こうふく あかの (小学館文庫 に 17-5)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 1505
感想 : 111
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  • Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094086089

作品紹介・あらすじ

結婚して十二年、三十九歳の調査会社中間管理職の俺の妻が、ある日、他の男の子を宿す話。二〇三九年、小さなプロレス団体に所属する無敵の王者、アムンゼン・スコットの闘いの物語。この二つのストーリーが交互に描かれる。三十九歳の俺は、しだいに腹が膨れていく妻に激しい憤りを覚える。やがてすべてに嫌気がさした俺は、逃避先のバリ島で溺れかけ、ある光景を目にする。帰国後、出産に立ち会った妻の腹から出てきた子の肌は、黒く輝いていた。負けることなど考えられない王者、アムンゼン・スコットは、物語の最後、全くの新人レスラーの挑戦を受ける。

感想・レビュー・書評

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  • 作者が意図したプリミティブな勢いは受け取れたと思う。

  • この主人公と同じように
    あーこの行動は周りのみんなはこう思ってくれるだろうなって計算をしながら行動するってことは、昔の自分にはよくあった気はする

    そして、そんな自分に対して、自分だけは計算だってことを知ってるから、どこかでバカにしてたりして、今になってそんな自分を恥じて苦しめられたりしている

    みんな、行動の全てはもともと愛されたいというのが原理なんじゃないだろうか

    愛されたくて自分を偽る
    愛されてない自分を認めたくないから、それをとりつくろうような行動をしてしまう

    そしてあとでそんな自分にしっぺ返しをくらう

    気づいたときには、偽ってきた分の闇は大きくなっていて、なかなか大変

    でも後悔は意味がない

    その時の自分には、そうするしか道がなかった
    環境がそうさせた部分が大きいから、その他に選択肢なんてその時の自分にはなかった

    でも人生には自分の偽りに気づかせる出来事が必ず起きる
    隠しても隠しても闇は隠れない
    必ずどこかで出てくる

    だから、それをバネにして本当の自分を見いだして生き続けていくしかない

    なんかそんなことを思った

    やっぱり西加奈子すごい

  • 生命力の強さが感じられた作品でした。
    主人公の取り巻く世界とプロレスラーの話と境遇は違うけれど似通って並行していて楽しく読めた。

























































  • 読んでいる最中は「普通かな」と思ったが、ラストと作者のあとがきがいい!2007年と2039年の二つのストーリーのつながりに感づくことができる人には全く違った景色が見えるのだろう。後先になるが、「こうふく みどり」も読もうと思う。

  • 西加奈子「こうふく みどりの」の姉妹作。
    2冊で1作品、ということだが、普通に【続編】と理解
    した方が良いかも。だから、もしこの作品を読もう、と
    いう人が居るのなら、先に「みどりの」を読んでからの
    方がおもしろい、と最初に言っておくことにします。

    「あかの」の主人公は二人で、それぞれのタイムライン
    の物語が交互に進む、という構成。一人は2007年の段
    階で調査会社に中間管理職として勤務する男で、典型的
    な「事なかれ主義」を貫くサラリーマン。
    もう一人は2039年の段階で「最強」とされるプロレス
    ラー。残念ながら、その時代のプロレスはかなり衰退し
    ている模様。

    2007年のある日、妻の突然の「妊娠報告」に狼狽する
    夫。妻とは長い間夜のコンタクトが無かったため、お腹
    の子どもが自分の子ではない、ということは確定。妻を
    問いただし、揶揄したいという願望はあるものの、事な
    かれ主義が身体に染みついている男は何をどうしたら良
    いか解らない。
    一方2039年、ドサ回りをしながら少ない観客の前で最
    強を証明し続ける48歳のプロレスラーは、新人選手の挑
    戦を受ける。対戦相手はコレがデビュー戦。普通では考
    えられないシチュエーションの試合で、王者は…という
    内容。

    「みどりの」に比べれば、束も薄く、苦手な大阪弁表記
    も無いので読みやすいハズなのだが、こちらの方が読み
    終えるのにかなりの時間を要した。本当なら嫌悪すべき
    な調査会社課長に多大なる感情移入をして読んでしまい、
    そのいたたまれなさに読書を数度中断したのが原因。
    おそらく僕も「事なかれ主義」の権化であり、問題対処
    の考え方が主人公とほぼ同一。共感するたびに情けなく
    なる、という、やたら精神に突き刺さる作品であった。

