香港の甘い豆腐 (小学館文庫)

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著者 : 大島真寿美
  • 小学館 (2011年6月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094086218

香港の甘い豆腐 (小学館文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 海外で生活することで今まで見えなかったものが見えるようになる、考えたこともなかったようなことを考える、単純に言ってしまえば成長するということだが、海外で生活したことのある人には共感して頂けるのではないだろうか。

    本書の主人公「彩美」もその一人で、高校2年の夏に母親から連れられて香港へ行くことになる。目的は今までいないと教えられてきたはずの実の父親に会うためであった。それまで、人付き合いが下手なのも、自分に自信がないのも、頭が悪いのも、溌剌としていないのも、夢がないのも、希望がないのも、全部父親がいないことのせいにしてきた彩美。学校をサボってることが母にバレて、そのことでグチグチ言われた時つい「どうせ父親も知らない私ですから」と言ってしまう。本文に直接は書いていないが、この時の母の心情を察するに、かなり傷ついたろうし、しかし同時に覚悟を決めることにもなったのだと思う。その証拠に普段休みなんて滅多に取らない母が急にエアチケットを握らせてきて香港に行くと言うのだから。

    香港行きが決定した時も、飛行機に乗ってるときも父親に会える喜び、ワクワク感でいっぱいだった訳ではない。むしろ、まだ見ぬ父親に会う不安、香港という町に対する不安、そして香港に行ったら自分はどうなるんだろうという不安が感じられる。「ガッツよ、ガッツ。」

    当初は4日間の旅程だったのだが、彩美は日本には帰らない、もっと香港にいたいと母に告げる。母の友人であるマリイの家に泊まることになり、マリイ、マリイの姪であるエミリー、エミリーの友人のテツヤ、そして彩美の奇妙な共同生活(といっても4人が顔を合わせるのは滅多にない)が始まる。最初こそ、香港という町の性質、そこに住む人々のことを理解するのが難しく感じる彩美であったが、徐々に順応していく様子が見て取れる。どこで会ったかわからない人から「おはよう」と言われても、「おはよう」と返すとか、「オレンジジュース!」と怒ってるように(実際に怒ってるわけではなく、広東語がそのように聞こえるだけらしい)ジューススタンドのおじさんに注文したりだとか、すっかり「香港人」になってるのだ。

    父である「ロイ」と会うことで、そしてルームメイトであるマリイ、エミリー、テツヤと生活することで、彩美が何を感じたか、僕ら読者は短いながらもしかし濃密な一夏で人が成長していく様を追いかけることができる。そして、自分の人生なのに、自分がどこにいるのかさえわからない、そう思ってる人たちに自分を受け入れてくれる場所は必ずある、自分が自分らしく輝ける場所が必ずある、そんな希望を与えてくれる内容だ。

    『虹色天気雨』、『ビターシュガー』では女性の友情を描いているが、本書『香港の甘い豆腐』では上述したように女性の成長を描いている。ただ、共通していることは周囲の人間を巻き込んでいて、「その輪の中に入りたい!」と読者を思わせてくれるような魅力的なキャラクターが溢れているということだ。本書では最後の方で、ちょこっと書いてあるだけだが、エミリーが日本留学を果たしたり、エミリーが帰省するときに祖母(この人がまた素敵!)が香港へ一緒に行ったり、そこで意気投合したマリイやテツヤが日本へ遊びに来たり、エミリーのパパやママや従兄弟や友達も来たっていうのだから、なんかこう賑やかさが伝わってきます。本書に書いてないけど、このノリでいくと、彩美もいつかはロイの両親がいるカナダに行くんだろうなと勝手に物語の続きを想像しています。

    ちょっと余談ですけど、僕が大島さんの作品を好む理由の一つは「距離感」です。女性同士の友情を描くにしても、ベタベタしすぎないし、本書のような人と関わって成長していく物語でも、マリイたちが彩美になんでもかんでも手を差し伸べてはいない、その距離感。近すぎず、遠すぎずというような感じ。読んでいてとても気持ちがいい。

  • 17歳女子高生。なんとなくいろんなことがうまくいかない。学校にも行かなくなってしまった彩美。全ての根源は父親がいないこと、と言ってしまったばっかりに父親に会いに香港に連れて行かれ…香港の猥雑な街角と、傍若無人なのに優しい人々と、美味しい食べ物に囲まれているうちにこんがらがった心がほぐれていく過程が優しく綴られる。17歳の頃、感じていたやるせなさのようなよるべなさのような言葉にできないもやもやがここにぎゅっと詰まっている。しかし彩美のおばあちゃんのステキなことといったら!

