかな。

  • 登場人物の殆どが性格悪かった。
    描写がリアルなだけかもしれない。完璧な「いい人」なんて世の中には滅多にいないわけだし。
    それにしても千野美由起のどこが良くて付き合っていたのか謎だったな……。

    お話自体は上質なミステリー。展開が気になって読み進めるというより、引っかかりの原因を知りたくて読むという感じ。そして読み終わった人は必ず冒頭から読み返すはず。

    後日談の『ブルー』は私は蛇足だと思う。
    古堀さんとサヤカは知り合いなわけだから、本編の交換殺人の条件に合わない。無理矢理では?

  • 手の込んだミステリーというわけではないけど
    一つ一つが丁寧に書かれている印象。
    挿絵があるわけでもないのに登場人物がイラストとして頭の中で現れて動いている感じ。
    古掘さんの人生は綺麗で平和なんだろうな

  • ――

     十五年前の殺人。
     被害者の妻。
     当時四歳だったその娘。
     かつての婚約者。
     そして、もうひとりの女。

     交換殺人。

     偶然ながら、ひとつ前のレヴューと好対照なものを読んだ。つまり題材としてはよくあるものを、これほど楽しく読ませてくれる作家は今や貴重かもしれない。
     真新しさや斬新なトリックがあるわけではないんだけれど、ストーリーテリングの妙があって。
     際立ったキャラクタや衒学的な文章に頼るでもなく、普通の会話が面白くなる。
     どこかそう、熟練のしゃべり、の達人がフリートークを面白くするのと似たような。
     同じ話も、語り口でこんなに変わるのか! ということがあるように。
     ただまぁそれも好みなんだろうなぁ。それこそ思考のつながり、その飛躍。ペース、テンポ。そういうのが、自分に合っているんでしょう。


     以下、伊坂さんのあとがきから引用。
    “難解な言葉を駆使したり、退屈なストーリーを用意して、「よく分からない」小説にすることは比較的、容易だろう。その反対に、シンプルな筋書きを、決して難しくない文章で描き、迷宮のように仕上げるのは至難の業だ。この作家はそれをやる。エンターテインメントや純文学の区別などどうでもいい。「本物の小説家」とはこういう人のことを言うのだ(と僕は思う)。”

     僕もそう思います!←バカっぽい
     ☆3.4。

  • 記録

  • アンダーリポートのみを収録した方を先に読み、

     もうひと展開ほしいと思ったので星3つ。

    と書いたが、続きがあると知り早速読んだ。


    な、なるほど、、、
    なぜこんな構成にしたのか、最初から決めていたような気がするけど、なぜなのか、、、

    物語としてはスッキリしたけどスッキリしない。
    怖い。色々と怖い。

    でも、この構成のおかげで、後日譚を読むまでの数日間、ずっとモヤモヤしてた。
    きっと主人公も、あのカフェを訪ねてからずっとこんな気持ちだったのかな。
    もしこれが狙いだとしたら、怖すぎ。
    最高。

  • 久々にミステリーっぽいような本読んだ。徐々に事件が明らかにされていく。展開好き。最後まで、この後もまだ何かあるんか?って思わせられる。

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著者プロフィール

1955年長崎県佐世保市生まれ。『永遠の1/2』ですばる文学賞、『鳩の撃退法』で山田風太郎賞受賞。おもな著作に『リボルバー』『Y』『ジャンプ』など。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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