    この作品の根底には、「みどりの」よりも数倍色の濃い
    『アントニオ猪木』が流れている。『俺が今まで、猪木
    のような眼をすることがあったかと、四十を手前にして
    思うのは大変に辛く、ただただ手遅れであった』という
    一文が、この作品の全てを表現している、と言って過言
    は無い。

    …僕もだ。
    50年近くアントニオ猪木を見続けて来たのに、猪木の
    ような眼で何かに立ち向かったことが一度でもあったの
    か?そう考えると、涙が出てくる。

    僕より一回り若い女性は、きっと猪木と同じ眼をして小
    説を書き、結果的に直木賞を受賞した。そう考えるとか
    なり悔しいけど、悔しさ以上に西加奈子という稀有な才
    能をリスペクトせざるを得ない。

    【こうふく】連作、凄いインパクト。目が覚めました、
    本当に。

  • まず、読み始めて、靖男さんのめんどくさいキャラが大好きになった。
    続きが気になって普段も考えてしまう本はひさしぶり。
    やはり西加奈子の本はおもしろい。
    言葉がダイレクトすぎてちょっと尻込みするけど、西さんという女性が書くと、嫌悪感よりも、う〜ん、なるほどなぁと考えさせられるのは何故だろう。

  • 猪木…素晴らしい人なのですね。

    人は赤いトンネルを生死をかけて通ってくる。
    命を生み出す器と世界を結ぶ道。

    神秘とはこういうことなのだろうなぁ。

  • 西加奈子さんの作品を立て続けに4冊読んだ。一人の作者に傾倒することはよくあるが、いつもとは違う惹かれ方と感じる。エロスやグロテスクな表現がオヴラートを介さずにストレートだからすんなり入ってくるのだろうか?こうふくのみどりのに続き2つの物語が交互に描かれているが違和感がなく、ラストの着地もgood!

    • shukawabestさん
      これは僕も読んでるぜい。二つの軸が面白かったよ。
      これは僕も読んでるぜい。二つの軸が面白かったよ。
      2022/08/12
  • こうふくみどりのとのささやかな繋がりが良い

  • こう言うことを言うと、誤解を生むかもしれないが、女性だから書ける男性小説。

  • ★4.5!

    良かったー!
    さすが西さん。
    何て言うか、この言葉が面白いとか、
    登場人物が、とかそういった細かいことでなく、
    描かれている、町が、生活がすき。
    描かれていない日常までも想像してすき。

    きっと何気ない日常を表現するのがうまいんだろうな、と。
    だから世界が見えるし私もそこに住める。
    そんな不思議な感じ。

    話は戻って、本作品は
    こうふく みどりのと、時代や町は一緒だけど、
    内容も、人も全然違う、別のお話。
    でもあとがきで西さんが言うように、
    些細なことで繋がってることを発見したとき、感じたとき、こうふく感を得た。

    例えば同じ登場人物が出てきたとき、
    あ、この人この前会った!!!
    というような、リアルな既視感を感じた。

    不思議。


    主人公はものすごく物事を達観してる、
    一見完璧な人間。

    人のことを内心小バカにして、
    自分が一番。そんな人。
    でも嫌いになれない。
    客観視出来てしまう人間にしか分からない寂しさ、切なさがある。
    私もそう。
    すごく共感できた。

    ほんとは周りの“バカな人間“のように、
    感情を全面に出したり、
    周りを気にせず自分勝手に生きたりしたい。
    それでもって周りに好かれるなんて…!!?
    心底羨ましい。
    そんな感じ。

    本編の合間合間に描かれる少しだけ先のプロレスの世界。
    これも面白い。
    ロマンというのかな?
    男っていいなー!
    …けど女で良かった!
    そう思う作品。

