- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094085532
感想・レビュー・書評
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大おばあちゃんの死の床について亡くなっていくところから家族の心模様を描いた作品。
いつも思うことだが、あさのさんの作品は描写が押しつけがましくなくすーっと心に寄り添って、いつしか深いところまでずーんと胸にくる。
様々な人生があってみんな葛藤しながら生きている、それが絡み合いながらもがきつつ必死で模索する。
年を経るごとに達観できるのだろうかと思いながら。
あたしもその中のひとり、そう思うお話だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2017年読み初め(笑)
あさのあつこさんの四冊目。
『バッテリー』など有名過ぎて読めていない。
実は一部だけを読んで、その描写がとても良かったので、まるごと読みたくなった作品。
藤崎という地元では有名な家系に嫁いだ松恵。
彼女の死に際して、娘、曽孫、孫の嫁、近所の花屋さんという変わった視点から語りが広がる。
それぞれ登場人物がドロドロと溜まった醜さを抱えながら、一人の死に向き合っていく。
それは、綺麗事では片付けようがないのだけれど、死という非日常によって、自分自身とも対峙していくという流れがすごく良かった。
ただ、意外なのが曽孫の東真パートで出てくる瑞樹パートがなかったこと。
身内固めでいくなら、花屋さん忠明パートがあるもんなー。
個人的には東真の父であり、孫である充パートも読んでみたかった!
色彩表現の豊かさと、そこに上手く気持ちを乗せていく描写の巧さ。
奈緒子さんの生々しさがあっても、ラストでしっかり感動に持っていける、すごさ。
秋風に耳を澄ませると、優しい声が聴こえてくるんじゃないかと思わされた、素敵な作品だった。 -
家族の関係は家族だからこそのすれ違いがある。
でもいい人たち。
いい人でありたい。 -
最初に読んだ時はすぐに読み終わり、特に感慨深い印象もなかったけれど、後からじわじわくる。
人の心の深いところを上手く伝えていて、自分と照らし合わせて考えることも多々。
手放してしまったけど、もう1回読みたいと思う。 -
死者を火葬場まで皆で列をなして送ることを「野辺送り」というと、恥ずかしながら初めて知りました。
写真や映像では見たことはありましたが、近年ではめったに見られない光景です。
ある老女の死ぬ間際から物語は始まり、老女と関係する人々の話で構成されています。
中学校の教科書に掲載されている「風の唄」は老女の曾孫―東真の話。
才能のある人間に出会うことで、自分の限界を知り、大好きだった絵を描くことをやめてしまった東真。
そんな彼に曾祖母は「柿の木を描いて棺におさめてほしい」という。
東真が描かなくなった原因でもある、映子が言った一言で、最後は自分の気持ちと向き合い、乗り越えることができてよかった。
読んでて辛く痛かったのは、老女の娘、奈緒子の物語。
自分を疑い続けて死んだ、父
そのことから、ただひたすら愛されることを望み続けた奈緒子の生きざまは読んでてひりひりしました。
そんな奈緒子を誰よりも愛してくれたのは、母であり、母に誰よりも愛されていたことに気付いていた奈緒子。
葬儀のときにとった彼女の行動も素敵でした。
島本理生さんの解説もよかった。 -
面白かったけれど、自分の好みではないです。
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一人の老女の死の裏側にたくさんの物語が存在している。語り手が変わることで、さまざまな側面が見えてくる。全編を通して死と喪失が描かれているのに、読後は爽やか。
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あさのあつの本を読むのは初めてです。
あさのあつこには珍しいテーマなのかもしれない人の死を描いていますが、ほんわかと暖かい気持ちになれました。 -
「遥かなる子守唄」がせつなすぎる…
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人の死に触れ、
各々がその死を傷み、
向かい合い、
そうしてそこに今あるべき自分の姿を見出だそうとする。
そんな姿を、
老女の死から始まり、
葬儀を通して柔らかに描いています。
日溜まりの中に居るような丁寧かつ温かな文章には、
思わず涙ぐんでしまう何かがあります、
大切な人との別れを惜しみ、
前に進まなければならないとき、
心を癒される一冊になるのではないでしょうか。