逆説の日本史 14 近世爛熟編 (小学館文庫 い 1-24)

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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094086027

作品紹介・あらすじ

江戸時代にあって最も爛熟をきわめた元禄の世(1688年〜1703年)は、日本近世史上最大の"大変革"の時代でもあった。今に伝えられる「忠臣蔵」美談創作の裏に秘められた日本人の精神構造の大転換はじめ、21世紀の今を生きる日本人の原像がここにあった。名君綱吉の治世が揺るがした刃傷と仇討ち。赤穂事件が「忠臣蔵」に変移した謎。

感想・レビュー・書評

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  • この時代から今につながる経済の背景を知るのは面白いなぁ。
    三井は「商」。住友は「工」。なるほどね。

  • この巻では元禄時代の政治と文化があつかわれています。

    赤穂事件の真相について著者ならではの観点からその真相にせまり、さらに綱吉によってはじめられた側用人のシステムが、家康以来の江戸幕府の統治の仕組みをどのように改変するものであったのかということが語られています。

    また、朱子学を中心とする儒教的な考えかたが江戸幕府によって取り入れられ、とくに商業を蔑視する発想が非合理的なものであったという著者の主張が提示されています。そのうえで、この時代に日本には世界にも類例のない商業倫理が形成され、このことがアジアのなかで日本がいちはやく近代化に成功したことの理由であったと論じられています。この考えは、著者が名前をあげている山本七平の鈴木正三、石田梅岩への評価を踏襲したものですが、すくなくとも思想的なロジックだけを見れば正三の禅理解と山崎闇斎の朱子学解釈にそれほど大きなへだたりはなく、なぜおなじようなロジックが商業倫理に結びついたのかということが明らかにされなければ、著者の主張は成立しないのではないか、という疑問も感じます。

  • 独自の歴史観が面白い

  • 今回は忠臣蔵、綱吉名君説、デリバティブの本家日本、徳川時代の中朝関係について。綱吉は生類憐みの令を出したことで暗君扱いされているけれど、それまでの時代は切り捨て御免の風習があり、かの水戸光圀でさえ浮浪者を大した理由もなく殺していたという。綱吉はそれを改め、今では当たり前の命の大切さを世間に知らしめたという。また彼は、側用人の制度を設け、政治の実権を握る役人たちを世襲制から実力本位の人が担当するように変革した。
    だから暗君ではなく、名君だと著者は判断している。一方で綱吉には朝鮮系の血が流れている可能性もあり、そのためか現鬱陵島、現竹島(旧名松島)を朝鮮のものと認めてしまった経緯がある。これが現在でも韓国の不法占拠の根拠となっており、そう考えると何をしてくれたんだろう、との思いもある。
    また、いきなりデリバティブ=金融派生商品の話が展開されたので何かと思ったら、この元祖は日本の堂島米市場にあるという。その証拠に、ノーベル経済学賞受賞者のマートン・ミラー教授が大阪へ行った時に「人類に対するすばらしい貢献」として先物市場の跡地に花を捧げたとのこと。
    今現在株式市場でよく使われているローソク足も元は「酒田罫線法」といい、日本発祥のもの。鎖国時代にもかかわらず、世界最先端の経済の仕組みを実践していた証拠にもなる。
    忠臣蔵については、相当なページ数を裂いて説明がなされている。というのも、この事件があったことが幕末に幕府瓦解のきっかけとなったからだという。
    それは、人民が納得する理由があれば殺人も許容されるとの概念を幕府側も認めてしまったから。主君の恨みを晴らした赤穂浪士たちを下手人として処罰するのではなく、あくまで義士として扱い、切腹を言い渡した。これは幕府自身が、幕府の定めた法を超越する正義があると認めてしまったことの証明となる。
    それがやがて幕府の力を超えた権威=朝廷を正義と見做し、勤王討幕運動に結実することになった。
    そして、中朝関係についてだけれど、儒教、それも先鋭的な朱子学がどれだけいびつな考えで、それが日中、日韓関係をいかにこじらせている元になっているのかが説明されている。儒教においては、歴史が「どうであったか」よりも、「どうあるべきであったか」が重視され、この論法によると歴史捏造がいともたやすくなされるという。儒教は宗教であり、それを国際社会で主張されても困るというのが本音。そんな国と関わっていかなくてはいけないと思うと気分が暗くなる。

  • 古本屋へ

  • 這本書指出忠臣藏形象是被戲劇影響,一來淺野已經是第二次擔任很難說像劇中一樣衝康他,再來這次負有重責大任--桂昌院受封從一位的交涉的吉良也不可能在偏偏在當天搬石頭砸自己的腳。而史料裡寫的顯然是梶川和吉良走在一起,淺野從後面偷襲,最後又砍正面,砍了三四刀之後梶川去制止他,這種單方面偷襲根本不是「喧嘩」。至於淺野為何選這天,或許根本沒有遺恨什麼的,精神科醫師指出的統合失調(精神分裂)很像淺野當天的症狀,選在當天和當地犯案本來就已經不正常,脇差應該用刺的偏偏用砍的,還砍了兩下有鐵線的烏帽子,一砍人誰會故意砍安全帽?還有事後該慌的時候反而莫名地冷靜,在在顯現精神病的症狀。但是至於亂心為何沒在史料上,這很正常,因為這種事根本不會寫出來,例如秀吉的六根手指頭,或者矮人症只有124公分的綱吉。

    而大石並未批判幕府的判決,也覺得理所當然,只是不平淺野大學無法;而至於其他江戶激進派堅持要殺吉良可能是怨靈思想(完成死者想完成的事情)還有希望藉由這次的行動再仕官(有前例),而四十六人都毫髮無傷可能只是因為吉良根本沒料到(因為不是喧嘩)。

