日本沈没 下 (小学館文庫 こ 11-2)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094080667

作品紹介・あらすじ

とにかくその日が来る前に。政府は日本人全員を海外へ移住させるべく、極秘裏に世界各国との交渉に入った。田所博士は週刊誌で「日本列島は沈没する」と発言して、物議をかもしていた。小野寺は極秘プロジェクトからはずれて、恋人・玲子とともにスイスに旅立とうとするが、運悪く玲子は、ついに始まった富士山の大噴火に巻き込まれ行方不明となってしまう。そして、日本沈没のその日は予想外に早くやってきた。死にゆく竜のように日本列島は最後の叫びをあげていた。日本人は最悪の危機の中で、生き残ることができるのか。未来をも予見していた問題作。

感想・レビュー・書評

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  • 『日本沈没』下巻 小松左
    ~国家存亡の危機とその影響~

    1;政府のバックアッププラン ☆☆☆☆☆
    2;国民生活の揺らぎ・深刻度 ☆☆☆☆☆
    3;日本国家の諸外国への経済インパクト ☆☆☆☆☆

    【はじめに】
    1970年代、日本は未曽有の危機、国土沈没の可能性に直面しました。この小説は、その時代の日本が直面した経済的繁栄と、潜在的な災害のリスクという二つの相反する側面を描いています。

    【第1章:政府の対応策】
    政府は、国民を海外に避難させるための外交手段を準備し、為替関連で円を外貨に換え、また有事に強い「金」を購入しました。さらに、民間企業から船舶・飛行機を購入またはレンタルし、移住先候補の土地を直接購入するなど、緊急時の対策を講じました。

    【第2章:学者の予測と挑戦】
    学者たちは地殻変動と地震のデータを収集・分析し、災害の発生時期と規模を予測しました。しかし、その事実を政府に伝え、信じてもらうためのエビデンス作りには時間がかかり、日本の準備期間を短くするジレンマに直面しました。

    【第3章:国民生活の変化】
    災害発生時、国民の生活は大きく変化しました。港湾や空港施設が機能しなくなり、輸送力に限界が生じ、食料品をはじめとした生活物資の確保が困難になりました。物資不足、取り合い、インフレが日常風景となりました。

    【第4章:外交の重要性】
    日本は1970年代にGNP世界2位の経済力を持っていました。そのため、日本国内の災害は海外にも経済レベルで影響を及ぼしました。外国政府は、日本を救援する以上に自国の利害への影響を懸念しました。

    【おわりに】
    『日本沈没』は、日本が直面した国家存亡の危機と、それに対する政府、学者、国民の対応を描いた作品です。この小説は、単なる災害物語ではなく、有事にどのような選択肢がありうるのか? その選択肢に対してどのような考え、行動が望ましいのか?を考える機会を提供してくれます。

    小説では、国民人口1.1億人のうち1,000万人がなくなっています。海外に避難済みは7,000万人、国内に在住が3,000万人という設定です。このマクロな数値の裏側には、政府、学者そして国民ひとりひとりの想いが横たわっています。その想いにぜひ、触れてほしいな・・・と思うのでした。

  • 沈みゆく日本を頭に思い浮かべ
    あぁ私は日本が好きだなと
    そんな事を思いながら本を閉じる。

    このような事がいつ起きるか分からない恐怖と
    そうなった時に守るべきものを自分は守れるのか
    読み終わってからも暫く色々と考えてしまった。

  • 私の1973年は中学生だったが、同級生には「日本沈没」を読んでいる者も少数ながらいた。
    私はというと、内容が難しくて、手にすることもなかった。
    よって、日本沈没を読むのは、「やり残したこと」の一つというところ。
    また、日本沈没の映画も見にいったが、途中で退館するという、こちらも中途半端であった。

    そういった意味では、すっきりした読書をした、といって良いだろう。

  • 日本人にとって100年後でも読みつがれる本だと思う。ただ、大地震のあと、道路、電力、鉄道などのインフラの被害想定は、さしもの小松左京でもかなり甘いものであったと、今ではわかる。そんなに早くは復旧しないし、人間を安全に避難所へ移動させられるようになるだけでも、1日2日では無理であって、この小説に出てくるような地震や噴火災害のときは、死者はもっと増えるだろう。

  • 下巻では、地震が多発し、至るところで火山が噴火し、地面が隆起・沈下を繰り返し、日本列島が刻々と破局へと向かっていくなかで、如何に日本国民を海外に脱出させるか、D計画メンバー達が知恵を絞り、奔走する姿を描く。

    自ら道化師役を買って出た、在野の異端科学者にしてD計画の中心人物、田所博士の行動が格好よかった。小野寺、中田、幸長、片岡らDー1の主要メンバーの身を賭して奔走する姿にも感動した。

    本書、防災小説として全く古さを感じさせないところは、やはり凄い!