  • 日々を退屈して過ごしていた、高校一年生の女の子が、一皮むける本。
    つるん、と、まるでライチの皮をむくように。
    ひと夏物語でもある。
    同じ年頃の人に読んでもらいたい、もう自分は真似したくても出来ない、輝かしい物語だ…
    と思ったけれど、おばあちゃん、後日譚の中に、何気に凄いことが描いてある。
    いくつになっても遅すぎることはないのか…
    香港にはやはり特別な力があるのだろうか?
    人間の生命力に作用するカンフル的街なのか?
    「父親も知らない」自分を、否定から肯定へと変化させたヒロインの、成長ぶりが鮮やかだ。
    …けれど、やはり大島真寿美なので、淡々とした文章で語られる。

  • 図書館で借りてとっても気に入ったので購入。
    ここではないどこかに逃げたい。
    もしその場所が用意されたとして私は彩美のように実感を持って生きていけるだろうか。

  • 高校のさぼりがバレた主人公は
    何事も父親がいないことを言い訳にしていたら
    突然母に香港へ連れて行かれ、
    父親と会うことになった。
    生きていることも知らず、日本人じゃないことも
    知らなかった主人公が初めての香港で
    自分の居場所?自我?に目覚めていく。

  • 【本の内容】
    「どうせ父親も知らない私ですから」十七歳の彩美は、うまくいかないことをすべて父親のせいだと思っていた。

    夢がないのも自信がないのも。

    退屈な夏休み。

    突然、彩美は母親からパスポートとエアチケットを渡される。

    どうやら父親はいま香港にいるらしい。

    会いたいと望んだことなんて一度もなかったのに。

    ガッツよ、ガッツ。

    初めて知る出生の秘密に、へこたれそうになる自分を鼓舞し、彩美は空港へ降り立った―。
    熱気に溢れる香港の町。

    力強い響きの広東語。

    活気に満ちた人々と出会い、少女がたおやかに成長を遂げる青春の物語。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    17歳の彩美は、人付き合いがへたなのも、自分に自信がないのも、夢がないのも、みんな父親がいないせいだと考え、学校もさぼりがちになっていた。

     夏休みに、母は彩美を香港へ連れていく。

    そこで少女は父に会い、他人と話すことの楽しみを知り、成長していく。

    ローストダック、お団子入り麺、豆腐花など、香港の食の描写も読みどころだ。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 学校で合わせることに辟易し、自分の居場所がわからないという気持ちは、10代ではなくても、大人でもわかる気がする。実の父親が香港にいると連れていかれる彩美。香港でのホームステイを自分で決め、香港での生活を楽しみ始めて、自分というものを持ち始めた彩美の姿を見ていて、何だか励まされました。はじめは読んでいてなじめなかったけれど、彩美が香港を好きになったっ瞬間、この物語が肯定された気がして、自分の中にも何だかすとんと入ってきました。彩美にもたくさん、彩美自身を支えてくれる身内がいる。その様子がまたいいなと思う。香港の甘い豆腐=豆腐花。私も大好き。食べたくなりました。辻村深月さんの解説が良かった。

  • 胸を甘く締めつけられるような感覚になりながら、すいすいと読み進めました。
    香港に行きたい。
    もしくは香港映画を久々に観たい。
    安易かもしれないけれど。
    読み終えた後にふくふくとした気持ちにさせられる一冊でした。

  • なんというか、特に目新しさはないと思う。
    香港という土地とそこに住む人たちのエネルギーは魅力的だったけれど、主人公はあまり受け入れられなかったかも。
    ストーリー全体としては好きな感じ。

  • 出生の秘密を探る香港の町で、たおやかに成長を遂げた少女の「ひと夏」の青春物語。

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