完全恋愛 (小学館文庫 ま 16-1)

著者 :
  • 小学館
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (555ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094085952

作品紹介・あらすじ

第二次大戦末期の福島県の温泉地、東京からやってきた少年・本庄究は、同じく戦火を逃れてこの地に暮らしていた画家の娘・小仏朋音に強い恋心を抱く。やがて終戦となり、この地方で進駐軍のアメリカ兵が殺されるという事件が起こる。しかし現場からは凶器が忽然と消えてしまう。昭和四十三年、福島の山村にあるはずのナイフが、時空を超え、瞬時にして西表島にいる少女の胸に突き刺さる。昭和六十二年、東京にいるはずの犯人が福島にも現れる。三つの謎の事件を結ぶのは、画壇の巨匠である男の秘められた恋であった。「本格ミステリ大賞」受賞作品を文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 辻真先さんの別名によるガチミステリ作品。
    しかも09年の「本格ミステリ大賞」受賞作という
    オマケ付の作品。
    これもネタバレを伴う感想になるので
    非常に書き難いっす。

    孤高の画家の一生を描いた作品ですが
    その中に3つの事件が起る。その画家
    である「本庄究」の幼少期から晩年までを
    追う形で様々な人物が彼の最初にして
    最後の「恋」の相手「小仏朋音」の
    姿を思わせる。彼の数奇で純愛に身を
    捧げた人生と事件...。ミステリと恋愛パートが
    上手く絡み合っています。

    ミステリパートとしては少々...強引というか
    うそーん!!..なトンデモ展開ですが全く腹も立たないw。
    むしろそんな事にまで展開するのか!と
    痛快な真相でニヤリ。
    そして「恋愛」パートとしては、ラストの
    昇華は見事過ぎます。タイトルの「完全恋愛」
    に恥ない、真っ直ぐに正直な記述によって、
    正直、真相については予想した通りなのですが、
    それでも読後の爽快感は大満足。
    男の身勝手なファンタジー作品(褒めてますw)。

  • 戦中から現代までの長い時間の流れの中で起こる複数の事件、数世代に渡る人間関係など、プロットがよく練られているため、もちろん謎解きとしても面白いが、登場人物のキャラクターや心象風景が細やかに描かれていることが、本作を際立った小説にしている。特にそれぞれの事件の背景にある幾つかの恋愛の描き方が素晴らしい。読後に驚きと感動もあり、手にとってよかったと思える一冊。

  • なるほど完全恋愛をしたのは満州子のほうだったのか…

  • このなんたらがスゴイ!っていう系統は、まぁそうね、スゴイやねーってなって終わりだったりするけど、このお話はスゴイかすごくないか、ってだけで言えば確かにスゴイ。久しぶりに読み終わってスゲーってなった。んだけども、途中の話の流れは割ともやーってしててそこまでではないんだよなぁ。だからこそ最後の結末が映えるのかな。
    しかし読者に嘘は言わないが、隠したいところは隠す、というのが推理小説にとってフェアな立場である、というのは、まさに新聞などが使いまわしている手法だよなぁ、となんだか妙に感銘を受けたのだった。

  •  完全恋愛というタイトルまで伏線につかった,辻真先,いや牧薩次の渾身の作品。やや冗長ではあるが,古きよき時代の本格ミステリを思わせる幻想的な謎,怪奇的な雰囲気,そして遠隔地における心中や双子を利用したアリバイトリックなど,バカミス的なトリックを惜しげもなく使って,読者を盛り上げる。最後は,「そういうオチだったのか」と思わせる真相。朋江と結ばれたと信じて死んでいった柳楽糺(=本庄究〉は幸せだったのか,満州子は幸せだったのか…やや切ない設定なのだが,辻真先が描く文章の明るさから読後感はいい。抜群のインパクトとサプライズ,そして爽やかな読後感。傑作といっていい作品だろう。★4で。

    〇 事件の概要
     ジェイク大尉殺害。小仏朋音がジェイクを殺害したが,本庄究がそれを隠蔽。隠蔽工作しているところを見たメアリが,ジェイクはアメリカの恥として,進駐軍どうしの内輪もめという形で処理をした。
     真刈火奈殺害。閉鎖された集合Bにいた浅沼宏彦の指紋がついたナイフで,かまくらの中で刺殺された。真相は遠隔地における心中。謎の殺人事件らしい演出をした心中事件だった。
     真刈夕馬殺害事件。トリックはふたごを利用したアリバイトリック。
     
