船に乗れ! 3 合奏協奏曲 (小学館文庫)

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著者 : 藤谷治
  • 小学館 (2016年6月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094063028

船に乗れ! 3 合奏協奏曲 (小学館文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 巻を追うごとに星の数が少なくなっていく……。
    決して、つまらないわけではないです。随所随所に、なるほど本屋大賞にノミネート?を受賞?するわけだ、と思わせるところもあるし、伏線の回収や、タイトルの絡め方もうまい。音楽を演奏しているときや、リハーサル中の描写は、ピカイチです。それは、本当に、本当。

    じゃあなぜ、星が二つにまで減ってしまったのかといえば、理由は二つ。

    一つ目は、南という人間を最後まで許容できなかったからです。彼女は、個人的に最も嫌悪するタイプの音楽家というか、音楽を支配しようとするタイプの音楽に携わるひとのように思えて、どうにもこうにもダメでした。鮎川さんがラジカセを持ってきたときから、ああ……とげんなり予測できたし、実際にやってきたら、想像していた以上に鬱陶しくて嫌でした。メンデルスゾーンのスコアのシーンも、そのあとの手紙の内容も、後日談も、すべて。音楽は、すべてを内包するものなのに、生と死を絶え間なく繰り返すものなのに、あんな風にお葬式をしてしまえる彼女を、心底、軽蔑してしまいました。

    二つ目は、主人公。なんだか途轍もなくいけすかない人のように各所で書かれていて(解説にもそう公然と書かれていて)、それがなんだかとても悲しかった。彼のような性格のひとは、音楽を生業としているひとの中には珍しくもなく、彼の苦悩の内容も、共感できました。彼が、少年漫画よろしく未知の才能に目覚め、めきめきと頭角を現し、といった展開を望んでいるのではないですが、不完全燃焼感が半端ないです。

    だからこそ、後日談の彼とチェロの関係は、本気でホッとしました。音楽の持つ矛盾と懐の深さは、彼を通じてうまく表せられていたなあと感動します。

    金窪先生のくだりも順当。予定調和の話の流れの中、伊藤くんだけが光り輝いていました。彼が美少年だからではなくて(笑)、彼の姿勢が一番真摯で誠実だったから。1巻で書かれていた、音楽というのは、人間を超越した絶対的に美しいもので、その美しいもののために音楽家は生きている、という描写が好きだったのですが、伊藤くんは、それを体現してくれたようで、彼が出てくるたびに「もっと言ってやれ!」と胸がすっとする思いでした。
    音楽は理不尽で公平で、美しく残酷で、容赦なくひとを切り捨てる一方で、たとえ何十年の月日が経っていてもひとを赦す愛を持っていて、支配的で受け身で、恥じらいながらこちらを侵していくものだと思っています。
    伊藤くんの青春小説なら、是が非でも読みたいと思いましたが、それだと「派手なストーリー」(これも、どこかでこの本を説明する際に使われていた言葉)にはならないから、ダメなのでしょうか。

    軽い気持ちで好きといえない、鬱屈した気持ちにさせられるのは、もしかしたら私がピアノ弾きだからかもしれません。音楽の描写は本当に本当に素晴らしいのに。ああ、残念。

  • 完結編。
    だが、何かがスッキリと解決したわけでもないのだ。

    「船に乗れ!」
    誰かからそう叱咤されなくても、誰もが人生という船に乗って、いや、乗せられているのではないか。
    そして、現在の、これを書いている津島サトルは、
    「船に乗ることは乗っているのです。でも僕は、櫂を無くしてしまった」
    そう言っているようだ。

    くたびれた大人になった、津島はしかし、高校の三年間を眩しそうに目を細めて見ている。
    書き切ったところで、告白を終えたところで、少しもすっきりしないと言っているが、彼は音楽と和解しつつある。

    ひとつ。
    私は、南枝里子という女が許しがたい。
    誰もが悩み、思い通りにならない人生にどこかで折り合いをつけて行く中で、この人物だけは、やりたいことをやり切って、自分の価値観の狭い世界の中で「正しい者」になったような顔で退場して行ったのだ。
    しかも、イタチの最後っ屁みたいに、「サトルくんがみんな壊した」とか言って。

    最終章の解説は、私の好きな作家の一人である、宮下奈都さんだ。
    しかし、そこで「サトルはいけすかない」と書かれていて、ちょっと目が覚めた気分になった。
    そうか、いけすかないやつだったのか…
    そういえば、最初のほうで少しそう感じたかもしれないが、自分にはほとんどその思いが無かった。
    ほとんどサトルを息子のように思って読んでいたのかもしれない。
    バカな子ほど可愛い。
    音楽に挫折しようが、会社を四回辞めようが、生きていてくれればいいのだ。
    南に嫌悪感しか感じないのは、可愛い息子を苦しめ抜いたからだろう。

    しかし、サトルがダメ人間の方に属している事くらいはわかる。

    でも、もう一度言う。
    サトルは音楽と和解しつつあるのだ。
    そして、人生は良くも悪くもない、そんなものだ。

  • 読み始め…16.7.15
    読み終わり…16.7.16

    高校三年になった津島サトルは音楽家としての自分の才能に見切りをつけようとします。苦悩の末の挫折。。

    これだけ音楽というものに特化した小説で音楽家を目指していくストーリーであったならば、苦悩を乗り越え未来は明るいという終わり方で涙したいという期待の方が大きい分、チェロをあっさりとやめてしまうとはなんだか裏切られたような気持ちになってしまうのも否めないのですが....

