一九七二年のレイニー・ラウ (小学館文庫)

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著者 : 打海文三
  • 小学館 (2008年10月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094083163

一九七二年のレイニー・ラウ (小学館文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 大人の淡い恋物語の短編集と感じた

  • 伊坂さんのエッセイ集の”3652”の中に
    「打海文三の指摘が的確であろうと、的外れであろうと、僕は姿勢を正さずにいられない」というタイトルのエッセイがあります。打海さんの著作は未読ですが”伊坂さんがそこまでいうなら読まずに捨て置くわけにはいかないじゃないの”。ということでエッセイ内で紹介されている”ぼくが愛したゴウスト”の前にタイトル的に古そうなこの作品をジャブしてみることにしました。

    作中で印象に残った文面ですが

    p23 「恋に落ちるってね、世間からも落ちていくことなの」

    このセリフ、16歳の娘の慶子が父親に言う言葉なんですね。なんでしょうこの娘、ものすごくかっこよくないですか。男女の酸いも甘いも全てを知り尽くした哲学者のような説得力です。
    そして彼女は物語の中で終始、自分の父親の恋をたきつけます。
    セリフは常に父親の一手、二手先をいっていて、
    父親に女とは何たるかを教授し続けます。
    そして、見事に父親とレイニーラウの恋を詰めきります。とまどいつつも、娘の思惑通りに動かされる父もオシャレな会話も見事な世界観が形成されていてなかなかに爽快です。

    恋愛小説を書くためのコツが作中でセリフとして登場しますが
    p270 「現実には出逢えなかったけれど、出逢えたかもしれない女性のことを想像して」

    書くらしいです。なるほど、と思いましたね。

    p282 床に倒れた樹木を迂回して図書館の方へ向かった。「わざと転がしてあるのか」彼女が気付いて言った。
    「アートです。日常を裏切る試み」古田は言った。

    短い文章ですが、”日常を裏切る”というセリフに底知れぬセンスを感じます。


    やはり読み終えると伊坂さんのいう、”打海さんの指摘に姿勢を正してしまう”という言葉に非常に共感できます。
    無駄ヅモのない麻雀の打ち方を見ているかのような気持ちになってきます。
    作家さんのナビでまた新たな世界へ連れ立っていってもらえることをとてもうれしく思います。

  • 香港でわかれた女性レイニー・ラウに主人公が二十五年ぶりに再会を果たす表題作をはじめ、借金とりたてに訪れたやくざと主婦の危険な関係を描いた「花におう日曜日」、美しい背中の女性と知り合い、著者自身の小説観まで投影される「ここから遠く離れて」など、静かに心を打つ八篇所収。あなたが出逢えたかもしれない「恋人」たちがきっとここにいる―珠玉の恋愛小説集。

    やはりこの人の表現が好き。
    「恋に落ちるっ てね、世間からも落ちていくことなのよ」
    路環島にてもよかった。大人のやり取りで。きっと中学生が読んでもわからないだろうね。

    また読み返したい

  • 中国、香港などを舞台とした作品です。

  • 恋愛小説こと妄想小説
    生々しい情念を練りに練ったお洒落台詞のオブラートに包んで大変召し上がり易くなっております。

  • 「女の子が群がっている生活雑貨の店のまえをとおりすぎると、『ラムタ亭』という洋風居酒屋があった。もとは『田村』という定食屋で、ラムタというのはじつにくだらないことに、田村の逆読みである(後略)」

    「「(前略)出逢いの不可能性は、ぼくの場合、たんに起こらなかっただけでなく、禁じられた関係性を含意しており、そうであるがゆえに恐怖心をともなうものです。ある女性文芸評論家に、あなたの小説には女に滅ぼされることをよしとする男の昏いダンディズムがある、と指摘されたことがありますが、ぼくの小説に露呈しているのはむしろ、ヴァギナ・デンダータ=歯のある膣への、男性作家の恐怖心です。」
    (中略)
    彼女が短く書いている。
    「昨日の夜と今朝の二度確認しました。歯なんか生えていません。恐れる必要はぜんぜんありません。生ビールでも飲みませんか。」」

    「「体験したことを、書き言葉で再現するときに、どんな人でも、過剰であれ稚拙であれ、無意識にレトリックを使います。そんなふうに再現された体験は、過去のたんなる再現ではなくて、新しく体験された過去です。レトリックによって人は過去を新しく体験する。意味のある過去とはそういうものかもしれない。レトリックなしには過去は存在しない、と思うことさえあります。」」

    「恋愛小説を書いてみたいと思うなら、あなたが<出逢えなかった人>について書けばいい。実人生では不可能だった出逢いを、出逢えたかもしれないという可能性として、虚構の中で救い出そうと試みるなら、そのまま恋愛小説になるだろう。」
    (2009.3)

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