あっちの豚こっちの豚/やせた子豚の一日 (小学館文庫 さ 12-4)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094062724

作品紹介・あらすじ

傑作絵物語に未発表童話を加えた作品集

自由って何だ? 幸せってどこにある? ――林の中で、のんびり自由気ままに暮していた豚の前に、ある日、きつねの紳士が現れた。「あなたの豚小屋があるために、環境がこわれるんですよ」押し寄せる文化の波に飲み込まれ、自由を失った豚の運命は……。没後に発見された佐野洋子の原画30点を収録した名作絵物語。
併録した童話「やせた子豚の一日」もまた、著者の没後に発見された未発表作品。父と娘、二人暮らしの子豚の一日を、鮮やかに描いたユーモア溢れる快作。文庫化にあたって息子・広瀬弦の絵8点を収録。
佐野洋子の魅力全開の二作品が楽しめる待望の作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 『あっちの豚 こっちの豚』は、元々、1987年に小峰書店から刊行されており、その時は息子の、「広瀬弦」さんが絵を描かれておりますが、後に、「佐野洋子」さんの絵が発見され、この文庫版では、両方の絵を楽しむことができます(広瀬さんの方は全30点のうちの20点を再録、その代わり、新作があります)。

    物語の内容は、一目瞭然といってしまえば、それまでなのですが、特に、気になった文章を一つ。


    しかし幸せというやつは、ひととおなじことをやっていないといけませんからな。
    こつはこれだけです。

    えっ、人と同じことをやる?
    それと、幸せにコツなどあるのか?

    そして、最も印象的というか、衝撃を受けたのが、「解題あるいは編集後記」の中に掲載された、佐野さんの『そうはいかない』という、エッセイに収録された『突然走る』の内容。

    これがそのまま、この物語の意味するところを、示しているように思われて、これを読む前は、幸せの形は人それぞれで違うことを、教えてくれる物語だと思っていたが、読んだ後には、人間の身勝手な、都合の傲慢さが際立った印象を受け、「なぜ?」と思いましたし、悲しみを覚えました。

    佐野さんのように、私も思わず、聞いてしまいますよね。「今まで豚肉食べたことないんですか?」って。

    豚も人間も、同じ星に生まれてきた動物同士であるはずなのに・・

    それから、もう一つの童話、『やせた子豚の一日』は未発表作品で、佐野さんの絵は残されていなかったので、広瀬さんの描き下ろした絵が添えられてあり、『あっちの豚~』とはまた違った、可愛らしい雰囲気で、周りの状況に腐らず、自らの考えで行動しようとする、「やせた子豚」の瑞々しい感性が印象的でした。

    そして、こちらでも気になった文章があり・・


    幼稚園ってなんでもおなじにしなくちゃいけないのね

    欲しいものは今すぐじゃなくっちゃ役にたたないんだ

    こういった視点を大事にしようと、教えてくれていようにも感じられ、やはり佐野洋子さんの作品には、何か惹かれるものがありますね。

  • 佐野洋子さん(1938~2010)、没後に発見された未発表の2作品です。佐野洋子さんは、猫、熊、豚などの動物をテーマにした作品が多いですが、本作品は豚さんです。「あっちの豚こっちの豚」と「やせた子豚の一日」。最初の作品は、一人で気ままに生きることと家族で暮らす幸せの比較を。次の作品は、働き者の母親を持つ男の子豚と酔っ払いの父親と暮らす痩せた女の子豚、男の子豚は太って動作が鈍く、女の子豚は腹いっぱい食べたい。どっちの親にもしっかりしろと言いたくなりますw。

  • 記事はこちらから→http://ehonkasan.exblog.jp/26106044/

  • あっちの豚こっちの豚:元は佐野洋子の文章に子息の広瀬弦が挿絵を描いた作品。佐野洋子自身の用意した挿絵がそっくり出てきたとのこと。内容は、野原の豚小屋で気ままに暮らしていた豚が、文明社会にまきこまれて自分を見失いそうになる、ちょっとこわいような、風刺のきいた物語。
    やせた子豚の一日:佐野洋子による童話。父子家庭でやや育児放棄されてる感じのやせた豚の女の子が主人公。幼稚園にもいれてもらえない、お金もないけれど、自分なりに町の様子をみてきたうえで、のんだくれた父親との今の暮らしを選ぶ結びが潔い。

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著者プロフィール

1938年、北京生まれ。絵本作家。ベストセラー『100万回生きたねこ』のほか『おじさんのかさ』、『ねえ とうさん』(日本絵本賞/小学館児童出版文化賞)など多数の絵本をのこした。
主なエッセイ集に、『私はそうは思わない』、『ふつうがえらい』、『シズコさん』、『神も仏もありませぬ』(小林秀雄賞)、『死ぬ気まんまん』などがある。
2010年11月逝去。

「2021年 『佐野洋子とっておき作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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