きいろいゾウ (小学館文庫)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094082517

感想・レビュー・書評

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  • 映画化されていたので気になって読んでみた。

    まず、ページ数が多く、冒頭から半分くらいまで、日常生活の記述が長々と続く。

    登場人物も増えるが、日常のやりとりがほとんどで、その中にも後半重要な伏線があるのかも、と思いつつもストーリーに起伏がなく退屈でした。

    その他の登場人物のそれぞれのストーリーが多すぎる様な気がした。

    抜粋すると、介護話、子供の不登校話、家庭内暴力、戦争、家庭問題etc…繋がってるようでそうでもないような…どれも重めの題材なのに、どれも描ききれてないような、ハリボテ感を感じた。

    主役夫婦の主軸のストーリーも、深そうで浅い様な。精神疾患もあり、あげく幽霊もあり(笑)

    リアルなんだかファンタジーなんだか…

    とりあえず重く深そうでカッコよさそうな話題をあつめ、うわべだけ散りばめた感じだな、というのが全体的な感想です。

    良かった点は、後半は話が動いたので、どういう結論になるのか気になり、スイスイ読めた点。

    1番つまらなかったのは、ムコがツマを失うかもしれないと覚悟してまで会いに行った昔の恋人。彼女の魅力がほとんど伝わらなかった。ストーリーの主軸であるはずなのに雑すぎる。

    タイトルがゾウなんだから、その周辺のストーリーを深く掘り下げ、無用なものは書かないほうが良かったと思う。

    笑ってしまったのは、10歳の男の子の描き方。
    あんな10歳はありえなすぎて萎える、いくらなんでも。精神的に10歳の男はあんなに大人なわけない、そしてそれに恋するオバさん(笑)バカバカしすぎて笑ってしまった。

    人間観察をしっかりすべきと思った。

  • 私はこの作品好きです。
    読み終わった後、すとんと「好きだな〜」「良かったな〜」っていう気持ちが残った。
    主人公はツマとムコという名前のある夫婦。
    夫でも旦那でもなくムコ。
    その響きがなんかいいなって思う。

  • ムコさん、ツマさん、そしてチャックの空いてるアレチさん、セイカさん、大地、平木直子と洋子、チャボのコソク、野良犬のカンユ。メガさんとメガデス。

    いろいろな人が深くかかわりあい、心を許しあう田舎のあったかさを感じるものがたり。

    生きているうちで、誰かと出会うこともあり、そして別れることもある。生と死。

    好きだった人、自分に必要な人、亡くなってはならない人。

    生きてるからには付きまとう死別した苦しみや悲しさ、寂しさ、孤独感。

    その気持ちをどうにかごまかそうと、蓋をしようと必死になって人間は生きていく。

    誰かに慰めてほしい。支えてほしい。際限なく心を蝕む、やりきれない感情と共存しなければならないこともある。

    お互いがお互いを支えあってきた、ツマとムコ。

    過去との決別をできないムコに対して、ツマが「ひとりぼっち」になってしまう場面は見ていて心が痛む。

    (支えあうという点で「キッチン」とよく似ている)