    〇 サプライズ ★★★★★
     「おもい」という柳楽糺(=本庄究)が子ども時代のジェイク大尉殺人事件は,特にサプライズはない。最初の殺人事件を,後半部分の伏線として,贅沢に使っている。「なげき」というタイトルの第2章は,真刈火奈と浅沼宏彦の殺人事件に模した心中事件。これは,一応,幻想的な謎っぽく描かれているが,心中という形での決着は,あまりサプライズはない。最終章「わかれ」の真刈夕馬殺人事件では,まさかのふたご入れ替わりというバカミスちっくなトリック。冒頭で描かれた「みぃちゃん」というのが,柳楽糺のに二重胎児だったというオチは,サプライズではある。とはいえ,この作品最大のサプライズは,柳楽糺と朋江の間には何の関係もなく,柳楽糺と関係があったのは満州子であり,藤堂魅惑が,益子と名を変えた柳楽糺と満州子の間の子どもだったという点だろう。多種多様の謎をミスディレクションとして散りばめ,この部分をオチに使うと思わせない手法はお見事。そういうオチを用意していたのかと思わせるが,「完全恋愛」というこの作品のタイトルまで伏線になっている点に気付くと完全に参ってしまった。お見事。

    熱中度 ★★★☆☆
     数々の謎を散りばめ,ストーリーを引っ張っていく。さすが,サービス精神旺盛な辻真先という感じ。ただ,さすがに冗長な気がする。もう少しシャープなら最後まで一気に読み進めることができるが,特に第2章の「なげき」の部分で,やや中だるみ感はいなめない。

    キャラクター ★★☆☆☆
     キャラクターは立っていそうで,それほど立っていない。きちんと描き分けられていないというか,柳楽糺,藤堂魅惑,真刈夕馬,真刈朋江,真刈火奈,山岸珠美…などなど,登場人物は多いのだが,読み終わって,このキャラクターに愛着を感じた…というキャラがいないというか…。登場人物全員が,それなりに魅力があるのだが…。

    読後感 ★★★★☆
     なんともいえない読後感がある。果たして,柳楽糺(=本庄究)は幸せだったのか?事実を知らない方が幸せなのか,不幸なのか…。満州子や魅惑の真意は?深く考えると,あまり読後感がよくならなそうではあるのだが,読み終えたときの第一印象はとてもよかった。辻真先作品が持つ,なんともいえない雰囲気が成せるわざかもしれない。

    インパクト ★★★★☆
     インパクトは抜群にある。特に,ラストの満州子の独白が忘れられない。「完全恋愛」というタイトルもお見事。ただし,途中で描かれる3つの殺人事件と真相は,なんとも辻真先らしい馬鹿さ加減だが,そこまで印象に残らない。

    希少価値 ★☆☆☆☆
     絶版ではないみたいで,入手困難ということはない。そこまで売れている感じではないので,将来的にはどうなるか分からないが…。隠れた名作的なポジションになってもおかしくないような雰囲気はあるが…。

  • タイトルは最後に回収。
    小説内の時間が長く、その期間を考えると切なくなる。
    おそらくこの小説の肝心なネタは、皆が気づく部分だが、長すぎて忘れてしまっていた笑

  • このミスベスト10、2009年版3位。何十年かにわたって2件の殺人事件が起きて、それとはあんまり関係なく話が進んでいく。ほいで、間をおいて事件が解決していくんだけど、仕掛けが大がかりな割にはなんだか説得力に欠ける展開だし、あんまり意外性も感じられず、えらい切れが悪い小説だなと思いながら読み進めてやっとこさ最終版を迎える。で、最後にあっと言わせるオチがあるんだけど、この落ちのためだけに延々盛り上がらない話を読ませられるのはちとつらい。

  • 2015年7月25日読了。
    2015年96冊目。

  • 冒頭の文を常に意識しながら読みましたが、見事に騙されました。そこだったとは。。相手に一生知られずにいることが目的だったのなら、完全恋愛と言っていいのでしょうね。