    作者提到綱吉可能是明君,生物憐憫的法令改變了戰國以來的輕視生命的風氣,是一個急遽的改變;再來側用人制度讓將軍可以進行獨裁而不只是橡皮圖章,這點當然不受寫史的官吏的歡迎;再來對商業的獎勵,町人的繁榮,改制貨幣等等也踩到儒生的大忌(以儒立國的幕府根本不屑對商人徵稅),儒生對商業有很強的反感,再加上綱吉的做法很多更動了古法更是崇古儒生的大忌,所以新井白石為首的儒生對他沒好氣是正常的,因此他在歷史上一直被抹黑。

    還有先物取引居然是日本發明的,三井開始的正札制度,固定並公開售價,售價訂價也是合理的,因此日本人習慣這種制度而沒有殺價的習慣(少數較古老的商業行為的京阪還是會殺價),相較之下世界上多半的商人一開口的訂價多半都不是正札。作者提到在江戶時代發展起來的「商人道」,商人界特別的德目,為替制度,重信用,從事社會事業會回饋到自己身上等等,這些都是讓日本最先近代化的原因之一。這種思維模式,也就是農人,商人,不管什麼做好自己的本分還是可以成佛,悟道的蓮花正是生於泥沼,因此連殺人技術的劍術也可以悟道,這也是日本史的一個大逆說。

    為替制度等於是幕府把錢的事情整個丟給商人,金座銀座也是半民營世襲,這時產生了武士的ケガレ意識。還武士原本是不受ケガレ影響的族群,畢竟他們的工作也就是那樣,但是到了江戶時代也染上了ケガレ的思想,包括如上所述,還有俸祿兌現時不能等米貴時兌,因為對錢感受到ケガレ因此不能牟利,幕府也不對商人徵稅。髒活也丟給山田淺右衛門,石出帶刀(世襲牢奉行)去做,對殺價有抵抗感,對賄賂也有很強的厭惡感。儒家中國雖然厭惡商人,但對錢本身沒有厭惡感,為達成目的還是會進行賄賂。

    另外作者還提到,儒教比起「実際どうであったか」,更重視「どうであるべきであったか」,朱子更加上了排他和獨善的性格,因此儒家不是學問,而是信仰,這種信仰和歷史學的研究是常常背反的,也常常因為這個信念歪曲歷史。

  • 激動の時代が幕を閉じ、平定後の江戸時代の文化・政治を中心に論説が展開される。戦国時代からすると歴史的変化に乏しい時代のため、人それぞれ興味の問題ではあるが、個人的には些かダイナミズムに欠ける。

    第1章 忠臣蔵、その虚構と真実編
    第2章 将軍と側用人システム編
    第3章 大坂・江戸 大商人の世界編
    第4章 明と日本編
    第5章 琉球王国と日本編

  • あまり興味がない時代なので、イマイチ楽しめず。
    琉球の下りは、逆に知らなかったので面白かった。

  • ご本人とその政治的主張は非常にクセがあり(マイルドに言って)、好き嫌いが別れそうですが、彼の通史は本当に面白い。「怨霊信仰+コトダマ+ケガレ忌避+和の精神」という日本人の宗教観をベースに古代史から現代までを新たな視点で考察しています。粗い・甘い箇所もあるけど掛け値なしに面白く、目から鱗。考えさせられます。
    赤穂事件はまあまあですが、後はかなり散漫な印象。

  • 14巻。
    忠臣蔵の真実、綱吉の政治、
    大商人の世界、明と日本、琉球と日本、
    ということでつづられていくが、
    なんといっても一番おもしろいのは
    忠臣蔵の真実であった。

    「浅野は名君、吉良は悪」
    「長矩への忠臣、大石内蔵助以下47人の
     侍が本懐を果たす」

    すべてこれらは、創作物が先にきて、
    歴史の真実を歪めている、という話は衝撃的である。

    結局なぜ浅野が「乱心」したかというと、
    それは統合失調症だったから、というのは大変に
    納得がいく説明である。
    極度のプレッシャー、対人関係の苦痛などなどで
    精神疾患は発症したり悪化したりするものだが、
    浅野がそうなって、「致命傷すら与えられない」
    謎の刃傷を起こしてしまった、というと一番すっきりする。
    乃木希典の言うように、本当に殺したいなら刺さなくては
    ならないのだ。

    そして、大石は浅野長矩への忠臣ではなく、
    浅野家に対する忠臣で、堀部とは温度差があった。
    それで、結局お家再興が叶わぬということで、
    12月14日の「吉良不意打ち」を起こすわけである。
    吉良からしたら、まあ切りつけられたり、
    あげく屋敷で無茶苦茶な論理で殺されて、
    これは日本史上トップクラスに不運な人であろう。

    しかしなぜこんな話が、
    浅野を名君という物語になってしまうかというと
    それは「怨霊信仰」というべきか、
    「きっとこういう願望があったから、それを果たすのが務め」
    という日本型の信仰が発動して、
    それが日本人の心を打つ物語になってしまうのである。

    史実だと思っているものが創作の派生であったり、
    作り話に思えるようなことが事実だったりする。
    それらすべてに史料があるわけではない。
    タイムマシンもない。
    それでも真実を探していくことが歴史を学問として
    真摯に捉えるということなのであろう。

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著者プロフィール

1954年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSに入社。報道局在職中の80年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞。退社後、執筆活動に専念。独自の歴史観からテーマに斬り込む作品で多くのファンをつかむ。著書は『逆説の日本史』シリーズ(小学館)、『英傑の日本史』『動乱の日本史』シリーズ、『天皇の日本史』、『お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで』『お金の日本史 近現代編』(いずれもKADOKAWA)など多数。

「2023年 『絶対に民主化しない中国の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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