    ない姉ちゃん、鳥の絵を描いてくれたあの人、二人との区切りをつけて、前を向き、ツマの「きいろいゾウ」として寄り添う。

    日記を捨てる描写はその覚悟を感じ、暗闇に一つの光が差し込むような、作品の中での大きなターニングポイントでもある。

    最後に、みんながあつまってハッピーエンドを迎えるシーンは冬の寒さと対比して安心したぬくもりを感じる。

    カンユに新たな命が宿ったことは、「生」を象徴し、未来が明るいことを素直に感じさせてくれる。

    時間が過ぎ、誰かが生まれ、死に、季節が変わる。

    田舎のゆっくりとした、季節の移ろいを強く感じるであろう心地よい時間の中だからこそ、生と死の描写が引き立っている。

  • なんとなく聞いたことのあるタイトルだったから手に取った一冊。そのタイトルと背表紙の要旨から「ツマ」と「ムコさん」のゆるふわ系の恋愛ものかなあと思って読み始めた。読み始めは予想通りゆるゆるな感じで文面もすごく優しいなあと思っていたけど、大地くん出てくるあたりから人の内面に踏み込むような、読んでいて感情が揺さぶられるような感覚があった。実際、大地くんの感覚を自分も感じたことがあって(大地くんほどできた子どもじゃなかったけど)、なんならまだ人生の恥ずかしさみたいなものには悩むこともあって、でもやっぱり素直に正直に生きていかないとなあと思う。そのあとの「ムコさん」の昔の恋人やきいろいゾウの話も深いエピソードがたくさんあって、著者の言いたかったことはこれだ!となにかひとつに絞ることはできないけど、読み終えて読んで良かったなあと思える一冊だった。
    また、風景や人の動作を表す表現はまさに秀逸で読んでいてなじみやすかったし、なんでこんな表現を思いつくんだろうと不思議に思いながら読んだ。誰のセリフでも二回三回と言葉を繰り返すのが印象的で心にぐっときた。

  • 宮崎あおい感がする。ちょっとのんびりしてるのがのほほんとしすぎていて不安になってくる。

  • 夫の名は無辜歩、妻の名は妻利愛子。
    お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う都会の若い夫婦が、田舎にやってきたところから物語が始まる。
    背中に大きな鳥のタトゥーがある売れない小説家のムコは、周囲の生き物(犬、蜘蛛、鳥、花、木など)の声が聞こえてしまう過剰なエネルギーに溢れた明るい妻を優しく見守っていた。
    夏から始まった2人の話は。

  • すてきなフウフだ。こんなふうになりたいと思った。ツマはしあわせものだ。

  • 田舎暮らしをする夫婦のお話。
    いきなり風呂場でカニのアイツが茹で上がっているところから始まる。アイツ、カンユさん、コソク、メガデスなどなど、独特な呼び名がたくさん登場して、夫婦の名前がそれぞれムコさんとツマというのもまた面白い。ムコさんは小説家、ツマは不思議な感覚を持った女性、ちょっと足りない女の子のような雰囲気もある(言葉は悪いけど)。合間に挿し込まれる絵本「きいろいゾウ」の物語と相まって不思議な雰囲気のお話で、最後の方はファンタジーっぽくもなってびっくりするのだけど、なぜか引き込まれた。西さんがよく使う「いう」を「ゆう」とする表記も、普通だったらあんまり好きじゃないんだけど…なぜだろう。

    映画化されているという情報だけは知っていて、ムコさんはもう絶対、井浦新!じゃなきゃイヤ!というくらい井浦新で想像していた。映画は観ていないので実際のキャストのかたが悪いとは言わないけど、やっぱり井浦新で観てみたい!!ちなみにツマは作者の西さんで想像してました(笑)。なので映画を観る気にはなれないのだけど、濱田龍臣くんの大地くんはとっても観てみたいので迷っています…。大地くんをめぐって洋子と張り合うツマさんの大人げない感覚が、わかっちゃいけないんだろうけど、わかる気がするので。

  • 売れているというだけで敬遠していたが、読んでよかった。
    変わった不思議ちゃん夫婦の愛とかそんな感じの話なんだろ(笑)、と思ってたら、変わった不思議ちゃん夫婦の愛とかそんな感じの話(泣)だった。
    最後のページぐっときた。むこさんの歌も泣ける…
    ツマ、かわいいんだが、変り者で天然で純真で誰かが守ってやらねば!みたいな人に個人的に嫉妬してイラついてしまうので若干きつい。
    周りの人たちが最高。大地君かっこよすぎ。

  • ツマとムコさん、2人の毎日。鮮やかな光や風や緑、生き物や植物の声、2人を支えてくれる近所の人たち。何気ない日々の中に、夫婦だけの物語がある。愛している、自分にとってなくてはならない存在。涙が出る愛おしい結末だった。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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