日本沈没 第二部〔小学館文庫〕 (下) (小学館文庫 こ 11-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094082753

作品紹介・あらすじ

日本列島の沈没は、単なる前触れにすぎなかった-。断続的な冷害に襲われ、深刻な飢饉に見舞われていた北朝鮮に、中国が軍事侵攻した。日本列島の物理的消失により、東アジアの気象が大きく変動し、その影響も拡大していた。日本政府は、もうひとつのプロジェクト-日本人の技術を結集した全地球の環境予測システム・地球シミュレータの実用化に乗り出す。皮肉にもそこにシミュレーションされたのは、地球全体を「新たな異変」が呑み込もうとする悪夢のような内容だった。この地球の未来をも予測し、全人類に警鐘を打ち鳴らした世紀のSF巨編、堂々完結。

感想・レビュー・書評

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  • 1 前編の「日本沈没」は、小松左京氏の著作です。日本列島が海底に沈むという、奇想天外な物語です。発刊当時は、大ベストセラーとなり、日本推理作家賞などを受賞しました。地球物理学の解説が盛り込まれ、修士論文に値すると高評価もあったそうです。
    2 第二部上では、国土を失った日本人達が、世界各地に散らばって、地域住民と問題を起こしながらも、懸命に生きようという生き様が描かれています。この第二部では、日本沈没は、次なる災害の前触れにすぎず、地球が寒冷化し、北半球の中緯度地帯以北が氷結してしまいます。生き残った人類は僅かな土地でいき続けなければならなくなります。
    3 本書の中から、気になった箇所を意見を交えて、2点書きます。
    (1)「日本は資源に乏しく、狭隘な土地に1億人もの国民が暮らしていた。洗練された最先端の技術が、国を支えた。さらに、高い教育水準と勤勉さ及び組織力が、技術レベルを嵩上げした」 ⇒ 森嶋道夫氏の著書の一節です。「日本は資本主義の優等生だが、このまま進行すると、途上国に工業振興のチャンスを与えず、すべての国を食い潰してしまう」です。自分達の繁栄だけを望んでいると、必ずしっぺ返しがあるという事です。何事も、節度とバランスある行動が必要です。
    (2)「アメリカは自分達の生き残りを最優先にして、情報を操作している。圧倒的多数を占める途上国の住民を見殺しにする事も厭わない」 ⇒ 世界情勢に目を向けると、各地で大国のエゴが散見します。それに対し、
    我々が出来る事を思い浮かびません。そうは言っても、普段から世間情勢に関心を持ち、例えば、選挙には立候補者を吟味する等、ちょっとした事の積み重ねが大切と思います。
    4 日本沈没第二部上下を読んだ感想まとめです。
    (1)良かった点⇒災害大国である日本では、災害を避ける事は出来ません。地震や台風、それにコロナもあります。備えは、難しいものの、普段からの心構えが基本です。私の信条は、“良くない事には、最悪の事態を想定して当たる”です。
    (2)要望⇒①登場人物が多彩で、混乱する事があります。他の小説で人物リストが最初についていました。本書もあるといいですね。 ②各地で暮らす人達の切実さが伝わりません。もう少し、庶民を登場させて、発言させる場面があると良い。読者の立場に配慮したシナリオ作りが欲しいと思います。
    ◆何れにしても、災害国に生まれ育ち、これからも生活し続けなければならない我々への有益な警鐘には違いありません。

    • かなさん
      ダイちゃんさん、こんばんは!
      先日はこちらへのいいねをありがとうございました。
      こちらへ伺ってみて気づいたのですが、
      この作品ですでに...
      ダイちゃんさん、こんばんは!
      先日はこちらへのいいねをありがとうございました。
      こちらへ伺ってみて気づいたのですが、
      この作品ですでにだいちゃんさんとはいいねのやりとりあったのですね!
      あれから沢山の作品を読んでいますが
      「日本沈没」ほどスケールの大きな作品は少ないですね。
      ダイちゃんさんはレビューをとても大事に書かれていると思います。
      今後読まれる作品を通して交流が図れたら嬉しいので
      フォローさせていただきます。よろしくお願いします。
      2022/10/13
    • ダイちゃんさん
      丁寧にコメント頂き、恐縮しています。こちらこそ、よろしくお願いいたします。
      丁寧にコメント頂き、恐縮しています。こちらこそ、よろしくお願いいたします。
      2022/10/14
  • 日本列島の沈没は、序章にすぎなかった…。地球寒冷化…今実際に問題になっているのは温暖化だけれども視点が変わっていて興味深く読めました。日本で手掛けた地球シュミレーターが最悪の異変を示し、大きな外交問題にも発展する。2部の上巻は、スケールの大きな内容だけれど興奮するほどの感覚は味わえませんでしたが、下巻は違いました!引きこまれるように読めました。ラストがちょっと納得いかない感はありますし、第2部より前作のほうが好きだなぁ…という思いはありますが、読み終えましたの充足感はかなりありました!