    こうふく みどりの とは違った家族愛。

  • ふたつの話が交互に進んでいくんですが、
    最後にびっくりの展開でつながるというお話。

    ひとつめがとある三十代の夫婦のお話で、
    夫は会社ではできる社員で、家でもいい旦那で。
    でも奥さんのことをすごくバカにしてて
    そこそこ可愛いけどバカで俺がいなきゃ何もできない
    と思っているんだよね。
    まずそこがイライラするポイントなんだけど。
    旦那様は裏の裏とか考えて良い上司を装ってるタイプで、そこもイライラするんだけど。
    とにかく腹立つんだよね。
    ある日、奥さんが妊娠するんだけど、
    この夫婦はしばらくそんなことしてないので
    必然的に奥さんの浮気になるんだよね。
    旦那様は内心ブチ切れるんだけど、大人な人間を装って
    冷静なふりをするんですよ。
    でも奥さんが産むって言い出して、
    旦那様も社会的にかっこ悪いから離婚したくなくて。
    会社のデキナイ同期の紹介でリングがある居酒屋に行くんだけど、
    その動機にだけホントのことを話すんだよね。
    その居酒屋にデビュー前の大きなプロレスラーと小さなトレーナーがいるんだけど。
    旦那様は奥さんが好きだからじゃなくて、プライドを傷つけられたってことで怒ってるんだよね。
    そして、母としてどんどん強くなっていく奥さんに
    モヤモヤしだしてキレて誰の子なのか聞き出すんだよ。
    そしたらなんと、旅行先で襲われてそのままそうなったと。
    奥さんは旦那様が自分に無関心なことが寂しかったんだよね。
    そして産まれた子供が浅黒い巨大児。
    赤ちゃんと自分が同じ道を共有したことに嫉妬して、
    一生この子供を愛せないと思っちゃうんだよね。

    もう一つの話は無敗のプロレスラーの話。
    覆面してるけど体が大きくてめちゃめちゃ強い。
    セコンドに小さいおじさんがいて。
    二人共すごい個性的なんだけど、かっこよいんです。
    プロレスラーとして戦う限りは、死ぬ覚悟で戦う!
    その覚悟があるから勝てる。と。
    歳をとってきて、そろそろ負けるんじゃないかって言われてるときに、
    得体のしれない新人からの挑戦を受けて試合して…
    そのプロレスラーが…

    時代がずれていて、最後はうまく噛みあうという
    命の大切さとか、夫婦の関係とか。
    どういうふうに子供を愛するのか。
    最終的には自分の子供を誇りに思うことができるんだけど。
    いろんな思いがあったんだろうなと。
    素敵なお話でした。

  • 西さんにしては駄目じゃない人が主人公 ある意味駄目なんですが
    プロレスが題材になってる作品、プロレスを知る人間ならより楽しめる
    ただアムンゼンと新人レスラーの試合の描写は残念に思った
    兎島と主人公のやり取りは結構良かった

  • 生き辛そうで不器用な姿が
    めちゃめちゃ共感できると共に
    まあそれでもいいやって思うし
    むしろ人間らしくて愛おしくなるような
    なんかそいうことを思った

  • 男の惨めったらしさが、とても良い。

  • みどりのに続いて読んでみた。

    どちらにもアントニオ猪木が登場し、こちらではプロレスラーも出てくるのだが、こちらはさらに理解が難しい。

    男と女の違いなのか、人生経験の少なさなのか。

  • SFになるんだろうか?近未来ものとしては、異質で、みどりの、より俺は好きでした。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/687070

  •  部下に気を遣い、理想の上司を演じる靖男(俺)。美人だがバカでつまらない妻や、同期の男などを見下している。妻とは3年もセックスレスなのに、突然妻から妊娠を告げられる。
     プロレスのリングのある不思議なバーで、アントニオ猪木のビデオを見ながら飲むようになる。ここも不思議な雰囲気。恋バナに花を咲かせる婆さん二人もそこの常連。

     もう一つの、2035年プロレスラー、無敵のアムンゼン・スコットの話とどこかでつながるのだろうな、と思っていたら、最後にわかった。

     主人公の靖男が嫌いだという感想が多いが、私は結構親近感を持った。誰しもこういう思いを持っているのではないかな。好かれたくていろいろ頑張っているのに、空回りする。それは、心の底では相手を見下しているからかもしれない。

  • 『こうふく みどりの』を読んでからこちらを読んでほしい。
    無敵のプロレスラー、アムンゼン・スコットの出自や下積み時代と、アムンゼンを倒す新人サミー・サムの数奇な人生の巡り合わせの設定が素晴らしい。
    主人公の靖男の人生はどうなってしまうのだろうと途中心配したけれど、小説終盤では血の繋がっていない息子を自分の息子として誇りにしていて、靖男も希望を得たようで安心した。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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