秋の森の奇跡 (小学館文庫 は 5-3)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 364
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094084290

作品紹介・あらすじ

輸入家具店店長の裕子は42歳、夫、娘と何不自由のない毎日を送っていたが、実母が認知症になったことから、その人生が大きく暗転する。母親の介護を巡る実兄との諍い、夫の隠された過去への不信感から逃れるように、裕子は妻子ある男との関係を深めていく。不倫ではない、浮気でもない、真の恋愛を求める裕子にとって、その男は、人生の秋に巡り会う“奇跡の恋愛相手”となるのだろうか。魂が触れ合う真の恋を、裕子は掴むことができるのだろうか。
絶妙な舞台設定とハプニング続出のストーリー! “林真理子恋愛文学の最高傑作”と呼ばれる珠玉の純愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 42歳のキャリアウーマンである裕子。夫は有名中高一貫校の教員。申し分ない安定した暮らしであったのに、親の認知症や夫の不義理に弱り果て不倫をしてしまう。一度目は後悔に終わったが、二度目は……。夫がいる以上、恋愛は「不倫」と呼ばれてしまうが、裕子が求めるのは真の愛情。

    「愛するということは生きること」、というシンプルな言葉が思い浮かぶ。親の老いゆく姿、また、もう若いとはいえない自分の姿、それらに抗うかのように沸き起こる、愛されたい愛したいという欲望は、実は私にもある。ひとりの中年の女性が丸裸にされるように綴られているが、とても上品で純粋な物語。

  • 動物の雄は死の間際でさえも生殖本能がみられる、という話を聞いたことがあります。
    おそらく自分の死という種族のマイナスを子作りというプラス的な行動で穴埋めするかのようだとそのときは思ったのですが。

    主人公は女性ですが、老人性痴呆症になってしまいだんだんと壊れていく実母の姿を見ておそらく死のにおいをまざまざと感じたのでしょうね。
    生殖本能、というとあまりにもあからさまな言い方ですが、「男の人に愛されたいと」思ってしまう、これも「ただ生きたいと」あがく姿なのかもしれません。

    ワタシ個人はあまり自分が恋愛体質ではないのですが、配偶者とは別に運命の人に出会ってしまう、というのは果たしてそれは幸福なのだろうか、不幸なのだろうか、と考えさせられてしまいました。

    実母がもう娘である自分すらわからなくなって「どちらさまですか?」と尋ねられてしまう悲しさと、ラストの
    「二人がおじいさん、おばあさんになってもこの関係を続けよう」
    (お互いに相手が誰かわからなくなるまで)
    という対比が切なかったです。

    母の痴呆という強烈な老いとかすかに漂う死の香りの中で、ただ生きたいとあがき、その証として最後の恋愛を求めてしまう中年女性の悲しさがうまく描かれていたと思います。

    恋愛に関することは別ですが(笑)、肉親の介護、というのは自分も何年後かには抱える悩みなのではないかなぁ…兄との確執の部分も悲しいけれどもこういうことがあるかもしれない、と思ってしまいました。

    単なる不倫恋愛ものではなく、いろんなことを考えさせられた本です。

  • いったいいくつの「生きている証」が欲しいのかな。母親への想いに嘘はないと思うし、壊れていく母を看るのはとても辛いことだとは思うけど。

  • 主人公の2回目の不倫は、批判的な感情は持たなかった。なんか、いいなぁと思ってしまった。

  • 2022 4/30

  • 不倫がなぜ刹那を持つのかわかったようなわからないような

    不倫はこうして発生するのか、と、浮気と不倫の違い、遊びと本気が、わかったようなわからないような

    ただ、女も男も、既婚の真剣な恋があるのだな、と思いました。これは既婚者側の主人公の立場で思うもので、その娘だったら最悪なことですが、、小説なので。ひとえに不倫は罪、とも言えない感情があるのかもしれん、と思いました。多分、不倫している女性の気持ちをすごく秀逸に描写されていると思いました。小説なので楽しかったです。

    お母さんのくだりは、キュンとするものがあった…
    例えば、幼い子供のように、お母さん、お母さん!と心で求めてしまう。お母さんが、子供の頃のように自分を綺麗だと褒めてくれる。娘であることが嬉しいと思いました

  • p.2009/9/14

  • 親が認知症になって、老いが恐ろしくなってまだ若いうちに(既婚だけれど)恋愛する、という話。
    全く共感できないし突っ込みどころも多いけれど読んでる時なーんにも考えなくていいのでよい。

  • しようのない、とわかっていても、気楽に読めるものを読みたい気分のため読んでしまった。
    登場人物の造形が薄っぺらく、主人公が不倫に走る理由が理由になっていない。文章も散漫、細かいところ(主人公の服装とか)の整合性すらとれておらず、予想どおり文学的な価値はない。
    しかし通俗の極みなのに、というかだからこそ、さらさらと簡単に読めてしまう。これを読書といっていいのかはわからないけれど…。

  • 主人公独特の偏見が入り混じっていて、少しいらいらはしたものの、話の展開自体は悪くなかった。大人の恋愛って感じで、僕は嫌いじゃなかった。

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著者プロフィール

1954年山梨県生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、コピーライターとして活躍する。1982年、エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を刊行し、ベストセラーとなる。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で「直木賞」を受賞。95年『白蓮れんれん』で「柴田錬三郎賞」、98年『みんなの秘密』で「吉川英治文学賞」、13年『アスクレピオスの愛人』で「島清恋愛文学賞」を受賞する。18年『西郷どん!』がNHK大河ドラマ原作となり、同年「紫綬褒章」を受章する。その他著書に、『葡萄が目にしみる』『不機嫌な果実』『美女入門』『下流の宴』『野心のすすめ』『愉楽にて』『小説8050』『李王家の縁談』『奇跡』等がある。

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