    現代のアトランティスとして海底に消滅してしまった日本。その後の日本人の姿(祖国を失って世界に散り散りになって生きる日本人達のそれぞれの姿)を描く短編小説があってもいいよなあ、と思っていたら、続編があるようだ(短編集ではないみたい)。読んでみようかな。

    日本海側のことを「裏日本」と呼んでいるのが、何だか懐かしかった。

  • 自らを育み寄って立つ場所を失った日本人はアイデンティティを保てるのか。
    小松が描いたものは、日本列島がただ海に沈むスペクタクルとパニックだけでなく、このような深淵な問いだったのではないか。
    本作の発表は1973年だが、自然災害が当たり前となった現代こそ、小松の問いかけは古くてどこまでも新しい。

  • (上巻 Review から続く)

    でも、この小説で小松氏が一番書きたかったことは、そういう災害時のお話ではなく、「アイデンティティ」のことだったんじゃないかと思うんですよね。  本当の意味でそこに辿りつく前にこのお話は終わっちゃっているから、何となく「パニック小説」のような、この未曾有の事態に直面する「仕事人小説」のような色彩の濃い物語になっちゃっているような気がするんだけど、本当のところ彼が書きたかったことは「自分が属する国を失ったら人はどう生きていくのか?」がテーマのような感じがするんですよ。  そう、ユダヤ民族のように・・・・・・。

    第二次大戦で行き過ぎた「軍国主義」「愛国主義」に走り過ぎたと猛反省した日本人が、今度は「愛国心」とか「同族愛」をどんどん蔑ろにし始めた時代(少なくとも KiKi は自分がそれらの意識のかなり希薄な日本人だという自負があったりもします 苦笑)に、著者にはそれに対する憂いみたいなものを持っていらしたような気がするし、「帰る場所がある」ということが人間にとってどれだけ大切 & 生き抜いていくうえでのパワーの源になるのかを思い出してほしいという願望もあったような気がするし、しかもその日本列島が山あり河あり海ありで本当に美しい姿をしており、そこで培われてきた長くて誇らしい歴史のある国であることも再認識してほしいという想いもあったのではないか??  読んでいてそんなことを感じました。

    (全文はブログにて)

  • 相変わらず、地球の奥底、深い深い海の底で起こっていることはよくわからないが、ただ怖い。
    小学生の頃夏休みのど真ん中に登校して、体育館で鑑賞した映画を見た後の恐怖感、不安感と似ている(年齢がバレる)

    でも、第二部があるのだ。
    希望があるっで事でいいんだろうね( ̄^ ̄)

    続きへ

  • 知り合いが「日本なんて住む所じゃない。早く海外に移住しよう。」って冗談抜きに言ってたのを思い出す。田所博士とは真逆。

    果たして今の日本政府は、有識者から本作同様の事態が発生する可能性を示唆されたとき、劇中の極秘D2計画のように動いてくれるのだろうか。と思っちゃったなぁ、、

  • 日本人って不思議な民族なのだろうか。
    戦争に負け、原爆を2回も落とされても、地震や津波、火山などの自然災害にも、ぐっとこらえて耐え、黙々と勤勉に働き復興する。

    それもきっとこの大地があってこそ。

    小松左京が書きたかったのは日本人であり、それも本の中の今ではなく、島が沈没した後の日本人かもしれない。

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著者プロフィール

昭和6年(1931年)大阪生まれ。旧制神戸一中、三校、京大イタリア文学卒業。経済誌『アトム』記者、ラジオ大阪「いとしこいしの新聞展望」台本書きなどをしながら、1961年〈SFマガジン〉主催の第一回空想科学小説コンテストで「地には平和」が選外努力賞受賞。以後SF作家となり、1973年発表の『日本沈没』は空前のベストセラーとなる。70年万博など幅広く活躍。

「2019年 『小松左京全集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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