銀しゃり[文庫] (小学館文庫)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094084078

作品紹介・あらすじ

寛政の江戸深川に「三ツ木鮨」を構えた鮨職人・新吉は親方から受け継いだ柿鮨(こけらずし)の味と伝統を守るため、日々精進を重ねていた。職人の誇りをかけて、満足のいく仕事をする。それが新吉の信条だったが、ふとしたきっかけで旗本勘定方祐筆・小西秋之助の知己を得る。武家の借金を棒引きにする「棄捐令」に思い悩む秋之助との間に、互いの生き様を通して生まれる男同士の信頼感。住む世界が異なろうとも、そこには己れの仕事に命を燃やす男たちの熱い心意気があった。
長屋に暮らす仲間たちと織りなす<笑いあり涙あり>の時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • 若い鮨職人と、その商売を見守る良識派武家を巡る人情物。

    三ツ木鮨の新吉は二十七歳の腕のいい鮨職人で、絶品の柿鮨(こけらずし)に工夫を加え、小西秋之助の支援もあって商売好調。性格は喧嘩っ早い直情型。

    小西秋之助は、旗本稲川忠邦に仕える勘定方祐筆で、札差との借財交を渉担当するネゴシエーター。棄捐令(大名旗本への借金棒引き)で打撃を受け貸し渋る札差との交渉に難渋している。武家の存在意義に疑問を持つ良識派であり(「わしら武家は、世のためになる物は、なにひとつ拵えてはおらぬ。ただただ飯を食らい、カネで物を購うのみだ」)、真面目な商人の支援を惜しまない。

    新吉は、柿鮨の縁で、DV夫に捨てられたおあき・杉作母子と知り合い、同情心が高じておあきに懸想する(おあきも半ばその気だったようだ)が、夫の与助が突然帰って来るとおあき母子は元の鞘に戻ってしまう。与助との間が険悪になるものの、大事に至らずあっさり終息。←この展開は意外だった。新吉はてっきり、ヤクザな与助と揉めに揉めて商売を傾かせた揚げ句、秋之助の助力もあって何とかトラブルを解決し、あおきと所帯を持つことになるのではないかと想像したのだが…(もちろん、悲惨な状況にならなかっかこと自体は良かったのだけれど)。

    その後、親友の順平の妹で新吉を憎からず思っていた器量よしのおけいと急接近。乗合船の転覆により順平が行方不明となる事故に見舞われるが、最後はハッピーエンド。

    柿(かき)と柿(こけら)が別の意味の言葉だということ、知らなかった。しいたけの煮汁が染み込んだ新吉の柿鮨(押し寿司)、美味しそうだったなあ。

  • 山本一力の真骨頂とも言える深川を舞台にした人情時代物小説でした!愚直な鮨職人の主人公新吉が、味と伝統を守るため日々精進する毎日を過ごす中、新吉の職人気質や人間性を惚れ込んだ人たちとの五分の付き合いが粋だった反面、自分さえよければ良いという人たちとの対峙だったり、女性関係の難しさだったりがまた面白さに拍車をかけておりました。また、新吉と順平兄妹との絆のような関係性も良かったです!
    読み終えて、ほっこりした気持ちになれました!

  • 勧善懲悪じゃなくても時代小説ってよいな。小西家素敵だ♬

  • 主人公は江戸深川で寿司屋を営む若者。馴染みの棒手振りや旗本に使える武家、いわくありげな客の女性や長屋のおばちゃんなど、様々な人たちと関わり合いながらも仕事へは真摯に向き合い正直に生きていく。江戸の町の人々が生き生きと描かれている。

    これと言って考えさせられることとかはないが、読後感の良い爽やかな話。悪いやつも出てくるが、ある意味勧善懲悪な展開で安心する。
    江戸の町を舞台にした話はたくさんあると思うが、実際に見てきたかのように町や人々の様子を描いているのはすごい。

  • 2023.07.18
    著者の作品は庶民がまじめに生きることを強く訴える。あと、禍福は糾える縄の如しということをいつも感じる。
    良いことがあったからといって浮かれたり、悪いことがあったからといって落ち込んでいてはダメだとも思う。

  • "江戸深川を舞台にした時代小説。鮨職人の新吉さんを主人公にした人情話。
    小説はフィクションだが、小説のモデルになった人物、お店は実在する。
    三ツ木鮨は深川の富岡八幡宮そばにある。親方は新吉さんの代から変わって若返っているが、お店は健在だ。"

  • (古本を購入)
    読み始めた(6月16日)~読み終わった(10月3日)

    ハッピーエンドで良かった。
    話が万事うまくいく展開で、少し現実味が無いと感じることもあるが、小説だし、そんな気持ちも最初だけ。
    次の作品も期待して読みます。

  • ちょっとベタすぎるいい話

  • 寿司屋さんが真摯に人と向き合って、真面目に働き、苦労を重ねて大きくなる話。
    途中、似たような偉い侍と会ってアドバイスを貰ったり、竹のナイフを開発したり、シンママに失恋したり、友達が消息不明になったりいろいろあった。それで話がとっ散らかったというかライトになった感じがする。
    途中、主人公とうまくいきそうだったシンママが、夫が帰って来たとたんに憎まれ口を叩きながらも元鞘に戻る描写が、みんないい人で最後はハッピーエンドなこの小説のなかで、少し残酷なスパイスになっていて良かった。

    お腹すいた。

  • 気持ちの良い人々による気持ちの良い物語。真摯に生きる人々が奮闘し幸せになる姿を観ると本当に良い気分になる。

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著者プロフィール

1948年高知市生まれ。都立世田谷工業高校卒。旅行代理店、広告制作会社、コピーライター、航空関連の商社勤務等を経て、97年「蒼龍」でオール讀物新人賞を受賞。2002年『あかね空』で直木賞を受賞。江戸の下町人情を得意とし、時代小説界を牽引する人気作家の一人。著書多数。

「2023年 『草笛の音次郎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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