恥辱 (小学館文庫)

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制作 : 柳沢 由実子 
  • 小学館 (2007年11月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094081527

恥辱 (小学館文庫)の感想・レビュー・書評

  • スウェーデンの作家カーリン・アルヴテーゲンの4作目。
    過去を抱えた二人の女性の出会いがもたらすものは‥

    モニカは38歳の有能な医師。
    仕事で成功しているが、少女の頃のことで、いまだに深刻な罪悪感に苦しんでいた。
    恋人も出来たのだが、心のうちを明かすことが出来ない。
    ある事故に遭遇したモニカは責任を感じ、贖罪のために、ある行動に出ることに。

    一方、ひきこもっているマイブリットは50代の女性。
    過食で肥満体となり、ヘルパーの手を借りなくては身の回りのことも出来ない障碍者となっている。
    ヘルパーにきつく当たる皮肉屋で、過去のことは忘れるようにして暮らしていたが、これまでと違うタイプの若いヘルパーが登場し、へこたれない彼女に戸惑う。
    さらに幼馴染からの手紙がきっかけで、次第に過去の事実と向き合うようになる。
    幼馴染だった女性は、終身刑で刑務所にいた‥

    まったく違うタイプの女性の運命が、しだいに交錯するようになります。
    実はある共通点があり、それは人に話すことすら出来ない過去を抱えていることだった。
    不運もあるが、この場合、親の責任は相当に大きいですね。親本人は自分を貫いているだけで、わが子に悪かれと思っているわけじゃなかったにしても。
    少し晴れ間の見える方向へ、二人共に向かったのが何よりです。

    作者は1965年スウェーデン生まれ。
    98年デビュー。
    2作目の「喪失」で、北欧の推理小説賞を受賞しています。

    この作品は、謎やスリルはありますが、殺人事件の解決といった展開になるわけではありません。
    そういうミステリが苦手な人にも読んでいただけます。
    重めなので、立て続けに読むってわけにはいかない作家さんですけど~
    深く切り込んでも手際よくさばいていく手つきは確かで、読後感は悪くありませんよ。
    感動と救いがあります。

  •  38歳の女医と、太りすぎで家から出ることさえできない50代の女性。出会うはずのない2人は、運命によって引き寄せられる。

     親は、完璧な存在ではない。
     けれど、子供にとって親は絶対なのだ。ゆえに、子供は深く傷つく。そんな風に2人は深刻なトラウマを抱え、人を信じること、愛することができずにいる。
     しかしながら、肥満の女性マイブリットは幼馴染からの手紙をきっかけに、女医モニカはある事故をきっかけに、自分のトラウマを正面からとらえ、乗り越えていこうとする。
     ただ、その方法はとても不器用だった。だから切ない。

     アルヴーゲンは、彼女たちのトラウマに対して、親を断罪することはしない。ただ、こういうことがありましたと淡々と描いている。それは無意味なことだからなのだと思う。子供は親を選べない。自分の優しさが、親を増長させ自分の身を削ることになっても、子供はそれをやめることができない。
     
     自分自身の力だけが、その呪縛から抜け出すものだ。

     最後がとても印象的だった。
     まるで、冬の陽だまりのようなちょっとしたぬくもりに心がいやされる感じがした。

  • カーリン・アルヴテーゲンは、1965年スウェーデン生まれ。
    二作目の『喪失』で、北欧推理小説賞を受賞。サイコサスペンスの女王ともいえる存在の作家らしいです。

    邦訳は四冊あり、本書は邦訳で一番新しい書物です。

    私は本書以前の三冊、『罪』『喪失』『裏切り』は読んでおらず、はじめてのカーリン・アルヴテーゲンです。

    主人公といえるのは、ふたりの女性。

    ひとりは、38歳の女医。仕事で成功し何不自由ない生活を送っているように思えるが、兄の死がいつまでも心から離れずトラウマになっている。
    もうひとりは、異常に太りすぎ部屋から出ることもできない犬と暮らす50代の女性。彼女を手助けしようとしてくれる人たちを辛辣な言葉で傷つける。

    この全く違う女性ふたりの女性のことが交互に綴られる。

    異なる人生を歩むふたりのことを知るにつけ、彼女たちの共通のキーワードが浮かび上がってくる仕掛けになっている。
    でも、彼女たちの人生は容易には交差しない。

    彼女たちの人生に登場する脇役もすごい。
    家族を殺し、終身刑を受け刑務所で過ごしている肥満女性の幼友達。
    彼女のことなどすっかり忘れていた日常に届いた一通の手紙。その手紙を受け取った時から肥満女性の人生に変化が訪れる。
    皮肉を並べ、悪口をいい、傷つけてヘルパーを追い出すことに生きがいを見出していた肥満女性だが、
    彼女の前に現れたヘルパーの女の子今までにないタイプの子。
    そのヘルパーの女の子の母親と女医は知り合いで、また女医の人生を変えてゆく出来事が起こる。

    人生の成功とは何か。捉われていることは果たして捉われるべきことだったのか。
    毎日の積み重ねの小さな出来事は未来に関連性があるといういわれてみれば当たり前のことが、過去と未来の自らの剣の先をつき合わせなければ気付かないこともある。

    過食で人の手を借りなければ生活できない中年女性、頑張り続け社会的地位や経済的成功を手に入れ、それでも不安と孤独のなかで頑張り続ける女医。
    現代に生きているふたりの女性は、とても身近に感じられる。焙りだされる心の闇に、私たちも現生活を振り返り、何かかんじなければならないのかもしれない。

  • 登場人物はほぼ全員精神病んでるし、両親共または少なくとも母親がエゲツない毒親で肉体的にも精神的にも子供への虐待が凄まじいし読んでるだけでしんどくなります。2度目はないな!

  • 秘密にしておきたい過去を持つふたりの女。
    優秀で母親の愛情を一身に受けた兄を持つ完璧主義の女医モニカと、ヘルパーの手を借りなければ生きていくことのできない異常な肥満体の女マイブリット。
    ふたりの人生が交錯したときに何が起きるのか。

    この作品に出てくるふたりの女性は、過去の出来事によって心に傷を持っている。過去に対して極端とも言える向き合いかたをしたために、自ら生きにくくしてしまう。
    こういう傾向はわたしにもあるため、主人公の特にモニカの気持ちが少しわかる。

    もっと気持ちを楽に、自分を責めて自分に罰を与えてばかりでなく自分を赦すことをした方がいい。頭ではわかっても、それをすることが出来ない。

    この作品はサスペンスなのか文学なのか。
    わたしはサスペンスかと思って購入して読んだのだが、サスペンスという感じでは無かった。かと言って、つまらないということもなく読みながら思うことも多くあり愉しめた。
    何かに分類する必要もない、面白い一冊だった。

    ラストは救いをうかがわせ、すっかり肩入れして読んでいたわたしにとっても救われる思いだった。
    いつかわたしも自分を赦せるような気がした。

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