- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094080650
感想・レビュー・書評
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深海潜水艇の様子がリアルすぎていきなり引き込まれる。その後も展開が気になる気になる。
地震発生のメカニズムなどの学術的説明部分はあり得る話なのか?
これだけリアリティをもって書くのにどれだけ勉強したんだろう、、好きのレベルが凄い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
リメイクの映画は興味を引かれなかったけれど、「第2部」が出たとき、「第1部」からまた読まねば、ということで、30年ぶりで読んだ。
30年前、最初に読んだ当時、『果てしなき流れの果てに』だとか『復活の日』だとかと比べて面白くないと思った覚えがある。設定が宇宙や未来でなくて、もの足りない気がしたのである。そもそも小松左京は、世界に離散しながら強い影響力を持っているユダヤ人に想を得て、国土をなくしてさまよう日本人の未来史のようなものを構想したのだが、国土がなくなる部分を緻密に描いたらそれだけで終わってしまったのだ。月植民地にいち早く入植する日本人とか、火星に日本国を再興しようとする日本人、あるいはアルタイルに植民する宇宙船《憂国》だとかの話を読みたいじゃないか。日本沈没だけじゃどうにも物足りなかったのだ。
しかし、30年ぶりの再読の印象は、傑作! そして力業! すっかり自分が定住生活者になってしまったせいか、国土が失われるということの悲哀に対する共感度が上がってしまったということか。また、30余年をへても、ほとんど古びていないのに驚く。堀彰の解説にもあるように、海洋冒険小説、地学ハードSF、パニック小説と盛りだくさんに進行するのだが、政治などの大局と、翻弄される個人の描写とがバランスよく描かれることで、物語に入り込みやすい。
もっとも、本当に興味をそそられるのは「書かれなかった続編」のほうだという感想は30年前とかわらないと言える。残念ながら谷甲州によって書かれた「第2部」も日本人は地球から飛び出しはしないのだ。 -
地震は大嫌いですが、地学分野は好きなので読んでみました。この本に書かれていることが実際には起きてほしくないですね。特に東京大地震の被害が本当に桁違いですね……。
また、300ページくらいからの田所博士の講義が、完全に地学の教科書と化していました。(多少フィクションは含んでいますが。)また、政府が入ってくるところから内容が少し難しいと感じました。まぁなんとかなるレベルですが。それにしてもこれが40年前に書かれていたとは……。小松左京さんの本を読んでみたのはこれが初めてですが、これを読んで「凄い作家だ」と思いました。
面白いですが、多少人を選ぶ小説かもしれません。ただ、地学、地理の好きな人は読んで間違いはないと思います。読む前に、伊豆諸島や小笠原諸島の島々(特にマニアックなもの)について軽く調べておくと、より楽しめるのではないかと思います。下巻も順調に読み進めていきたいです。 -
前半は中々話が進まずヤキモキするけど、複数回の地震が東京に与えるダメージは想像以上に大きく、東方大震災クラスが東京近郊で起きたことのように生々しく、血の香りがする書きたかで描かれており、食い入るように読んでしまった。
こんな地震がおきたら人間は抗い様がないよ。ムスメだけが心配です。 -
再読。何度目の読み返しになるのだろうか。読んだのはカッパノベル版。初版刊行から1年後には403版とあり、大ベストセラーだったことが思い出されます。もちろん、著者はSF作家ですから日本が沈没すること自体のみを描きたかったわけではありません。日本人が国土を失ってしまったら、どのようになってしまうかを描きたかった訳です。しかし、震災の生々しい体験後に読み返すと著者の尋常ならざる情報・状況分析力に驚かされます。当時の理論でも地震は岩盤の性質からM8.6を超えることはできず、地震体積は直径150Kmをひとつの単位として起こることが知られておりました。著者はそこでSF的な考察として、最大エネルギーを蓄積した地殻が一斉にエネルギー放出したらどうなるかということを、登場人物に語らせています。まったく、ぞっとしてしまいますが、今回の震災ではそれが現実のものとなっているのです。復興していく時間軸の感覚などもやけにリアルな感じです。時速160Kmを出す電気自動車が出てきていたりと鋭い予測をされてもいます。(エア・カーなども実用化されている描写もあります。)当時の環境としてinternetに代表されるようなテクノロジーや原子力発電所など予測し切れなかったものはもちろんありますが、なんという情報量でしょうか。とてつもない情報量でも、きちんと整理され物語に活かされています(シェッツィングよ見習え)。今回の震災では自治体組織ごと避難せざるを得なかったところが出てしまいましたが、そういう意味でも、人災であれ自然災害であれ、「自分のよりどころとしているものが場所ごとなくなってしまったら」という著者の究極の問いを、今一度自分でも考える機会となりました。発表は70年代なのですが、9年の歳月をかけて著されたことを考えると60年代にすでに着手されているわけで、それでも色あせない本書は単なるシミュレーションノベルでは無いからでしょう。小松左京はやっぱり凄い。恐るべし。
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『#日本沈没(上)』(小学館文庫版)
ほぼ日書評 Day527
1973年刊、それから丁度、半世紀が経つ。新宿「副都心」の高層ビル群もまだなかった頃(新宿住友三角ビルは1974年竣工)。
本作の設定は、その同時から見た近未来だ。国際線ではSST(超音速)旅客機が飛び、リニア新幹線の工事が進んでいる。国鉄や電電公社が存続、携帯電話('70万博で出品されていたはずだが、まさかな感じだったのか)ではなくファクシミリやテレックスで情報のやり取りをしている。
太平洋上の島が一夜にして沈み、京都でもかなりの損害を出す大地震を経て、最初の首都圏直撃の巨大地震が発生。少なくとも250万の死者。家屋倒壊よりも、化学コンビナート等からの火災、さらにそれに起因する有毒ガスで、多くがほぼ瞬殺。もちろん満潮の東京湾をもろに襲った津波被害も甚大。
そんな東京から逃げ出す人も多かったが、物見遊山気分で地方から東京圏に訪れる者も多く、それを静止しようとした警察と乱闘が発生、「警備横暴」とマスコミによる警察叩きに繋がった。当時の知識人の中にあって小松左京氏は真に愛国精神を有していたと言われているが、CK国への "秋波番組" とも言われた件のTV版の原作とされたことを知ったら、氏も大いに悲しんだことだろう。
今日、建物の耐震化やコンビナートの設計も当時に比べれば格段の進歩なのは間違いないだろうが、地盤が傾くような事態に対しては、タワーに象徴される埋立地のマンション群はひとたまりもなかろうと思うと背筋が寒くなる。
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そのタイトルの通り、日本の国土が地殻変動により沈没してしまうという斬新なストーリーのSF小説。
1973年にノベルズとして初版が発行されたミリオンセラーの文庫。
1970年代と2000年代に映画化されていますが、登場人物の細かい感情表現や著者の想いは、やはり書籍の方が丁寧に描かれており、映画を見た方も是非読んでいただきたいです。