- Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094063943
作品紹介・あらすじ
四月の雪の日、あたしは生き返らなかった
舞台は、東京・中目黒にある瀟洒なシェアハウス(Bハウスと名づけられている)。ここには五人の男女が住んでいる。樅木照(もみのきひかる)はもう死んでいた」ーーという衝撃的な一行からこの物語は始まる。しかも死んだはずの照の意識は今もなお空中を、住人たちの頭上を、「自由に」浮遊している。五人の住人やこの家を管理する不動産屋の担当者の隠された内面が、照の死によって次第にあぶりだされていく。
《Bハウスのひとたちは自分以外みんな、不自由だと照は感じていた。あたしの死によって、気の毒なことにあのひとたちはさらに不自由になってしまったらしい。》
《みんなが照を嫉んでいたにちがいない。みんな不自由だったが、照は自由だった。俺も彼女が嫉ましかった。でも、俺は殺していない。じゃあ、誰だ?》
《あの日、あのことをはじめたのは自分だった。ただ、はじめたときに悪意があった。悪意の正体は嫉妬だった。》
著者の新境地をひらくミステリー&恋愛小説の傑作。
解説:角田光代
装丁:宇野亞喜良
感想・レビュー・書評
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不思議な話
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主人公ともいえる照本人がすでに死んでいて、その後の世界を眺めているという異色の設定。
シェアハウスの住人だった照が、ある朝雪の積もった庭で全裸で亡くなっているのが発見される。
何があったのか訝る不動産屋の揚一郎と、何かを隠しているシェアハウスの竜二、真人、葉子、みゆき。
なんとはなしに気味が悪い。
照も、死んでいるからというわけではなく、タイトル通り、気味が悪い。
中盤くらいから少しずつ真実が仄めかされてくるが、分かったからと言ってその気味の悪さが薄れることもなかった。
解説を読んで、ああこの気味の悪さはこういうことだったのか、と腑に落ちたことだけが救い。 -
タイトルのインパクトと宇野亜喜良のイラストで表紙買い。「樅木照はもう死んでいた」という最初の一行もインパクトがあって好きだけど、内容はちょっとしたイヤミス(?)で、登場人物の誰も好きになれず、あまり楽しい読書時間ではなかった。
主人公(?)樅木照(もみのきひかる)は、4月なのに雪の降った日、住んでいたシェアハウスの庭に全裸死体となって横たわっていた。幽霊のようなものになった照の視点で、シェアハウスの他の4人の住人と、そのシェアハウスを担当している不動産屋の青年のその後の行動を眺めることにより、照の死の真相が最終的に明かされる構成。
とはいえ、照自身が「私を殺したのは誰!?」と犯人捜しをするタイプの話ではない。生きていたときから「虫のよう」に無感情で、自由奔放に生きていた照は、死んでからもわりと気楽にふわふわしており、とくに何かが気がかりで成仏できない等の理由もない。ただ残された5人の人間の醜さ、関係性のドロドロが次々明らかになっていくだけにすぎない。
タイトルのインパクトのわりに、照の「虫娘」感があまりうまく表現されていると思えなかったのも残念。虫というよりどちらかというと動物的な子だった気がする。エキセントリックかもしれないけど、どこにでもいそうなヤリマンなだけともいえる。「虫」的な無機質さとは違う気がする。シェアハウスの住人たちの、ある秘密も簡単に予想のつく内容で、あっと驚くような意外性はとくになかった。シェアハウスの住人全員に対して、なんか気持ち悪い人たちだなあという感想しか抱けず。