  • 作者は、本来、日本国土をなくした日本人を描きたかったみたいだが、日本を沈めるのに手間がかかって…なので、こっちがメインなのかな?
    日本沈没後、25年が経ち、世界各地に散らばって生きる日本人。
    日本人のアイデンティティは?国土復活?など悩ましい問題が続々。
    これを読むと、まず、ユダヤ人を思い浮かべるけど、日本人として国土再興が良いのか、華僑の人達のように、各地に散らばって、溶け込みながら、日本人のアイデンティティを残すかは考えさせられるな。
    地球上に土地ないから、再興するなら、空へか…

  • なかなか、なかなか大変なお話であった。

    色々、色々考えさせられるお話であった。

    本当にこんな時代が訪れる未来があったとしても、その頃に私はきっと生きてはいないだろうけど、今こんな状況に陥ってしまったら、私はそんな中で生きて行けるバイタリティを持ち合わせていない。

    だから、なんか、もうちょっと頑張って日々の生活を送ろうと思ってしまった。

    なんか、この作品の感想じゃないな…

  • 第二部はあまり評判が良くないようであったが、私は非常に楽しめた。
    ただ、第一部では小野寺と阿部玲子との関係性や、「異変」を前に各個人がどのような思惑で動くかといった個人レベルでの感情の動きがよく見えて面白かったが、第二部では政治的な駆け引きや「異変」後の世界情勢等の描写が多く、それでいてページ量は第一部と同じ程度のため、個人の感情の動きや思惑があまり見えづらかったのが残念だった。特に小野寺が25年の間、どのように生活してきたかの描写が少ないため、阿部玲子と再開した際のp375「無にしてしまうには、この26年間は重すぎる」の重たさが伝わったこなかったのがもう一つ物足りなかったように思う。
    ただし、沈没後の日本や日本人の有り様といった議論については面白く読めた。中田首相の愛国心と、鳥飼外務相のコスモポリタニズムの議論も興味深く読めたと思う。
    最後の宇宙への移住(?)の落ちももう少し情報量があっても良いように思ったのだが…(あれでは解釈の幅がありすぎて…)

  • 日本沈没から世界沈没へ。その時、日本・日本人の役割は?中国の存在。
    領土問題等、ちょうど現在の問題とも重なり、非常に刺激的な内容かつ身近な問題として捉えられる。
    日本人としての誇りを感じながらも、地球市民としての可能性探れるのか?等、深い問題である。

  • 日本が沈没してから25年。
    国土は失っても主権と「国民」を保っていた日本も中国やアメリカといった「愛国心」が強い大国に翻弄されて、結局は「コスモポリタン」として世界各地で生きていくことになり、最終的には宇宙へ飛び出す…といった感じでした。

    確かにこの流れはわかるのだけど、小説として楽しめるかと言われると紙面が足りなかったのか、一部にあった人間関係を収束できたようには思えず、ちょっと物足りなく思ってしまいました。

    最後に「日本人」が君が代を歌うシーンがあるんだけれど、そのときに皇室はどうなったのか全く描かれていなかったことに気が付きました。

    この本が描かれたのは13年前で、その頃はまだ平成。
    秋篠宮家による皇室の多大なるイメージ下げもなかった頃だから、もっと皇室は大事に思われていただろうし、だからこそ描かれなかったのかな。

  •  力のこもった傑作である。終幕近くで外務大臣から語られる日本人論は心にしみた。妙なたとえかもしれないけど、薩摩と長州を結びつけた坂本龍馬を思った。
     その一方で、それと対立する側の持つ矜持のようなものもよくわかった。片方が他方より劣っているから負けるとか、相手が悪だから敵であるとか、そういうレベルの話ではない。
     エピローグに描かれた風景は何を意味しているのだろう。ふたつの理念のどちらを、最終的に生かそうとしているのか、最後で少し混乱してしまったのが残念である。

     日本人とは何か、そういう理念を超えて、物語の途中で、ある登場人物が持つ感慨に、僕は涙が出そうになったのである。子供たちに、子孫たちに残すべき未来を、今の僕らは作っているだろうか。登場人物が語るのは、むしろ「作れない」絶望なのだけど、そこに僕は、誰もが持っている、とても深く広い「愛」のようなものを感じた。

     大勢の登場人物が織りなす物語は魅力的である。時間と場所の飛躍について行けさえすれば、骨太の物語を楽しめる。ただ、それぞれの登場人物が、役割を果たすとそのまま置いて行かれるような感じがした。地球規模で考えていけば、個人というのはそういうものなのかもしれないけど、ちょっと寂しい気がした。

     文章に関してひとつだけ。「~か」という問いかけ的な文末がむやみに多いことが途中で気になってきて、気になってくると本当に気になった困った。
    2009/4/21

  • 最後にSFらしくなりますね。

  • やっと読み終えた(何ヶ月かかったんだ…)

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著者プロフィール

昭和6年(1931年)大阪生まれ。旧制神戸一中、三校、京大イタリア文学卒業。経済誌『アトム』記者、ラジオ大阪「いとしこいしの新聞展望」台本書きなどをしながら、1961年〈SFマガジン〉主催の第一回空想科学小説コンテストで「地には平和」が選外努力賞受賞。以後SF作家となり、1973年発表の『日本沈没』は空前のベストセラーとなる。70年万博など幅広く活躍。

「2019年 『小松左京全集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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