  • 面白いとは思うのですが、共感、驚き、そういうものが淡々としてしまいすぎているような気がしました。

  • たんたんと話は進む謎はどこに

  • 画家 本庄究(柳楽糺)の生涯を描いたミステリー。

    彼の生涯に3つの殺人事件が起こる。
    2つ目、3つ目の事件は推理小説として成り立っている。

    この事件を解決するだけでも1本の小説としてないたつのだけど
    本書全体に仕掛けがあり、最期に「あっ!」と言わされる。





    「ネタバレ」

    本庄究は生涯一人の女性だけを愛するのだが、その愛は報われる事が
    なかった。
    若い頃にその女性を助けた事で、一夜限りむすばれるのだが、
    その思いを生涯わすれることなく貫き、彼女の娘をも守ろうとする。

    ある時、その娘は自分の娘ではないかというところからミスリードされて
    いき、最後に全てが明らかになる。

  • 他者にその存在さえ知られない恋は「完全恋愛」と呼ばれるべきか?

    本書は、究極の恋愛なのか、それとも究極の片思いなのか?

    相手にその想いが伝わらない恋愛は、そもそも完全恋愛と呼べるのか?

    この究極の「勘違い恋愛」が終章で明かされます。

    これでいいの?

    というのが正直な感想です。

  • 最後の最後はよかったが、それまでは退屈な場面が多かった。

  • むぅ...
    出だしの文章は魅力的なのだが、
    読み終わるとそれだけだったような...(^ ^;

    後半の謎解き部分はかなり強引な展開(^ ^;
    アイディアは面白いし、仕掛けも派手だし、
    読み物として面白かったが...

    文章が安っぽいんだよなぁ...(^ ^;
    格調が感じられないというか、
    余韻がないというか...

    全体を通して「あらすじ」を読んでるような
    味気なさが感じられてしまい...(^ ^;
    読み進めてもずっと「傍観者気分」で、
    登場人物に感情移入できないのが難点か。

    あと、最後の最後の「どんでん返し」のはずが
    伏線があからさますぎてかなり早い段階でネタバレ(^ ^;
    きっとこうなるんだろうな、と思った通りになったので、
    「裏切られ感」がまったくないのが残念(^ ^;

    あと、作者自身が謎かけになっているのは
    後書きを読むまでまったく存じませんでした。
    が、だからどうした、って話ですけどね(^ ^;

    同業者の評価は高かったようだが、
    私には今ひとつだったなぁ...(^ ^;

  • 犯罪があったことさえも悟られないのが完全犯罪ならば、想いがバレないことは、完全恋愛とよばれるのではないかー。主人公究は、離れに住む朋音に一目ぼれ。朋音は暗闇の中、究の布団に忍び込み一夜を明かす。しばらくして有力者夏刈家へ嫁ぎ、子供火菜を産む。朋音の父小仏に弟子入りし、画家となった究。祖父を訪ねてくる火菜を通じ、朋音に想いを寄せ続ける。究の弟子魅惑は山岸医院の娘と結婚し、と複雑に絡み合っていく。朋音、火菜が死にいよいよ究にも死期が迫る。その傍ら魅惑たちは真刈殺害や火菜心中の謎を解いていくー。実は究は双子で、身代わりをたて真刈を殺害したというちょいやり過ぎトリック。最後の最後魅惑の母究の幼馴染みの満洲子が、あの夜をともにしたのは自分であることをしみじみ思う。そう、火菜が自分の子だと思い込んでいたのは究の勘違いだったのだ。そのトリックには早い段階で気付いていたが、人物の心の動きはそれをひいても余りある。終戦から平成までを駆け抜けた究ー柳楽画伯。時代背景がマッチして人にすすめるにはおすすめ。

  • 雑誌のおすすめ本ということで購入。

    何が伏線なのか、読めない。
    ミステリーとしてはちょっと強引だけど、最後の最後のオチは見事。
    おすすめできる一冊。

  • 最後の最後にドンデン返しあり、タイトルの真の意味を知るミステリー作。

  • 最後ちょっとほろっときた。こうくるとは…
    男はバカだね

  • 小説としては豊潤だが、ミステリーとしては薄味か。

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