    往々にして、伊藤慧くんのように最後の最後までやり抜くことができた方がもしかしたら少数なのではないかしらと思うと、サトルの出した結論は自分たちの身近にもよくあるよく似た青春のひとコマなのではと共感できて涙で胸が熱くなります。

    この物語はサトル自身が二十年ほど前の自分を回想している苦悩と挫折の熱くて苦い青春の思い出。著者さんご自身の体験にも基づいているようです。今は作家さんなのですね。

    しかしながら南枝里子ちゃん...。私には最後の最後まで許せていないのです。よくわからない....魔性の女だな~。

  • 三作目は「ホントにチェロをあきらめちゃうの?」が興味ポイントで読み続けていました。結果として、これが何のひねりもなく着地したので、やや残念な気分。

    文化祭に向けた練習は「ザ・青春」という感があって好印象でしたが、南枝里子の登場は意外、かつ最悪レベルの嫌悪感しかありませんでした。

    あれだけ周りをかき乱しておきながら、すべてが自分都合で自己満足のためにためらい無く周りに迷惑をかけまくる自分勝手な行動に、人として最底辺レベルの存在としか認識できませんでした。

    結局、すべてが現実的というか、「そんなにうまくいかないよね人生って」な結末に落ち着くのですが、そんな現実があるからこそ、私はフィクションに対してポジティブになれたり現実以上に過激なストーリーを求めていたりします。

    その視点で見ると、本作読後の印象は「そういうこともあるよね」という冷めた印象しか残りませんでした。正直「どうでもいい話」で、多分すぐに内容も忘れてしまうんだろうな、特に三巻の内容は、と思いました。

  • 2016.10.20 読了

  • 配架場所 : 文庫
    請求記号 : BUN@913@F103@1-3
    Book ID : 80600058280

    http://keio-opac.lib.keio.ac.jp/F/?func=item-global&doc_library=KEI01&doc_number=002523645&CON_LNG=JPN&

  • 青春特有の、何者にもなれるという期待と、結局何にもなれない現実。

    平凡な大人になったサトルの過去の回想。
    どこまでも肥大した自意識が痛い。
    もっと楽に生きられるのに…
    サトルは音楽に対して真摯で、誠実だった。
    南は強く、
    千佳は思いやりに溢れ、
    伊藤くんは潔い。

    ブランデンブルグ協奏曲が、ジュピターが聴こえてくる。
    音楽が輝きを与え、哲学が深みを与え、この作品を力強く、美しい青春小説にしている✨

    私たちもまた、船に乗っているのだろうか…

  • 「チェロを辞めようと思うんです」
    進路を決めた津島サトルは文化祭の3年生コンサートを企画する

    当日、ステージ直前の舞台裏に楽器を手にしてあらわれたのは...

    「音楽と、哲学と、恋愛と、友情が、縦横無尽に組み合わさって、
     骨太の立体芸術になっていた」~宮下奈都の文庫版解説より

    傑作青春音楽小説の最終巻、25章さいごのページに目が釘づけになる

    発表当時「本屋大賞」7位になった単行本の2度目の文庫化

  • 高三の秋。サトルはチェロを辞めることを決意する。
    これだけ音楽の美しさと喜びを知っている人が音楽から離れられるのかとも思うが、十八歳の主人公には0か100かの答えしかなかったのかも。
    ミニコンに南を参加させたことは理解できないけれど、妊娠発覚後から彼女がとった行動はとうてい高校二年生の女子ができるものではないので強い人だと思う。
    祖父、佐伯先生、脇を固める人が良かった。そして金窪先生との再会。タイトルは先生がくれたニーチェの言葉から。
    分かってはいたけれど、主人公がさえない中年になっていたことを少なからず残念に思う気持ちがあったのは、それが甚だしく現実的だったからに他ならない。
    ポプラ文庫版ではサトルと伊藤の27年後を描いた短編が収録されていたみたいだけれど、小学館文庫にはなかった...

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船に乗れ! 3 合奏協奏曲 (小学館文庫)の作品紹介

青春の苦悩をリアルに描いた大作、完結

高校三年に進学し、同級生たちが進路に悩むなか、津島サトルは音楽家としての自分の才能に見切りをつけようとしていた。その頃、南枝里子は人生をかけた決断を下す。
青春のすべてをかけてきた恋人と音楽とを失い、自暴自棄になったサトルは、思いもしない言葉で大切な人を傷つけてしまう。サトルは、人間の力ではどうにもならないことに向かって泣いた。
自らの人生を背負い、それぞれの想いを楽器に込めて演奏する合奏協奏曲。これが最後の演奏となってしまうのか? そしてそこへ現れたのは――!?
サトルの船は、青春を彩るニーチェの言葉とともに、大海へと漕ぎ出る。
すべてを飲み込み、切なく美しく響く青春音楽小説三部作、最終章。
巻末に、宮下奈都さんによる解説を収録。

船に乗れ! 3 合奏協奏曲 (小学館文庫)はこんな本です

船に乗れ! 3 合奏協奏曲 (小学館文庫)のKindle版

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